6月句会選者特選句の感想
PDFファイルで印刷する場合は、こちら、ネット印刷はこちらをご覧ください。
2024年浜風6月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
大鯰日本を捨てる気配あり 金子うさぎ
頻発する災害に、負けてなるものかという作者の意思が出ている。
思い切ったユーモアの表現に、俳諧味が生まれた。想念を自在に働かせられる作者。
(内藤ちよみ様)
終末は瓢箪鯰の顔で来る 山戸 則江
実に面白い句だ。どう説明するといいのかむつかしい。
終末という深刻な「問題」に瓢箪鯰という「おもしろさ」をぶっつけてぴたりと決まってる。
(國分 三德)
上棟式じっと見詰める青大将 小峰トミ子
素直に考えると、若い施主が上棟式でこれから完成する自宅を想像して嬉しそうにじっと見詰めている様子が思い浮かぶ。ところが私は個人的に違う。結婚当初古い家に住んでいて、よく青大将を見掛けた。その後、家を建て替え新しくなってから、青大将を見たのは2回だけ。きっとあの青大将は上棟式を見ながら自分の居場所が失くなったのを悟ったのだろうと思ってしまう。個人的ではあるが、そのようにも取れる面白い句である。
(山下 宗翆)
白靴の先から朝の森ひらく 大西 惠
清々しさに満ちた、何と気持ちの良い句でしょう!“ひらく”というところから、朝の静寂さの中になにかしら希望を見つけた気がしました。
(桂花)
青梅雨や二度反戦の署名する 金子うさぎ
草木の葉をより色鮮やかに、青々と濃く見せる雨。そんな日、何度でも反戦の署名したくなる気持ちよく解ります。
(島田 啓子)
油絵の下に油絵瑠璃蜥蜴 金子うさぎ
油絵の下の絵が現れて響き合ったのか無干渉なのか、岩陰からヒョコッと現れる瑠璃蜥蜴は作為的に美しい。
(濱本 寛)
濃紫陽花咲くや階下は人の手に 島田 啓子
紫陽花、七変化…
濃紫陽花が効いており
この一句の中の物語の続きを知りたい気がしました。
(金子うさぎ)
ラで産まれ雑音だらけ桜桃忌 島田 啓子
産声の音階は「ラ」音だとなんとなく納得できる。
「雑音だらけ」がいかにもこの世の生きづらさを表している。
(山戸 則江)
蝦蟇分かりましたと引き返す 桑田 青三
ユーモアがあって、楽しい一句、とかんじました。
(佐藤 ポチ)
世界新マークした靴雲の峰 原田 洋子
世界新⇒トップ記録⇒最高記録と進んだイメージが「峰」で終結され、鬱陶しいこの季節を払拭し、清々しい気分を味わいました。
(原田 七惠)
一分間写真の奥は青葉闇 かわにし雄策
今まで気にしなかった写真機ですが、実は闇の奥に何かが入っているのですね。
(小坪亭ゑん)
あの人へ百万本の薔薇のトゲ 桑田 青三
この見事なパロディーにノックアウトされました。「棘」ではなく、敢えて「トゲ」にされた意図はなんだろうかと考え続けています。
(原田 洋子)
花嫁が舟で来る街あやめ咲く 山下 宗翆
潮来水郷を舟で行く情緒豊かな結婚式の景がパッと浮かびました。観光のスポット広告にしても良いくらいですね。
(小峰トミ子)
紫陽花から吐き出るあどけない夢 上薗 優
吐き出るの強い言葉に戸惑う。無常 移り気 浮気などの花言葉を持つ紫陽花の無心の夢はありのままを見て欲しいこと。擬人化して評価する人間への抗議を、吐くの言葉で表現した作者は紫陽花の化身だろうか。
(佐藤 花子)
青梅雨や二度反戦の署名する 金子うさぎ
季語青梅雨に、署名二度。人の世の醜い争いを鮮やかに、“二度”に強いの気持ちが伝わります。
(恵夢せとか)
紫陽花はまあるいからうつろうから 佐藤 ポチ
「まあるいから」「うつろうから」としたところが、余韻を残す形になっていて、心惹かれました。
(大西 惠)
直線の畝を斜めに梅雨滂沱 島田 啓子
「直線」と「斜め」の対比、そして「畝」と「梅雨滂沱」、梅雨の田んぼの風景が目に見えるような見事な描写だと思います。
(田 友作)
青梅雨や二度反戦の署名する 金子うさぎ
街頭で道行く人に署名をお願いしても、大多数の人は無視するか身を躱して通り過ぎます。
署名のお願いやビラ配りが日常の一部になっている筆者にとって、ビラを受け取ってくれる、まして進んで署名に応じて下さる方は筆者と思いを同じくする誠の親友のように思います。
木木の緑が鮮やかな中、二度も署名を下さった方と自分を包む青梅雨の瑞々しい快哉を叫ばずにはいられません。
(かわにし雄策)
終末は瓢箪鯰の顔で来る 山戸 則江
物事の終わりは掴みどころのないと。確かに終末につながっている事象は普通の人間には見つけることが難しい。
瓢箪鯰と表したところが面白い。
(桑田 青三)
白靴の先から朝の森ひらく 大西 惠
まず目にとび込む白と緑のコントラストがとても爽やか。その「靴の先」から「朝の森」がひらくという、何と斬新で躍動感のある表現、グッときます。
そして、その一歩は、また、人生の喜び、希望へとつながり読み手を誘う。わくわくする一句です。
(島 さくら)
梅雨晴間茅葺き屋根で待つCanon 小坪亭ゑん
俄カメラマンが梅雨晴れ間の古民家を狙っている様子がよく表れている。Canonの英字で高級カメラを持っているカメラマンを表現も良い。
【註】素人が高級カメラを持っているので、このカメラマンが定年退職後の俄カメラマンとわかる。
(福島 雪雫)
2024年浜風5月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
ロスタイム使えぬ余生花は葉に 小峰トミ子
老いと病に不安を持つ作者の胸中が、季語の「花は葉に」の風景・時の流れにより心理描写が卓逸に表現されている。
(内藤ちよみ様)
鯉のぼり海よりの風腹いっぱい 恵夢せとか
“腹いっぱい”がこだまして、鯉のぼりが更にでっかく、グングン空ゆく勢いが目に浮かびます。思い切り飛び上がって鯉のぼりの尾を握れたら、一緒に飛んで行けるでしょうか。
(桂花)
紅テントの怪人薫風に乗る 佐藤 ポチ
【紅テント】の怪人 唐十郎さんですね。薫風とは似つかわしくないような‥‥‥。そんな無頼漢と爽やかな季節にお別れです。
(島田 啓子)
競い合い自己主張する葱坊主 岩城 順子
自己主張をしている坊主はどの子かな?しっかりしていますね。まだまだ美味しいネギになりそうですよ。
(小坪亭ゑん)
帰省せず空を見ていた金釦 島 さくら
なんとなく好感。昔の大学生・青年の生真面目さ、清潔さ、を感じ、懐かしい気持ちになりました。
(佐藤 ポチ)
泰然とありしふる里桐の花 岩城 順子
季語が、これ程しっとりと詠み込まれている句に出会えて幸せです。季語の選び方にいつも悩む身にとっては、忘れられない句になりそうです。
(原田 洋子)
できたてのボタンホールから夏はじまる 大西 惠
小さなボタンホールから、未来を見渡すような広がりが楽しい。なにか物語が生まれるような。
(山戸 則江)
フレアーの乱れ乱れて春のオーロラ 福島 雪雫
春風のいたずらにフレアースカートが舞う様子を近く日本でも観られるらしいオーロラへと発想を跳ばした点に感服。『乱れ乱れ』のリフレインが効いていてオーロラがまざまざと見えてきました。
(原田 七惠)
分別に遠く牡丹の崩れおり かわにし雄策
昔、武家の奥方は死後も無様な姿を見せない為に、自害するときに両足の太ももを自ら縛ったという。牡丹は華麗で美しい花だが、散ると実に無様で咲いている時の品格も何もない、まさに「分別の遠く」の無様な有様で、「崩れおり」でその対照的な様を上手く読み込んだと思いました。
(田 友作)
抱きしめる浜昼顔の花言葉 田 友作
君を抱きしめて、浜昼顔の咲く浜で花言葉を思い出し、「将に絆だな」と実感している様が良く出ている。
(福島 雪雫)
菖蒲湯や日射しひとすじ足伸ばす 佐藤 ポチ
邪気を払い心身を清めると言う菖蒲湯。私の記憶の底に香りが残っている。湯殿にはまだ日射しがあり、作者は至福の時間を寛いでいる。ひとすじと足伸ばすが呼応する。生きている実感を感じさせる句だと思う。
(佐藤 花子)
命令に従っただけ罌粟の花 金子うさぎ
アヘンの原料となる罌粟、言われるがまま咲きました。どうすりゃいいのさ罌粟の花。
(桑田 青三)
鯉のぼり海よりの風腹いっぱい 恵夢せとか
中七の「海よりの風」に惹かれました。青く輝いて吹いて来る海の風を腹いっぱい吸い込んでいる鯉のぼりと一緒になって幸せな気分になりました。
(小峰トミ子)
KOBANに不在のカード花の冷え 恵夢せとか
世界共通語になったKOBANを頼りに行くと、不在カードが掛けてあり落胆する。そんな気持ちに花冷えが輪をかける。花の冷えがガッカリの度合を上げて共感できる句になっている。
(山下 宗翆)
弁当開け初めに映る豆ご飯 山下 宗翆
「大好きな豆ご飯!」
さや付のエンドウ豆だと香りも立つように思います。お弁当箱を開けた瞬間目に飛び込んで来る初夏の色。今すぐ食べたくなる素敵な一句でした。
(金子うさぎ)
天蓋は白無垢泰山木の花 小峰トミ子
清楚で清潔な詠み振りに惹かれました。大きな泰山木の花は純白の花で、香りも良く、高いところに咲くので天に掛けられた蓋(かさ)のようだと作者は感じられたのでしょう。それを白無垢の天蓋と表現されて説得力がありました。
(かわにし雄策)
洗いたての空気燥ぐこいのぼり 島田 啓子
こいのぼりが元気に空を泳いでいる姿を見て、こいのぼりが「燥いでいる」と捉えたところ、きれいな青空を「洗いたての空気」と表現したところに惹かれました。
5・7・5となっていないところも素敵。
(大西 惠)
紅テントの怪人薫風に乗る 佐藤 ポチ
紅テント、怪人、薫風この組合せは作品の人物像にぴったりでとても良い。5月4日の怪人を作者は何と薫風に乗せるのです。変幻自在、爽やかに現れては消える予感を漂わせて。
劇作家、唐十郎のエッセンスが凝縮された追悼の1句、心動かされました。
(島 さくら)
分別に遠く牡丹の崩れおり かわにし雄策
美しく咲き誇った、牡丹の散るさまを「分別に遠く」と表されたのが上手い!と思いました。
(恵夢せとか)
PDFファイルでご覧になるとか、印刷するにはこちら。コンビニプリントはこちら
到着順 ( )内は選者
晩春を呑み込む河馬の大欠伸 大西 惠
「呑み込む河馬の大欠伸」の大胆さと、晩春の大らかな雰囲気がよく出ている。イメージ、想像力の膨らまし方が巧み。
(内藤ちよみ様)
それぞれに何か言いたげ落椿 原田 洋子
華やかに咲いていた椿が一房ごとボタリボタリと落ちている。まだ咲いていたかったのに、どうして落ちたの、などと呟いているような落椿の情景を感じた。
(桑田 青三)
春愁や以下同文の表彰状 田 友作
名前を読み上げられた表彰状、頂いて嬉しい気持ちが【以下同文】ちょっと物悲しくなります。春愁がぴったりです。
(島田 啓子)
学校へ行く子行かぬ子葦の角 恵夢せとか
鋭く小さく天に向かっている葦の角。どんな子供にもあるはずの無限の可能性への祈りを感じる。
(山戸 則江)
米を研ぐ春の水音かきまぜて 小峰トミ子
日常茶飯事の中にも季節を感じられるとは俳句ならではですね‼️
気温差で水音が微妙に違うのでしょうけど、言葉で表現されて感動するようになる、マジックですね‼️
(山下 宗翆)
晩春を呑み込む河馬の大欠伸 大西 惠
私の行っている歯科は“カバ”がマスコット。歯医者さんは大忙し、でもカバは大欠伸するほどのんびりしてますね。
(小坪亭ゑん)
クローバーに転がり空を一人かな 濱本 寛
私のことではと。
わびしさに感動。
(星野 戎吾)
チューリップなにかを包み眠りけり 原田 七惠
チューリップって、そんなふうに見える時あるな〜、と思いました。
(佐藤 ポチ)
ロボ猫に迫られ子猫宙返り 島 さくら
今流のロボ猫という状況。「子猫が仲間と思って、じゃれて自らも宙返り」は実に光景が目に浮かぶ。
(福島 雪雫)
チューリップなにかを包み眠りけり 原田 七惠
童話の世界に入り込んだようです。
子供達に赤や黄色のチューリップを持たせて、ここには何が入っていると思う、と聞いてみたいです。きっと目をキラキラさせて答えてくれるでしょう。でも実際には、今そんな事が出来る国に住んでいる子供がどの位いるでしょうか?
(原田 洋子)
春の宵電車で爪を切る少女 金子うさぎ
日暮れてから爪を切るのは良くないと言われているのに、しかも電車の中で!なんと破廉恥な、と思いますが、これからこの少女はきっとデートなの、他人の眼なんかを気にしないの、ですよね。
(恵夢せとか)
米を研ぐ春の水音かきまぜて 小峰トミ子
しゃかしゃか、ざわわ。米粒たちの春歌で、研ぎ水ももう冷たくなくなりました。
(桂花)
猫の子の眼の中で暮らしたい 桑田 青三
目の中に入れても痛くないの更に上をいく「深い可愛さ」のこの句の表現は童話の絵本のようにメルヘンチックだ。
(國分 三德)
竹の秋着物に残る香りあり 恵夢せとか
暖かくなって、もう着ることのない和服をたたんでいる時、思い出の冬のある日の香りがほのかにする。外は黄色くなった竹の葉がはらはらりと散っている。そんな光景が浮かびました。
「竹」と「和服」、「残り香」と「散る竹の葉」の共鳴を感じる句です。
(田 友作)
誰も居ぬ野へ春愁を放り出す 岩城 順子
春愁とはまこと厄介なものですが、作者は、誰にも迷惑のかからない野に放り出したようですね。同感です。
(小峰トミ子)
「春は曙」心やさし巨星落つ 佐藤 ポチ
『枕草子』の冒頭「春はあけぼの」にかけて、力士 曙の逝去を悼む掲句に心惹かれる。角界は新しく事態が展開する時と捉えて"曙"と命名したのか。彼は期待に応えて横綱になった。そしてあけぼのの一番美しい春に旅立った。詩情ある句だと思う。
(佐藤 花子)
枕にも寿命があるよ亀の鳴く 桑田 青三
私の趣味のひとつに釣りが有り、数十回に一回得体のしれない魚が掛かる事が有ります。
「亀鳴く」も想像力を掻き立てられる季語です。枕に寿命「なるほど!そうよね」寿命と掛けた?季語との取り合わせが天晴れ!作者を知りたくて知りたくて ニコ♪
(金子うさぎ)
貰い手の初めに決まる三毛子猫 濱本 寛
どの子も可愛い。さて…、う~ん悩む…。
普段着の生活にドップリ浸かった我が家。やっぱり庶民代表の三毛にしよう‼️
(原田 七惠)
この仔猫虎になるのか朧月 原田 七惠
かわいがっている仔猫の頭を撫でながら、もしかしたらこの子は虎になってしまうのかしらと感じてしまった幻想的な朧月の宵の一コマ。
(大西 惠)
高遠城勝ち旗のごと桜咲く 星野 戎吾
地理が出て歴史が出て高遠の桜を偲んでいらっしゃるのは作者。高遠は作者の故郷なのでしょうか?江島生島事件で高遠に流された大奥女中の江島。相手の歌舞伎役者生島は男子禁制の大奥に入り江島と恋仲になりましたがバレて三宅島に遠流されました。
高遠は二人の禁断の愛を想起させる場所で、筆者もついつい心騒いでしまいました。
(かわにし雄策)
木々芽吹く逃げた光を捕まえに 大西 惠
冬の間、光と遠ざかっていた木々達が一斉に動き始めた。その一瞬一瞬を「逃げた光を捕まえに」とされた。まるで絵本の一ページに出会ったよう。春の生命のエネルギーに満ちたその描写はまた、読み手の心を掴み、心と響きあう。作者のまなざしが魅力的な一句です。
(島 さくら)
2024年浜風3月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
かぎろうや猫のしっぽにあるリズム 恵夢せとか
「かげろう」と「猫」の取り合わせだけでも想像がふくらむ。
猫の尾のリズムに注目したこの句、可笑しさ、俳諧味がある。
(内藤ちよみ様)
逍遥を続け霞の中に入る 岩城 順子
霞の季語は沢山有ります。心が通俗から離れて遊ぶ時、霞に溶け込んでしまうのでしょう。
(濱本 寛)
花ミモザ陰も地上絵となり揺るる 小峰トミ子
上から下から右から左からミモザ!ミモザ美が丸ごと詰まった句ですね。指先に、花の可憐な揺れが感じられるようです。
(桂花)
答え見つからず白菜ざくと割る 岩城 順子
でかい白菜を大きな包丁でざくりの二分割すれば、答えが飛び出すかもしれません。
(桑田 青三)
春うらら付箋だらけのガイド本 原田 七惠
やっと気持ちの良い季節になって、行ってみたい所がいっぱい。旅のガイド本を手に取る毎に付箋が増えていく、よく解ります。
(島田 啓子)
朝刊の原発大文字東北忌 金子うさぎ
今まで使われなかった「東北忌」は、季語として理解されるでしょう。
(小坪亭ゑん)
春愉し極太ペンの葉書かな 桑田 青三
春を迎えた嬉しさが『極太ペンの葉書』に凝縮され、こちらまで幸せな気持ちにしてくれます。
(原田 七惠)
飛んでふらこことびきり自由で孤独 島 さくら
放課後の運動場を思いしました。思い切り大きく漕いで自分だけの空!ひっくり返しましょう!
(恵夢せとか)
春愉し極太ペンの葉書かな 桑田 青三
「極太ペン」という言葉で、春の楽しさが真っすぐに伝わってきました。この葉書、私も読みたい!と思いました。
(佐藤 ポチ)
大叔母の色なき色気春ショール 原田 洋子
高齢の方の立ち居振舞いに日本女性の色気を感じることがあります。妖艶ではなく品とか粋でしょうか、ショールもさりげなく春色なのでしょうね。
(山下 宗翆)
穴を出て蛇直線を試したる 國分 三德
この蛇は、たっぷりと眠った後、ふと真っ直ぐに歩いて見ようと思ったのでしょうか? 進化の一歩って、もしかしたら、こんなことから始まるのかも知れませんね。楽しいです。
(原田 洋子)
ワンルーム駅近五分初燕 桑田 青三
駅に五分というワンルームマンションの「売り」に、まさか燕が入居してくるとは考えなかった。そんな意外性をよくも句にしてくれました。
(國分 三德)
絵葉書に添える一句や春炬燵 岩城 順子
春炬燵に惹かれました。
暖冬の昨今、3月は炬燵をしまう時期で、その意味での「春炬燵」なのかも知れませんが、この句の「春炬燵」は、まだ雪が降る北陸や東北地方の寒い地方でのことではないかと読みました。
そのような地方に旅行に行って、泊まった宿には炬燵があって、そこで絵葉書を書いている光景が目に浮かびます。
(田 友作)
大叔母の色なき色気春ショール 原田 洋子
大叔母、祖父母の姉妹と捉えた。かなり高齢の女性、句会で鈴木真砂女さんの話題が出たが、私の身近にも白髪の美しい背筋のしゃんとした、凛とした佇まいの方がいらして重ねた。色なき色気の表現が正にそんな感じで、菩薩のごとき色気、春ショールにそんな軽やかで淡い色調を感じ美しい句だと思い取った。
(佐藤 花子)
子の許へ路地の明るき春の雨 星野 戎吾
情景がそのまま目に浮かびます。子の許は行きなれた道で明るく良く見える。春雨が降ろうが心はルンルン気分。
(福島 雪雫)
家計簿の裏金発覚桜もち 原田 洋子
国の裏金問題に列島は震えている昨今、家計簿からも発覚したが、安心して桜もちを食べている姿が見える。国も一刻も早く安堵したいものだ。
(小峰トミ子)
蹲にひさかたの鳥水温む 山下 宗翆
美しい和風庭園でしょうね。全体の句風は穏やかで凜と気品があります。現代俳句でも伝統俳句でも読み手の心を捉えてしまう景色と春の息吹が感じられます。何度高唱しても新鮮な魅力のある作品と思います。
(かわにし雄策)
幸福な王子に出逢うな初燕 佐藤 ポチ
街の広場に立つ王子像と燕との博愛と悲壮に満ちた物語。掲句はその燕を初燕として詠まれた。それは初燕にとってちょっと酷な出逢い。中句の強い命令形の表現に作者の優しさがにじむ。
兼題から「幸福な王子」への発想と視点に想像力が深まり心惹かれました。
(島 さくら)
春の鹿ジビエ料理に葉書出す 小坪亭ゑん
春の鹿がジビエ(狩猟の対象となる野生の鳥獣の肉)料理を出すレストランに(またはシェフに)葉書を出すという発想のユニークさに惹かれました。「今年の肉は味が良いのでご贔屓に」とか、「今後はもうジビエ料理はやめてください」とかだったのでしょうか。
(大西 惠)
2024年浜風2月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
春芝居よき歯並びの髑髏 金子うさぎ
春芝居の一幕。「よき歯並びの髑髏」と、ここまで表記したことにより、常識を逆手にとった面白さがある。自在さに好感。
(内藤ちよみ様)
熱燗のちょっと黙する俳句談 佐藤 花子
気の合う俳句仲間二人で、熱燗を囲んで俳句談義に浸っている。盃を唇に近づけ、はっとその熱さに話が途絶え、その瞬間、話のふくらみを思いついた。俳句仲間の小粋な景色が見えます。
(桑田 青三)
いざ春とそそり立つ海老上天丼 島田 啓子
ポジティブ潔い句に、カリッと揚げ立ての春が香ってくるようです!
(桂花)
絵天井ガバリと龍の目二ン月 島 さくら
『二ン月』の寒々としたお寺の様子と『目を剥いた龍』が共鳴しあった、スケールの大きさを詠じたところに魅力を感じました。
(原田 七惠)
ものごとは裏表あり海苔焙る 桑田 青三
物事に裏表あるのはその通りですが、そこへ焙った海苔を取り合わせるとは脱帽です。記憶に残る一句となりました。
(小峰トミ子)
忘れるってことが大切冬木の芽 大西 惠
忘れることも大切なんですよね。忘れられても忘れられても春を目指し、木の芽が出てきます。立派です。
(島田 啓子)
春節の賑わう手相占い 上薗 優
下五の占いは占い師が良いのではないかと。
田舎では正月に手相占いが盛んでした。私も新潟県佐渡市に疎開している6歳の時、母の実家に行くと東京の高島易断が来ていた。私の手相を見て驚きの声を挙げた。
「この子は升掛の筋。豊臣秀吉の天下取りの手相である」と。聞いて喜んだ親は、天才と思い込んで進学を楽しみに。しかし、【天才も二十歳過ぎればただの人】のことわざどおりに。
(星野 戎吾)
一羽だけいる白鳥のものがたり 聖木 翔人
この白鳥さんの物語を、私も聞きたい!と思いました。
(佐藤 ポチ)
天井の龍が鳴く寺冴返る 山下 宗翆
長野小布施で見た北斎の龍を思い出しました。「龍が鳴く」の躍動感と「冴え返る」のしんとした対比が好きです。 (山戸 則江)
海苔食んで内からあふれ出す宇宙 山戸 則江
おなかから宇宙まで想像できる海苔があるんですね!!️
ほんとうに美味しい海苔を食べてみたいです。
(小坪亭ゑん)
一羽だけいる白鳥のものがたり 聖木 翔人
九十句を生きつ戻りつ、何故かこの句から目が離せません。作者の意図は図りしれない程大きくて、突き放されたように感じますが、興味が尽きません。
(原田 洋子)
梅一輪ふわりそわそわ赤らめり 佐藤 花子
作者は梅の開花を詠んだのでしょうね。私は初恋の句だと思いました。好きな人の前に出ると何故か落ち着かず、半分宙に浮いているようで、頬がポーッと赤くなっていく。乙女の初恋そのものだと感じました。
(山下 宗翆)
二月や背伸びをしても届かない 國分 三德
何に届かないのだろうか。鴨居のフック、棚の上、天井、月、星、それとも目に見えないもの、目標とか平和への願いとか。
掲句は春の兆しへの期待と現実の不安がないまぜになり、私は不条理な感覚に捉われた。
(佐藤 花子)
いやですよ一緒の墓は春炬燵 桑田 青三
「嫌ですよぉ~。」一緒の墓は、「うふふのフ~笑」とあって欲しい。
**
句会で雄策さんが見事に「季語の春炬燵に救われてるね」とニッコリされた。
まぁ、私にとって深い問題ですなぁ…笑
親戚のお葬式にて○○宗僧侶の入場のアナウンス。
小さい頃から、慣れ親しんだ○○宗とは違うのね。
不届きにも そんな事を考えながら座っておりました。
合掌。。
(金子うさぎ)
春の風がばとハグせし退院日 桑田 青三
やっと迎えた待望の退院日、外は既に春の景色。大きく手を広げて柔らかい春風の感触を味わう作者。
退院お目でとうございます。作者のハグはいつも柔らかいのです。
(かわにし雄策)
戻り来し終の住処の梅一凛 星野 戎吾
「東風吹かば匂いおこせよ梅の花」を連想させる句ですが、内容は全く逆で「戻り来し」とあるように、終の住み家に戻って来た庭先に昔のように梅が咲いたという趣のある句だととらえました。思い出の家であり、思い出の庭であろうところに、昔と変わらぬ梅が咲き香っていて思いに耽っている様が伝わります。
(田 友作)
天井桟敷は春のどよめき 大西 惠
仏映画史上に残る名作が句の世界に立ち上がりました。19世紀中半のパリを舞台に織りなす切ない恋を絡めた人間模様を「春のどよめき」に見事に凝縮。この7文字の中にドラマの深さがボリューム感をもって上手く表現されました。「天井桟敷」に込められた人生の明暗。忘れられない1句となりそうです。
(島 さくら)
大森の埋め立てられし海苔の粗朶 佐藤 花子
江戸時代に始まった大森の海苔は「御前海苔」と呼ばれるほどの最上品だったとのこと。以後ずっと盛んに行われていた海苔養殖だが1960年代に大森の地が埋め立てられることとなり、海苔漁従事者は漁業権を放棄。海苔養殖は終わりを告げた。
調べていくうちに、2007年に大森の人工海浜で海苔養殖が始められ、2021年には150枚分の海苔が採れたという記事を見つけた。やむを得ず終了した(終了させられた)海苔の養殖が蘇ったのだ。
掲句はかつて盛んだった海苔漁と海苔粗朶に想いを馳せ、深い感慨を覚えてできたのではないかと思いました。
(大西 惠)
いざ春とそそり立つ海老上天丼 島田 啓子
大きな海老が、しっかり美味しそうで、いただきました。そそり立つが言い得て、面白いです。
(恵夢せとか)
足音や少しおぼろな月の夜 佐藤 花子
朧月のように彼の足音がそぉーと聞こえて来る月の夜。なんとロマンチックなのだろう。
(福島 雪雫)
2024年浜風1月句会選者特選の感想
到着順( )内は選者
雪催い北の輓馬に火の匂い かわにし雄策
「北の輓馬に火の匂い」から、私は困難を極めた北海道の開拓時代を想像した。歴史的なリアリティがあり、作者の鋭い感性が伺える。季語の「雪催い」と、作品の呼吸の間の取り方も妙。
(内藤ちよみ様)
観覧車今年の竜に近づきぬ 岩城 順子
ファンタスティックなアニメを観ている感じ。こんな観覧車があれば乗ってみたい。ところで季語はなんでしょうか。
(桑田 青三)
手の皺は女の歴史寒卵 岩城 順子
手のひらの皺が気になって、時々イヤになります。女の歴史と思えば良いのですね。
(島田 啓子)
初日の出初くちつけの観覧車 濱本 寛
初日の出初くちつけと初の韻を踏み、観覧車でのくちつけはその後のめでたしへと繋がり青春を彷彿させられる一句です。
(小峰トミ子)
主役食う白き潤肌千枚漬 山下 宗翆
「主役食う」の措辞が素晴らしい。
昔、日本料理店をしていた時、赤坂のTBS会館にあった赤坂店で京都の「近為」の千枚漬け、柚子こぼしなどの京漬物を仕入れていました。其のおいしさに惚れて、店頭の寿司、寿司弁当のカウンターで販売しました。今では考えられませんがTBS会館があったころは会館に自由に出入りができ、そのまま本館にチェック無しで出入できました。会館の1Fに店が有ったので、テレビ出演者もお客様さんでした。
(星野 戎吾)
観覧車星座になれず地に還る かわにし雄策
一巡りする間の観覧車の気持ち!考えたこともありませんでした。観覧車が愛おしくさえなりました。
(桂 花)
波の花無念の人に言葉なし 恵夢せとか
合掌。
(佐藤 ポチ)
有りの儘に生きてごらん雪男 上薗 優
自分のことを言われていて感動しました。
(福島 雪雫)
海山の恵みの能登よ雪割草 濱本 寛
能登地方の大災害の状況が明らかになるにつれ、誰もが自分にも何か出来るのでは、と思っています。そんな中、この静かな句を目にしてはっとさせられました。能登の自然の豊かさをいつまでも忘れない事が逆の意味での応援ではないかと、、、。感服しました。
(原田 洋子)
ひたに葱刻めりしゃべらなくっていい 岩城 順子
恋人と喧嘩したのかな。台所で後悔してるのか、気を紛らわす為に細かく刻む葱は、涙も誘っていますね。
(恵夢せとか)
闇市の母の背負し寒卵 佐藤 花子
本当は子供にいちばん食べさせたい寒卵をお母さんは闇市へ売りに行った。敗戦直後の日本のお母さんを寒卵でしっかり表現できた。
(國分 三德)
呼び鈴の音をのばして年始客 島田 啓子
祖父母に会いたい!お年玉目当てか。呼び鈴に年賀の寿ぎと、音をのばしてに期待と笑顔の溢れる景が見える。
(佐藤 花子)
手袋は今日は片方だけでいい 大西 惠
手袋は今日は
「は」が続くな~。って読みながら
「今日は片方だけ」に惹かれ
被災地のボランティア活動?
もしや、その片方で物騒な物を持ってる?
はたまた筋トレかなぁ。
句会ライヴで聞く真相は
「手を繋ぐ為
今日は片方なのよ~♪」
と
こいつは春から~
めでたし愛でたし。
(金子うさぎ)
小さな支局最前線の雪の夜 島 さくら
金沢の能登半島にあるかもしれない通信社または新聞社の支局を想像しました。外は大雪の冷え込む夜。通信員は夜を徹して現地の取材活動です。本当にご苦労様と言いたいです。
支局が初めて俳句に登場したのはこの俳句かとも思います。
(かわにし雄策)
厳冬やほっこりと病床ベッド 桑田 青三
病床とベッドを併せて強調された下句は擬人化され上句と重なっているように読み取った。そして「ほっこりと」が中句にあることで、病床の日々にふと出会う温もりが全体をふわりと包み込んでいる。
厳しさの中の安らぎが大きく表現された心打つ1句。
(島 さくら)
この祈りあの光届くのか冬 佐藤 ポチ
難しい言葉を使っていませんが、作者の被災された方々への強い思いが感じられる一句です。最後の「冬」は神への祈りの言葉のように思えます。
(大西 惠)
鮟鱇の美醜骨まで愛してる かわにし雄策
鮟鱇の美醜が実に的を得ている。姿や吊し切りの過程のグロテスクさと調理後の美味しさ。作者はぶつ切りされた骨の身までしゃぶりつくのでしょうね。
(山下 宗翆)
晴れた日の風の硬さよ寒に入る 小峰トミ子
冬の風は確かに「硬い」です。中七の『風の硬さよ』、新鮮な表現に心が動きました。
(原田 七惠)
小さな支局最前線の雪の夜 島 さくら
雪が降りしきる夜、はるか遠くにかすかに灯りがともる。それは最前線の支局に詰めて夜を徹して原稿を送っている記者の証。その光景が目に浮かぶような句です。
(田 友作)
2023年浜風12月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
木守柚子真っ青な空引き寄せて 原田 七惠
今年はどこのお宅の柚子も豊作。木守柿ならぬ木守柚子、真っ青な冬空に映えますね。
(島田 啓子)
今はただ眠りたいだけ梟鳴く 山戸 則江
眠りたいのは梟さんか、作者か? 家の中にいるのか、夜の森の中か? 森なら不穏。等等いろいろ想像させられ、面白いとおもいました。
(佐藤 ポチ)
鯛焼のどこを食べても母おらず 金子うさぎ
鯛焼には子供の頃の母の懐かしさが一杯つまっている。しかし今はどこにもお母さんは見つからない。母への思慕。
(國分 三德)
鯛焼のどこを食べても母おらず 金子うさぎ
若い時の思い出。鯛焼と母親の組み合わせが良い。
鯛焼は我々の年代には懐かしいですね。
(星野 戎吾)
異種の鴨湖にあふれて争わず 聖木 翔人
厳しい寒さのなか、水鳥たちは互いに身を寄せ合って穏やかに過ごしている。それに比べ人間は世界中で争っていて、なんと愚かなことでしょう。
(山下 宗翆)
木守柚子真っ青な空引き寄せて 原田 七惠
柚子の黄色、葉の緑、空の青が目に浮かぶような句ですね。私も良く見る光景ですが何と表現したら良いのかなと思っていたのですが、「真っ青な空引き寄せて」は見事な表現ですね。
(田 友作)
年の瀬や諸行無常の慟哭 田 友作
慟哭。閉じ込めていた私の思いが堰を切る。ウクライナへの思い。私達を忘れないで欲しいの言葉にひたすら戦況を見つめて来た。無力な私にはそれしか出来ない。諸行無常の慟哭だ。
(佐藤 花子)
冬の虹宝石石鹸使い初め 小坪亭ゑん
グリセリンと色素があれば簡単に自宅で作れるそうです。多分、作者も手作りの宝石石鹸を作られて、その七色を虹に例えられていらっしゃるのだと思いました。
日常生活の中で発見した小さな、しかし豊かで新鮮な感動が伝わってきました。
(かわにし雄策)
来たばかりと言いし君の手冷たくて 佐藤 ポチ
澄んだラブソングを聴いているような、切なくそして優しい気持ちになりました。
(桂花)
除夜の鐘三途の川で聞く破目に 國分 三德
選の最中この一句を声に出し読んでみました。
「おや~。」
「地獄八景亡者戯」上方落語の大作。
人間国宝だった桂米朝師匠の十八番! 友達から貰った鯖が当たりあの世へ旅立つ喜六。「食べ残した戸棚の鯖が心残りデンねん~。」
皆さま、年末年始 心残りの無きように!(笑)
滑稽でおおらかで大好きな一句です!(^^)
(金子うさぎ)
冬立つや大邸宅を毀つ音 恵夢せとか
真冬にこの大邸宅に一体何があったのでしょうか。
あれこれ想像が膨らみます。でも今は、大政党の最大派閥の崩壊の様を鋭く詠まれたのではないかと思い始めました。
(原田 洋子)
明日より冬眠します悪しからず 原田 洋子
人生に於いて動物たちの冬眠を羨ましく思う事、度々。掲句は見事に詠み手をその世界へ瞬間移動。ワクワクする様な自由な発想と「悪しからず」のユーモアのある潔い表現に心動かされる一句です。
(島 さくら)
冬の夜石鹸カタカタ「神田川」 原田 洋子
人生のUターンも過ぎ、怖いものなしの今、『同棲』をしてみたかったと、率直に思います。憧れで選びました。
(原田 七惠)
石鹸と等しき重さ海鼠買う 山戸 則江
石鹸と海鼠の取り合わせに驚きました。一体なぜこの2つが・・・?と。石鹸を買い海鼠を買ったとき「石鹸と同じ重さなんだ」と感じたということでしょうか。ただ、それだけではしっくりこない・・・けどよくわからないままです。
解釈に困って戯れに「石鹸 海鼠」で検索してみたところ「能登の赤なまこ石けん」がヒット‼ 赤海鼠のエキス配合でお肌に良いものだそうです。
(大西 惠)
2023年浜風11月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
黄のコスモス少し外向く癖のあり 恵夢せとか
意欲的な句。一味ちがった感性に新しさを感じます。
外来種「黄のコスモス」だから、納得させられました。
(内藤ちよみ様)
火を抱いて平和を抱いて英子の忌 金子うさぎ
英子さんの生き様、人柄を見事に表していると思い、断然特選としました。
今も天国で「火を抱いて平和を抱いて」地球の惨状を見つめていることでしょう。
(田 友作)
牡蠣の蓋秘仏のごとく開きたり 桑田 青三
牡蠣のからを開ける時の気持ちが、秘仏の扉を開け、それを見学しようとする時のワクワクした気持ちと良く似ている。いずれも、どんな物なのか、期待して。
(長谷川 博)
西暦と年号の間にすきま風 原田 洋子
提出する関係先書類によって、西暦・和暦の使い分け。いつまでたっても統一されない日本。すきま風は吹き続きます。
(島田 啓子)
むざむざと子が殺される冬銀河 聖木 翔人
あの世界的に発信された映像より、冬銀河に発想を飛ばしたのは秀逸。「むざむざと」いう上五は惨たらしい状況を伝える力のある措辞。
「子が」の「が」の助詞は「の」か「は」に変えた方が良いと思います。
(星野 戎吾)
抽斗の小石を戻し秋灯下 原田 七惠
小石を眺めれば蘇る思い出。抽斗は、作者の心の奥底に通じるような。小石がそこにあることが、心の支えになるようなこともある。
(山戸 則江)
静けさを破る切っ先石蕗の花 原田 七惠
寒空の中、石蕗の花の凛とした佇まいが見えるようです。画のような美しい句だと思いました。
(桂花)
朝露に鼻光らして犬ご帰館 佐藤 ポチ
朝露の美しさと犬の愛らしさに感動しました!ご帰館したワンちゃんに一度会いたいですね。
(小坪亭ゑん)
京急線ガンガン鳴らし冬来る 上薗 優
「ガンガン」が魅力的。京急線、というのも、実感あり。
(佐藤 ポチ)
世の真理閉じ込めている芋の露 山戸 則江
子供の頃に芋の露をよく見ました。里芋の大きな葉の窪にゆらゆらしていた光の玉にはそんなに大事なものが入っていたのですね。遊んだ後には殆ど溢してしまったのですが、、、
(原田 洋子)
誤った道へ誘う烏瓜 山戸 則江
赤い烏瓜がぶら下がっている姿から「誤った道」を連想した感性には恐れ入りました。烏瓜にはなんとなく誘う力があります。
(國分 三德)
煩悩のふっと眩しき懸け大根 かわにし雄策
煩悩で選びました!
最近は畑が身近に有り、野菜の観察までしてしまいます(笑)
煮ても焼いてもオロしても…
赤城颪で育つ真っ白な大根が恋しいです。
(金子うさぎ)
冬茜海の結び目ほどけゆく 島 さくら
冬の海、日本海を思う。母の故郷の海、人を寄せ付けない暗色。茜の空に癒され、ゆっくりと色を変えていく。海の結び目と表現する作者の感性に脱帽。
(佐藤 花子)
時計屋の隅の短針冬の月 大西 惠
煌煌と月に照らされた時計屋さん、ショーウインドーはカーテンに閉ざされている。そのカーテンの片隅が少し開いており、差し込む月光に壁掛け時計の短針がフッと目に留まった。ドラマの一場面に浸ったような情感に襲われた。
(桑田 青三)
京急線ガンガン鳴らし冬来る 上薗 優
京浜急行線弘明寺駅近くに住んでいる身としてはストンと胸に落ちた一句です。数分以内の間隔で上り下りが踏切を通過するときは正に句の通り。季節はやっぱり冬でしょうね。
(かわにし雄策)
露の玉覗けば見える未来の死 長谷川 博
透明な露の玉で水晶占いが連想される。占いで死は禁句、人は当然いつか死ぬのだから。でも露はロシアの漢字。そこからロシアの陰りが見えて、そのうち滅亡するということをいっているのかもと思えてきて、面白い句だと感じました。
(山下 宗翆)
座禅中星をも落とす大くさめ 星野 戎吾
ことによって座禅中に大くさめとは不謹慎と思われてもしかたのないこと。しかしその後の座禅はどうなったのか知りたいです。
(小峰トミ子)
西暦と年号の間にすきま風 原田 洋子
何年前か?を思い起こす時、年号が3ケとなり、私は四苦八苦してます。西暦と年号間の乖離をうまく表現されていると思いました。
(原田 七惠)
霧の中また霧の中夢の中 桑田 青三
流れ抜群、そして面白い。
(福島 雪雫)
世の真理閉じ込めている芋の露 山戸 則江
生命力に満ちた芋の葉に光る露の雫。一滴一滴のそれは落ちては消え、また結ぶ生滅のくり返し。その様子を世の、仏教の真理「無常」にたとえて表現された。しみじみとした時間に浸る一句。
(島 さくら)
コンパクト閉じて独りの夜長かな 田 友作
コンパクトをのぞく女性の静かな風情と、美しさへの男性からの讃歌だと感じました。
(恵夢せとか)
火を抱いて平和を抱いて英子の忌 金子うさぎ
英子さんの第二句集のタイトル「火を抱いて」と英子さんの心の中の「平和を抱いて」という気持ちとを組み合わせて、とてもいい句となっていると思いました。うまく作ったなぁと。思い切って「英子の忌」としたこともよかったと思います。今月21日は英子さんの三回忌。英子さんを知る私たちには、うんうんと頷けることだったのではないでしょうか。
(大西 惠)
2023年浜風10月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
ちょい悪の人生でした唐辛子 桑田 青三
「ちょい悪の人生」と、悪ぶっていられるが、逆に余裕に満ちた作者が感じられます。飛躍と省略に富み、面白い作品となっています。
(内藤ちよみ様)
露草や何が何でもブルーです 桑田 青三
露草のブルー大好きです。悪びれない、やましいところがない、潔い色。とにかくブルーなんです。
(島田 啓子)
やぁやぁと腕を広げる藪枯らし 大西 惠
はびこる藪枯らしの様子が面白く表現されている。人の好さそうな藪枯らしですが、最後は至る所の草木に覆いかぶさり、抑え込んでしまう。社会の姿を見ているようです。人間みんな腕に抱かれたいんだ。
(桑田 青三)
赤蜻蛉仲間あつまる過疎の村 島 さくら
若い人たちが都会に出てしまい、過疎の村に。だからこそ、赤蜻蛉たちが安全だと、たくさん集まってくる。そんな情景が面白い。
(長谷川博)
龍胆と相性のよいガラスペン 大西 惠
今ガラスペンが人気とか。しかも、色はとてもカラフル。龍胆の青紫色を思い浮かべると描いてみたくなります。お洒落な句ですね。
(原田 洋子)
本離れ店をたたんだ文化の日 長谷川 博
そうですね。本離れのスピードは益々速く。AIの進行も早まりそう。明治節は死語に。文化の日もそれに近づくか。「俳句修行とパーキンソン病」の本を出版して感じました。
(星野 戎吾)
銀杏のレンチン爆破小事善し 原田 七惠
コロナ前まで
妹経由で御堂筋の銀杏が届いていました。
この句の通り
レンチンで「パン」となったら出来上がり。
「パンパン」と2回鳴ったら出来すぎ?…。
らしいです。
短い秋を楽しめる一句でした。
(金子うさぎ)
月までの片道切符に長い列 原田 洋子
月まで行けるようになるのは、もうすぐ。地球に戻らず、月への片道キップ。その方が好きです。
(小坪亭ゑん)
風と風つなぎつなげる芒原 島田 啓子
なんとなく好きです。
(佐藤 ポチ)
秋日和海までの距離目で測る 岩城 順子
一読、目の前に海の広がりを感じ、心が晴れるような気持ちになりました。
(山戸 則江)
貞淑だなんて水蜜桃の種 かわにし雄策
果肉は芳しく水のしたたるような水蜜桃の、種にフォーカスした、感性をくすぐられる一句です。
(恵夢せとか)
やぁやぁと腕を広げる藪枯らし 大西 惠
いかにも親しげに近寄ってくるが、何か怪しげでいつの間にか身動きとれなくなってしまった。そんな感じ。
(國分 三德)
今年また今年の記憶烏瓜 山戸 則江
「今年また今年の記憶」とは何か作者の意図は分かりませんが、毎年決まって朱色に染まる烏瓜は、また冬が来るなと強い印象を与えるので、なんとなく「今年の記憶」が良いなと思いました。
(田 友作)
老いてなほ青き未来や新松子 星野 戎吾
老いに追いつけないでいる私は、時の速さに思考停止状態だった。掲句の"青き未来"に出会い、死ぬ時まで未来があり、それも"青き"なのだ。心の持ち様、新松子の季語が効いている。
(佐藤 花子)
赤い羽根いくつ付けたら鳩になる 島 さくら
助け合いの精神からはじまった赤い羽根共同募金。平和の象徴としての「鳩」。赤い羽根を一体いくつ付けたら「鳩(平和)」になるのだろうか? いや、いくつ付けたってそんなことだけで「鳩」になることはないのだ。と反語的に解釈しました。
平和・・・まずは国が全力で進めていかなくては!ね。
(大西 惠)
雲抜けて立山平の大花野 濱本 寛
雲海を抜けて突然広がる立山平のお花畑が目に見える様。この一句で広大な情景が見えてきます。
(福島 雪雫)
本離れ店をたたんだ文化の日 長谷川 博
ぽつぽつと書店が消えて行く昨今、この先の日本はどうなるのか危惧してしまいます。季語の文化の日がピッタリの一句と思います。
(小峰トミ子)
とんがらし村にアジアの嫁多し 金子うさぎ
世相を衝いた1句だと思いました、多分このような句は現代句の中でも珍しいと思います。益々辛い唐辛子が開発され栽培されている日本の農家に嫁いだアジアのお嫁さんたちのご多幸をお祈りしたくなりました。
(かわにし雄策)
銀杏のレンチン爆破小事善し 原田 七惠
銀杏のレンチンの爆ぜる様子を「爆破」と表現された。瞬間、読み手の意識は今の悲惨な世界の映像へ移動。
そして下句で再び銀杏へ。「小事善し」は事の重大さを逆に浮き上がらせ、巧みな取り合わせと思う。
(島 さくら)
待宵や猫は窓辺で顔洗い 佐藤 ポチ
清々しく澄んだ秋の夜空。明日は満月という月に向かって、猫が顔をナデナデ。絵が立ち上がった句で、童話の世界のようです。更に『猫』は『私』で、訪ね来る彼を待っている二重構造を狙っているのではないでしょうか?季語を『待宵』とした点が心憎いです。
(原田 七惠)
本離れ店をたたんだ文化の日 長谷川 博
デジタル本が出てきて紙の本の購入が減り、皮肉にも文化の日に、身近な文化発信の本屋が閉店した。AIが人間の生活に深く入り込んだとき、一体どうなるのか、不安が過る。
デジタル社会への問題提起をした句で、上手だなと感じた。
(山下 宗翆)
熟れいそぐ葡萄に深き水の音 島 さくら
爆発しそうなほどの葡萄の豊潤さと、それを包み込む水の手触りさえ感じられ、とても美しい句だと思いました。
(桂花)
2023年浜風9月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
八月のバックミラーで見る昭和 かわにし雄策
バックミラーの扱いが、俳句として揺るぎない。
ミラーの背後の表記に含蓄があり、詩的に昇華されている。
(内藤ちよみ様)
病む人へ書きなづむ文虫の声 濱本 寛
「あるある光景」ですが「書きなづむ」と「虫の声」の対比がいいですね。
「虫の声」は病む人を連想させたのか、それとも早くかけとせかされたのか?
(田 友作)
校庭の声去りてなおカンナ燃ゆ 原田 七惠
学校の昼間は、子供たちの声が響きあい、騒がしい。しかし、放課後、子供たちが家に帰ると、途端に静けさが。そのギャップが激しい。しかし、真っ赤なカンナの花は、いつも燃えて咲いている。
正反対のものと、変わらぬものの対比が良いと思いました。
(長谷川 博)
敏感になる五指秋気澄みにけり 岩城 順子
仏像の手指の形、印相は仏様の心です。秋気澄む。指も繊細に語り出す。片手で弾くピアニストがおられます。豊かな指の動きは官能的で無限世界です。
(濱本 寛)
案山子の夜雀の朝を待ちわびる 國分 三德
まず素直に浮かんだ光景は何とも可愛いお伽噺の一場面、それで気に入ったのだが、秋に実る米を雀から守る案山子とその米を啄む雀は敵同士、ライバルと考えたら、互いに認め合いながら戦うアスリートの心情も浮かんできた。
俳句の奥深さを感じた句です。
(山下 宗翆)
新涼やミシンに向かいただ嬉し 原田 七惠
涼しくなって、手仕事をしたくなりミシン向かう、それだけで嬉しい。廊下にあった祖母の足踏みシンガーミシン懐かしいです。
(島田 啓子)
想定外幹線道路に秋出水 山下 宗翆
そうですね。この頃の線状降水帯はすさまじいですね。想定外のことはしばしばおこります。日本は治水工事は大事。それをコンクリートよさようならといってダム工事を止めさせた政党がありましたね。
(星野 戎吾)
校庭の声去りてなおカンナ燃ゆ 原田 七惠
私事ですが、13日(水)、熊谷へ引っ越しました。マンションの真ん前が、偏差値64の女子高! 荷解きに飽きてベランダを眺めていると、暑い熊谷に(カンナが燃えていて欲しい!) &爽やかなテニス部やソフトボール部のデカイ声。素敵です!
(金子うさぎ)
やっと来た九月平穏無事が良い 島田 啓子
この夏は殊の外酷暑続きで、九月が来るのが待ち遠しかったが、今日、コロナもなく平穏無事に過ごせることが幸せであることを実感しています。
(小峰トミ子)
ザクロ熟れ人体模型に光射す 田 友作
石榴は図書室で読んだり、美術室で描いたりするイメージです。ザクロになると科学室がピッタリですね。
(小坪亭ゑん)
ザクロ熟れ人体模型に光射す 田 友作
薄暗い部屋の隅にある人体模型と季語ザクロ、特に熟れたザクロの実、との組合せの妙に感心しました。
人間のエゴにより地球がついに「沸騰の時代」に入った今、この光がノアの方舟であって欲しいと思います。
(原田 洋子)
ザクロ熟れ人体模型に光射す 田 友作
ザクロが熟れ割れた卑猥な中身を見ると、人体解剖図の露わになったハラワタに光が差し込んでいるように見える。そんな情景を素直に表現したものでしょうか。
(桑田 青三)
案山子の夜雀の朝を待ちわびる 國分 三德
山田の中の一本足の案山子…朝から晩までただ立ち通し…と童謡にありますが、夜の案山子など想像もしていませんでした。
夜の孤独、恐れを案山子に重ねて命あるものとして捉えた作者の感性に感動です。
そして雀の朝としたことで共生、ほのぼのとした幸せな気持ちになりました。
(佐藤 花子)
秋澄むや上棟銭は空に舞ふ 星野 戎吾
今では滅多にお目にかかれない棟上げ式の様子を活写されてとても懐かしく感じました。子供時代に棟上げの家の前で投げられるお菓子を子供たちが競って取り合っていたのを思い出します。
季節と情景がマッチした作品と思います。
(かわにし雄策)
こおろぎの磨く静寂に大の字寝 原田 七惠
こおろぎの声だけが静かな夜に響いていることを、こおろぎの声が静寂を「磨く」と表現されたことに魅了されました。静寂はますます研ぎ澄まされて静けさを深めていくようです。
(大西 惠)
玉手箱抱えうろうろ敬老日 國分 三德
乙姫様からの玉手箱から「転じて、容易に人に明かさぬ大切なもの」と辞書に有りました。 宝くじかなぁ、もしやして一生秘めるつもりだった道ならぬ恋のことかしら…。やっぱり話しておきたい、ということでしょうか?
秘めた恋話を聴きますよ。聴かせてください。
(原田 七惠)
案山子の夜雀の朝を待ちわびる 國分 三德
案山子の気持ち。まるで1冊の絵本に出会ったよう、実は雀は大の仲良し。「〇〇の夜〇〇の朝」の表現は案山子の闇の寂しさと待つ嬉しさを大きく包む。人生をも重ねた心象風景と受け取り温かい読後感に浸る一句。
(島 さくら)
満月や卯建(うだつ)の影は競いあふ 星野 戎吾
愛媛県内子町の街並みを思いました。白と黒のコントラストを満月がより美しく照らしています。
(恵夢せとか)
終戦は「赤いリンゴ」で始まりぬ 桑田 青三
終戦は最も暗い時代。その時「赤いリンゴ」という極めて明るい歌のお蔭で国民の生きる元気を頂いた。この情景の全てを表現されている。
(福島 雪雫)
2023年浜風8月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
訳ありの男なんです心太 大西 惠
心太の俳句は多くありますが、この作風は斬新。
詩の世界で翼を広げて、自由に遊んでいる作者が見えます。
(内藤ちよみ様)
空蝉や指先はまだ女です 國分 三德
空蝉を提示されたならば俳人は先ず源氏物語を思い起こせねばならない。物質的な蝉の抜け殻は放念したほうがいい。
指先だけに女が残る、他の部分はすでに老いさらばえてしまったのではない。想念は女ざかり。まだまだ人生いいことはある。気持次第。
(今野 龍二様)
いつだって君とは水羊羹の距離 大西 惠
お茶の間仲間を連想して、水羊羹の距離という表現がユニークで素敵だと思いました。
(G)
原爆忌眼鏡はずして空を見る 岩城 順子
「はずす」のは老眼鏡です。もう一度はっきり確かめ、心に刻みたい夏空を見上げます。さりげないが含蓄があります。
(聖木 翔人)
西瓜一つ買えぬ齢に気付きおり 山下 宗翆
子供の頃は、三食西瓜でもと思ってた程、大好きでした。今でも好きなのですが、最近はもっぱらカット西瓜を購入することに、歳を感じます。
(島田 啓子)
雄日芝や父は三十三回忌 桑田 青三
さり気なく謳われていてお父さまへの哀惜の情を感じました。
(かわにし雄策)
金婚の旅の湯宿や遠花火 濱本 寛
季語の遠花火と措辞の金婚が良いですね。
私だったらこのような時、花火会場に行き直下から見上げます。しかし、作句者のように湯宿から鑑賞した方が、50年も連れ添った夫婦愛を感じ入ります。
(星野 戎吾)
いつだって君とは水羊羹の距離 大西 惠
昨今では一年中何かと重宝がられている水羊羹。水羊羹を君と呼び大切にしている幸せな作者を垣間見ることができた。下5の6音は気になりませんでした。
(小峰トミ子)
技ならば突きの一手や心太 小峰 トミ子
(心太)は、子供の頃、よくなぞなぞで、「ひとつき、食べられものは何?」
長い箱の中に心太を入れ、ひとつきで、細長い心太になる。別に技ではないが、技と言っているところが、楽しい。
(長谷川 博)
「皿屋敷」白塗りのまま心太 原田 洋子
落語をなぞった一句ですね。咄家は誰? 冷房がなくても、ヒヤッとします。
(小坪亭ゑん)
「皿屋敷」白塗りのまま心太 原田 洋子
役者が舞台から降りたとたんに、酢の効いた心太をたべる図は、『あるある感』満載。演目が皿屋敷とは、怪談話で上手いなと、思いました。
(原田 七惠)
あの恋も今となっては蟻地獄 長谷川 博
恋の句は数多ありますが、この句はユニークで心惹かれます。十七文字のドラマの真相は? 追い掛けましたが、堂々巡りして目眩がして来ました。
(原田 洋子)
終演や花火師ぬっと浮かぶ闇 星野 戎吾
華やかな花火大会が終わり、薄暗い闇の中に花火師の姿がぬっと現れた。お祭りの終わった物悲しさを感じる。
芭蕉の「おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉」を思い出しました。
(桑田 青三)
重心をさらり手放す心太 島 さくら
兼題の心太の句は私も試み早々にギブアップ。なので心太の句に目が行き、皆様の斬新な句に感心しました。その中で一番心を捉えたのが掲句です。“さらり”に思いきりの良さ。“手放す”に前向きな意思。心の重荷を心太の重心に重ねて、景の浮かぶ爽やかな句になったと思います。
(佐藤 花子)
終演や花火師ぬっと浮かぶ闇 星野 戎吾
華々しい花火が終わった後の、花火と対照的な闇。そこに花火師が見えた場面を表しているのだが、「ぬっと」がその様を見事に表現していると思いました。
(田 友作)
夏草や誰と誰とが誰の敵 原田 洋子
戦争は敵を作るところから始まるとされる。夏草から想起するたしかな実感、世界の今を詠まれたと思う。
「誰」とくり返し問う表現が心に迫る。夏草の、そして作者の思いが素直に伝わる1句です。
(島 さくら)
打ち水にセピア色した胸騒ぎ 田 友作
「打ち水をする」と「セピア色」で五〇年程前にタイムスリップ。その情景の中で「女は彼が来るような胸騒ぎがする」と言う表現に感動。
(福島 雪雫)
路地きゅうり曲者ちょいワルもてもて 原田 洋子
路地きゅうり
ほぼ、円形もあったりして!(^^)
義父が家庭菜園をやっていてよく頂きます。
とっても美味しいです。
おまけにちょいワルの曲者です。(笑)
この作者は、きっとベテランの方だわ!ウマくって楽しくなって、路地脇からヌーっと手が出ました。
(金子うさぎ)
デパートの昭和を買った甲虫 かわにし雄策
今では甲虫を通販やホームセンターで手軽に購入出来るが、昔は自分で捕まえないと手に入らなかった。昭和のバブル期になるとデパートで購入出来るようになった。そんな何でも買えると言われたデパートの盛況ぶりを甲虫から思い起こさせてくれた句だ。
(山下 宗翆)
犬が行く里美城址の木下闇 山下 宗翆
景が見えてとても良いと思います。季語“木下闇”がきらきらした日差しをより引き立てています。
(恵夢せとか)
空蝉や指先はまだ女です 國分 三德
夏の盛りにあんなに元気に鳴いていた蝉は空蝉となって、木の枝や葉にその姿を見るようになります。
作者は抜け殻となってもしがみついているその様を、最後まで毅然としていた『源氏物語』の「空蝉」を思い浮かべていたのではないでしょうか。
(大西 惠)
2023年浜風7月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
琵琶啜る種黒々と独り言 濱本 寛
心象表現がよく出ています。ネガティブな句ですが、作句姿勢に心理の追求心が見えて好感。
(内藤ちよみ様)
今日こそは捨てるあの日の登山靴 大西 惠
私たちが若かったころ、山へ行く女の子には美人はいないなどと言われていた。ところが今は山ガールなどと言われかわいい女の子ばかり。
さてこの句の「あの日」には何があったのか。おそらくはご主人とは別の人とのなにか。登山靴と一緒に思い出も捨てようと。
(今野 龍二様)
登山靴明日の高嶺へ向けておく かわにし雄策
登山者にとって登山靴は大切な命の絆。高嶺を目指す時の気持は一層です。靴を高嶺に向けて明日の安全を願い就寝につく。
(濱本 寛)
AI君枝豆の味わかるかな 原田 洋子
AIがAIから学ぶというサイクルができ、人間を超えたとも言われていますが、 AIが簡単に超えられない人間の絶妙な感性を自慢げに問いかける句が気に入りました。
(G)
ジャングルジムのてっぺん夏の月 金子うさぎ
ジャンルジムに立っているのは、ジャンル大帝!?️きっと“てっぺん”から月を見ているのでしょう。
(小坪亭ゑん)
一人づつ渡る吊り橋遠郭公 濱本 寛
清流にかかる吊り橋、脚の下からはゴーゴーと水音が、そして何処かからか聴こえる郭公の鳴き声。清涼感溢れる一句に暑さを忘れました。
(原田 七惠)
枇杷啜る種黒々と独り言 濱本 寛
枇杷を食べる時いつも思います。なんでこんなに種が大きくて、美味しいところが少ないのか。もっとたっぷり食べたいのに。
(島田 啓子)
一人づつ渡る吊り橋遠郭公 濱本 寛
歩むたび自由と孤独が揺れる一人だけの吊り橋。遥か響く遠郭公の声は渓谷の静けさをいっそう深くし句全体を安らぎで包む。
実景の中に人生を想う気持ちが感じられる一句。心に沁みます。
(島 さくら)
いつの日も死ぬな生きよと晶子の忌 長谷川 博
作句の技術はともかく、主題に共鳴して特選とさせて頂いた句です。
与謝野晶子が「君死にたまふなかれ」を発表したのが明治37年(1904年)、それから120年たった今でも戦争のための政策を続けている。
晶子の弟を思う想いは普遍的なもので、今も(いつの日も)忘れてはならない時代への警鐘として読みました。
(田 友作)
今日こそは捨てるあの日の登山靴 大西 惠
37番も特選の候補のひとつでしたが、絶賛、断捨離中のわたくしは57番に軍配が上がり…。
「あの日の登山靴」に蒼い爽やかな風景とストーリーを感じ選びました。
(金子うさぎ)
法廷に咲くや継子の尻拭い 國分 三德
人が人を裁き量刑を決める。そこには一分の間違いもあってはならないけれど、現実にはどうでしょうか。トゲソバの別名のある、茎も葉も棘だらけの継子の尻拭いは、その心のザラザラ感を表現するのにぴったりと思います。
(原田 洋子)
夏休み始まったらし路線バス 島田 啓子
路線バスを通して街の生活の変化を感じとったのがお手柄。バスの乗客を細々と説明しなかったのが良い。
(國分 三德)
AI君枝豆の味わかるかな 原田 洋子
擬人化はなかなか難しいですが、対象がAIであるということで良いと思います。内容も単純明快でよくわかります。
新聞紙上では連日のように、AI、ChatGPT、生成AIという言葉がでています。また、シンギュラリティという用語もすでに一般化しています。
それに対して、俳句界の対策はいかがなものか? その為の対策はいかに。
(星野 戎吾)
夏休み始まったらし路線バス 島田 啓子
通勤で乗るバスが定刻に到着し、学生の姿が見えず空いている。もう夏休みに入ったのか。そんな小さな日常の気付きにも季節の移ろいが感じられる、俳句の愉しさですね。
(山下 宗翆)
真夏日にパンツ一枚今日も生き 長谷川 博
「真夏日にクーラーも入れず、パンツ一枚で凌ぐ姿は逞しくユーモアさえ感じる。だか続く『今日も生き』に私は、もう若くはない作者のペーソスと達観を感じ、深い句だと思った。
(佐藤 花子)
炊き立てのしろめしの香や梅雨の明く 佐藤 花子
随分、長い間、炊き立ての白飯を食べたことのない自分にはとても羨ましく新鮮に思われました。サトウのごはんパックをレンジで2分チンしてそれが毎日の主食だったからです。
言われてみると炊き立てのご飯の香りも記憶の中に残っていてもっと古い記憶はそのご飯をお櫃に移し替えていたことです。
梅雨明けのカラッとした気分にはしろめしの香りはピッタリだと感じました。
(かわにし雄策)
梅酒割り炭酸水からフランスへ 小坪亭ゑん
琥珀色の梅酒の炭酸割りを作って飲みながら、思いはフランスへ。割ったのは、グリーンのボトル(瓶)がきれいなフランスの炭酸水ペリエだったのでしょうか。
一読後、ひさびさにペリエを買って、フランス気分を味わいたいと思いました。
(大西 惠)
サングラスむすんでひらいてスマホ見る 小坪亭ゑん
サングラスを閉じて、スマホを開いて見る。という異なる動作を一句にまとめ、哲学者ジャン・ジャック・ルソー作曲の「むすんでひらいて」を引用とは憎い。
(福島 雪雫)
ウルトラマン流れてゐたり街出水 小峰トミ子
空飛ぶ無敵のウルトラマンの人形が洪水の乗って街中を流れている。庶民の生活がすべて破壊されている儚い姿が感じられる。
(桑田 青三)
青りんご青さに惹かれ買ひにけり 濱本 寛
青りんごは堅くて小ぶりで、ジューシーさも少し足りないけれど、若々しい瑞々しさに惹かれます。
(恵夢せとか)
2023年6月句会の選者特選の感想
閲覧、印刷用PDFは下に表示、印刷方法はこちら。
2023年浜風5月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
山独活の歯応えが良し無位無冠 かわにし雄策
「山独活の歯応えが良し」の表現から、カラッとした精神面が伺える。「無位無冠」がいい。気持ちの良い句に共感。
(内藤ちよみ様)
厨房忙し男爵の子だくさん 島 さくら
この句の「子だくさん」に魅せられました。新じゃが芋の季節、ちょっと引っ張ると、不揃いの小芋がぞろぞろ出て来て、どれも子供のように可愛くて楽しいものです。日本に子供が溢れる時代が戻って来て欲しいものです。
(原田 洋子)
富士見えて日本が見えない五月空 聖木 翔人
すみきった空に富士山が遠くにはっきりと見える。しかし、今の日本の政治が、よく見えない。どこに向かうのか日本。戦争だけは止めてくれ。
(長谷川 博)
慎みと忖度乾く柏餅 島田 啓子
銘々皿の上の柏餅、すぐに食べれば卑しいと思われるし、食べなければ嫌いなのかと相手が心配する。生餅はどんどん乾いていく。楽しい迷いである。即断即決できないことのほうが人生では多い。
(山下 宗翆)
平凡な暮らしに句読点の薔薇 岩城 順子
何気ない日常の中で、微笑ましい瞬間を生むような内容で気に入りました。
(G)
鯉のぼり不承不承の川渡し 聖木 翔人
毎年、川幅いっぱいの鯉のぼり圧巻ではあるけれど何かちょっと……。
鯉のぼりも不承不承なんですネ、納得です。
(島田 啓子)
宿坊のあるじ顔して守宮出づ 岩城 順子
昔は田舎の屋敷には多く住みついていた。
イモリは「井戸を守る」と、ヤモリは「家守は家を守る」。守宮は「家守」とも表記して、縁起がいい。しかし、都会人は害虫と感じ、駆除する。
守宮は逆さまになれば、吉の字になる縁起の良い生き物です。作者は田舎の老舗の旅館に泊まったおりに目にした光景を素直に読んでいます。
(星野 戎吾)
どくだみを刈る手止めさす白十字 佐藤 ポチ
名で嫌われるドクダミ。良く見れば白十字様の小花が愛しく、思わず刈る手を止めてしまう。この感性に一票。
(福島 雪雫)
ロボットを創るロボット葦の角 恵夢せとか
人間は考える葦 と言われます。葦は土から角の様な芽を出します。一節一節しっかり、しかもしなやかです。
人間はロボットになってはなりません。
(濱本 寛)
濁声の烏横目に四十雀 佐藤 花子
34と67で迷ったのですが、私はまだ遺言を書いてないので、烏のように横目で見ていました
(小坪亭ゑん)
青葉騒肺の奥なる音楽室 かわにし雄策
コロナ禍の制限が明け、マスクを外し、青葉騒のざわめきを心から味わっている気持ちが伝わる。
(山戸 則江)
山独活の歯応えが良し無位無冠 かわにし雄策
山独活の瑞々しい白い断面とシャキシャキとした咀嚼音が聞こえます。山独活と無位無冠が呼応し高潔な生き様を感じさせます。悟りの句でしょうか。
(佐藤 花子)
骨上げを待つどこまでも皐月晴 恵夢せとか
単に「骨上げ」を詠むのではなく「骨上げを待つ」時間を読んでいるのが良いと思いました。そしてその時間は悲しみ一杯で、青く広い空を見上げると一層その悲しみが増して来るという心情を上手く表現している句です。
(田 友作)
「バスに乗り遅れるな」と煽るは蜥蜴 金子うさぎ
どこの国の物語なのか?人間の国か?はたまた蜥蜴の国か?バスの乗客はいったい誰なのか?いろいろ想像して鳥獣戯画ならぬ昆虫戯画の世界に取り込まれてしまいました。作者の説明を是非ともお聞きしたかった一句です。
(かわにし雄策)
マネキンの乳房もツンと夏立ちぬ かわにし雄策
夏商戦に向けショーウインドーでマネキンの着せ替え中。マネキンの真っ白な乳房が小気味よい。爽快な浜辺のアイスクリーム。夏が待ち遠しい。蛇足「おそるべき君等の乳房夏来る 西東三鬼」
(桑田 青三)
がまがえる沈思黙考どこへ行く 桑田 青三
「雨上がりあるある」で、共感! 全体におかしみ漂い、愉快な気分になれました。
(佐藤 ポチ)
雨安吾やお題の「房」を乳房とす 金子うさぎ
お題そのものをテーマにし心象世界。「雨安吾」に「乳房」という意外な発想に作者の宗教と人間性への深い思いを感じる。静と動があざやかに表現された一句。
(島 さくら)
宿坊のあるじ顔して守宮出づ 岩城 順子
守宮、家守いづれもやもりですが、上5の宿坊を受けて守宮としたことに共鳴しました。活躍している守宮が想像できる。 (小峰トミ子)
青嵐天地の境吹き抜けり 恵夢せとか
中七の「天地の境」に惹き付けられました。初夏の強い風が、青葉を大きく揺らしている情景が見えてきます。
(原田 七惠)
青葉騒肺の奥なる音楽室 かわにし雄策
新緑が風に吹かれて立てる音の心地よさを「肺の奥なる音楽室」と表現されたところに大いに惹かれました。
(大西 惠)
朧の夜神の声する石切場 岩城 順子
石切場は故郷今治市大島だと確信。高くて深い大島石の採石場の、ここに眠るこの石を掘れと、朧月夜の神秘を感じます。
(恵夢せとか)
どこにあるヤングケアラーの虹よ立て 佐藤 ポチ
「ヤングケアラー」という言葉をメモってました。私自身、作りきれませんでしたが、「この作者は誰かしら?」
荒削りな一句に直ぐ手が出ました!(^^)
最近、マスコミが取り上げ過ぎて・・・。言葉だけが独り歩きしませんように~。
(金子うさぎ)
2023年浜風4月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
全席が自由席です仏の座 桑田 青三
春の七草、仏の座。どこに芽吹いてもそれは自由。発想が楽しいです。
(長谷川 博)
国境を越えていきたい花筏 山戸 則江
この句は、まさに今のウクライナの人の気持ちかな? 花筏に託したところが良かった。いや、これは、ウクライナだけではなく、北朝鮮、中国、もしかして、ロシアの人にも、香港の人にも当てはまるのかな?
(長谷川 博)
始まりはおなご先生泣かす春 田 友作
瀬戸には春が良く似合う。大石先生の愛を受けて、島の子どもたちが優しく成長していく様子がサーッと駆け巡りました。
春、スタートの時。生き生きと過ごしたいと強く思います。
(原田 七惠)
鼓草自分の中に棲む少女 金子うさぎ
鼓草がたんぽぽの事だと知りませんでしたが、そうそう、日暮れまで遊んだ豊かな頃を思い出しました。
(恵夢せとか)
花菜畑空と口づけするところ 大西 惠
黄一面の菜の花畑、通りぬける風、無限に広がる青い空、一瞬の口づけ。
(濱本 寛)
丸腰の首相の背黄砂降る 原田 洋子
作者は日本国の北方の隣国、三国の脅威を詩っています。(昨今現実に黄砂が降ってきましたが。)
作者は、それとは違った日本国を脅かす魔の手を感じます。その事実を的確に詠っています。
作者の領土問題を追及して、1冊の本に纏めると素晴らしい句集になると思います。
(星野 戎吾)
全席が自由席です仏の座 桑田 青三
春の七種の一つ、仏の座を自由席にしたところで世界は一変。スマートな表現の上句中句は読み手の内心にふれ、温かく開放感に満ちた1句となっています。
(島 さくら)
種袋振れば未来の音がする 國分 三德
袋の写真通りに咲くかなと、ワクワクしながら土の中へ。今年は【変化咲き朝顔】が、綺麗に咲く事を祈りながら蒔きます。【未来の音】どんな音でしょう、ステキです。 (島田 啓子)
春深しワインの寝息こもる蔵 かわにし雄策
蔵はどこに?春深し時、行ってみたいです。 (小坪亭ゑん)
全席が自由席です仏の座 桑田 青三
死は等しく人に訪れる。それを説教臭くなく思い起こさせてくれて、軽やか。
(山戸 則江)
全席が自由席です仏の座 桑田 青三
コロナウィルスの蔓延を皮切りに、地球を揺るがす自然災害、戦争、事件事故が多発しています。そんな中でこの句に出会えて幸せです。季語もぴったりですね。
(原田 洋子)
遠足のどんじりついに泣きだして 恵夢せとか
いる、いる、こういう子!というか、身につまされて(笑)選ばせていただきました。
(佐藤 ポチ)
花冷や敏感になるぼんのくぼ 岩城 順子
盆の窪は急所。一撃でコロリとなる。花どきの冷えは年寄りには禁物。首の後ろが冷や冷や、気になって仕方ない。 (國分 三德)
種袋振れば未来の音がする 國分 三德
軽やかな音が聞こえます。きっと明るい未来ですね。種は花それとも野菜。未来の音と捉えた感性に脱帽です。 (佐藤 花子)
山藤の絡まりやまぬDNA 島 さくら
藤の木は寄生木。他木に絡まり成長し開花する。その生き様はDNAの為せる技。文科と理科の視点に一票。 (福島 雪雫)
色鉛筆菜の花一面描き出す 小坪亭ゑん
鉛筆の句は何度か目にして居ましたが、色鉛筆の句は初めてかも?…。(色鉛筆自らが選んだのかナ?) 春の綺麗な色が目の前に飛び出して来ました。
尚、(句会場で圧倒的な人気!を誇った) 55番。とっても気になった70番も、特選候補でした。
(金子うさぎ)
種袋振れば未来の音がする 國分 三德
花屋さんに種袋を見つけると、つい手にしてしまいます。そして空想の中に遊んでしまいます。そこに聞こえてくるのは未来の明るい音ばかりなのです。
(小峰トミ子)
「ほな、いこか」赤い躑躅の投票所 金子うさぎ
選挙の投票を呼びかけるキャンペーンのフレーズにすぐ使えそうな一句です。明るくてノリの軽いのが有権者を浮き足立たせます。選挙を詠んで新しい境地を開発された作者。
(かわにし雄策)
風光る練習船の帆が上がる 濱本 寛
流石に横浜の句会、日本丸か海王丸か、帆船が出てきました。春の爽やかな風をたっぷり孕む帆船の姿が目に浮かびます。その帆を上げる訓練生の気持ちも風や波と同じようにキラキラと希望に満ちているのでしょうか。
(山下 宗翆)
山藤の絡まりやまぬDNA 島 さくら
「山藤の絡まり」とはそのツタを見ての句でしょうが、そのツタの絡まり具合からDNAの連鎖を連想しました。作者の意図とは違うとおもいますが、ツタを見てDNAに繋げるところに見事な比喩だと思いました。
(田 友作)
行く春を烏が一羽空見上ぐ 佐藤 花子
神話などでに登場し「神の使い」とも言われた烏。今や「不吉」「ごみ漁り」などのマイナスのイメージが強くなっています。でも俳句の世界では「初鴉」をはじめ、「烏(または鴉)」のつく季語には、悪いイメージはありません。
この句は、一羽の烏が行く春を惜しんでいるかのような姿が浮かんできます。烏は時として小首をかしげるようなしぐさをするし、きっと人間同様、春を惜しんでいるのだろうな、そんな烏もいるだろうな、と思わせてくれました。
(大西 惠)
校庭の蛇口上向き卒業歌 かわにし雄策
卒業生が汗を流して飲んだであろう校庭の水道。卒業式から流れる歌に合わせて、「頑張れよ」と言わんばかりに、上向きになっている。まさに出初式の放水のごとく。
(桑田 青三)
2023年浜風3月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
絶ちきれぬ思いを空に紙風船 田 友作
絶ちきれない思いが何なのか、凄く気になります。その思いを紙風船に吹き入れて、思い切り空へ打ち上げる、スッキリできたのか、これまた気になります。
(島田 啓子)
望郷やキュンキュン剥がす春キャベツ かわにし雄策
「キュンキュン」がキャベツの瑞々しさと、詠み手の思いの切なさの両方を言い得て妙。
(山戸 則江)
シンフォニー半音外すチューリップ 金子 うさぎ
オーケストラの中に、可愛らしいチューリップがいるんでしょうね。半音下げて、ちょっと間違えたのも、可愛いらしいです。
(小坪亭ゑん)
積み木くずれそうな予感沈丁花 大西 惠
もう10年にもなろうか、大学の時一緒に旅もした。社会人になって二人の世界は変わったのかも知れない。沈丁の香が強い。
(濱本 寛)
ドーナツ盤聴こえる昭和の卒業式 小坪亭ゑん
ドーナツ盤をふと思い聞いてみる、こには「自分が経験した卒業式が蘇った」という、情景がそのまま浮かんでくる。
(福島 雪雫)
対岸は露国華国や霾れり 濱本 寛
この様な句は俳句には向かないという人がいますが、私は多いに詠むべきとおもいます。
季語の 霾る がいいですね。日本地図を逆さまに観ると、蛮国三国がいつ攻めてくるかもしれない。その前兆が霾るですね。
21、27、73、85 もいいですね。
(星野 戎吾)
望郷やキュンキュン剥がす春キャベツ かわにし雄策
柔らかな春キャベツを剥く音は初恋のときめきを思い出させてくれました。
(恵夢せとか)
恋すてふ大空に手を紫木蓮 大西 惠
春の澄み切った空に、鮮やかに咲く木蓮のイメージが、潔く前に進む強い気持ちを
表すようで、気に入りました。
(G)
望郷やキュンキュン剥がす春キャベツ かわにし雄策
春キャベツならではの瑞々しさが、「キュンキュン」に凝縮されています。それが穏やかな故郷での生活と連動して春らしい伸びやかな句に感じました。
(原田 七惠)
竜昇る西税務署の春の空 原田 七惠
このユニークな句から目が離せなくなりました。我国の立ち位置は最近頓に微妙で、内政の拙さも加わり、その行方が心配です。竜が起こす風雲はどう作用するでしょうか?
(原田 洋子)
約束の三つつたまって待つ桜 島田 啓子
桜の咲くのを待っているうちに約束が3つもたまってしまった。どんな約束なのか誰なのか。うきうきとしている作者が見える。
(小峰トミ子)
風船にマシュマロ積めば横浜港 小坪亭ゑん
台所にコットンフラワーが置いてあり、その先に横浜港が見える日常。綿花をよく見ると、甘く溶けやすいマシュマロに見えてきます。壊れやすい風船は「夢」の象徴と捉えました。
**
今のマンションは「コットンハーバー」と云い、昔「綿花町」の町名もあった綿製品の歴史と港と…。
(金子うさぎ)
それぞれに流刑地となり椿落つ かわにし雄策
落ちた椿を罪人に見立てたのには驚いた。あちこちと横たわる落ち椿、罪人の哀れさを感じます。ただ「流刑地」 が一般的な表現だなと気にかかり、知っていた流刑の「遠流・おんる」を辞書を調べますと「中流・ちゅうる」「近流・こんる」もあり、「それぞれに遠流近流や落ち椿」などとしたらどうかなとご提案。すぐさま、三徳さんから「落ち椿遠流近流となりにけり」とご提示ありました。なるほど「遠流近流」は「それぞれに流刑地」を示しているのだから。一件落着。
(桑田 青三)
竜昇る西税務署の春の空 原田 七惠
「竜昇る」、と「春の空」が季重なりですが、確定申告に大勢の皆さんが集まってきて西税務署の賑わいが見えてきます。
固有名詞の使い方が好みでした。
(かわにし雄策)
積もりそうだね僕はコーヒー君は 原田 洋子
春の雪は静かにドラマチック。積もる雪に作者は人生を重ねているのだろうか。コーヒーの香り漂う穏やかな時間が流れてゆく。下句の「君は」はいつの間にか読み手となりそのまま会話の中へ。魅力的な一句です。
(島 さくら)
蕗の薹真実といふ苦きもの 聖木 翔人
人生でも恋愛でも真実がいく手を阻む壁となることは多々あります。一時の経験が次の足掛かりになるでしょう。その辛さを「蕗の薹」と「苦き」と2度も強調しているので、かなり辛い恋愛かなと思いました。
(山下 宗翆)
風船をロケットで撃つ馬鹿野郎 桑田 青三
「まったくその通りだよー!」と、一読後すぐ二重丸をつけました。
「馬鹿野郎」という言葉を俳句に使ったのは、ある意味冒険ですね。でも罵詈雑言とまではいかないと思うし(むしろ、揶揄に近い?)、特に気にはなりませんでした。いろいろな言葉にチャレンジするのは大賛成です。
(大西 惠)
踏青やされど戦車の轍かな 桑田 青三
「されど」は説明的で今一ですが、作句の技術より、テーマにひかれて特選にしました。
「踏青」と戦場の「戦車の轍」を対比させたのに惹かれました
(田 友作)
2023年浜風2月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
月幾らふくらすずめの電気代 田 友作
電気代の高騰と、ふっくらした可愛いスズメを掛けた面白い句だなと思いました。
(G)
春哀しひとつおぼえの漸近線 島 さくら
漸近線を私は理解してはいないのですが、青春のどうしようもない切ない苦しみを同感しました。
(恵夢せとか)
決別の口紅強く雪の朝 田 友作
どんな別れを決意しているのか、深紅の口紅【勝手な想像】の口からどんな言葉が、とても興味深い句です。
(島田 啓子)
砲弾が足りないそうだ牡蠣割女 桑田 青三
一日中座って牡蠣の身を取り出している女性。きっとラジオを聞いて居るに違いありません。ウクライナ戦争の最新情報にも誰よりも長けています。
取り合わせの妙と視点のユニークさに魅了されました。
(原田 洋子)
犬ふぐりリハビリの背に日のなごり 原田 洋子
春の柔らかい日射しが誘っている庭に久しぶりに出ている。いぬふぐりが陽を受けて愛らしい。背に、いぬふぐりと日のぬくもりが残って嬉しい。
(濱本 寛)
春の雪面接試験待合所 濱本 寛
季語の春の雪が効いている句ですね。待合室で順番を待つ受験生の心理が伝わってきます。
また兼題の「面」も見事です。
(小峰トミ子)
福笑い俳句の中で長らえる 原田 洋子
そうですよね。福笑いなどという遊びは俳句の世界でしか、生き残れないですね。現在の若者にこの遊びを説明すると、そんな遊びはつまらないと言うでしょう。
そこで、思い出すのは「ふらここ」と言う言葉。これも俳句だけのものになっているみたいです。
(星野 戎吾)
冴え返る出船入船宿の窓 星野 戎吾
出船入船は“昭和の風景”です。しかも“宿の窓”は大正あるいは明治!?
古い映画を観たいと思います。
(小坪亭ゑん)
砲弾が足りないそうだ牡蠣割女 桑田 青三
まったく意表を突かれた感じだ。砲弾と牡蠣割女とは一見何の関係もないから。
砲弾の薬莢の殻と牡蠣の殻の連想が面白い。
(國分 三德)
決別の口紅強く雪の朝 田 友作
決別の朝、気強く心決め真紅の口紅で意思表示、それをまた寒い雪の朝で強調する。
強い気持ちを強烈に表現していて気に入りました。
(福島 雪雫)
つべこべと言うためマスク外しけり 國分 三德
そうそう! マスク取って、私もつべこべ言いたい!と、思わず手を打ち、吹き出しました。深く共感、愉快なり。
(佐藤 ポチ)
庭に鮫うむと兜太の面構 桑田 青三
金子兜太の有名な『梅咲いて庭中に青鮫が来ている』の句を芯にして、鮫、うむ、面構と過不足なく繋げた見事な句だと思います。
(原田 七惠)
朝練や面小手胴の息白し かわにし雄策
「面小手胴」のリズム感が良いのと、「朝練や」で切って「息白し」で冬の朝練の凛とした緊張感が上手く表現されていると思いました。
(田 友作)
下萌えやヒグマは穴で出産中 山下 宗翆
ヒグマは冬から早春までの間に子供を産むようで飼育員の苦労は並大抵ではないようです。そんな飼育員の愛情を受けて生まれたヒグマの愛くるしく可愛いこと。
下萌えと生命の誕生が同期している頃の1句が何とも魅力的と思いました。
(かわにし雄策)
日脚伸ぶトーストパンの金の屑 かわにし雄策
春の近づきのゆったりしたブランチの時。トーストパンの屑に焦点を当て、陽の輝きにひとつの希望をも表現した1句。この不穏な世にあってこそ大切にしたいひとときがあり、下の句が心に響きます。
(島 さくら)
止める人なくて湯豆腐煮崩れる 金子 うさぎ
湯豆腐の鍋を囲んでワイワイとやっている、何ということもない句です。しかし、「止める人なくて」と作者は切り出しました。切迫感を感じます。世の中問題で満ち溢れていますが、誰一人解決できません。そのうち問題はグズグズになる。作者には、そんな世の中への鬱憤を込めているとみました。
(桑田 青三)
月幾らふくらすずめの電気代 田 友作
特選45番と76番で迷いました。
最近は、食品はじめ何でも値上がりしていて困ります! 雀は「雀の涙」「舌切り雀」の例え有り。45番の一句は誰でも分かるわかると頷きます。
また、作者にその意図は、なかったかも知ませんが電気代と聞けば、特にこの時期原発を考えずにはいられないので特選としました。
(金子 うさぎ)
霜柱高いレの音から溶ける 恵夢せとか
霜柱が解けるときは、背の高い方から溶けるのでしょうか? 確かに、お日様に近い方から溶けそうです。
霜柱を音階にたとえるとは! しかもオクターブ高い「ド」ではなく、そして「ミ」でもなく「レ」の音からだというのです。絶妙。
(大西 惠)
冴え返る心音さえも吸い込まる 福島 雪雫
一度寒気がゆるみ暖かさを感じた後、寒気がぶり返し真冬以上に寒いと思うことがあります。ふと目覚めたとき『ハリーポッター』の「吸魂鬼」が魂を吸い込むかのように、鼓動がだんだん小さくなって寒さの中に吸い込まれて消えていくように感じたのでしょう。あまり寒いのも困りますね。
(山下 宗翆)
右端上の□と矢印のアイコン(マーク)をクリックすると拡大してご覧になれます。
スマホの場合は画面をタップすれば拡大されます。
2022年浜風10月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
栗ご飯今日は一点豪華主義 原田 七惠
あわび、大トロ、極上牛、など、豪華なものはあれど、栗ご飯は今でもやはり、食卓を飾る豪華な食事の一部。そこをうまく表現していると思います。
(長谷川 博)
ままごとの子供をさがす赤まんま 原田 洋子
分かりやすくすっきりしている句なので、思わず手が出ました。
私が子供の頃は「おままごと」を良くやって「赤まんま」はその必須アイテムでした。しかし、昨今の子どもは「おままごと」って何?という感じで、やったとしてもプラスチック製の「おままごとセット」なので、赤まんまが淋しがっていますね。
(田 友作)
秋閑か平らな水よこれぞ幸 加藤 光樹
のどかと言えば春、でも秋にも穏やかな落ち着いたのんびりした日があります。平穏無事な日々が、どんなに有難い事なのか実感している今日この頃。水は平らでありますように。
(島田 啓子)
紅葉のトンネル疾駆の傘寿旅 福島 雪雫
まだ若いエネルギッシュな傘寿の人間と、連なる山の燃える紅葉の風景が彷彿としてくる爽やかな一句。
(聖木 翔人)
百歳へ五臓浄める新走り 濱本 寛
ご長寿の盃を持つ節の高い、格好良い手が見えるようです。
益々のご健勝、確実ですね!
(恵夢せとか)
ままごとの子供をさがす赤まんま 原田 洋子
赤まんまが、ままごとをしてくれる子供を探すという視点の転換が、わざとらしくなく成功している。
昭和のままごとあそびは昨今の清潔・潔癖社会ではもはや望めないのかもという、アイロニーを感じる。
(山戸 則江)
秋の夜マリオネットが紬着る 小坪亭ゑん
いつも操り人形のように柔順な妻が今宵は紬を着てそわそわ。さてさて、 これから何が起きるのやら~~。
色々なことが想像されて楽しい句です。 (原田 洋子)
鱗雲盗んだ黒猫叱られた 島 さくら
あんな奇麗な鱗をした大魚がいなくなった犯人にされた黒猫が気の毒。これこそ冤罪。是非とも弁護をしてやろう!
(福島 雪雫)
和も洋もスイーツ多き栗実る 山下 宗翆
美食の秋。栗のスイーツと聞けば洋のマロングラッセ、和の渋皮煮ですね。
先日TVで栗の大収穫?が放映されていたので期待しています。
作者は、栗がお好きなのかな?
先ずは、身近なモンブランからいただきます。
(小峰トミ子)
本性を枯れて露わに烏瓜 桑田 青三
真白いレースの様な花、緑の葉陰に隠れていた青い実、葉が枯れて飛び出す朱赤色の実、その変身と燃える本性。
(濱本 寛)
段丘を黒きSL蕎麦の花 濱本 寛
10月14日は鉄道記念日。もちろん私には、SL記念日。黒煙をモクモクと出して蕎麦の花畑を疾走しています。
(小坪亭ゑん)
ままごとの子供をさがす赤まんま 原田 洋子
昨今はままごと(飯事)遊びをする子供を見かけない。赤まんま(赤飯)が子供を探すという発想が面白い。
(國分 三德)
百歳へ五臓浄める新走り 濱本 寛
作者の長寿を願う日常の願いと抱負、毎年新酒が発売される頃は一献召し上がるのですね。酒は百薬の長と言われるではありませんか。五臓六腑に染みわたる新走りを誰彼に遠慮されることなく楽しまれる作者の心意気が素敵です。
(かわにし雄策)
丁寧に説明すれど毒茸 聖木 翔人
毎月の事ですが、特選候補が二、三句あって、その中から一句を選び出します。
「毒茸」…まずは目視。そして、それぞれ声に出して読み上げてみたりします。
「丁寧に説明…。」何処かで何度も聞いたフレーズ!
そして、「毒キノコ」
はい(^^) 神無月の特選となりました。
(金子うさぎ)
暗黒のパルスなるかなちちろ鳴く 桑田 青三
現在、ウクライナ問題やコロナや不況負の波動が大宇宙から送られてきていて、それにちろろが共鳴している。スケールの大きさを感じます。
(原田 七惠)
ニッポンの良いとこ探せ栗ごはん 金子うさぎ
問題山積の日本社会、このニッポン列島のいいところは何か、作者はホッコリと思いに耽った。ふいに「栗ごはん」が浮かんだ。私が思うには、「栗」は縄文文化の主食です。山内丸山遺跡では、栗を栽培していたそうです。「ごはん=米」は弥生文化の主食です。「栗ごはん」は1万数千年の日本列島文化の結晶です。作者の発想、大正解です。
(桑田 青三)
その生涯を懸命に語る蝉 原田 洋子
蝉が鳴いているのを聞くといつも、短い短い蝉の一生に想いが向かいました。でも、それをどう言ったらよいか、わかりませんでした。この句に出会い、「そう、そうなのよ❗」と、うっすら涙ぐみました。蝉になりかわり、御礼申し上げます。
(佐藤 ポチ)
遺影からつい手が伸びる栗ご飯 山戸 則江
余程美味しそうな栗ご飯なのでしょう、故人がうっかり現世に手を出してしまうとは。現在ARとかVRとかが利用できるのだから、そのうち四次元と繋がり故人からの手が伸びるかもですね。
(山下 宗翆)
温暖化煙の出ない秋刀魚たち 聖木 翔人
秋刀魚が不漁で食卓に上がらない様子が上手に書かれているなぁと思いました。
(G)
あの街は嫌いではない胡桃割る 金子うさぎ
胡桃割り器で胡桃をひとつずつ割っていくのは単調な作業(ひとりで胡桃を割っている姿を想像)。そんな作業中に思いは「あの街」に。「あの街」とは? 一体何があったのか? 具体的な意味は分からないけれど、妙に惹かれる句。
(大西 惠)
2022年浜風9月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
国辱を国葬とするや鳥兜 聖木 翔人
「国辱を国葬とするや」で今最も議論の中心になっている事柄を表現していて最高。
コメント無用と思いました。
(福島 雪雫)
葉鶏頭群れて謀反の時を待つ 原田 洋子
葉鶏頭は、鶏頭に比べると地味で目立たない、いわば地位も名誉も無い庶民という感じで、その庶民が群れて謀反の時を待つというのだから小気味よい句じゃないですか。政治やメディアも含め、理不尽な事の多い昨今、「謀反」を起こしたい気持ち、それも「群れて」というのが良いですね。葉鶏頭でこういう連想をする作者はすごいと思いました。
(田 友作)
図書館の時間に潜り込むちちろ かわにし雄策
図書館イコール静寂。おしゃべりは元より咳もくしゃみもご法度。
場所を時間に置き換え、潜り込むのはちちろそのものではなく、鳴き声の音、好きな一句です。
(島田 啓子)
コスモスや花占いつも愛してる 原田 七惠
コスモスの可憐でしかも、逞しい花が大好きです。その花占いはやってみたいなと思いました。
(恵夢せとか)
箱舟を見たよ見たよと鵙叫ぶ 原田 洋子
箱舟の到来を待つ人類の心境が「鵙叫ぶ」に総べて凝縮されている。軽み俳句のようだが鵙の孤独感もあり佳句。
(内藤ちよみ)
陰干しの背広の芯にある残暑 かわにし雄策
日中着ていた背広を陰干ししても、汗がひどくてなかなか乾かない。それだけ厳しい残暑が感じ取れて、選びました。
(山下 宗翆)
鶏頭の赤より赤い詐欺電話 島田 啓子
鶏頭の赤は、黒と見間違うような、毒々しい赤。しかし、それより、もっと赤いと言う詐欺電話。別に赤電話機のことを言っているわけではない、と思うが。
とにかく、発想が面白い。
(長谷川 博)
オルゴール箱の奏でる宵待草 福島 雪雫
私がオルゴールをもらったのは7歳。奏でる曲は違っていましたが、「宵待草」はとても懐かしい曲です。
(小坪亭ゑん)
二学期の君はなぜか大人びて 佐藤 ポチ
夏休み明けの登校初日。 そこには何とも言えない眩しくて甘酸っぱい空気が流れていましたっけ。みんな体も大きくなり、1ヶ月間それぞれが違う社会を覗いてきたのですから当然なのですが、何故か自分だけが取り残されたように、、、。
(原田 洋子)
天高し去勢の猫はよく眠る 恵夢せとか
去勢されると煩悩が失せてよく眠れるというのだ。可哀想だがさわやかな秋を迎えられるという残酷物語。発想がおもしろい。
(國分 三德)
いのこずち大好きだって言ったから 大西 惠
くっついたら離れない牛膝の特性を捉えた句ですね。牛膝に大好きといわれても悩んでいる作者、否いのこずちの片思いなのかな? 恋の行方は知る人ぞ知る。
(小峰トミ子)
天高し去勢の猫はよく眠る 恵夢せとか
猫ちゃんと一緒の生活を始める前に猫に去勢手術を施されたのでしょうか。天高しという叙景に去勢された猫がスヤスヤ眠っている様子を配置されてにゃんこ好きにはグッと来る作品ですね。
あ、おニャン子クラブの出身で統一教会と関係を持った女性議員は好きではありません。
(かわにし雄策)
箱舟を見たよ見たよと鵙叫ぶ 原田 洋子
澄んだ秋の空気を切り裂くような鋭い声で、羽をバタバタ震わせながら、鵙が叫んでいる。終末がすぐそばまで来ているかもしれないのに、のほほんと暮らしているのは、我ら人間のみか? 不穏な切迫感の伝わってくるような一句に、深く共感を覚えました。
(佐藤 ポチ)
プーチンは俳句を詠むか鰯雲 濱本 寛
なにかとぼけた句に思いましたが、「俳句」は書き手と読み手の挨拶文、心の交歓の文学であるといわれます。ウクライナで悪の限りを尽くすプーチンさん、俳句でも読んで世界と交流してはどうですか、ミサイルの空でなく、長閑な鰯雲の空を眺めて。世界は平和になりますよ。
(桑田 青三)
花野へと靴箱の靴鳴りはじむ 島 さくら
み空の下の広々とした花野を思い、靴が鳴る♪
二番に「うさぎ」が出て来て、跳ねて踊れば靴が鳴る。
「さくらさ~ん遊びましょ♪♪」
蛇足に…。
19才の「はなの」と言う姪と「花野」の俳句を作ったのも特選!手が伸びた理由のひとつです(^^)
(金子うさぎ)
いのこずち大好きだって言ったから 大西 惠
一読して笑ってしまった。軽々と大好きと言ったばかりに体中飛びつかれ大慌て。御用心。
いのこずちを擬人的に表現され、楽しさとちょっぴりあぶなさも秘めたストーリーが展開。
魅かれました。 (島 さくら)
陰干しの背広の芯にある残暑 かわにし雄策
まだまだ暑さが残っていることを『背広の芯』で表現された感受性に憧れました。
(原田 七惠)
2022年浜風8月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
ため息の秘密を隠す冷蔵庫 田 友作
冷えたビールやフルーツがある日は待ち遠しくてしょうがないですよね笑
(G)
もう少し話がしたい七日目の蝉 小峰トミ子
10年ほど前に「八日目の蝉」という映画が話題になった。「七日目の蝉」というだけで目が止まった。作者の意図は全く分からないが、一日を超えぬ前に悶々としているというのか? 大変気になって特選としました。
(福島 雪雫)
徒長枝のスキャンダラスな真夏かな 桑田 青三
夏は特にムダ毛のお手入れが大切。
50年程前だが、バイオリンの巖本真理を聴きに行ったのだが、真理さん腋毛のお手入れはなさらないのですね。巣鴨の染井霊園に眠っているが、墓地には雑草がぼうぼう。
(今野 龍二)
青柿やぐうばかり出す男の子 濱本 寛
夏の間は、ずっと青いままの柿、そういえば子供の【ぐう】みたいな形ですね。今朝の公園に小さな【ぐう】二つ転がっていました。
(島田 啓子)
梅干して声に張りある人逝けり 恵夢せとか
人の一生は不意にあっけなく終わりを告げることが多い。梅を干したりこまめで器用な人、あの声が突然終焉を迎えてしまったのだ。
(國分 三德)
夜に咲き朝には帰るキスゲかな 福島 雪雫
キスゲに名を借りて夜な夜な訪れるこの女性はどんなタイプの美人なのかしらと想像が膨らみます。十七音の儚い物語がいつまでも心に残ります。
(原田 洋子)
ため息の秘密を隠す冷蔵庫 田 友作
ため息の秘密⁈ どうせならピンクのため息を期待します。そして冷蔵庫を開けるのはいつですか?どんな気持ちですか?結末がとても気になる句です~。
(小峰トミ子)
戦没の刻字を追いつ墓洗う 濱本 寛
作句の技術や描写がすぐれていると言うより、テーマに共感し、特選とさせて頂きました。
私も、毎年お盆にお墓詣りする度に、この句と同じ体験をしています。
お骨も返って来ないまま墓石を建てざるを得なかった、残酷な過去に思いをはせさせる句です。
(田 友作)
炎天や鉄鎖食い込む象の足 かわにし雄策
動物園の象の足は逃げられないように鉄の鎖で繋がれ、この炎天下でもはずされていない。例え木陰にいても鉄が熱くなっていないのか? この夏の暑さはいつまで続くのか‼️
はじめの炎天やが効いています。 (山下 宗翆)
万緑を従え高し大野城 濱本 寛
大野城は天智天皇時代に建てられた、古代の山城。唐・新羅連合軍に破れ、太宰府を守る為の防御城。
私が行った頃の眺めを思い出した。今はどの様になっていますか。俳句を通して、町おこしになれば。昨今の城郭見学、低山登山、女子登山のブームに乗れば。
掲句は眺めた景色を簡潔に表現しているのが、良いのでは。目に見えるように感じました。
(星野 戎吾)
月に打つ鬼太鼓響く佐渡の浜 星野 戎吾
祭りの夜、響き渡る太鼓に勇ましく舞い踊る鬼たち。辺りを覆う迫力ある太鼓の音は祭りと一体となり月へ捧げられるのだろうか。「月に打つ」でそんなイメージがふくらむ。佐渡の伝統鬼太鼓の神秘性、スケールの大きさを感じる1句。心引き寄せられます。
(島 さくら)
出来たての男前だよ天花粉 かわにし雄策
盥から赤ちゃんを、ひょいと掬い上げてパタパタと天花粉をはたく。男前の様子が見えてきました。楽しい!
(恵夢せとか)
蚊遣り香や年寄りに聴く養生訓 原田 七惠
蚊遣りには、楠、榧、杉、柑橘の皮、菊などが使われます。夏座敷でしょうか。
爺の語る養生訓がしみじみと蚊遣香のように沁みてきます。
(濱本 寛)
雲梯を渡る背中に夜の蝉 大西 惠
雲梯を見たら、チャレンジしたくなりますね。きっと、器械体操の選手が渡った時に、蝉が最後の応援をしたのでしょう。
(小坪亭ゑん)
ため息の秘密を隠す冷蔵庫 田 友作
なぜため息をついているのか、その理由を冷蔵庫に隠すという発想が楽しい。
(長谷川 博)
蝉時雨潜り抜ければ海がある 岩城 順子
この句を読んで、一瞬にジリジリと日差しを腕に感じます。
夏を楽しんだ昔を懐かしく想い出しました。
(原田 七惠)
瀬戸内の残照を浴び水着干す 小峰 トミ子
先ず、さっと選をしたときに手が出ました。
そして、じっくり選をしたとき、サラリとした一句から、淡路島や天草での海水浴の思い出が鮮明に甦り、同時に、作者は瀬戸内に関係のある方かしら…。なんて興味が湧きました!(^^)
私にとって今、水着は仕事着でも有るので、季語として深い意味を持っています。
自身が「水着干す」で作句したのも特選の決め手となりました。
(金子うさぎ)
傘寿なり盧生の夢の夏の霧 星野 戎吾
星野さま、傘寿のお誕生日おめでとうございます。
中国の邯鄲で廬生が見た夢は、彼が栄耀栄華を極めて子孫にも恵まれましたが、夢から覚めると頼んでおいた粟の粥が出来上がったばかりでした。人生の儚さ、短さを詠嘆して邯鄲の夢といいますが、作者は些かの悟りの境地に到達されていらっしゃいます。
(かわにし雄策)
八月の空を掴んだままの影 かわにし雄策
このような句の前では、我々は思わず口をつぐみ、目を閉じ、合掌するしかない。直球テーマを直球でうたった、心に迫る一句。
(佐藤ポチ)
チャタレイを紙魚の完読したる跡 島 さくら
『チャタレイ夫人の恋人』懐かしき昭和の猥褻本?。本箱の片隅にこっそりと隠していた本を開いてみると、紙魚に食い荒らされている。「紙魚の完読」が面白い。紙魚は実は作者ではないか。熟読した昔を思い出して、ニンマリしているのでは。
(桑田 青三)
空の人柱だなんて敗戦忌 上薗 優
「敗戦忌」に明るく晴れた空を見上げて想うのです。神風特攻隊として出撃していった若者たちのことを。人柱とはつまりは人身御供(人間を神への生贄とすること)。「空の人柱」と「敗戦忌」というのはあまりにもつらい言葉の組み合わせですが、「海の人柱」(回天、伏龍、震洋など)とともに、それは事実だったのです。決して忘れてはいけないことだとこの句を読んで改めて心に留めました。
(大西 惠)
2022年浜風7月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
今行くよ西瓜切ったと母の声 小峰トミ子
この句を読んで頭に浮かぶのが童謡「夕方のおかあさん」で「ひよこのかあさん裏木戸開けて、ひよこを呼んでる、ごはんだよ~」の歌詞だ。ジェンダー平等が言われる昨今だが、私たちが子供の時代はやはりお母さんが料理をするのが当たり前の時代だったのでこのような句にノスタルジーを感じてしまう。この句も「今行くよ西瓜切ったと父の声」でも良いのだろうが、それではしっくりこない。
(田 友作)
背伸びして港が見たい立葵 かわにし雄策
立葵が好きなので、可愛い句に好感を持ちました。
(G)
白紫陽花離れ座敷は薄明り 桑田 青三
白紫陽花は目立たぬ花、離れ座敷は薄明りでぼーっとしている。
意味深な句ではあるが、そのままの情景が見えてくる。
(福島 雪雫)
余生なほ七転八起雲の峰 星野 戎吾
余生を送っている身として中7下5の七転八起雲の峰に元気と勇気を頂きました。ありがとうございました。
(小峰トミ子)
余生なほ七転八起雲の峰 星野 戎吾
ムクムク立ち上がる巨大な雲を見る。その一生を考える。雲の峰は消えるまでの僅かな時間にどれほどの葛藤、波乱を抱えていることか。それが自分に重なる。深く、共感する一句。
(聖木 翔人)
炎昼の茫然自失平和ボケ! 上薗 優
そうですよね。日本は政府も国民もみなそろって、平和ボケ。ウクライナ戦争の対応や今回の安部元首相狙撃事件。世界各国が指摘するように、日本の安全対策を憂う。
掲句の季語がいいですね。山口誓子の昭和初期に使ったのが定着した季語。定番の「日盛」では。
(星野 戎吾)
国境のない西瓜って美味しいね 田 友作
国境は往々にして紛争の火種になります。特に、大国ほど常にピリピリ。「国境なき医師団」の活躍に見るように、善意に国境は無用です。西瓜もまた、平和の中で大勢で笑いながら食べたいものです。素晴らしい時事句と思います。
(原田 洋子)
余生なほ七転八起雲の峰 星野 戎吾
あと何回転んで、起きて生きて行くのか。転ばない人生なんて………と強がってみたり、入道雲を見て力を貰ったり。自分らしく生きて行けたら、まずまずと思う事にしました。
(島田 啓子)
西瓜割り水平線も真っ二つ 小峰トミ子
水平線「も」はよくないです。水平線「を」に。
(今野 龍二)
平凡な形の昼寝戦ある かわにし雄策
戦場、しばし砲火が止み、兵士は直ぐごろんと昼寝に。寝姿は人間共通、平凡簡単で束の間の平和が如実に表現されている。
(國分 三德)
5Hで描くと幽霊らしくなる かわにし雄策
夏、様々な幽霊たちの出番です。枝垂柳の下のたおやかな恐怖、心霊現象、背後霊。。。
転じて、幽霊会社、幽霊人口等々も。現れては消える掴みどころのないその姿を作者は5Hの視点で表現されている。繊細な鉛筆画が見えてきます。
(島 さくら)
ライオンもビールに酔えば銀ブラに 田 友作
ライオンというのは、銀座のデパートの前にある、あのライオン像のことですね。もう、何十年も、銀座には行っていませんが。ライオンがビールに酔うなんて発想が面白い。しかも、銀ブラとは。
(長谷川博)
西瓜切る子等の視線の真ん中で 岩城 順子
幼き日、田舎の親戚の子供たちとおばさんが西瓜を切り分けるのをじっと見つめていたことを思い出しました。どれが一番大きいか品定めしていたのかも。光景がまざまざと浮かんできて楽しい句だと感じました。
(山下 宗翆)
西瓜割り水平線も真っ二つ 小峰トミ子
優しい道祖神(26番)にホッとした後で、水平線を真っ二つに割った西瓜にびっくり。
(小坪亭ゑん)
大の字になって部屋中に風鈴 大西 惠
なんとなく好き、という、あんまり理由にならないかもしれない理由ですが!?
(佐藤 ポチ)
正しさなんてありゃしない西瓜割り 上薗 優
西瓜割りの記憶は?と考えた所、2012年の夏の砂浜でした。
バシッ。ゴン、バキッッ。。
中には、メッタ打ちの人も居たりして。
ドキッ!
ほんと、正しさなんてありゃしないのです。
&
食べたら種はどうする?…。
(金子うさぎ)
藍暖簾守宮逆しま吉となり 星野 戎吾
家守とも言われ家を守ると信じられている守宮。その守宮がどこか涼しげな藍暖簾の掛かっているお店の軒か天井に張り付いているのをご覧になった作者。
そんな縁起のよい守宮を見つけると家に多幸を呼ぶと信じられています。財運はむろん、結婚運、子宝にも恵まれる吉兆です。
作者はどんな幸せを得られたのでしょうか?
(かわにし雄策)
国境のない西瓜って美味しいね 田 友作
国境争いの絶えない地球、地球に似た西瓜には国境なんてない。そんな西瓜のように地球がなってくれたら美味しい(=平和)だろうな。
平和を願う句です。
(桑田 青三)
青蜥蜴たまにはゆっくり話そうよ 原田 洋子
世間では嫌われものの蜥蜴を見ながら話しかけているのが面白い。もしかしたら、厄介な自身への語りかけなのかもとも。
(恵夢せとか)
空襲の記憶メラメラ炎天に 田 友作
炎天下の空襲の怖さや辛さは、経験された人でなければ分かりません。
句の迫力に押され特選に選びました。
(原田えつ子改メ 七惠)
到着順 ( )内は選者
梅雨滂沱コーヒーはお代わり自由 島 さくら
雨日のコーヒーを飲みながらのんびり過ごす時間が恋しくなりました。
(G)
飛魚の鋸山を飛び越せり 恵夢せとか
飛魚の飛び立つ時の速度は、時速60kmとも70kmとも言われています。それに、飛翔距離は300mから400mとか。沢山の飛魚の句の中でも、一山を越えた桁外れのスケールのこの句に拍手を送ります。
(原田 洋子)
水槽を国家と思う金魚かな 聖木 翔人
いま国家、国家観が問われている。水槽を国家と思えば誰も攻めては来ない。金魚は露地裏を夜汽車と思ったり、その思慮は深い。次は何と思うのだろうか。
(今野 龍二)
梅雨滂沱コーヒーはお代わり自由 島 さくら
梅雨最中、飛び込んだ喫茶店。
時間潰しには、お代わり自由のコーヒーが有難い。小さな幸せが伝わってくる一句です。
(島田 啓子)
五月闇報じる人も富裕層 金子うさぎ
作者の意図とは異なるかもしれませんが、暗く悲惨なニュースが多い昨今を「五月闇」ととらえ、それを報じるアナウンサーやコメンテーターは空調の効いた部屋でぬくぬくと何の心配もなく報じている様を「富裕層」と読んだのではないでしょうか。
そういう意味で「富裕層」が効いていると思いました。あたかも悲惨な目にあった人に心を痛めているかのように「悲しい顔を造って」カメラに写って、次のカットでは急に笑顔に変わり「はい、次はスポーツです。大谷翔平の活躍ぶりをたっぷりお見せします」などと喋っているのを見て、常日頃これで良いのかと思っていたので、この句はそんな私の気持ちにピッタリです。
(田 友作)
雁皮紙の墨の濃淡虎が雨 大西 惠
雁皮紙は古くからある和紙、越前が有名です。薄くても丈夫で美しい。
墨の濃淡、細字の流れ、どんな心の動きでしょうか? 虎が雨が想像を広げます。
(濱本 寛)
だんまりの上手側から梅雨の入り 山戸 則江
「だんまり~から」までで歌舞伎の舞台を連想し、季語の入りまでが主役の登場を表し、シンプルなリズムなのに季節感が上手に表現されているなとおもいました。
(山下 宗翆)
飛魚の追われる身にも技が出る 福島 雪雫
大空と海上を巧みに使い、必死に逃げている飛魚が見える。技を使って多分逃げ切ったであろう。人生にも重なる句と思いました。
(小峰トミ子)
玉ねぎの皮の輝き【深い河】 島田 啓子
重厚な遠藤文学の名作。キーワード「玉ねぎ」の意味するものは何か。人間の河、愛の河に思いをはせる時、作者はそれを「玉ねぎ」に織り込み、その透き通る皮に光を放たせたのである。
その輝きは小説と不思議に響き合う。作者の深く大きな世界観に触れた一句、心動かされました。
(島 さくら)
ベランダが今日はリビング梅雨晴れ間 山下 宗翆
梅雨で気が晴れぬ日々の中、久々の晴れ間故ベランダが居間。今の気持ちにぴったり、特選。
(福島 雪雫)
太陽の喝采浴びてつばめ魚 島 さくら
真っ青な海を、太陽の日をいっばいに浴び 、その背をキラキラと輝かせながら、元気に飛び行く飛魚の一群。
明るく、歓び溢れる情景が見えるような一句!と、感嘆いたしました。
(佐藤 ポチ)
あめんぼうこの世に薄く繋がって かわにし雄策
人の命があまりにも軽い出来事が続く今の気持ちのような一句。
「繋がって」と頼りない終わり方も、現世のはかなさのよう。か細く見えるあめんぼうも、実は大事な世界の一員なのだけれど。
(山戸 則江)
全ての履歴消去し飛魚 上薗 優
学校や会社で履歴書を何枚も書きましたが、すべて忘れました。魚がどこで消えたのかまだ分からないのですね。 (小坪亭ゑん)
梅雨滂沱コーヒーはお代わり自由 島 さくら
梅雨に閉じ込められた不自由な気分が、お変わり自由のコーヒーでほっと開放されるというおもしろさ。
(國分 三德)
父の日やちびた消しゴムの感触 かわにし雄策
四角の消しゴムの角々が丸まり、手触りも柔らかくなってゆく感じが、柔和に老いてゆかれているお父上と重なります。「ちびた」が良い。
(恵夢せとか)
魚屋に猫が賑わう梅雨晴間 國分 三德
弘明寺に残っていた最後のお魚屋さんが閉店しました。浜に近く、漁師さんに近く幼少期を過ごした自分はお魚にもお魚屋さんにも愛着があります。お客さんも猫もやってきてくれて賑わう魚屋さんの明るさを梅雨晴れ間と感じられたのですね。
(かわにし雄策)
飛魚の兄も妹もスピード狂 原田 洋子
「トビウオと言えば、古橋、橋爪」そう思ってしまうのは職業柄?
作品の「兄も妹も」と云うフレーズに、ニヤニヤしてしまいます。梅雨晴れ間の青い空と広い海を連想させる爽快な一句に仕上がって、とても好きな一句です♪
(金子うさぎ)
父の日やちびた消しゴムの感触 かわにし雄策
父との思い出、ぼんやりとして、柔らかく、ほのぼのとした気持ち。その気持ちを作者は「ちびた消しゴム」に触った指先の感触だと表現した。
長い時間をかけてパチンコ玉ほどにすり減った消しゴム、つまむ指先に父への思いがめぐる。ひょっとして「消しゴム」は父親なのか。思いの肉感的表現、お見事です。
(桑田 青三)
あめんぼうこの世に薄く繋がって かわにし雄策
小刻みにフルフルと起きる波動を
(原田えつ子)
一斉に今日を追い越す燕魚 山戸 則江
「燕魚」は飛魚の異名だと、今回知りました。実際に「燕魚」という別な魚もいるようですが、俳句で出てくれば飛魚のことですね。
たくさんの飛魚が一斉に飛んでいる姿を見て、そのスピード、その飛距離に、時間を超えるどころか、今日という日の流れと競争して追い越してしまいそうだと思われたのでしょう。「今日を追い越す」の措辞にとても惹かれました。
(大西 惠)
特選句選者の感想を、到着順に掲載します。末尾( )内は選者
なんじゃもんじゃ風の呪文が効いている 島 さくら
時折足を運ぶ、白山比咩神社。禊場の側に「なんじゃもんじゃ」の白い清楚な花、ここで、何故か句が作れずにいます。この句の「風の呪文」に納得、禊を受けました。
(濱本 寛)
五月晴れロールキャベツと決めて逢う 島田 啓子
「逢う」ということはおばさん同士ではない。当然男と女。ロールキャベツは星付きのレストランではない街の洋食屋での昼食。もう男と女ではなくなってしまったが「逢う」にちょっぴり期待している複雑な心情。
(今野 龍二)
五月晴れロールキャベツと決めて逢う 島田 啓子
この人と逢うときは、ロールキャベツと決まっているという楽しい気分。
そんな気持は五月晴れにぴったり。
(國分 三德)
地球のうす皮を剥く潮干狩り 上薗 優
大人も子どもも、夢中になって楽しむ潮干狩り。地球のうす皮を剥くとの表現、凄いと思いました。
(島田 啓子)
潮干がり太平洋を五メートル 原田 洋子
潮干狩りと太平洋の対比が良。
潮風に包まれて家族で楽しんでいる潮干狩り。海の広さに驚いている子。
収穫は如何でしたか?
ここまで太平洋の香が届いていますよ。
(小峰トミ子)
伽羅蕗やなんだか暗きことばかり 桑田 青三
この句は、伽羅蕗を食べているというより、調理している時の句と解釈しました。あのきれいな薄緑のふきの茎が煮詰めていくうちに、徐々に褐色から黒くなっていく変化。その変遷から昨今の世情を思い浮かべたととりました。
あんな美しい自然が、何で無機質な黒褐色にされてしまうのか、ウクライナの惨状を思わずにいられない句です。
(田 友作)
乳飲み子の飲みっぷりよし若葉光 小峰 トミ子
乳飲み子と若葉光の取り合わせピッタリですね。
瑞々しい生命力に元気を貰いました。
(原田えつ子)
帆船を眺めスクリュー・ドライバー 大西 惠
今こそちょっとお洒落をしてこんなにゆったりとした時間を持ちたいものです。 流れるのはジャズでしょうか、、、
(原田 洋子)
新緑に命を託す喜寿の朝 田 友作
この人はどこか病気があるのだろうか。77歳のめでたい朝、字の如く、喜びの日、新しい芽に自分の命を託し、消え去ろうとしている。かたや、喜び、かたや、悲しみ、この対比が美しい。 勿論、ある意味では、死も美しいのかも知れない。新緑も美しい。
美しいものを並列させ、かたや対比という、良い句だと思います。
(長谷川博)
横のもの縦にもせずに春過ぎる 長谷川 博
何とはなしに物憂いまま過ごしてしまった去年、今年のコロナ禍の春を詠いながら、普遍性もある句だと思います。
(山戸 則江)
刻まれて山盛りキャベツ無抵抗 田 友作
トンカツもエビフライもキャベツがどっさり刻まれています。レストランや大衆食堂、自宅でも刻まれていて、ほんとうに無抵抗。誰にも分からないキャベツ戦士です。
(小坪亭ゑん)
跳び箱を跳び薫風に乗り移る かわにし雄策
跳び箱を跳べた「爽快感」は本人にしか分からない快感で、それが薫風に乗り移るという感覚が素晴らしい。
(福島 雪雫)
かけがえのない時つかめ羽抜け鳥 島田 啓子
季節の変わり目が来れば、律儀に羽毛の抜け変わる鳥たち。命を十全に生きようとする命あるものたちへの、作者の共感や、祈りにも似た応援の気持ち、等々を感じました。
(佐藤 ポチ)
デイゴ咲き高いフェンスのアメリカ 金子うさぎ
アメリカの軍事基地に苦しむ沖縄-すっきりと表現されている。「デイゴ咲き」沖縄県民の気持が、「高いフェンス」軍事基地の難しさが、的確に伝わります。
(桑田 青三)
新妻はくきくき剥くよ新キャベツ 恵夢せとか
常々、兼題を出す方のセンスの良さを感じています。
そして、それに答える我々…。
会えない日々が続いて居ますが、何か連帯感?のようなものを感じてしまいます。
今月はキャベツと横。
キャベツ二句が特選候補。
決定打は「くきくき」
(今時?) YouTubeでキャベツの音を調べてみました。
実際、新キャベツを買って剥いてみたりもしました。
私には「くきくき」は、出ないなぁ。
天晴れです!(^^)
そして、上五の新妻。
唄の新妻鏡~♪が頭脳から飛び出し~。笑
うさぎ
五月の特選が決まりました♪♪
(金子うさぎ)
デイゴ咲き高いフェンスのアメリカ 金子うさぎ
沖縄本土復帰50年とマスコミが騒いでいます。でも現状は沖縄は治外法権のフェンスが張り巡らされたままにアメリカの軍事基地の役割を背負わされています。その高いフェンスの周りに咲く情熱の花、デイゴを配置してさらりと深い意味を詠われています。 (かわにし雄策)
おたまじゃくし俺もお前も似てるなあ 國分 三德
水面をゆらゆら泳ぐその姿に自分を重ねる視点が面白い。それを「お前も似てるなぁ」と語りかける表現はユーモラスで又、人生観をも感じとれる。全体に流れる時間の静けさも好きな一句です。
(島 さくら)
地球のうす皮を剥く潮干狩り 上薗 優
潮干狩りをする様子を「地球のうす皮を剥く」と表現しています。作者が見ているのは、貝を掘る熊手ではなく、熊手で掘り起こした貝たちでもないのです。手元だけを見ているのではなく、もっとぐーんと視野を広げて、「地球」を見ているのです。まったく、こんなことを作者のほかに、いったい誰が思いつくというのでしょう! 脱帽です。
(大西 惠)
2022年浜風4月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
いつも一緒蛙解剖した事も 恵夢 せとか
初めて体験する解剖。怖がっている友の横に来て、気合の一声をかけた。あの時からもいろんな事がありました。いつまでも一緒。
(濱本 寛)
春愁の吐息は仏空也像 桑田 青三
何度も、六波羅蜜寺で観た【空也上人像】上野では特に、後ろ姿に感動しました。わたくしも、こんな句を詠めるようになりたいです。
(島田 啓子)
今日のこの浅蜊的嬉しさは何 島 さくら
春のウキウキ感を、浅利が元気良く砂出ししている情景で、表現された『凄腕』に感服しました。
『浅利的嬉しさ』なんて、とても思いつきません。作者は中国語の勉強をされている人でしょうか…
(原田 えつ子)
いつも一緒蛙解剖した事も 恵夢 せとか
「蛙解剖」でドキッとしましたが、それと対照的な「いつも一緒」の対比が効果的だと思います。
私も小学生の頃に蛙の解剖を友達とやったことがあるだけに、とっさに手がのびてしまいました。
おそらく作者も遠い昔の子どもの頃の思い出を詠んだのでしょう。なのに、それらの言葉を使わずに読者にそれを連想させる作品となっていて、作者の優れた技巧が光っている句ではないでしょうか。
(田 友作)
戦の夜キラキラキラキラ桜散る 聖木 翔人
日ウクライナ外交樹立記念に各都市に植えられた桜。闇の中、閃光を浴びながら散る。その情景が胸に迫る。しかしそこには桜の平和への希求、それでも咲き散る命の営みをも込められているように感じる。
戦時下の桜、中七の限りなく哀しくも美しい表現が心に沁みました。
(島 さくら)
散るなんて思いもせずに咲く桜 原田 洋子
桜は毎年、ただ季節に従い、無心に咲いたり散ったり。その周りで、人間は一喜一憂。そんなおかしさや、桜花の健気さ・はかなさなど、いろいろ感じさせる一句、と思いました。
(佐藤 ポチ)
ウクライナ我等と共に春を待つ 福島 雪雫
早く平和が訪れることを願う気持ちを表現してくれていたので選びました。 (G)
飛火落火ひまわり大群腕を組む 島 さくら
「飛火落火」と「ひまわり」ですぐにウクライナのことだとわかります。
「ひまわりの大群腕を組む」、ウクライナの国民が一丸となり、ロシアに対抗して国を守るということでしょう。平和ボケしている日本人には信じられない出来事です。
飛花落花を飛火落火として砲弾の雨を連想でき、いいなと思いました。
*今回は、今現在だから特選と選べるけれど、いつか時が過ぎ、忘れたときには理解できなくなるかもしれないもの(飛火落火ひまわりの大群腕を組む)と、平和な日本の光景(違います違うの蛍烏賊の身投げ)と、自分が高齢になってきて同感(邂逅に名前出てこぬ飛花落花)と思うもので、かなり迷いました。
それでも心惹かれるし、これだけの一方的な戦争、将来に語り継がれるでしょうから、掲句を選びました。
(山下 宗翆)
遠蛙関東平野一望に 岩城 順子
青田のそよぐ中から遠蛙の鳴き声が聞こえてきます。遠蛙と関東平野の対比に詩情の豊かさを感じました。
(小峰 トミ子)
手放して観覧車から石鹸玉 小坪亭ゑん
今、こんな事が実際に出来たら、どんなに痛快でしょう。どんなに子供達が喜ぶでしょう。 想像しただけで笑顔になれます。
空からシャボンが、ふわりふわり又ふわり、、、 (原田 洋子)
春愁の吐息は仏空也像 桑田 青三
京都、六波羅蜜寺の空也像。教科書によく載っている。空也が南無阿彌陀仏と唱えると、それが、仏となって口から出ている。私もこの仏像が大好きで、よく京都のこの寺に出掛けたものだ。今、まだ、東京の上野にきているのかな?
とても懐かしく、この句を選んでしまいました。 (長谷川 博)
神様よなんでわたしは蟇やねん 國分 三德
**今回は、相撲甚句テイスト?で**
特選の候補が4句ありましテン。
その内、2句が蛙の句。
ズルいカエルに蟇蛙…。
ゲロゲロゲロと考える。
松澤昭さんの一句
「極楽を出てきてしまう蟇」
嗚呼、何で君は大阪弁やねん。 なぁ~。
と軍配、蟇にひっくりカエル。
そらよろしいわ。
拍手喝采やね♪ (金子 うさぎ)
春愁の吐息は仏空也像 桑田 青三
空也像の眉の辺りの愁いと、吐く息が六体の仏像となって連なっている様をふっと詠まれて、作者は恋をされているのかな。 (恵夢 せとか)
すすり泣く調停室に月おぼろ 田 友作
調停室では、今何の調停をしているのだろうか。調停員は公務員、おそらくは定時に帰る。お互いの正義とエゴが絡み合うのが調停。冷静になれぬのが人間。実利を取ったとしても虚しい。月おぼろがいいのかどうか。
(今野 龍二)
九腸寸断蛙がいない 上薗 優
春先になると蛙の轢死体に出くわす。一句にしたいと挑戦するが、残酷さだけの句になる。この句には驚いた。哀れな蛙の死体を漢詩のごとく表現している。凄味を感じる。
(桑田 青三)
春愁の吐息は仏空也像 桑田 青三
折しも国立博物館で開催中の空也像の展示をご覧になったのですね。
空也上人が口から吐いておられる六体の小さな仏は上人の春愁の吐息に違いないと作者は喝破されました。作者は空也像から大いなる発見と功徳を得たのです。
(かわにし雄策)
万葉の地に堕つひばり石舞台 かわにし雄策
奈良の石舞台に行きたいと思っています。ひばりはきっと飛ぶ!
朝鮮…の句は気になったので、77番も特選にしたかったのですが…。
(小坪亭ゑん)
神様よなんでわたしは蟇やねん 國分 三德
アンデルセンの童話の「親指姫」を思い浮かべました。親指姫が蟇と結婚させられそうになり、悲しむ場面があります。その童話の中の蟇のイメージはよくありません。
そんな蟇が神様に訴えているのです。手足はなくともきれいな鱗を持つ魚、燕尾服で颯爽と飛ぶ燕、なのになぜ自分はこんな色のこんな模様の肌なんだ、もっと人間にも素敵だと言ってもらえるような姿にしてくれたらよかったのに、と。
もしかしたら蟇が本当に神様に訴えているかもしれないような気もするし、新しい童話のワンシーンのようにも思え、ちょっと楽しい気分になりました。しかも、大阪弁っていうのがまた楽しい。
(大西 惠)
すみれ野に電車ごっこをして日暮れ かわにし雄策
子供の頃、田んぼのすみれの中で遊んだ日々を思い出させてくれました。将にその原体験が脳裏をかすめました。
(福島 雪雫)
2022年浜風3月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
戦なきとよあしはらや菫草 桑田 青三
ウクライナの人々が逃げて国を去る悲惨さに、心が詰まります。
平和な日本を『菫』に託し、格調高く詠まれていて、素晴らしいと思います。
犠牲者が一人でも少なく、侵略戦争が終結するよう祈ります。 (原田えつ子)
青空よ寂しくないか桜満開 島 さくら
満開の桜と青空を対比したのが良い。どちらも春爛漫で心うきうきという面もあるが、一方では空が青ければ青いほど、そして満開の桜も寂しさを誘う面もあり、それを空に問いかけている作者も、一抹の寂しさを感じているのでは無いでしょうか。その心情を上手く表現したとおもいました。
(田 友作)
「ゲルニカ」を眺める為の椅子ふたつ 金子うさぎ
ゲルニカは説明する事もないだろう。為のとすると椅子の現状説明になって、フォーカスが椅子に向いてしまう。
「ゲルニカ」を眺めている椅子ふたつ
余分なことは言わないこと。この句には季語は無用、季語はこの句の良さを消してしまう。
(今野 龍二)
戦なきとよあしはらや菫草 桑田 青三
コロナ禍で心身の疲弊している世界、命の祭典五輪が行われている。その時、血の繋がる隣国へ侵攻する国。
戦なき我が国、野の菫草が教えてくれています。 (濱本 寛)
送料は無料です春一番 田 友作
思わず笑ってしまいました。思いがけない視点で面白かったです。 (G)
「ゲルニカ」を眺める為の椅子ふたつ 金子うさぎ
絵画からの【戦争】は、遠いものだったけど、TVの画面からは現実の【戦争】を見せつけられる。
椅子ふたつ、【平和】を語り合って欲しいですね。 (島田 啓子)
どの紙もひそとさざめく大試験 かわにし雄策
試験会場の静かな緊張感の表現がうまい。
試験問題や答案用紙をめくる音をさざめくと捉えたところがいい。 (國分 三德)
「ゲルニカ」を眺める為の椅子ふたつ 金子うさぎ
椅子が二つの意味を考えました。よく分からなかったのですが、白と黒、生と死、男と女。戦争と平和でしょうか。
(恵夢せとか)
大仏のくちびるなぞる日永かな 恵夢せとか
茶の間に刻々届く戦争の映像。それをまるで映画を観るように見ざるを得ない毎日。そんな遣る瀬無い心に、この大らかな句が 救いになりました。
(原田 洋子)
ゆきずりの猫と花見てあと一句 金子うさぎ
作句に悩んでいるいる時にふと出会った(掲句の場合は猫)猫にヒントを貰って一句出来上がり!! そういう事ってありますね。良かったですね。
(小峰トミ子)
陽炎やきつと戦艦ポチョムキン 桑田 青三
以前観たこの映画は衝撃的だった。1905年ロシア第一革命をモンタージュ理論という技法を絡め、独特に幻想的に描いた作品。中でもコサック兵が民衆を襲う残虐なシーン「オデッサの階段」は余りにも有名である。
そして117年後の今、現在。奇しくも、あのオデッサにロシア侵攻が迫っているというニュース。
何という歴史の繰り返し。重なる。革命、戦争がもたらす悲惨さを映画を通し、陽炎という季語でその意味を表現された掲句に釘付けになった。
(島 さくら)
うつらうつら春愁を置くオットマン 原田 洋子
たぶんきれいな細身のレディが、きゃしゃな足をオットマンに預けて、なんとなく物憂い感じで椅子に座っている( 横たわって) ような……? 春の昼さがり、場所はサンルーム……?などといった絵が浮かぶ、おしゃれな一句。
おしゃれでいいな!と、感じました。 (佐藤 ポチ)
もう待てぬ反戦ビラを春一番 島 さくら
本当にもう待ってなどいられる状況ではない。直ぐにでも止めなければ...。
逸る気持ちが春一番。 (上薗 優)
君の椅子そっと座った卒業の日 佐藤 ポチ
解ります。好きなのに、好きと言えず、迎えてしまった、卒業の日。貴女のぬくもりの、せめて椅子に。そっと座って。臆病者の愛が。
(長谷川 博)
うつらうつら春愁を置くオットマン 原田 洋子
とっても気になるオットマン、そして、ポチョムキン。
意味を調べたら、オットマンは足置き。真夜中の私そのまんま! うつらうつら…。
「春愁を置く」と書いたところがニクイ(上手い)なぁ~♪♪ (金子うさぎ)
本日は雛壇でネコ身づくろい 佐藤 ポチ
何かゆったりとした時間、そこにはまっている自分を感じ特選としました。
(福島 雪雫)
友だちか恋人なのか目刺し焼く 大西 惠
彼女、俺のこと恋人と思ってくれているだろうか。目刺しを焼きながら思いに耽っているつましい学生時代を思い出します。
(桑田 青三)
コトリとも受験の椅子は声挙げず かわにし雄策
「どの紙もひそとさざめく大試験」と同じ内容なので、決めかねました。どちらが試験中の音として気が散るかなと思ったとき、紙をめくる音は皆がさせているのでさほど気にならないし、それを聞いているほど余分な時間は無い。が、椅子をガタつかせたら、ハッとして気になる。ということで、これを特選にしました。
(山下 宗翆)
「ゲルニカ」を眺める為の椅子ふたつ 金子うさぎ
この作品には季語がない。しかし、季語の全てを総合しても敵わないと思われる圧倒的な詞、「ゲルニカ」が万感の想いを込めて屹立している。
世界の美術家、カメラマン、小説家、詩人、俳優、音楽家、等の才能が幾たび「ゲルニカ」の中に佇み、通過して行っただろう?
その中で何人もの斃れた人々がいる。用意された二つの椅子の片方に坐るのはナチスとフランコの暴圧と闘ったそのような人々の群像だろうか?
(かわにし雄策)
「ゲルニカ」を眺める為の椅子ふたつ 金子うさぎ
「ゲルニカ」と「椅子ふたつ」、これだけですべてを表現している句だと思いました。二つの言葉が強烈に心に飛び込んできました。季題の「椅子」をよくぞ持ってきたものだ、と思います。無季句ですが、それを感じさせず、また、無季だと気づいても、このままでいいんだ、と思える作品でした。
(大西 惠)
2022年浜風2月句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
憎しみをさらりと消しぬ春の雪 桑田 青三
憎しみと春の雪のつながりは何だろうと思ったとき三島由紀夫の最後の小説といわれる、豊穣の海四部作の「春の雪」を思い出しました。男爵の御曹司18歳の美青年清顕と年上の聡子の物語。童貞を苦しめ怒らせる聡子、「私がもし急にいなくなったら清様どうなさる」愛の苦しみが憎しみにもなります。結局悲恋に終わります。
立春が過ぎて都関東では時に雪が降ります。一夜明けたら一面の雪景色、心の漂白でしょうか。 (濱本 寛)
卵ふわふわ朝食に春を呼ぶ 上薗 優
レンギョウ、ミモザ、フリージア・・・・と『春は黄色から始まる』と聞きました。
焼きたてのふっくらとしたオムレツの黄色に春を感じました。
バターの香まで漂ってきました
美味しそう~❤
(原田えつ子)
昭和へと玉砂利踏みぬ建国記念の日 桑田 青三
世界中から軍靴の響き、他人事ではない。
(今野 龍二)
「お母さん」里子の呼ぶ声吹雪く夜に 田 友作
昔ならともかく、今の時代にも色々な理由で里子に出す人もいるという。
吹雪く夜は格別寂しい。里子に出された子供の悲しみがひしひしと伝わって来ます。
(福島 雪雫)
我先に青天を突く冬木の芽 小峰トミ子
春を待つのは、人間も植物も。
生あるもの皆同じ。
春よ来い早く来い、ですね。
(島田 啓子)
シャボン玉残る写真と首輪だけ 小坪亭ゑん
幼子の死を、はかない命のシャボン玉に喩えたと言われる野口雨情の「シャボン玉」を連想させる句ですが、この句は愛犬の死を悼んでの句ではないでしょうか。
直接「死」や「悲しみ」という言葉を用いず、そして亡くなった対象を詠みこまないことにより、それだけに一層より強く作者の悲しみを読者に伝えるのに成功した句だと感じました。 (田 友作)
公園に真白きマスクのホームレス 田 友作
一読なんの変哲もない風景の句と読み飛ばした後、「真白きマスク」の「ホームレス」に背中がゾクッと冷たくなるような、不気味さを感じました。社会からはじき飛ばされた男が汚れのない真っ白なマスクをしている。人間社会の不安感を見事に伝えてくれます。
(桑田 青三)
晩酌が生きがいの友酒断ちぬ 聖木 翔人
私も晩酌として、500の缶ビールと焼酎2杯。とても楽しみです。まあ、最近、車ででかける予定がないと、昼間から飲んでしまいます。それほど、好きなお酒をやめなくてはならないというのは、私には解りません。万葉集にも、詠われています。偉ぶって酒を飲まない人は、猿にかも似んと。
(長谷川 博)
モジリアニ首にふわりと春ショール 小峰トミ子
兼題の「首」にモジリアーニの登場とは~~。あの特徴的な首の長い虚ろな表情の女性が、春色のショールを掛けている姿を想像するだけで、可笑しいやら、楽しいやら~~。最高です。 (原田 洋子)
啓蟄だ出てこい不要不急たち 國分 三德
「春になったのだから閉じこもっていないで外に出ようよ、コロナだって春になったらどこかに行ってしまうよ」。難しい言葉も使わずにそのように訴えてくる気持ちがよく伝わる句だと思います。 (山下 宗翆)
豆まきやわたし鬼なのどっちなの 國分 三德
いきなりそう迫られたら思わず、手にした豆がこぼれ落ちそうに。まるで自分に問われたようです。鬼って何…ちょっと哲学的でもあり、つい立ちどまってしまった。どきどきする興味深い句です。 (島 さくら)
白鳥の密なる群れにある安堵 上薗 優
コロナ禍で人々は密を避け、不安があります。白鳥の群れが超過密でも生き生きとしている様に安堵を覚えたのです。 (國分 三德)
啓蟄だ出てこい不要不急たち 國分 三德
24と60は、ともに啓蟄とコロナを関連させています。どちらも好きですが、24のほうが、コロナに(或いは自粛を国民に唱えているだけのリーダー達に)攻撃的な感じがあり、今の私の気持ちに合致し、選ばせていただきました。 (佐藤 ポチ)
よろしければ二人でお茶を雪女郎 島 さくら
雪女郎は、いつもひとり酒。たまには、午後のティータイムを二人でどうぞ!
(小坪亭ゑん)
白鳥の思案の首の長さかな 岩城 順子
兼題の白鳥の句が散見される中、白鳥の思案の首とは正にそんな気のする言葉と思います。今後思案する場合には、この句を思い出すことでしょう。
(小峰トミ子)
昭和へと玉砂利踏みぬ建国記念の日 桑田 青三
建国記念日なのに世間は何事かも知らぬようにのんびりと。
国が独立したなんて、何時?どのように?
せめて政府が誘導して国民に浸透する努力すればいいのに。
玉砂利と皇居イコール敗戦。玉音放送は内容が意味不明。
国民の全てはこれで終戦、心底安堵。あとは明日からどう生きるか。
A級戦犯の遺族はいまだに戦犯の罪悪感の意識なし。
ロシアとウクライナが交戦したら人類滅亡の危機。
建国記念日とはこのような意味を含んだ重みのある日でもあるのです。
(U3)
白鳥の密なる群れにある安堵 上薗 優
「ある」安堵とは~と考えていると、群れにある安堵?…。有る安堵感の事?
(金子うさぎ)
啓蟄だ出てこい不要不急たち 國分 三德
同調圧力の中心に立ち言い放ちたい、これが私の不要不急たち。
心すっきりの表現に有難うを伝えたい。 (上薗 優)
抜け出たる嗣治の裸婦や小白鳥 桑田 青三
嗣治の乳白色の裸婦像はパリ画壇で注目を集めました。その裸婦が画布を抜け出しているとおっしゃるのです。下五に置かれた小白鳥との配合が難解でそれが魅力でもありましたが、戦後直ぐに上演されたバレー「白鳥の湖」の舞台設営に携わった嗣治の活動に思いを寄せられたのかもしれませんね。
(かわにし雄策)
阪神淡路震災忌ヤカンを火に掛ける 金子うさぎ
あの早朝の大地震と甚大な被害、亡くなった方への追悼、二度と起こってほしくないという気持ちを思いつつ、「今日はこうしてお湯を沸かすことができる」とヤカンを火に掛けているのです。
「阪神淡路震災忌」と「ヤカンを火に掛ける」だけで構成された句ですが、この二つ(非日常と日常)を結びつけたことが、とてもよかったと思います。
(大西 惠)
2022年浜風新年句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
初日の出善人のみの路線バス 島田 啓子
新年になると人間、すべての物が正しく思え、すべてのことが善に見え、すべてのものが美しく感じる。初日の出が差し込むバスに乗り合わせ、乗客全員が光り輝く善人に思える。こんな世界に過ごしたいものだと。
(桑田 青三)
白髪葱水に放たれ遊びおり 原田 洋子
葱は青い部分と白い部分が際立ち美しい。泥の中に有った根が洗い出すと真っ白に水に揺れ、仙人の風格を持つ。遊びの達人かも。
(濱本 寛)
のっけからドスンと受け身初稽古 かわにし雄策
小生は60歳定年で仕事を辞めて、当時流行っていた「おやじ狩り」の餌食にならぬよう合気道を始めました。
厳しい稽古の内、寒稽古の辛さを思い出し、この句を特選としました。「理屈なしの稽古」が滲み出ていると感じました。 (福島 雪雫)
鍋の具の八方美人長葱や 山下 宗翆
この句に出てくる、八方美人という、4字熟語の意味は、辞書で調べると、主に2つの意味がある。
一つは、欠点のない美人。もう一つは、誰に対しても如才なく、それでいてなくてはならぬもの。この句では、後の方の葱には欠点もあるがなくてはならない、葱。そういう立場のものであろう。
そこのところを上手く擬人化していると思いました。 (長谷川 博)
いつの間に人生の午後石蕗の花 原田 洋子
人生の午後とは、暮れではなくて、まだまだです。
黄色の群生の花が励ましてくれています。
(島田 啓子)
炬燵だし久に睦ぶや古時計 濱本 寛
かつて藤田湘子が日経新聞だったと思うが、古時計の振り子の句を自分自身の動かなくなった股間の振り子に例えて絶妙の鑑賞をした。作者の振り子はまだ動きそうですね、お大事に。
(今野 龍二)
幾晩も空と語りし凍み豆腐 大西 惠
冬空にさらされて、身が引き締まっていく凍み豆腐が思い浮かびました。 (G)
初富士や中村哲のひげ笑う 島田 啓子
感想文がいらない位?…。 選句して直ぐに手が出ました。(^^)
哲さんの笑顔。と行動は言葉では言い表せないです。
*追記 哲さんのお陰で、マグサイサイ賞も知りました。
(金子うさぎ)
コロナ禍の証人となる寝正月 原田 洋子
コロナに罹り寝正月となってしまった作者は、コロナの証人であろう。しかし単なる寝正月なのかどうかは微妙?です。時流に乗った句ですね。
(小峰トミ子)
身の黒きつゆほど知らぬ猫に雪 聖木 翔人
新鮮な驚きです。猫は己が真っ黒とは一生知る由もなく、況してや、それ故にしばしば嫌われる事も。情に流されず、見事にモノクロームの世界に昇華されたと思います。
(原田 洋子)
初雀チュンチュンあたたかい憲法 かわにし雄策
「憲法9条をノーベル平和賞に」の取り組み、活動を想起します。近年あまり見かけなくなった雀たちだけれど、初雀の澄んだ鳴き声に託した作者の平和への希求。その象徴のような風景がまた、あたたかい。
(島 さくら)
葱雑炊吹いて話の腰を折る 岩城 順子
あえて話の腰を折ったのは、同席者の気まずい思いを察した思いやりなのかも。
葱雑炊のほっとする素朴さでそんな連想をしました。
(山戸 則江)
金箔へふっと息かけ女正月 島 さくら
女たちに振る舞われた善哉の蓋を開けたら、金箔が……。そんな雅やかさに引かれました。 (原田えつ子)
寒月光ソーラー時計の胸騒ぎ 島 さくら
何度か見えたソーラーは、現実的な時計とは別世界。寒月も全く違って、胸がドキドキするような夜があるかもしれません。
(小坪亭ゑん)
つゝましや論語唱えて深谷葱 金子うさぎ
ネギイコール渋沢栄一。
これがイコール全ての句の感想内容です。 (U3)
初雀チュンチュンあたたかい憲法 かわにし雄策
平和な光景です。小さくてか弱い雀たちが楽しそうにおしゃべりしています。それも、「憲法」に守られているからこそ(「雀」は国民のことでもありますね)。「あたたかい憲法」という表現は、憲法の本質を言いえて妙。「初雀」としたことで、新しい一年の始まりにふさわしい、希望のある一句となっています。
(大西 惠)
触れたいと想ふ人あり葱洗ふ 濱本 寛
句中の主人公が男性なのか女性なのかずっと考えています。愛する異性に触れたいと願うのは自然の情理だし、それから更に愛も深まっていきます。冷たい水で葱を洗っている姿からは秘めやかな情念を纏った女性像が浮かんできます。
しかしとても潔い情念だと思いました。
(かわにし雄策)
触れたいと想ふ人あり葱洗ふ 濱本 寛
農家育ちの私は、収穫した葱を川で洗うのを手伝わされたことが良くあった。
収穫したばかりの葱は、土にまみれて黒いのだが、あらうと真っ白になるが、それは大根と違って艶のある白だ。
それが、幼児の頃の私を背負って育ててくれた姉や(当時18歳くらいかな)の白い手やうなじを思い出させ、葱を洗いながら、もう一度その姉やの肌に触れたいと思わずにはいられない・・・そんなことを思い出させてくれる句だ。
(田 友作)
2021年12月浜風句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
厚着でもやっぱり判るAカップ 長谷川 博
笑ってしまいました。素直に面白かったです。
(G)
新調の堪忍袋と年越しす 原田 洋子
とってもユーモラスな句ですね!
素材は何ですか?切れないように鹿革の、印伝が最高級でしょうか…それより『従心』を超える我が身なら、破れる木綿の方が良いのかも…。
木綿で、ちょっとだけ堅牢なものを探してみます。
(原田えつ子)
もう要らない計量カップ日向ぼこ 原田 洋子
同感です!
もっと以前から、5cc、15ccの計量スプーンは使っていないのですが、ほがらにのんびり暮らしましょう♬ (恵夢せとか)
帰ろうと言えず彷徨う聖夜かな 恵夢せとか
作者の意図は分からないが、恋人同士がイブの夜、どちらも「帰ろう」と言い出せず、時間ばかりが過ぎていく光景を思い浮かべる。
夜も更けて、本当はもう帰らなければならない時間なのだが、別れたくない、出来れば朝まで一緒に居たいという気持ちがあるから「帰ろう」と言い出せない、相手が言ってくれたら踏ん切りがついて帰れるのだけど・・・そんな気持ちのままクリスマスのイルミネーションで華やぐ街中を当てもなくさまよっている二人の気持ちをうまく17音で表現したと思う。
(田 友作)
なんたってポポポポイント年用意 原田 洋子
せっかく貯まったポイント、12月で無効のものが多い昨今。
買い物をポイント気にして、右往左往する自分。なんだかなぁと思いながらも、貯める楽しみ、使う楽しみ止められませんね。
(島田 啓子)
年惜しむてんやわんやや注射針 桑田 青三
コロナで開けてコロナで暮れて。
また新種が次々と人類狙って襲いかかる。これ災害でなく人災と見る。天につばすれば我にかかる。島国は感染禍の危機感希薄。
マスク不足が今在庫8千300万枚、倉庫利用料金320億円也と。担当者は島流しかオホーツクで全裸でカキゴオリ作り終身。 (U3)
焼鳥や息子は巴里に遊学中 恵夢せとか
この父親と息子の関係はとても興味深いですね。一本の映画になりそう。ペーソス溢れる物語。いや、意外にコメディー。いやいや、、、。
(原田 洋子)
大部屋の一輪挿しの椿落つ 山戸 則江
大きな部屋の床の一輪挿しの椿の花が、目の前で首からもげ落ちた様子がまず光景として浮かびました。
でも映画の世界では、主役にはならない俳優さん達の楽屋を大部屋というので、そこから這い上がって主役がもらえる女優さんになり、とうとう逝ってしまったとも思えました。
さらに読み直したら、一小市民が社会に出て、結婚をして一家を構え、何とか幸せに暮らして、「ぴんぴんころり」で生涯を終えたと、私の願望と同じだなんてことまで考えてしまいました。
一人の読み手でもいろいろに解釈できるのだから、他の方の意見を聞きたくなりました。
(山下 宗翆)
鍵掛けて机の奥に古日記 田 友作
鍵をかけるほど大切な古日記でしたが、ふと目にした時から諸々の秘密?が零れ出し、複雑な表情をしている作者が浮かびます。
(小峰トミ子)
半世紀セーター着込んだキューピーちゃん 小坪亭ゑん
「ちゃん」が
可愛く、楽しく
まるで
おもちゃ売り場のキャッチコピーみたい☆
楽しい俳句を今月は自分自身
出せなかったので
これを特選に♪
(^^) (金子うさぎ)
裸木と本音の話して歩く 濱本 寛
後ろ手を組んでぽとりぽとりと歩く姿と裸木の重なりが目に浮かびます。淋しい時も裸木が寄り添ってくれているよう。
(山戸 則江)
木枯らしも温もる谷間Dカップ 田 友作
この句は、女性の温かさを感じさせる。貧乳でも豊胸でも巨乳でも、そんなことは関係ない。乳呑子なら、誰でも一度は、お乳にお世話になっている。そんなところをうまく謳っている。
(長谷川 博)
爆発の前の静けさ干海鼠 今野 龍二
英子さんへの献句が数多くありました。なんとも選べない中で、爆発と干海鼠の対比に惹かれました。 (小坪亭ゑん)
雪吊りの他美しきもの見えず 金子うさぎ
長い歴史の中、どの様な世にあろうと粛々と一枝一枝に思いを込め樹木と対話し雪吊りを守る庭師の人々。
そのゆるぎない強さと優しさの大きな背景に又、作者は美を見ていると感じる。逆説的な表現にその雪吊りへの思いが際立ち共感します。
(島 さくら)
カップ二つここまでたえて冬に入る 山下 宗翆
共に苦労してきた妻と死に別れた気持ちを表現していると感じました。でも逆に、コロナ生活に耐え、二人でこれからも頑張ろうと紅茶をしずかに飲む風景かも。さまざまな場面が思い浮かびます。
(桑田 青三)
他国語でナマコの仕掛け貰いけり 金子うさぎ
何とも不可思議な魅力的な句である。
ナマコの仕掛けとは何か、そして多国語で貰ってしまう。米国が様々な兵器を言葉巧みに売り込むのか、或いは中国が日本の高価な干海鼠をいかに手に入れようとしている様か、はたまたナマコの形をした何かいかがわしいものか。
ナマコ漁の話ではない、読者の鑑賞を試している。他国語と言って言語を特定していないのが巧妙。 (今野 龍二)
来世は海鼠になって食うて寝る 桑田 青三
あのコリコリ感がたまらないという食通のフアンの方もいらっしゃいますが、形状といい皮膚感覚といい馴染めなくて口にすることができない方もおいでです。
そんな海鼠に作者は変身願望をお持ちです。しかも食うて寝る!!
もっと海鼠を食べて作者の気持ちに近づきたいと思いました。
(かわにし雄策)
なんたってポポポポイント年用意 原田 洋子
商品を購入すると付くポイントの句は、初めて見た気がします。全国を考えればひょっとしたら、どなたかが作っているかもしれませんが、「ポポポポイント」などという大胆な言い方は、おそらくこの句のほかにはないでしょう!
なにかと物入りな年末、貯めたポイントを一気に使ってしまおう。思いっきり使うというほどのポイントではないけれど、「なんたってポイントがあるもんね。買っちゃうよ!」的な、強がり?見栄?みたいなものが中七でよく表現されていると思いました。
(大西 惠)
2021年11月浜風句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
同い歳の父と歩きたし暮れの秋 聖木 翔人
亡くなった父上の歳に自分が、もうそんな歳になったのかと言う思い。そして、もっと沢山話がしたかった。私も同じ気持ちです。 (島田 啓子)
阿波踊り反戦唱えおどり逝く 金子うさぎ
阿波の寂聴99歳天寿。反権力・反戦を「おどり」ぬき共産党以外に投票したことがなかった。彼女の俳句の本に『生と死の歳時記』がある。 (聖木 翔人)
帰宅してまず大根の首落とす 岩城 順子
何気ない日常の一コマですが、活字にすると一瞬が生々しいドラマにもなるのですね。この大根には、手に負えないほどの青々とした葉が付いていたのでしょう。それにしても、意表を突くサディスチックな句に脱帽しました。 (原田 洋子)
鴨群れ来る天の動脈異常なし 聖木 翔人
地上の大動脈は問題山積みの昨今。ふと見上げると鴨の群れが点々と列をなし天は全きの健在。作者の天への畏敬の念も読み取れスケールの大きさに魅せられました。
(島 さくら)
干し柿のものおもわせる甘味かな 聖木 翔人
「ものおもわせる」との表現は抽象的だが、「甘味」にかかっているだけに意味深なものがあり、惹かれました。
干し柿を食べながら、田舎の山に実っている柿、それを収穫して皮をむき冷え込む軒下に干す手間、そして田舎での家族や自分の来し方など様々な事をしみじみと感じている様を思い浮かべる句で、特選に頂きました。 (田 友作)
少し呆け薬四錠実南天 濱本 寛
少し呆け始めている方なのでしょうか。呆けには真っ赤な実南天のような錠剤が効きそうな気がします。早く特効薬が開発されますように・・・。 (小峰トミ子)
蔓橋恋の架け橋返り花 小峰トミ子
かずら橋、祖谷渓の絶壁にかけられている。返り花とあるが花の事ではない。人生の終わりに近づいて初めて最愛の人に出会ってしまった。すべてを捨ててもこの人といたい。危険な橋も危険な世の中も怖くはない。 (今野 龍二)
なほ燃ゆる大根抱く桜島 島 さくら
桜島はこのところ活発に活動、弛んだ国を叱るかのごと。
♭この地を去っても夢路に通う、磯の浜風オハラハー桜島
桜島大根は薩摩の主、作者は何処で。 (濱本 寛)
帰宅してまず大根の首落とす 岩城 順子
「帰宅」という日常と「首落とす」の落差。何も語られていないのに、男女のドラマが見えてきて、向田邦子の短編小説のような雰囲気。 (山戸 則江)
聖堂の靴音堅し冬に入る 島田 啓子
冬に入ったことからくる寒さ、寂寥感、などがよく出ているように感じました。 (佐藤ポチ)
「実はね」と始まる話そぞろ寒 原田 洋子
いい事でも良くないことでも、告白話は緊張でゾクッとするものですね。他、公式の「重要なお知らせ」も…。 (澤村あざみ)
海底は零戦の墓秋の行方 金子うさぎ
戦争の悲惨さと遺族の無念さはことばでは表現出来ない悲劇です。戦争は勝っても負けても幸せを招きませんから。 (U3)
大根引くまつわりついた闇も引く 大西 惠
俳句の言葉通りに、まつわりついた闇も引いて欲しいなぁ。
「引く」が重なり、きっと、この大根にはかなりの根が土に絡みついているのかなァ。。 (金子うさぎ)
冬ざれて光の洗う道祖神 島田 啓子
「冬ざれ」という言葉が印象的です。道祖神も遠い昔の気分が味わえて、ほっとします。 (小坪亭ゑん)
悪人の出て来ぬ自伝蕪汁 山戸 則江
「蕪汁」とあるだけで、池波正太郎の有名なTV時代劇での吉右衛門扮する主人公が、木枯らし吹く日暮れ時に、深川あたりで蕪汁を啜って、一杯・・・という情景が浮かび、「ワッ、いい感じの句だわ、素敵!」と。
しかし、落ち着いてよくよく読んだら、時代劇ではないのですね。確かに自伝では悪口、中傷はできないですよね。だから悪人も登場しない。
蕪の味噌汁は頼りない歯ごたえで、そのことを自伝書に結びつけられたのですね。フフッとにんまりしてしまいました。 (原田えつ子)
我こそは大見得を切る土大根 山戸 則江
抜いた大根に土がたくさんついていた。大根が、土をつかんで、離さない。堂々とした、大根。そんなふうに感じさせる句です。 (長谷川 博)
白山に雪の知らせや母白寿 濱本 寛
遠く離れた、ふるさとへの思いと、お母様への想いが、雪という、柔らかく美しくそして、厳しいものに託されてて、とても好きな句です。加えて、お母様がご長寿で羨ましいなぁと思いました。 (恵夢せとか)
生き切って桜紅葉の軽さかな 恵夢せとか
春は花、夏は緑陰、秋は紅葉、そして思い残すことなくカラカラと枯葉となって終わる。桜よ、一年間ありがとう。 (桑田 青三)
白山に雪の知らせや母白寿 濱本 寛
季節があり景色があり人情があり俳句の基本要素を備えた作品と思いました。無駄をそぎ落とした潔癖な詠いぶりが魅力的です。 (かわにし雄策)
聖堂の靴音堅し冬に入る 島田 啓子
聖堂の大空間に響く靴音の僅かな違いで、季節の移ろいを感じる人間の感覚が俳句では大切なのだなと良くわかりました。 (山下 宗翆)
鴨群れ来る天の動脈異常なし 聖木 翔人
まず「天の動脈」という措辞がとても魅力的だと思いました。天の動脈は、鴨の群れや白鳥やそのほかの鳥たちが渡っても動じることなく、おおらかにすべてを包み込んでくれるかのようです。「異常なし」はちょっと硬い言葉のようですが、「動脈」につながっていることで、自然な流れになっていると感じました。 (大西 惠)
2021年10月浜風句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
かたづかぬ記憶引きずり十月 上薗 優
かたづかぬ、ひきずってしまう記憶とは、忘れてしまいたい事なのでしょうか。思い出として残しておきたい事とそうでない事。得てして逆に。
今年も後2ヶ月ちょっと、きちんと整理したいですね。 (島田 啓子)
テレビ体操男加わり山女の実 金子うさぎ
故郷の盆踊り唄に「山のあけびは何見て開く~、下の松茸見て開く~♬」おおらかな民俗学がテレビにまで。 (今野 龍二)
知りすぎた明日はさておき零余子飯 山戸 則江
知りすぎた、ここでしっかりしっかり切りました。
明日はまた明日がある。丁度炊き上がった零余子飯の香り。 (濱本 寛)
貪婪に食いきよらかに鳴くちちろ 聖木 翔人
この句は、頭に「貪婪」(どんらん)を持って来たことで、十七音の中でとても魅力的な音の展開が生まれました。
同じ意味でも「貪欲」では成り立たないのです。 (原田 洋子)
貪婪に食いきよらかに鳴くちちろ 聖木 翔人
「貪婪」と「きよらか」の対比が面白く、それをコオロギで表現した着眼点が良いと思いました。
コオロギの鳴き声(羽音)は、清らかで哀愁をおびていますが、それとは逆に正に貪婪で、エサが無いときは共食いもする貪欲な虫で、糞も大量にする。
清らかで美しいようだが、裏はドロドロとして醜いという、このような対照的な事って人間の世界にもよくあるので、その比喩ととらえました。
(田 友作)
馬跳びの背中が重い鰯雲 大西 惠
句の前にたたずむとあの馬跳びの感触、セピア色の記憶が映像となって静かに迫ります。まるで新藤兼人の映画の1シーンのよう。鰯雲が限りなくやさしいのです。
(島 さくら)
砧打つ胸に刺さったままの棘 大西 惠
急に心細さを覚える秋の夜長に、長い髪の、白い衣のひとが思い浮かびました。
今年も後、二た月となりましたね・・・ (恵夢 せとか)
首相とて百代過客芋の露 今野 龍二
時代の変遷を感じるスケールの大きな一句ですね。いつの間にか芭蕉の「月日は百代の過客にして~」の中に入っていました。芋の露が胸を打ちます。
(小峰トミ子)
かたづかぬ記憶引きずり十月 上薗 優
現在の自分の環境に相似している事と有期限でないと、かたづけの効率があがらない実感さがリアル。 (U3)
歩きスマホのまま蛇穴に入る 金子うさぎ
街中の歩きスマホにはイライラ、消えてくれればスッキリ。惑わずスルリと穴に入る蛇、気持がいい。この句、愉快な童話の世界、一読、リラックスします。
(桑田 青三)
虫の音も睦言も止む震度四 原田 洋子
先週の地震の実感句と思いますが、震度三では弱すぎ、震度五ではそれどころではなく、「震度四」が効いていると思います。 (山戸 則江)
都会でも故郷でもコスモスは風 原田 洋子
私の故郷は比較的、都会に有ります。この一句を鑑賞した時に故郷とは、祖母の九州の田舎だったり、絵本の中の風景だったり…。
とても、気分が良くなりました♪ なので、今月の特選 ♪ ̄(=∵=) ̄♪
(金子うさぎ)
角帽の稲輝いて犬二匹 小坪亭ゑん
犬が好きなので、この句に惹かれました。大学生の家の犬? 近所の犬? あるいはノラ犬? いずれにしても、和犬だと勝手に思っています。 (佐藤 ポチ)
きちきちばった飛んでイスタンブールまで 島 さくら
キチキチバッタがどこかに行きたいんだけど、それは日本のどこかではなく、フランスでもアメリカでもなく、イスタンブールだったんです。キチキチさんもきっと飛んでいきたいんでしょうね。私も一緒に行きたい! (小坪亭ゑん)
アルバムに母の文字あり秋袷 恵夢せとか
里帰りしたご実家で、秋の陽を背に受けながらのひと時・・・。まるで映画のワンシーンのようです。
『母の文字』は特別な宝物。下五に季語の『秋袷』を置き、とても効いていると思います。お母様そして作者までも、嫋やかな素敵な女性であると、イメージを運んでいきます。
(原田えつ子)
歩きスマホのまま蛇穴に入る 金子うさぎ
蛇行しながらスマホに夢中になっている蛇です。余程進化してない限り、蛇には手足がありません。どうやってスマホを操作してるのか、興味津々です。そんな蛇が冬眠のために穴に入るという。スマホに夢中で冬眠できるのかな? 春になってどんな様子で穴から出てくるのかな? あれこれ考えると眠れなくなってしまいます。 (かわにし雄策)
考える葦に耳打ち秋の声 小峰トミ子
「考える葦」は人間の常套句ですが、葦の葉の色が薄れていくなどの秋の気配が少しずつ感じられることを「耳打ち」と表現したのが上手だなと思いました。
(山下 宗翆)
オクトーバフェスタ罠かもしれぬ胸躍る 島 さくら
「オクトーバフェスト」と言えば。ドイツ・ミュンヘンの世界最大級のビールのお祭りで有名。
日本では横浜レンガ倉庫街が発祥の地で、今では日本全国の各都市で行われるようになりました。今年はコロナ禍で開催が心配されミュンヘンは中止となりましたが横浜は開催されるらしい。その中にあって、「開催」とは何かの罠なのかもと思うのも尤も。しかし、参加したいという心が躍る。将に時宜を得た最高の句と思いました。 (福島 雪雫)
台風の旅路気ままや俺のこと 桑田 青三
ニュースでは台風の「進路」と言い、また「迷走台風」などと言うけれど、台風からしてみれば、それはつまり「気ままな旅路」だったのねー、そうかそうか、そうなんだー、逆の方向から見るって大事だものねー、と読み進んでいけば下五は「俺のこと」。え?え?台風のことじゃなかったの!?
楽しませていただきました。 (大西 惠)
2021年9月浜風句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
事件発生はまなすの咲く無人駅 小峰トミ子
二時間のサスペンスドラマの再放送、すぐに船越栄次郎がやって来て断崖の上で犯人を追い詰める。いつもの話。 (今野 龍二)
コスモスに舞踏を教えたのは風 かわにし雄策
清楚なコスモスがそよと風に踊っている。また地に着く位しなやかにダンスを踊っている。風がダンスの師匠だったとは。素敵な師匠ですね。師匠と言われた風もさぞ本望のことでしょう。
(小峰トミ子)
秋ともし駅で送ったひとのこと 今野 龍二
この「灯」は、去ってゆく列車のテールランプ。 去って行った人は恋人と言うより、結婚したばかりの夫か出兵した時の光景で、夫はそれきり帰って来なかった。帰って来たのは遺骨だけだった。
その時の胸の痛み、悲しみがこの季節になると込み上げて来るのだろう。そう解釈すると涙が出るほどやるせなく、とても辛い句ですね。 (田 友作)
事件発生はまなすの咲く無人駅 小峰トミ子
『火曜 サスペンス劇場』のオープニング曲が聴こえてきそうです。オンタイムは、三十代頃だったでしょう か…。私はこの手の番組が大好きでした。
話の展開、津々浦々の観光地そして綺麗な女優たちが、疲れた頭を空っぽにしてくれました。
定年後、緩やかな時間を持てるようになって、再放送を観ると、以前のようなときめきを、残念ながら感じません。原因は再放送であること、ストレスが少なくなっていること、当時よりずっと人生経験を踏み、興味や世界が広がったからかと思います。
この句で当時を懐かしく想い出しました。楽しい句をありがとうございます。
(原田えつ子)
縄文の闇の生まるる鬼胡桃 今野 龍二
隠していたのは「縄文の闇」でしたか。彫の深い野性的な面構え、確かに、縄文土偶、火炎土器の姿、形そのものです。縄文世界の深い闇を感じます。胡桃は縄文人の貴重な食べ物でした。 (桑田 青三)
浜の蝉いざともなれば大合唱 聖木 翔人
先頃行われた横浜市長選IR誘致に反対市民が結集。立ちはだかる推進陣営にあきらめずに上げ続けた声、声、声。「浜の蝉」「いざともなれば」の表現が心に力強く響きます。喝采。
(島 さくら)
9・11マスクする人外す人 恵夢せとか
こんな少ない言葉で瞬時に言いたい事が伝わる。読み手の誰もが同じ事を考える、とても良い句だと思います。 (島田 啓子)
鬼胡桃なにか隠していませんか 桑田 青三
堅い殻の胡桃の中を気にする栗鼠がまず浮かび、可愛いなと。更に、朴訥とした中に意外性を秘めた人への視線を思いました。 (澤村あざみ)
あちこちを自由気ままに闇夜の蚊 長谷川 博
一目見てすぐ分かる俳句に手 ○(^^)つくづく、人間の馬鹿さ加減のようなものが見え隠れ・・
そうそう、闇夜の蚊も痒いですが、十五夜近くの残り蚊はかゆ~い!御用心 御用心…。
(金子うさぎ)
大丈夫こんなに密で黒葡萄 原田 洋子
ここに出てきている、密とは、今、コロナの関係で、密にならないようにという意味であろう。葡萄の一粒一粒が密接になっている。私としては、密をひらがなにして欲しかった。みつを、蜜ともとれるよう、つまり、甘い一粒の葡萄とも、かけて欲しかった。 (長谷川 博)
血縁の濃い順番に曼珠沙華 有馬 英子
曼珠沙華の赤赤と縁取る田の景がくっきりと見えました。一族の大小の墓碑が田を見守ってくれています。 (恵夢せとか)
カンナカンナ燃ゆるほど淋しき海 島 さくら
誰もいない秋の浜辺、カンナの花色の夕陽が、沈む海に反射して燃えるように真っ赤になる。失恋の淋しさが赤さに反比例して増幅してくる。そんな乙女心が懐かしい。
(山下 宗翆)
ツヤツヤの南蛮を手に思うアフガン 原田えつ子
超大国が最貧国を二〇年にわたり侵略した意味と結末は何か、青とうがらしに問いかけます。 (聖木 翔人)
事件発生はまなすの咲く無人駅 小峰トミ子
「はまなす」と言えば昔「君の名は」で真知子が訪れた東北の砂浜。美空ひばりの「塩屋の岬」が思い浮かぶ。
その北に原発事故で被災され避難区域となった多くの町々、そこにある常磐線の駅は今は無人駅なのかと情景が浮かぶ。時事句ではあるが、なんとも切ない気持ちになりました。
(福島 雪雫)
カンナカンナ燃ゆるほど淋しき海 島 さくら
なんとなく「うん、そうそう。わかる~!」、と感じました。 (佐藤 ポチ)
コスモスの風にたなびく渡世術 山下 宗翆
今の閉塞感に押し潰されそうな日々を息抜き、最後に笑うのはこういう行き方を実践している作者のような方では?cosmosは、そんなことを示唆している宇宙からの使者のような気がします。 (原田 洋子)
軛から逃れ私は鰯雲 島田 啓子
今、自由を束縛する「軛」があるけれど、見上げればきれいな青空に白い鰯雲! 鰯雲のように空を自由に泳いで行けたらいいのに! そんな作者の願いを感じました。「鰯雲になりたい」ではなく「私は鰯雲」と言い切ったところがとても魅力的。 (大西 惠)
コスモスの畑潜むは大魔神 島田 啓子
私もコスモス畑には、何かいそうな気がしてました。大魔人だったんですね!
*今年は秋桜が見られませんね。 (小坪亭ゑん)
あくせくを少し休めと羊雲 原田えつ子
最近家にいることが多く、外に出て空を眺めて開放感を思い出したり、和やかな気持ちになることが多く、心情が重なったので選びました。秋の空や雲はとてもきれいですよね。私は特に十月の空が好きです。 (G)
母ありしそのまた母も花むくげ 田 友作
朝咲いて、夕方にはしぼんでしまうはかないむくげの花に、往事の母の姿を重ねたのかと思います。
ほとんど何も語っていないためかえって「花むくげ」がきいていると思いました。
(山戸 則江)
叱られて泣いた夕焼けハーモニカ 恵夢せとか
ハーモニカの句はノスタルジックで好きです。句のなかに郷愁を感じ、共鳴できます。他の句は難易度高く初心者には難しい? (U3)
雄日芝寂しこの世雌日芝ばかり 桑田 青三
オヒシバもメヒシバも最強の夏の雑草。炎天下の路肩や捨て地にイネ科らしく穂を伸ばして仲良く繁茂していました。野草に関心をもたれる作者が近年のオヒシバとメヒシバの生態系の変化に気がつかれたのです。顕著なオヒシバの衰退とメヒシバの更なる隆盛に人間界の男女の力関係に想いが及びました。 (かわにし雄策)
2021年8月浜風句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
片蔭を辿り仏教伝来す 國分 三德
名句、ここでこのような素晴らしい句に出会うとは、
浜風に参加させていただいて有難い。外に向かって発信すべき秀句。 (今野 龍二)
通常の俳句常識を超越した作品。写生だ、季語だ、切れ字だ、なんて、狭くて閉ざされた世界の中で俳句談義をしているのが滑稽に思えます。頭をまっさらにして新しい感動を見つけたいです。 (かわにし雄策)
検温の小さき幸せ夏の朝 島田 啓子
今一番の関心事は、毎朝の検温であり、正常ならば一安心。「この小さな幸せが極楽」という、心中が伺えて特選句としました。 (福島 雪雫)
蜘蛛下りて獲物四匹すのこ巻き 上薗 優
何とリアルな。と言っても、人間も自分で手を下さないとしても、毎日何かの命を頂いて生きています。一気に言い切って、迫力があり魅力的です。 (原田 洋子)
正中に構う蜘蛛の眼光りたる 恵夢せとか
新涼に癒やされる季なのに地球上には暑苦しい異常気象や、ウイルスと人、人と人の、息苦しい空気が覆っています。人類は早かれ遅かれ・・ (濱本 寛)
我先に飛び込む先の蟻地獄 田 友作
この句を読むと何かを比喩しているのだろうと、考えてしまう。他人より、我先にと進んで行くのだが、そこは天国ではない。地獄かも。でも、抜け出せない。 (長谷川 博)
冷蔵庫開く結論らしきもの かわにし雄策
アルキメデスの「エウレカ」(我、発見セリ)を思い出しました。彼が風呂に入ったとき、自分の浸かった身体の体積だけ水かさが増えることに気付き、「エウレカ、エウレカ」と叫んだ。人間、思い悩んでいると、全く関係ないことをしている瞬間、その答え、結論が思い浮かぶものです。この句の作者、冷蔵庫を開け、冷気が顔にあたった瞬間、思い悩んでいた問題の結論がひらめいたようです。その瞬間を見事に表現しています。 (桑田 青三)
抜け殻と蝉どっちが主役なんだ 國分 三德
脱皮した後の殻(空蝉)と生命ある蝉とどっちが主役と問われても俳句界においては、どっちも主役でしょう。ユーモアのある一句です(拍手)。 (小峰トミ子)
冷房が追い打ち丸木美術館 大西 惠
私達が忘れてはならない原爆の悲惨を残す丸木美術館の、背筋が凍る感覚を、よく現してくれている句です。 (恵夢せとか)
送り火や残火ひそと語りたる 桑田 青三
送り火を無事に戻れるようにと観ていると、組んだ苧殻がゴソッと音を立てて形を変え、また燃え始めます。そしてしばらくすると、小さな小さな火の花が一瞬咲き、消えていきます。
そのような残り火を「ひそと語りたる」と、表現されている所に魅力を感じました。 (原田えつ子)
薔薇は二十三画より匂い立つ 原田 洋子
二十三画はどの辺り?ゆっくりと書いて見る。薇の中程、徐々に花の息づかいが。確かに。
形象の文字から匂い立つ生きた薔薇の誕生。着眼点が面白く、作者のイマジネーションの世界に遊びました。 (島 さくら)
送り火や残火ひそと語りたる 桑田 青三
消えたはずなのにチラチラと苧殻が赤く燃えて、まるで恋の再燃みたい。お盆だから、ご先祖さまがまた来るからと挨拶されているのかも。 (山下 宗翆)
母独りなり完璧ないぶりがっこ かわにし雄策
「母独り」と「完璧な」が生きていますね。田舎のお母さまが一人暮らしで、送られて来たいぶりがっこを食べながら、その舌ざわり、味、香りの全てが完璧で、”お母さんでなければ出来ないな”と思いながら味わって食べたことでしょう。
「独り暮らしの母」と「完璧」という対比が絶妙に響いて来る句だと思います。 (田 友作)
一匹の蝿回り来る集会所 濱本 寛
少し賑やかな小さき客の来訪か、それとも嫌な輩が我が物顔でやってきたのか…。単に蝿が来たのではなく、喩えで画を想像できました。 (澤村あざみ)
渓流を吹きぬく夏のたましい 上薗 優
渓流を吹きぬける風は、真夏であっても、いえ、真夏だからこそ清涼感たっぷり。都会に吹く風ではなく、自然あふれる場所で、自由に、大きく吹きぬけていく、そんな風がじつは「夏のたましい」なのですね。 (大西 惠)
雲梯の影のかすかに揺れ晩夏 大西 惠
「国籍不明の揚羽」と「雲梯」をする五三の男子もオリンピックを終えたようです。どちらも気になりましたが、晩夏が印象となった「雲梯」を推しました。 (小坪亭ゑん)
冷えきらぬ地球温暖スイカ割る 田 友作
「その西瓜は冷蔵庫の中で、キンキンに冷えたスイカを、想像させます。そして口に含めば、旨いうまいウマイ~‼️」。地球温暖化、コロナ、大雨…。誰のせい?嗚呼!罪深い。 (金子うさぎ)
政論も具に入れ八月十五日のカレー 金子うさぎ
戦争はどんな理由があろうとも絶対やってはならない。ひとの不幸を他人が介在する権限はないから。 (U3)
2021年7月浜風句会 選者特選句の感想
到着順 ( )内は選者
洗いざらい話してごらんソーダ水 大西 惠
(洗いざらい話してごらん)と言ったら、一番に思うのは刑事ドラマのかつ丼。小さな嘘をついた子供にお母 さんが躾で言ったとしたら、クリームソーダーにしてあげて欲しいな。
(島田 啓子)
約束の刻の近づく初浴衣 小峰トミ子
「初浴衣」の人は十七~十八歳の女性で、この「初」は浴衣を着ての「初デート」と見ました。その初デートのワクワク感が「約束の刻が近づく」とうまく表現されていると思いました。
これが中年のおばさんで、この夏初めての浴衣と言うのでしたら幻滅!(セクハラかな)
(田 友作)
浴衣着て「湖畔」の人に生き写し 小峰トミ子
黒田清輝の代表的な美人画。湖水と対岸の山を背にして、団扇を手に遠くを見ている横顔は、凛として真に涼やかです。その美女に生き写しの方が傍におられる作者、熱帯夜など何のその、、、ですね。
(原田 洋子)
肝心な事は話さず草いきれ 金子うさぎ
炎天の原っぱでちょっと道を逸れるとあの拒むような草の息。むっとします。折角会って話し始めたのに肝心な所が分からない。極寒の日に会ってみてはいかがでしょう。
(濱本 寛)
ピザパイのようにひまわり焼かれをり 今野 龍二
一瞬に真夏の情景が目に飛び込んできます。
太陽にじりじりと照らされたひまわり。その色彩と質感からピザパイへと発想されたのがとても新鮮。エネルギッシュでわくわく感に浸ります。
(島 さくら)
残すのは笑顔の写真羽抜け鳥 原田 洋子
断捨離と言う名の終活にはいった、葬儀の写真はやはり笑顔のものがいい。内緒の写真は捨てるばかり。あとは秘密口座を誰に預けるかを決断するのみ。
(今野 龍二)
肝心な事は話さず草いきれ 金子うさぎ
私がこの句を特選にえらんだのは、まず、リズム感がよいことです。五七五の始めが、か行で始まっていることです。明るい感じのか行音。読み手にスーッと入っていく感じです。俳句は歌と同じだと思います。やはり、リズム感がないといけません。
(長谷川 博)
空蝉は扱いません古物商 國分 三德
辞書によると空蝉は、この世に生きている人間とある。
これは確かに古物商では扱わないけれど蝉の殻なら扱いますか。疑問とユーモアを感じながら楽しく詠ませていただきました。
(小峰トミ子)
地球儀や地軸触りて夏となる 桑田 青三
日々の地軸変動は極めて小さく人類には感知するのが難しいけれど、確実にしかも超短期間に起きていることを改めて感じさせてくれる句でした。
(恵夢せとか)
洗いざらい話してごらんソーダ水 大西 惠
断片的にプツプツと話されても要領を得ないし、何かが隠されている気がする。洗いざらい話してもらい、スッキリしたい。きっとソーダ水の泡とスッキリした味が連想されたのでしょうね。でも泡が全部消えると、気が抜けてしまうんです、悲しいかな。
(山下 宗翆)
空蝉は扱いません古物商 國分 三德
空蝉で「セミの抜け殻」と、「この世」古物商ゆえに今のものは扱わない、源氏物語での薄衣一枚は売物にならない等考えられて、楽しかったです。
(澤村あざみ)
空へ立つ泰山木の花明かり 濱本 寛
私も泰山木が好きで、何度か句にしましたが、うまく詠めませんでした。夏の青空に、大きく枝を伸ばして立つ泰山木のさわやかな姿が目に浮かぶ句です。
(小坪亭ゑん)
地球儀の碧に頬当て海開き 澤村あざみ
地球儀に指でなく頬を当てるのが新鮮でした。しかも海開きを持ってくるとは。碧い海に頬を当てて、海開きを待ち望んでいる気持ちが伝わってきます。
(大西 惠)
肝心な事は話さず草いきれ 金子うさぎ
お互いに気持ちは通じ会うが日常の変化に乏しい永年の夫婦生活。シチュエーションを変えても気持ちの変化は微弱。「楽しい」「ああきもちよい」「爽やか」「お弁当がおいしい」「何時もありがとう」、このたった一言が言えないキーワードをパートナーは多分口にはしないが寂しさを感じている。
しかし、暮らしは多少は豊かではあるが又微妙な距離感は明日からも続き互いの繋がりは何を糧にするのか、草原にたたずんでいる一見幸せそうな夫婦。鼻先がツンとなりました。
(U2)
シーツ干すそうはさせじと戻り梅雨 澤村あざみ
シーツ干す。干すって季語かしら?…。いいや、戻り梅雨がメインの季語?なんて、考える前にジャストでその俳句の動作がわたくしで有りまして、もんどりうって
何だか両者もどかしくって何とも楽しくなって♪♪
(金子うさぎ)
星見えぬきっと逢瀬の天の川 山下 宗翠
薄曇りで星が見えないけれど、きっとあの天の川で今年も彦星と織姫は逢瀬を楽しんでいるのでしょう。なんてロマンティックなのでしょう。
(福島 雪雫)
地球儀を回してコロナ夏の陣 福島 雪雫
豊臣と徳川の戦が最終決着を見たのが大阪夏の陣。地球儀を何度かクルクル回して今この時にあるのが東京夏の陣。敷衍すれば世界とコロナの夏の陣、日本政府とIOC、JOC、そして日本国民との夏の陣。戦いの帰趨はまだ予知できませんが、国民が悲惨な結果になりませんように。 (かわにし雄策)
2021年6月 浜風句会 選者特選句の感想(作品順・括弧内は選者)
夏の蝶戻れぬ道を彷徨いぬ 恵夢せとか
戻れぬ道ってどんな道なのか。【道ならぬ恋の道】【悪の道】【工事中の道】それとも【とても居心地の良い道】
私は日々楽しくてずっとさまよって居たい道と思いたいです。 (島田 啓子)
日だまりの金魚お前も高齢か 小峰トミ子
あまりの暑さで、水の中の金魚も、流石にぐったり。普通なら、活発に動きまわれる季節なのに。その様が、高齢者の動きに似ている?バドミントンと卓球に週四日を費やしている私にとっては、あまり、嬉しくない句だが。 (長谷川 博)
白靴靴靴スクランブル交差点 原田 洋子
最近よくテレビ画面で見られる風景です。緊急事態宣言中でも、じわりと人の往来が増えて・・・と行き交う人達の足元が映し出されます。
何でも無いときならありきたりの光景かもしれませんが、今の状況を鋭く描いていると思います。時事句は、そのものズバリを言うな、と昔師匠から言われてきたので、私にはそれが染みついています。今で無ければ味わえない句だと思います。 (岩城 順子)
地球から出てけ人間 蝙蝠囁く 金子うさぎ
コロナですっかり悪者扱いのコウモリ。しかし、むこうの身になれば……。本質的に罪深き人間の一人として、共感。 (佐藤 ポチ)
ワクチンの接種を終へり楠若葉 濱本 寛
「楠若葉」の季語が生き説得力をもっています。早く不安をぬぐい健康でいたい思いを素直に詠んで清々しい。 (聖木 翔人)
何もかもほったらかして梅雨晴間 國分 三德
「何もかもほったらかし」が生きていますね。長くじめじめした時期のひと時の晴れ間「梅雨晴れ間」への喜びを「何もかもほったらかし」と表現したところに共感しました。
(田 友作)
園児等のグーチョキパーやつばめの子 濱本 寛
燕の子が大きく口を開けて餌をもらう様と園児等のグーチョキパーのイメージを結びつけたところが面白い。 (國分 三德)
かたつむりアンモナイトに恋をして 小峰トミ子
教科書で初めてアンモナイト化石を観たとき、「あれ~、カタツムリ?」「あれ~、石?」と、不思議な気がしました。作者もこんな思いをされたのでしょうか?時代も越えた二つを「恋心」で結びつけた表現力に感服です。 (原田えつ子)
公園の手品師そっと衣替え 田 友作
横浜であれば、野毛の大道芸でしょうか・・。燕尾服などであって欲しい。
今時なら観客は閑散としてますが、平時はやんやヤンヤ 喝采の雨嵐!出し物が終わり客の潮が引き、そっと公園の片隅で首のよれたTシャツとジーンズなどに着替える後ろ姿に一日の安堵の心と哀愁が見え隠れ。
「そっと」と言う言葉にその手品師の人柄が見えるようで特選に♪ 昔、そんな歌があったような・・。 (金子うさぎ)
三國志ドッグイアのまま夏日 島田 啓子
作者は、この壮大な歴史書を休み休みじっくりと読んでおられます。果して季節が何度巡るのか、興味を掻き立てられます。 (原田 洋子)
兄の手の木苺こぼれ遠い日々 小坪亭ゑん
勝手ながら、離れた郷里での暮らしや未だ住む家族をぽろぽろと思い出しました。
(澤村あざみ)
地下鉄に踏切のある沖縄忌 今野 龍二
一読したとき、浅学のわたしは地下鉄に踏切なんかないし、第一沖縄に地下鉄あるかな〜 パスと。
でも、気になったのでスマホでさくっと調べてみたら、驚きました。沖縄に地下鉄のない理由は大きく三つあり、
一 地下に米軍の不発弾が数多眠っている
二 陸軍が秘匿した最終兵器や戦艦が埋め込まれてい
る
三 琉球王朝の財宝が那覇市内秘匿さている
わあ。びっくりしました。ここまでは不勉強者の弁です。 (恵夢せとか)
◆
あると思えない地下鉄に踏切があり(実際に東京メトロ銀座線にあります)、ありそうな沖縄にはない。踏切がない=平和のように思えるのに「あのとき」多くの人が犠牲となったのだ。
(大西 惠)
◆
コロナの政府優柔不断政策で国民は疑心暗鬼、太平洋戦争で沖縄人を悲惨な状況に追い込んだ無能な陸軍首脳。何故かトンネル内の踏切。無用な戦争の愚かさと虚しさが胸に去来しました。 (U)
やわらかき思考回路に棲むうなぎ かわにし雄策
とかく思考回路が凝り固まってしまいがちなこの時代。そもそも実際には存在しない思考回路なるもののいずこかにこともあろうに「うなぎ」がにょろりと棲んでいると思うだけで愉快、痛快な皮肉。 (山戸 則江)
◆
「95」(いえあのその・・)とどちらにするか迷いました。あのそのと思考回路が空転しましたが、ウナギで合点がいきました。 (小坪亭ゑん)
後ろ向きを老鶯に諭されており 岩城 順子
老鶯の声高くすっきりとした「ホーホケキョ」。落ち込んだ気持ちを明るくしました。
(桑田 青三)
悪茄子好きなら触れてほしいだけ 大西 惠
野菜も果物も女性も形の悪い方が美味と言う。
触れるだけでいいのでしょうか、それとも。
悪茄子の深情けにはご用心。 (今野 龍二)
◆
悪茄子ってどんな茄子?ネットで調べたら、まず毒があり、次に棘まであるではないですか。
毒があるから私を好きなら触れるだけでいいなんて言っておきながら、実は棘で相手をチクリと刺すなんて、悪女の小説みたい。そんなドラマティックさで選びました。
(山下 宗翆)
手仕事の豊かな時間五月雨 原田えつ子
「手仕事の豊かな時間」がストンと胸に落ちました。人生のほとんどの動きは手作業なのですが、その中で作者が誇りをもって従事されているのが手仕事。具体的なお仕事の内容はわかりませんが、前向きで期待を込めていらっしゃるのがわかります。 (かわにし雄策)
いえあのそのだってくるりと捩り花 大西 惠
捩花、この不思議な花はいつも皆の質問ぜめ。
いえあのそのだって・・の後は益々想像力をかきたてられるのですが、くるり。このリズミカルな流れに乗って可憐な捩花と会話している気分がとても楽しい。
花言葉は恋の切なさ、思慕。大好きな捩花句です。
(島 さくら)