冒険家・植村直己さんの魅力を紹介します。
あくまで本作のゲーム制作者の個人的感想ですので、
情報や解釈の精度は個人ブログレベルと受け止めてください。
このゲームを通じて興味をもったら、ぜひご自身で調べてみてください。
思いつく限りできる準備は手をつくす。冒険に理解がない役所相手にねばって交渉するといった準備も、長距離の南極横断の練習として日本を徒歩で縦断するといった準備も、すべて全力です。
私たちが目標に向けて準備するとき、本当はできることであっても「面倒だな」「図々しいと思われそう」といった迷いで手を緩めてしまいがちです。そんなとき、植村さんのことを思い出してみてください。
植村さんの「準備」には、物資や環境を整備するだけでなく、「未知の困難を1人でのりこえる力を身につける」ということが含まれています。
同時代のほかの冒険家たちであれば、しばしば持ちこんだ食料や備品を失って苦しい状況になってしまうこともありました。でも植村さんは冒険の現地の暮らしや食生活になじみ、現地の人たちがしているように困難を生き延びる術を身につけて冒険に臨みました。
「決心のつかないころは、恐怖がつきまとったがいったん決心がつくと私の心はおちついてきた」これは、植村さんがアマゾン川をイカダでくだると心に決めた場面を振り返った一節です。もちろん、こうした心境はアマゾン川だけではなく、冒険の至る場面で生まれていたことでしょう。
これほど強い冒険家にも恐怖心があり、心の中の一歩を越えることから前進が始まるという事実は、私たちを勇気づけてくれる気がします。
植村さんが北極を単独冒険するためには、現地の人々から犬ぞりの操り方などを教わる必要がありました。犬ぞりを利用する冒険家はほかにもいましたが、現地の人は「偉そうな態度の者が多いなか、ウエムラはちがった」と言います。
北極でもアマゾンでもヒマラヤでも、植村さんは現地の文化や暮らしに敬意を示す一方で、だらしない現地人には「ちゃんとしなよ」という接し方もできたそうです。ごく当たり前なはずなのに、すごく難しいことですよね。
植村さんが好んだ単独の冒険は危険と恐怖に満ちていましたが、それでも彼は「孤独」を楽しみました。
「テントの中や雪洞の中で待機しなければならないようなとき、私はよく過去の思い出にふけり、それが一つの癖になった。それは単独行にのみ許される、楽しく、ときには甘美でさえある時間だった」と残しています。
北極でソリが氷の海に沈んだとき、植村さんは「神様助けてください!」と叫んだそうです。
そんな言葉が出る極限の状況でも、彼は自分にできることを全てやりました。海上に浮かんだソリをつかむと、引き上げ方向の氷の厚みを見極め、のどが焼けるほど声を張りあげながら犬と一緒にソリを引き上げました。
自分はどちらもデジタル版で楽しんでいます。植村さんへの関心があろうとなかろうと、ノンフィクションの読み物として単純に面白いので、おすすめです!
東京都板橋区の植村冒険館にアクセス良い人はぜひ一度訪れてみてください。都営三田線の「板橋区役所前」駅が最寄りです。
建物の1階と3階をあわせても、そこそこのスペース。大きな施設ではありませんが、展示をよく見て、解説文を全部読もうと思ったらむしろちょうど良い規模感。焦らず、ゆったりと楽しんでいただけると思います。おすすめ。