コンセプト

スペースインベーダーが誕生して約40年,これから高齢者となる人達がディジタルゲームネイティブとなっていく時代に突入します.ディジタルゲームには,長い歴史に裏付けられた人々を熱中させるノウハウが詰まっておりこれは人類の大いなる資産であると考えます.しかしその活用は,知的財産権の問題やソースコードの入手経路の問題から困難が伴っていました.

そこで「もともとのゲーム内部に手を加えず,外側からゲームを観測することでゲームの内部状態を推定し,独自の情報処理を行い,最終的にゲームへの操作入力情報としてフィードバックすることで改変を行う"外付けによる既存ディジタルゲーム拡張アーキテクチャ"」を私たちは提唱しています.

ゲームの内部状態の観測・推定については,すでに画像を扱うSikuli,および電子音を扱うPicognizerなどで開発者支援が進んでいる状態です.一方で操作の自動化,すなわち拡張用情報システムの意図する状態に既存ゲームの内部状態を制御するために,ゲームコントローラ入力へと変換し接続する部分についての開発者支援はほとんどありませんでした.そのような開発を行う場合,毎回アドホックにキーボード・マウスなどのエミュレーションを行うためのUIオートメーションライブラリを用いてコーディングを行ったり,ゲームコントローラの電子回路を直接改変して入力信号を出力するなどの手段が取られていたのが現状です.

このような状況を鑑み私たちが開発したのが,多様な機器および情報源を既存ゲームへの入力へと変換しディジタルゲームを操作するためのミドルウェア"GameControllerizer"です.

ディジタルゲームのノウハウをゲーム以外の価値達成、たとえば社会善達成や生活習慣改善に応用することで,社会を愉快に,そして活動的に変えていくことができると私たちは強く信じています.


※より詳しくはPublicationを参照ください.

想定する活用例

エクサゲーム

高齢者の運動習慣改善のためにゲームの力を用いることはよくあります.この時,とってつけたような運動向けゲームを新しく作るよりも,既存のゲームを拡張・利用し「格闘ゲームを体でプレイするだけで筋肉維持になりますよ!」とか「肩たたきでお孫さんと一緒に太鼓の達人しましょう!」と啓蒙するほうが,わかりやすく,面白く,長続きするのではないでしょうか.

STEM教育

初等プログラミングでの重要課題は,そもそも「プログラミングしたい」というモチベーションをどのように喚起するかだと考えます.この時,フィボナッチ数列のような抽象的な数学的概念から始めるより「君の作ったオレオレコントローラで,あのゲームをプレイしてみないか?」と啓蒙すれば,子どもたちは喜々としてプログラミングや電子工作に取り組むのではないでしょうか.

既存ディジタルゲームの価値発掘

何もゲーム以外の価値付与に用いなくとも,入力方法を少しいじるだけで,既存ゲームはさらに面白くできると考えます.いろいろな手作りデバイスやスマートスピーカなどのIoT機器をゲームコントローラに用いたり,天気や株価騰落のAPIなど,一見ゲームと関係ない情報をゲーム操作に結びつけることにより,これまでにないエンタテインメント価値創出やアート表現が可能になると考えます.