〇建御名方命(たてみなかたのみこと)(諏訪)
お諏訪さま、諏訪明神と称えられる、信濃開拓の神さまです。風・水を司り、古くより農耕の神と奉られ五穀の恵みをもたらしました。さらに、お諏訪さまの特殊な神事からは、狩猟の神としての性格もうかがえ、農耕の始まる以前、狩猟時代の遺風とさえいわれることも。時代が下り武家が台頭すると、有力武将らの信仰を集め、戦の神さまともなりました。伊那谷は古来、諏訪大社の上社と深く関わり、春近神社でもかつて御射山祭が行われていました。
【神格】 風・水を司る農耕の神、狩猟の神、戦の神
【ご利益】五穀豊穣、生業繁栄、武運長久
神像画(昭和26年 春近神社所蔵)
現在のご祭神8柱が描かれる
〇誉田別尊(ほんだわけのみこと)(八幡)
八幡さまのご祭神、誉田別尊とは応神天皇のご神霊です。応神天皇は、その在位中、進んだ大陸の文化と産業を輸入し、新しい国づくりをされた方でした。奈良時代、当時の聖武天皇は疫病や災害から国を鎮護するため、東大寺の大仏を建立します。既に遠い昔にこの世を去り、神となっていた応神天皇(八幡さま)は、聖武天皇を助け難工事を完成に導きます。これを機に朝廷は、八幡さまを国家鎮護の神として奉るようになります。特に、清和天皇を祖とする清和源氏は、八幡さまを一族の氏神さまとしました。後に鎌倉幕府をひらく源頼朝もその一人。武家社会が発展するとともに、武運の神さまとして八幡さまは全国各地に広がりました。また、母上である神功皇后が応神天皇を懐妊中に巻いた帯は、「岩田帯」の起源といわれ、安産・子育ての神さまでもあります。
【神格】文武の神、安産・子育ての神(神功皇后) 【ご利益】国家鎮護、成功勝利、出世開運、武勇長久
〇天照大御神(あまてらすおおみかみ)(伊勢)
地上の国々を明るく照らす天照大御神は、高天原で稲を育ていらっしゃいました。地上の国を豊かに、そして平和に治めるよう、ご自身の孫(ニニギノミコト)に命じ、高天原の稲穂を授けてこの国に下されました。さらにその子孫(カムヤマトイワレビコ)は、天下った日向の地を発って東に進軍。大和国を平定し、初代神武天皇として即位されました。日本人がお米を神聖な食べ物として、ずっとその生産に精を出してきたこと。令和元年、初代神武天皇から数えて126代目となる今上陛下がご即位されたこと。どちらも、この国に今も息づいている、天照大神のご神意を表しています。伊勢の神宮は、天照大御神から授かった鏡をご神体として祀る特別な神社。日本国の総鎮守とも称されます。
【神格】太陽の神、皇室の祖神、国家の神 【ご利益】皇室弥栄、国の隆昌平和、五穀豊穣、子孫繁栄
〇菅原道真(すがわらのみちざね)(天満宮)
学問の神さま、天神さまと称えられる菅原道真。幼いころより学業に励み、和歌や漢詩に優れた才能をあらわした道真は、学者として高い地位に就いていました。また、政治家としても手腕を振るい、後には右大臣にまで登りつめました。ところが、異例の出世が反発をかったのか、身に覚えのない罪により、突如、北九州の太宰府へ左遷されてしまいます。その2年後には失意のうちにこの世を去った道真。没後、京の都に疫病や日照り、さらには宮殿への落雷など不穏なことが続くと、道真の霊が障っているとうわさが立ちました。朝廷は道真の名誉を回復し、その霊を慰めるため天満宮を建立しました。江戸時代になると読み書き算盤を伝習する寺子屋が全国に広がります。優れた学者・歌人であった道真は、学問の神さまとして寺子屋に祀られるようになり、正月の初天神には天神講の行事が恒例となりました。
【神格】学問の神、技芸の神
【ご利益】 受験合格、学力向上、技芸上達、詩歌、文筆、芸能
〇三筒尾命(みつつおのみこ)(筒持宮)
底筒男命(そこつつのおのみこと)、中筒男命(なかつつのおのみこと)、表筒男命(うわつつのおのみこと)の三柱の神さまのこと。一般的には、住吉三神と称されています。
〇素戔嗚尊(すさのおのみこと)(津島)
愛知県の津島神社は、疫病除(よ)けの神社として知られ、古くより各地に勧請されてきました。ご祭神のスサノヲノミコトは、たいへん力が強く、気性が荒い一面のある神さまです。日本神話では、スサノヲノミコトが高天原で暴れまわる様子が描かれています。しかし一方で、スサノヲノミコトの荒々しい力は、時に邪気を追い払い、人のために尽くす力ともなります。地上の世界に下ったスサノヲノミコトは、若い娘を連れ去り人々を苦しめていた八岐大蛇を退治し、平穏な世の中を築きました。村に近づく災いを追い払い、人に近づく病気やけがを遠退ける神さま。無病息災、すなわち疫病除け、災い除けの神さまです。
津島さまは、古くは「お天王さま」と称され、「牛頭天王」を祀っていました。平安時代には、疫病をまき散らすものとして恐れられた牛頭天王。勇壮華麗な京都の祇園祭は、牛頭天王の荒ぶる心を鎮め、疫病を防ぐ行事として始まったものです。人々が祭に熱狂する姿に、和められた牛頭天王は、次第に人々の願いを聞き入れる神さまへと変わってゆきました。さらに時代が下ると、気性が荒いという元々の性格が似通っていることから、牛頭天王とスサノヲノミコトは同体であると説かれるようになりました。
【神格】疫病除け・傷病除けの神、災い除け・厄除けの神
【ご利益】無病息災、悪疫消除
〇大山祇命(おおやまつみのみこと)(三嶋)
大山祇命は山の神さまです。私たちの命をつなぐ水。水は山で生まれ、里を潤し、稲を育て食を満たします。水ばかりではありません。煮炊きの燃料とする薪、田の肥料とする刈り敷、家屋の材料とする木材・・・生活のすべてを、私たちは山の神さまからいただいてきました。春先、山の神さまが里へと下り、田の神となって、秋の稔を与えてくれる。このことを、日本人はずっと肌で感じ取ってきました。気象衛星の無い時代には、山の残雪、山の青さと相談しながら、農作業を進めました。正月に門松を飾るのは、山からいただく松に、神霊が宿ると考えたからです。また、山は先祖のタマシイの住処でもあり、そこから私たち子孫の生活を見守ってくださる神聖なところです。大山祇命を祀る代表的な神社、大山祇神社(愛媛県)、三嶋大社(静岡県)では、山の神であると同時に、海の神、航海の神として祀られています。
【神格】山の神、海の神、農業・工業・商業の神、漁業・航海の神、酒造の神
【ご利益】農業、林業、鉱業の守護、漁業、航海の守護、商工業の発展
〇速佐須良比売命(はやさすらひめのみこと)(姫宮)
速佐須良比売命は、お祓いの神さま。お祓いは、神道の核心ともいえる大切なもの。日本の家屋、職場、都市などなど、世界の中でも最も清潔で衛生的といわれますが、外面はもちろん心の内面まで、常に清らかでありたいと私たちは望みます。他人への体裁ばかりでなく、目に見えない神さまに恥じぬよう、心の鏡を磨き常に清々しく生きることが、日本人の誇りでもあります。その一方、仕事や家庭、日常生活を過ごす中では、心を曇らすことがしばしば。心の曇りは、さらなる罪・穢れを自分自身に誘い込むことになります。お祓いは、神さまの力を借りて心身の清らかさを取り戻し、再生するための神道の修法です。速佐須良比売命は、神職が唱える「大祓詞」に記された祓戸(はらえど)四神のお一人。国中の罪を祓い去るため、四柱の神さまがそれぞれ役割を担って登場しますが、最後に登場する速佐須良比売命の働きをもって、完全に祓い去られるのです。
【神格】お祓いの神 【ご利益】災厄抜除