(2020年12月27日 記者発表)
作成:外環被害住民連絡会・調布
※プライバシーの侵害、風評等につながる恐れがありますので情報の取扱いには十分ご注意ください
調査票配布軒数: 308
調査票回答軒数: 132
回 答 回 収 率: 42.8%
調査範囲:東つつじヶ丘2丁目、東つつじヶ丘3丁目、若葉町1丁目、入間町2丁目(サンプル調査)の戸建て住宅
調 査 実 施 期 間: 2020年12月 5日~20日
調 査 目 的 : 体感的被害を含む被害の全容把握、工事との因果関係の究明
調査依頼方法 : 戸別訪問(複数回訪問後、不在の場合はポスティング)
調査票回収方法: メール、FAX、連絡会メンバー宅への投函
構造物被害(家屋・外回り)= 58 軒
*複数回答も「1」としてカウント
■■■ 主な被害内容 ■■■
室内(クロス)のヒビ 15件
ドア・床の傾き 19件
基礎部分の亀裂 7件
塀・タイルの変状 17件
コンクリートのひび割れ 17件
段差の拡がり 6件
門扉の開閉不具合 5件 など
*「ない」と答えた方の中には、もとからあったヒビなのかは工事との因果関係は不明とした方を複数含む。また高齢の一人暮らしの方も多く、実被害についての認識は難しい場合もあった。実際の被害軒数はもっと多いものと考えられ、また今後の増加も予想される。
体感的被害(騒音・振動・低周波音等)= 102 軒
*騒音・振動・低周波音等のうち、複数回答も「1」としてカウント
■■■ 被害カテゴリー別 ■■■
騒音 72件
振動 95件
低周波音 51件
■■■ 被害集中地域 ■■■
構造物被害 = 東つつじヶ丘2丁目H番地 15 軒 / 若葉町1丁目A番地 13 軒
体感的被害 = 東つつじヶ丘2丁目H番地 15 軒 / 若葉町1丁目A番地 23 軒
(*当該地域は、陥没・空洞現場に近接する地域)
*発生時期については、住民が記憶をたどって回答しているため、〇月頃という大雑把なもので正確性には欠けるが、騒音・振動・低周波音等の被害の多くは8月、9月、10月に発生しており、特に9月が顕著。この時期に発生していたシールドマシントラブルとの相関関係が顕著に表れている。(参照:別添資料2)
*構造物被害については、回答の多くが陥没事故後に発見したとあるので、発生時期は不確実であるため、今回の分析には採用していない。
空洞・陥没の可能性の
危険性について
不安がある 89%
(117人/131人中)
■不安がある ■不安がない
地盤沈下の可能性について
不安がある 86%
(113人/131人中)
■不安がある ■不安がない
資産価値の低下について
不安がある 91%
(119人/131人中)
■不安がある ■不安がない
大幅な工期の遅れにより、2015年に実施された家屋事前調査から 5年が経過している。その結果、調査を受けたか不明、未調査、今後受ける予定の合計が約 45%いる。その中には、この 5年間に引っ越してきた人で家屋調査の存在を知らない人もおり、ネクスコのフォローに問題があることが浮き彫りになった。また、調査済と回答した人の中にも、調査報告書を保管していない人が複数いることも分かった。
Q. トンネルがどこを通るか事前に知っていたか?
知っていた 101人 ※
知らなかった 29人 (130人中)
※「知っていた」と回答した人の中には、正確なルートまで知らなかった、2本通るとは知らなかったなど、詳細を知らない住民も多数いることが分かった。
今回は、陥没事故周辺の限られた地域での調査であったが、回答率の高さと集計結果からも、住民が被った被害の深刻さと、現在直面している困難な状況、将来にわたる不安が顕著に表れた結果となった。
【地域の特殊性について】
今回の陥没、空洞発生の事象について、事業者はこの地域の地盤の特殊性を強調し、問題を矮小化しようとしているが、今後の掘削予定地にも、似たような地盤、様々な地層が交互にある互層はあることがわかっている。今回の問題は、ルート上に適地があったにもかかわらず、追加ボーリング調査を行わず、問題となった礫層が詳細に把握できていなかったため、適切な対策が取られず、地域一帯の地盤に大きな損傷を与えた点にある。また、陥没現場から約1km離れた入間町2丁目でも、振動による被害が複数報告されていたため、1軒のサンプル調査を行い、家屋にも被害が出ていることを確認している。今後、トンネル既設地域でより広い範囲を調査すれば、地上への影響が今回の地域に限ったことではない可能性がある。
【事業者責任について】
10月18日の陥没・空洞・地盤の緩みを招いた原因は、事業者の瑕疵と考えられるいくつかの問題点にある。
【1】8月~9月にかけて騒音・振動・低周波音の苦情が多発した時期に、度重なるシールドマシントラブルがあったにもかかわらず掘進を強行し続けたこと。
【2】添加材選択を誤ったこと(気泡のみからベントナイト併用への判断の遅れ)
【3】排土量管理の施工ミス(排土量管理基準値設定の甘さ、新横浜トンネル陥没の未検証の疑い)
このような杜撰な事業の進め方によって、住民は将来にわたって、いつ陥没するかわからない不安や地盤沈下に怯えて暮らさなければならなくなり、また資産価値にも大きな影を落とすこととなった。事業者の責任は重大である。
【損害賠償について】
家屋や外回り等の構造物の損傷は、今後被害の増加が予想される。同様に、振動・騒音・低周波音等の健康被害の深刻さは数字に顕著に表れており、自由記述欄にも深刻な実態が報告されている(参照:別添資料3「住民の自由記述からの抜粋」)。現在も行われている調査工事と合わせて、住民は心身ともに大きなストレスに晒され続けており、こうした健康被害に対しても、事業者に対して賠償を求めたい。
事業者は、損害賠償として「家屋の補修」に言及しているが、何よりも被害地域の住民が求めているのは「家の下の地盤を元通りにしてほしい」ということである。いくら外壁の亀裂を補修しても、空洞を充填しても、住宅地下において緩んでしまった地盤を元通りにすることは困難であると施工業者も言っている。できうる限りの地盤復旧に努め、将来に及ぶ家屋等の損傷の拡大、資産価値の低下、希望により買い取りも含めたすべての賠償・補償を求める。賠償の方法、基準等について、事業者は、個別の相談会を開く予定とのことだが、私たちは、被害住民連絡会として情報共有し、公平で明確な基準を求めて、まとまって交渉していく。
【工事再開について】
一旦緩んでしまった特殊な地盤、既に地盤沈下・液状化を起こした地域を、さらにもう1本の北行シールドマシンが掘削していけば、一層深刻な被害を生む恐れがあり、周辺住民にとっては恐怖以外の何物でもない。今後の工事において、陥没・空洞はもとより、騒音・振動、家屋被害を含む一切の被害を地上の住民に与えないと約束できるだけの十分な再発防止策を立て、周辺住民の了解を得たうえでなければ、工事の再開はあり得ないことを、当会として改めて強く主張していく。
以上