2019年4月から2020年3月まで、日本女子大学の海外研修制度を利用してカナダのMcMaster大学とToronto大学に滞在しました。ここでは、滞在中に経験したことや感じたことを記録しておきます。この一年(正確にはcovid-19のせいでマイナス1週間)は私にとって非常に有意義で一生忘れられないものになりました。たくさんの幸運な出会いに恵まれました。
以下は私(藤田)個人の経験と記憶に基づく記述であり、厳密に収集されたデータに基づくものでもなければ過剰に一般化するつもりはないことをご承知おき下さい。特に、カナダ滞在を考えている方は以下の記述を鵜呑みにせず必ず適切な機関での情報を確認して下さい。
McMaster大学でのホストは原田芽ぐみ先生、Toronto大学でのホストはLisa Jeffrey先生でした。お二方とも私の研究分野であるsymplectic幾何学を牽引する素晴らしい女性数学者です。ともに女性であることは私が女子大に勤めていることとは全く関係なくたまたまです。なぜかsymplectic幾何学の研究者には女性が多いのも事実です。お二方とも(他のカナダ人も)「女子大」という組織に驚いていました。また私の滞在中に明治大学の吉田尚彦さんもMcMaster大学に滞在しており、8月まで同じオフィスを使いとてもお世話になりました。吉田さんは私の共同研究者でもあったのですがこれもたまたまです。いろいろな偶然の幸運に恵まれた滞在でありました。
以下では数学的なことは一切書いておりませんが、滞在中に2本論文ができたので数学的にもしっかり実りがあったことも付け加えておきます。
ー滞在までにー
1年間滞在するにあたり私は就労ビザ(正式名称 : work permit)を取得しました。他の国で取得したことがないので比較はできませんがなかなか面倒でした。実際、カナダは労働移民を多く受け入れている国なので、様々な形での労働ビザの取得が想定されていて、自分のケースがどれにあてはまるのか判断がなかなか難しかったです。しかも、私の受け入れは8月まではMcMaster大学、9月からはToronto大学と切り替わるので2つwork permitが必要、との情報を聞いていたのでさらに面倒でした。実際は、1つの申請でいけた可能性もあるのですが、私は2段階で取得しました。
8月までの分は2018年12月中に日本国内の申請所経由で申請しました。詳しくは書きませんが、申請所の係員の対応で非常に不愉快な思いをしました。二度と使いたくないです。2020年2月に許可が降りて実際のwork permitは4月にToronto国際空港で入国審査の際に受け取りました。9月からの分は5月に延長申請としてCanada国内から IRCCからweb申請で行い、8月に許可がおりました。選択肢の枝分かれがすごくて自分がどれにあてはまるのか判断するのが非常に難しかったです。その際、家族の分の延長も同時にしておけばよかったのですが、自分の分が降りないと家族の分の延長申請はできないと思っていたので、家族の分は9月に申請をしたのですが、許可が出たのはビザが切れる11月30日ギリギリになってしまい焦りました。なお、8月までのwork permitは就労終了日+3ヶ月(=11月末)で発行されました。
ー家探しー
McMaster大学から用意してもらうということはなかったので基本的に自分で探しました。とは言っても希望する地域が非常に限定されていたので、McMaster大学の物件紹介ページをこまめにチェックして、これはと思うところがあったので12月末に大家さんに連絡をとり、ホストの原田さんと吉田さんに下見をお願いして、よさそうだったので年明けにメールで契約をすませました。家賃は1980カナダドル/月で、本当はもうちょっと抑えたかったのですが致し方ないかと。しかし、立地も物件も非常にステキ、かつ大家さんが日本に留学して東大工学部で学位を取った親日家の方で、滞在中も本当によくしてもらえたので、結果的には大正解でした。
ー家ー
二階建ての一軒家で、さらに(半)地下室付き、という日本の4人家族には広すぎる物件でした。この「地下室」というのは、この辺ではどこの家にもあるもので、洗濯機置き場にしたり人にシェアしたり、というのがよくあるみたいです。うちの地下室は洗濯機置き場とキレイなカーペットが敷いてある部分に別れていて、キレイな方は子供らが遊ぶ部屋にしてました。冷暖房の仕組みが日本とはえらく違いました。カナダではセントラルヒーティングというのが主流らしく、要はコントロールスイッチが一つしかなくて、それで家全体の冷暖房をコントロールしています。コントロールといっても、基本的には冷房or暖房と温度設定しかない非常に大ざっぱなものです。でっかい本体(ボイラー?)が地下にあって、おそらくパワーはすごいんだと思います。冬は凍結防止のためにも暖房つけっぱなしというのが一般的みたいです。実際11月ころから暖房つけっぱなしでした。私がいたシーズン(2019年度)は暖冬だったこともあって、家の中で寒い思いをしたことはなかったです。
裏にはそれなりの広さの庭があって、夏には大家さんが置いていってくれたBBQ台でBBQを何度かしました。この「夏場に裏庭でBBQ」というのもこの辺では非常に一般的なレジャーで、各家庭ひとつはBBQ台を持っている感じです。実際、CostocoやWalmartにはたくさんBBQ台が売られてるしスーパーなどにはBBQ用の薪が山積みで売られてました。
裏庭で家族でBBQやってみた
近所の公園(オンタリオ 湖まで20m)
ー車ー
車を所有するかどうかはとても迷いました。最終的には中古車を買うことにしましたが、うちの場合はこれで正解でした。徒歩圏内にスーパーも学校もあり、バスでダウンタウンまで10分程度だったので、車がなくても生活はできたのですが、行動が非常に限られたものになったと思います。レンタカーやカーシェアリングという道も考えたのですが、やはり使うたびに手続きしたり取りに行ったりというのはなかなか面倒だった思います。うちの場合は私が車の運転ができず車関係は妻に任せることになるので、基本的には妻の意見を尊重しました。
知り合いは新車リースをしたりしてたのですが、ちょっと高すぎて手が出なかったのでうちは中古車を探しました。まず、この辺の車事情で知っておかないといけないのは、日本では信じられないくらいの走行距離のボロボロの車にみんな普通に乗っている、ということです。最終的にうちが買った車は走行距離が210000km(二十一万キロ)でした。外見もボロボロな車が普通に走っていて、冬に融雪剤としてナトリウムをまくらしく、そのせいで錆がひどいようです。まぁ、錆の問題だけでなく、割れた窓ガラスとかをガムテで補強してるような車もたくさん見ましたが。あとそんなボロボロの車なのに保険が高い。ウェブで見積もりとったら$126/月(≒10000円)だったのに、いざ電話で申し込んだら結局$222/月(≒20000円)とか言われて、文句をつけたら「見積もりが間違ってるから」の一点張りで押し切られてしまいました。
こちらではKijijiというメルカリみたいな個人売買サイトで個人が勝手に車を売買しています。はじめそちらでも探してアポとって試乗したりしてみたのですが、やはりどこまで個人を信用してよいか、という部分がネックになり中古車屋で探すことにしました。結局ある中古車屋の人がBusiness Carとして自分で使ってる2005年産のToyota RAV4を$4200で譲ってもらいました。決め手のひとつは「来年帰国する時には買い取ってあげるよ」というオーナーの一言でした。しかし、2月に「帰るから買い取ってよ」と連絡したら「あん時はそういったけど今は状況が変わったから。買いそうな人探しておくよ」というつれない返事。まぁ、口約束を信じた方が悪かったのか。最終的には買い取りはある中古車屋にしてもらったんですが、その車屋曰く「こんなボロボロの車によく$4200も出したね」と。ちなみに、その車屋ははじめにRAV4を買った車屋と同じ系列の店でした。お前んとこのHaroldから買ったんだよ!
愛車RAV4 2005
ー小学校ー
子供二人(2019年4月時点で9歳と6歳)は近所の小学校に通うことにしました。Torontoに日本人向けの週末補習校みたいのもあったんですが、通うのが大変そうなのであきらめました。(小)学校のシステムの違いにはとても驚きました。まず、こちらでは子供(10歳くらいまで?)を子供だけにすることはご法度なので、朝は学校まで送り届けて午後お迎えに行きます。ちなみに登校は9:00で下校は15:20です。基本的に朝の送り出しは私がやってお迎えは妻、というスタイルでした。何度かお迎えにも行ったのですが、普通にお迎えに来ているパパもいて、労働環境の違いを感じました。
小学校で一番驚いたのは、先生方の様子です。8:50頃に子供を連れて登校すると8:55頃にTim Hortons(後述)片手に「Hi!」みたいな感じで先生がやってきて、15:20にお迎えに行くと、15:30に「Bye!!」みたいな感じで帰っていきます。月に一度PA(Proffesional Assesment?)day というのがあって子供らは休みになります。この日に先生方が書類仕事をまとめてやるらしいです。授業でも教科書はなく、先生が自分の裁量でプリントを配ったり、Youtubeを見せて授業したり、という感じでした。内容も本当にバラバラで、先生によっては1年生で割り算をさせたり6年生なのに九九みたいのをしたり、らしいです。 先生たちはずいぶんよい環境で働いているように見えたのですが、それでも1月と2月に何度かストライキをして学校が休みになりました。先生方曰く、労働環境をよくしろというよりは教育にかける予算をあげろ、という要求をしていたようですが。
給食はなく、基本的に皆お弁当持参です。ただ、そのシステムもちょっと不思議で、11時台と13時台に20分ずつ設定された、Nutrition Break Time(栄養休憩時間?)でお弁当を食べるみたいです。各自持ってきているものも様々ですが、生野菜を持ってきている子がたくさんいるらしいです。パプリカとか。パプリカ生で食う小学生ってすごいですよね。毎週金曜はPizza (or Subway) dayで、近所のピザ屋さんかSubway(サンドウィッチ屋)からピザかサンドウィッチが運ばれてきます(ただし、要申し込み&支払)。うちの子らはずいぶん楽しみにしてました。
運動会や学芸会のような行事はほとんどありません。が、Crazy Hair DayやPajama Day 、Crazy Socks Dayなんていう行事(?)がたまにあります。子供らが髪の毛をスプレーで染めたり、パジャマで登校したり、奇妙な靴下を履いて行って見せ合う、という日です。よくわからないけど先生方含めみんな楽しんでいました。
いろんな国からの生徒がたくさんで、中東、アフリカ、アジア、など様々でした。入れ替わりも激しく、昨日まで来てた子が今日転校、みたいなこともありました。
ー食べ物ー
いわゆる"カナダ料理"というものはあまりありません。レストランの多くも中華、イタリアン、インド、タイ、地中海、など外国料理が多く、あとは外食といえば、いわゆる北米の食べ物、フィッシュ&チップス、ハンバーガーやホットドッグ、そしてピザです。中国からの移民が多いので、中華料理はけっこう美味しい店がありました。イベントなどでハンバーガーやホットドッグが振舞われることもあるのですが、バンズとパティorソーセージのみ、という最強シンプルスタイルのものが多いです。パスタもボロネーゼ、カルボナーラ、ミートボール、などレパートリーは少数のお店が多かったです。なんというか食にあまり興味がない感じです。そうはいってもちょっと洒落たストリートに行くと何軒か気の利いたレストランはありました。けど、やはりお高めでした。サラダとかハンバーガー単品で平気で$20とかします。
そんな中でもカナダにはPoutineという郷土料理があります。フレンチフライ(フライドポテト)にたっぷりのグレービーソースをかけ、さらにお好みでベーコンやチーズをかける、という料理というかある種"食べ方"、あるいは"思想"の一つです。一度だけトライしたのですが、ちょっとレベルが高くて二度目は勘弁という感じでした。移民系の人たちと話してるとあまり好評という感じはないのですが、ネイティブカナディアンたちには人気があるようでした。ファーストフード店などでガシガシ食べている様をよく見ました。
スーパーには日本では見慣れない食材(アーティチョーク、芽キャベツ、ルバーブ、たんぽぽの葉(?)など)もありますが、白菜やネギやもやし、豆腐などもありました。アジア系のスーパーに行くと割高ではありつつ味噌や納豆(ただし冷凍)なども手に入りました。最後まで手に入らなかったのは油揚げです。豆腐は流通してるのにちょっと不思議でした。あと、キャベツが日本のものとエラい違いでした。なんかこう、ゴワゴワしてて千切りとかで食べられるものではなくて、炒めても炒めてもずっとゴワゴワで食品サンプルみたいな。日本のフワフワキャベツ最高です。食肉に関してはやはりレベルが違いました。デカイです。たぶん単価は日本よりちょっと高いくらいなんですが、デカくてよくわからない感じです。特に、Costcoに行くと、丸太みたいな豚肉や切り株みたいな牛肉が売っていて、それを買って家で肉業者よろしくカットして冷凍して、っていうのを何度かやりました。ステーキ用の牛肉なんかはTボーンやサーロインなどいろんな部位が売っていて、何度か食べましたが食べ応えはしっかりありつつ意外にやわらかくとても美味しかったです。豚バラ薄切りが売ってないのはちょっと困りましたね。
シーフードには苦労しました。スーパーで簡単に手に入るものは淡水の白身魚(バサ、ピラティア)などで、これはソテーか揚げるかしか食べ方が思いつきません。味も食感も、まぁ、なんつーか、ね。そんな中で我々家族の希望となったのが、コストコの生サーモンです。これはなんと刺身で食える。そしてメチャクチャうまい。もちろんソテーでもフライでもうまい。はっきり言って日本で食べるサーモンの刺身よりうまいです。値段はよくわからないけど、家族4人で3回たらふく食える分が$20~$30って感じでした。我が家では、何かっつたらこのサーモンをご褒美に食ってました。ところがこれ、どうやら日本のコストコでも買えるらしいですね。コストコ会員の皆さんにはマジでお勧めです。ステマじゃないよ。
噂のPoutine
(ストロングスタイル)洒落たカフェのお高いサラダ
テキトーに買った肉で作ったローストビーフ
食品サンプルみたいなキャベツ
ー人間たちー
関わりをもった多くのカナダ人の皆さんは非常によい人たちでした。ただし、冒頭でも述べたことですが過度に一般化するつもりはありませんし、私の環境は非常に恵まれていたと思います。
うちのお隣さんにはEdyさんとJennさんという80歳くらいのカナダ人のご夫婦が住んでいたのですが、お二人とも非常に気さくに話しかけてくれて、いつも困ったことがないかいろいろと気を使ってくれました。引っ越してすぐのころには食器を貸してくれたり、車が半ドアでバッテリーがあがってしまった時はCAA(日本でいうJAF)をよんでくれたり、子供らを植物園に連れてでかけてくれたり、本当によくしてくれました。3月に私が一人暮らしになったときはEdyと息子のChrisさんがビールを飲みに誘ってくれたりもしました。日本に戻ってきてからもメールをくれたりします。反対のお隣さんのAnneさんもクリスマスに教会に連れていってくれたし、二軒隣のChrisさんは雪が降ったら何も言わずにうちに前の雪かきをしてくれたり、帰国に際してデッカいメープルシロップくれたり、本当に素敵な隣人に恵まれました。
借りていた家の大家さんはインド系のカナダ人の方だったのですが、たまたま東大の大学院に留学していた方で日本語も話せる日本びいきの方でした。引っ越してすぐの頃はうちに来てくれて困ったことがないか心配してくれたり、使わなくなったピカピカの自転車をうちの子に譲ってくれたり。冷蔵庫の調子が悪くなった時は新しい冷蔵庫をすぐ注文してくれて、新しいのが届くまで地下室にある古い冷蔵庫を使えるようにしてくれました。ご家族をうちに招待したりお宅にお呼ばれしたりもしました。日本のことも非常に好きなようで食べ物や温泉の話で盛り上がりました。
ある日家族で近くの公園を散歩していたら、すれ違った南アジア系のご夫婦に「日本から来た人ですか?」と話しかけられました。「そうです。McMaster大学に客員研究員で来てます」と答えると、突然流暢な日本語で「あーそうですか。私はバングラディシュから九大に留学して学位をとって東大で働いてて、計15年日本に住んでたんです」と。そのまま連絡先を交換して今度うちに遊びにおいでよ、という話に。3週間後お招きされると、3人いるお子さんのうち長男と長女は日本で生まれたそうで、特に長男(23歳)は日本語ペラペラでした。「マコト」という日本名も持っているそうです。日本でバングラディシュ人の子として生まれて日本の小学校に通い、ほぼ日本語しか喋れないのに小三でカナダに転校してきて困惑した話などを聞かせてもらいとても面白かったです。
私が住んでいたHamiltonはTorontoのベッドタウンで、小さいながらも日本人のコミュニティがあります。その中に日本好きのカナダ人に日本語を教えている方がいらっしゃって、その方のご紹介でJapanese-Canadianサークルみたいな集まりに何度か家族で参加しました。そこに参加されてるカナダ人の方々は日本で英会話講師をしていた方やゲーム好きなカナダ人大学生など、いろんな方々がいて「そんなことも知ってるんだ」みたいな話もできたりしました。「オオミヤ」「カナメチョウ」「シイナチョウ」「ショウリュウケン」などの単語が普通に会話に出てきて面白かったです。そして、やはり食べ物と電車に対する評価は高かったです。ただ、日本食がすごく好きと言っている方でも、さすがに納豆の話をすると「Oh my god」みたいなリアクションが出ましたね。
ーCOVID-19ー
2020年1月末から日本でもCOVID-19関係でいろんな行事がキャンセルされ始めました。日本とカナダの私の周辺で起こった出来事の一部を時系列で記録しておきます。
-2/21 : McMaster G&T seminmarの講演者のJongbaek Song氏から韓国の状況悪化を聞く。
-2/26 : 日本数学会年会中止決定。
-3/1 : 私以外の家族が当初の予定で日本に帰国(この時点では中国、韓国、日本が大変でカナダ含む欧米はそれほどでなかった)。
-3/10頃 : イタリアを中心にヨーロッパで感染者が増える。
-3/12 : Hamilton市の学校が16日から休校宣言。Hamilton市でも感染者が出る。
-3/12 : 日本女子大学卒業式と入学式の中止および新学期開始延期発表。
-3/13昼 : McMaster G&T seminarとColloquiumで堀口達也氏、阿部拓氏、枡田幹也先生が講演。McMaster大学が16日からの休校を宣言。
-3/13夜 : Fields instituteから23日からのworkshopの中止メール。
-3/16 : Fields instituteの閉鎖のメール。
-3/16 : カナダが18日から外国人の入国禁止措置を発表。
-3/17 : Ontatrio州が緊急事態宣言を発令。
-3/23 : 14:35Toronto Pearson空港発の便で帰国
感染者数が100人程度の時点でカナダが外国人の入国制限をかけたり、オンタリオ州で飲食店の(takeout以外)営業禁止にしたりしたのは驚きました。日本では全くそういう話にはなっていなかったからです。日本では検査数が少ないとかオリンピックをやろうとしてるとか、その手のニュースは海外でも報道されていて、日本に帰ると報告したときに心配されました。今回の滞在で何度か言われたのですが、良くも悪くも日本は世界の中でも異質な国であると再認識しました。3月17日からの一週間は本当にほぼ誰とも会わず、自転車で街に出ても人気がない状態で、あと一週間この生活が続いていたら精神的にかなりヤバイ状態になってたかもしれません。
ー英語ー
1年間英語圏で暮らせば英語ペラペラになるかと思いきや、意外にそうでもなかったですね。上達しなかったわけではないですが、特に日常会話で得たスキル(?)は
1. なるべく単純な英単語を使いまわす。
2. 聞き取れなくて大事そうなことは聞き返して確認する。
3. 聞き取れなくてもなんとかなることもある。
1.ネイティブの人たちの日常会話では「take」「put」「give」「have」「get」などを多用します。これらの単語+前置詞+名詞で実に多彩なことを言い表します。考えてみると日本語でも「やる」「する」「とる」という単語はそれに何か付け加えることでいろんな言い回しにつかえます。いつどれを使うかが慣れなわけですが、それぞれの単語が持つイメージでなんとなくやりくりするよう努力しました。
2.は特に電話で話すときや事務手続きに関するやりとりで意識しました。聞き返すときも、「You mean that ...?」「You said that...?」みたいな定型で、なるべく単純化して要点を聞き変えすようにしました。電話で何か手続きや相談をする際は「I am a visitor from Japan. So please speak slowly.」とかいうとオペレターの人は少しゆっくり話してくれます。まぁ、すぐペラペラ早口戻ることがほとんどですが。向こうも移民には慣れているので聞き返したりしても親切に教えてくれることがほとんどです。早口だけど。あとTD bankなど大きな会社では日本語のオペレーターの人がいて対応してもらえることもあります。こっちは逆にやたらゆっくりだったんだけど。
3.は、まぁ最終手段というかスキルでもなんでもない情けない話ですが、スーパーや飲食店の店員さんから問いかけられることには、それほど意味のないこともあったりすので、軽く笑顔をしていればなんとなくやり過ごせることも多いです。ポイントカード作る?とか他に必要なものある?とか嫌いな野菜ある?とか。知らないうちに重大なことを聞き逃してたのかもしれませんが、一年間無事暮らせていて無事帰国しているので大丈夫でしょう。なんじゃこりゃ。
上記に加えて、しゃべり言葉では文法的に正しくない表現もとてもよく使われている、というのは本当によくわかりました。たとえば、Doから始まる疑問文でDoを省略しちゃったり。他にも疑問文は、疑問文でない表現をしておいて最後に語尾を上げて「?」という感じにするとだいたい通じます。考えてみると日本語でも教科書的でない、もしかすると不正確な文法でいろいろ話していることはあると思います。それと同じなんでしょう。また、非ネイティブなカナダ人(移民)の人なんかは、時制とか人称とかが合ってなかったりしても、特に気にせず堂々と話してたりして、そういうのをみるととても勇気付けられました。
ー Ti psー
その小ネタです。
Canada Dayと Rib Fest : 7月1日はCanada Day、いわゆる建国記念日です。この日は祝日で多くの人がカナダにまつわる赤と白やメープル柄の衣装に身を包み街に繰り出します。そしてHamilton近辺の大きな公園で はRib Festというものが行われます。Ribとはいわゆる豚のスペアリブにあまじょっぱいベタベタのソースをたっぷり絡めた料理というか調理です。我が家もある公園に赴いたのですが、たくさんの屋台が軒先にトロフィーを掲げて「Canada's best Rib source」と謳っていました。えげつない看板がものすごいテンションで立っていました。味は、まぁ、あまじょっぱくてうまい感じですね
ナイアガラの滝 : Hamiltonからだと車で1時間程度(高速利用)です。公共交通機関だと2時間くらいです。我が家は滞在中夏2回、冬1回の計3回行きました。アメリカとの国境をまたぐ場所にあり、それぞれアメリカ滝とカナダ滝と呼ばれるメインの滝があります。カナダの人に言わせると、確実にカナダ滝の方が絶景で盛り上がっていると。実際カナダ側はHiltonホテルとかカジノとかすごい盛り上がりで、アメリカ側にも一度行ったのですが、なんというかある種のあきらめムードを感じました。行ったのが冬(オフシーズン)ということもあって、店はほとんど閉まっていて昼ごはんを食べるのにも苦労しました。ゴーストタウンみたいな状態をさまよって最終的にやっとTGI Fridaysにありつけました。カナダ側のフェリーに乗って滝壺を遊覧するアトラクションは2度乗りました。すごくよかったです。
Tim Hortons : カナダでコーヒーといえば赤地に白字でおなじみのTim Hortonsです。日本のコンビニレベルでめちゃくちゃいっぱいあります。数百メートルおきに一軒くらいあります。Hamiltonにゆかりのあるホッケー選手が引退後に作った店らしく、美味しいかどうかはよくわからないのですが、Hamilton近郊ではスタバよりも圧倒的に人気があります。大学のTimは朝や昼は行列になっていました。これさえ飲んでおけば立派なカナディアンとして認められるという噂もあります。
娯楽 : 子供達の娯楽も日本とはやや違う感じでした。もちろんビデオゲームは人気がありますが、公共の図書館や体育館などを上手に利用している感じでした。図書館は無料で会員になれ、本はもちろんかなりいろんなDVDも無料でレンタルすることができます。しかも、遠くの図書舘にあるものも検索して無料で取り寄せ可能。もちろん英語版ばかりだったのですが、英語の勉強と思って英語字幕付きで頑張って見てました。ジブリ映画は大量にありました。あと、なぜかジョジョの奇妙な冒険がしっかり揃っていて、息子とずいぶん楽しみました。体育館は年パスみたいのを購入(1年間$100くらい?結構高い)して、プールとかバスケットコートとかで遊ぶのがメジャーでした。うちも家族で購入してお世話になりました。日本にあまりない娯楽施設として、トランポリンパークがあります。けっこう高い(子供1人$10~$20)のですが、Flying Squirrel Trampoline Parkというトランポリンパークは「The world's largest indoor trampoline park」と謳っていて、たしかにだだっ広い敷地に何面ものトランポリンが敷き詰められていて、中毒性がスゴかったです。私も遊びハマりました。体ヘロヘロなのに飛びたくてしょうがないみたいな。
中古車屋にて : 車を探して中古車屋巡りをしていた時のことです。ある、小さい中古車屋(みかけはカーペット屋さん) でよさげなのがあったので試乗して、オーナーのおじいちゃん(Yeves from フィリピン)と「日本に観光行くならどこ行ったらよい」とか雑談していたところ「何しにカナダに来たんだい」と。「実は大学で数学を教えていて、客員教授で来てるんだ」と話したところ、それまで半閉じだった目がピカっと開いて「ワシは留学生を斡旋するビジネスを計画してるんじゃ。この出会いはまたとないビジネスチャンスじゃ。これマジじゃ」みたいな話を突然し出しました。怖くなったので苦笑いしながら退散しました。
トランポリンをする40歳男性
Tim Hortons 一号店
Thanks giving dayに焼いたターキー
フェリーからのカナダ滝
米加国境
アメリカ滝
ー最後にー
帰国してしばらくしてから滞在中のことを記録しておくためにこの文章を書きましたが、いろんなことを思い出す良い機会になりました。楽しいこともたくさんあったけど大変だったこと辛かったこともありました。けど、もろもろ含めて人生の中でもとても素晴らしく貴重で有意義な経験だったことは間違いないし、私家族にとってもそうだったと思われます。そのような経験をさせてくれた本学の海外研修制度、ホストの先生方、Ontarioの素敵な人々と雄大な大地に感謝申し上げてこの文章を終えたいと思います。