●夜7時~ 工事内容の解説(約15分間・神殿前集合)
浄闇(じょうあん)
改修工事の着工に先立ち、仮のお住まいである仮殿(かりでん)にお遷(うつ)りいただいたご神体。工事完了後の10月5日(雨天順延10月6日)の夜8時、浄闇と呼ばれる清浄な暗闇のなか、仮殿を出て再び本殿にお戻りいただきます。
絹垣(きぬがき)
潔斎を済ませた神職、祭典委員らを従えて、絹垣(きぬがき)という白い幕をまとったご神体が、密やかに境内へとお出ましになられます。
フラッシュ撮影NG
参道の外灯は消され、境内は松明(たいまつ)とロウソクの灯のみ。撮影可。但し、フラッシュライトの使用をお控えください。
遷座祭は、どなたでも拝観できます。次の制限についてご了解のうえ、ぜひお出かけください。
① 当日、境内の一部は立入禁止となります。
② 外灯を消し、あえて境内を暗くしますので懐中電灯などの使用は禁止いたします。
③ 撮影可。但し、フラッシュライトの使用は禁止いたします。
なお、遷座祭に先立ち、当日、現地において工事内容を解説いたします(約15分間)。お聞きになりたい方は、夜7時に神殿前へお集まりください。
↑前回の遷座祭の棟札。「昭和三十四年九月十六日」
白アリや地盤沈下の被害を、繰り返し受けてきた春近神社の本殿。一昨年度より対策に取り組んでまいりましたが、いよいよ本年(令和7)6月から本殿の改修工事が始まります。宝暦年間(約270年前)に据えられた礎石に代えて、新たに土間コンクリートを打設します。白アリに喰われた木材や朽ちた木材は新しいものへ取り換えます。また、基礎の水平が失われたことで、その上に載っていた本殿は、全体に歪みが激しく一部の部材は欠損していることから、可能な範囲で歪みを修正し、欠けた部材を補充します。今までも応急的な補修工事は実施されてきたようですが、本殿に限っていえば、今回の工事はより本格的な大改修となります。
人間の住居と同様ですが、工事期間中、本殿の神さまには今とは別の住居、仮の神殿にお遷(うつ)りいただかなくてはなりません。そして工事完了後には、また元の本殿にお戻りいただくことになります。本殿の中に鎮座され、普段はじっと動くことのないご神体に、別のところへお遷りいただくのは大変畏れ多いことであり、遷座祭(せんざさい)という儀式が、丁寧に、慎重に執り行われます。6月29日には本殿から仮の神殿へ(仮殿遷座)、そして例大祭を間近にした10月5日には仮の神殿から本殿へ(本殿遷座)、ご神体がお遷りになられます。ご神体が人目に晒されることが無いよう時刻は夜8時。外灯は消され、浄闇(じょうあん)と呼ばれる浄(きよ)らかな闇(やみ)を照らすのは、松明(たいまつ)とロウソクの灯のみ。潔斎(けっさい)を済ませた神職、祭典委員らを従えて、絹垣(きぬがき)という白い幕をまとったご神体が、密やかに境内へとお出ましになられます。
記録によれば前回、春近神社のご神体がお出ましになられたのは昭和34年9月のこと。当時は、覆殿(おおいでん―本殿の上屋―)の屋根葺き替えに際してのものでした。以来、実に66年ぶりの遷座祭となります 。
↑専門家による被害状況調査
令和6年1月に白アリの蟻喰痕を認めてから、区内の関係者にて対策を検討。本殿は伊那市指定文化財であるため、伊那市に対し支援を求めたところ、吉澤正己先生(信濃建築史研究室・工学博士)による調査が実施された(令和6年5月)。専門家の知見を得られたことが、今回の大掛かりな改修工事の起点となった。
↑被害状況 礎石と土台
宝暦年間(約270年前)の本殿は、礎石の上に土台が載る。本殿の自重により礎石が沈み、土台、束が地面に近接すると、蟻の頭上にその餌となる木材が置かれた状態となる。本殿は過去にも繰り返し白アリ被害にあってきたようだ。今回の工事では礎石を取り払い、土間コンクリートを打設する。傷んだ土台の取り換えも行い、将来に亘って建物の沈下と蟻害の発生を予防する。
↑ 被害状況 向拝柱の裂けと湾曲
本殿の自重により礎石が地面に埋まり蟻害が発生。蟻害による脆弱と経年による腐朽のため土台、束が潰れ、さらに建物が沈み込む。しかも不均衡に沈下したことは、間口5.2メートルの本殿にとって、その影響も著しいものとなった。基礎の水平が失われ、建物の荷重が偏ったため、小屋組は矩形を保てず、向拝柱は湾曲し大きく裂けている。今回、可能な範囲ではあるが変形した柱を修理する。
↑被害状況 向拝柱の蟻喰痕
向拝柱の足元を剥いでみると、著しい蟻喰痕が現れた。蟻害により材が痩せたことで、柱の裂けや湾曲が進んだと思われる。今回の工事では、材の脆弱がこれ以上進行しないよう対策を行う。
↑被害状況 向拝桁の湾曲と支輪の浮き
小屋組の狂いの影響。向拝桁が湾曲し、本来の位置から動いたため、取り残された支輪が浮いてしまった。新たに柱を設置して向拝桁を補強し、欠損している支輪は補充する。
↑被害状況 化粧垂木の垂下と毀損
化粧垂木の一部は下がり、一部は毀損している。正面からみると、本殿の軒先が下がっており見栄えもよくない。可能な範囲で修理を行う。