Research
研究テーマ
河川を軸とした幅広いテーマ
flood
氾濫
市街地氾濫の形態は大きく2つ挙げられる.1つは,河川を流れる水が堤防を越流すること等で氾濫流が堤内地(人が住む区域等)に流れ込む外水氾濫,2つ目は,堤内地の下水道や小河川で雨水が排除しきれず水が溢れてしまうこと,窪地などに水が溜まることで道路冠水等が生じる内水氾濫である.
内水氾濫は,大規模な外水氾濫前の避難や水防活動に密接に関係する.外水氾濫は,家屋の倒壊や人的被害が生じるため,人々の住まい方等に直結する課題となる.当研究室では,市街地で発生する氾濫現象をより高精度に解明することで,今後の住民避難や減災まちづくりのための研究を行っている.
▲令和2年豪雨における内水・外水氾濫解析の結果
Urban river・sewerage
都市河川・下水道
豪雨時の都市河川と下水道施設によるの排水機構に関する研究
都市河川は,豪雨時に各下水道から流入する流量とその重なり方によって,河川を流れる流量や氾濫形態が大きく異なるという特徴を持っている.このため,流域全体の雨水排水系として,河川と下水道施設を統合的に管理,運営することが都市域の水災害被害の軽減に向けて重要になる.
当研究室では,河川と下水道網の雨水の移動を説明する水理モデルを取り入れた洪水流解析法を構築し,豪雨時の河川と下水道における雨水と河川水の流動実態及び両者の関係を明らかにしている.
Numerical simulation
三次元数値解析法を用いた土砂移動の検討
複雑な流れと土砂移動機構の解明を行うための三次元数値シミュレーション
土石流に関する研究
模型実験や現地では,カメラやセンサーなどにより土石流の表面の運動を観測できるが,土石流内部の運動はわからない.数値シミュレーションを用いて,土石流内部現象を解明する.
![](https://www.google.com/images/icons/product/drive-32.png)
▲三次元数値解析に基づいた土石流シミュレーション
浮遊砂に関する研究
実河川のような複雑な流れ場の中で,浮遊砂がどのように運動しているのか,解明されていない.粒子よりも小さな計算格子を使って,粒子周りの流れを直接解き,粒子がどのような力が働いているか,どのような運動をするのか解明する.
![](https://www.google.com/images/icons/product/drive-32.png)
▲浮遊砂運動のシミュレーション
Debris flow・Sediment discharge
土石流・土砂生産
豪雨やそれに伴う大洪水時には,土石流や山地斜面の崩落などにより多量の土砂が生産され,河川へと流入する.流入してきた土砂が堆積することにより,河床上昇,河道埋塞,が引き起こされ,河岸侵食(による堤防破堤)や土砂・洪水氾濫が発生し,甚大な被害となる.河床変動は主に上流側から決まる現象であるため,上流端に土砂の境界条件を与えて河床変動の方程式を解く.そして,流入土砂量ハイドログラフは,河床変動解析における上流端境界条件であり,重要な意味を持つ.当研究室では,流入土砂量ハイドログラフの推定とその推定法に関する研究,土石流による土砂生産のメカニズムに関する研究等を行っている.
levee
堤防
堤防脆弱性指標に基づく裏法安定性に関する研究
堤防は河川の最も重要な治水施設であり,堤防の決壊は何としても避けなければならない.一般的に堤防の破壊形態は越流・浸透・洗堀破壊があり,研究室では特に浸透破壊に着目した検討を行っている.そのため,現場で簡単に,科学的な方法で堤防危険個所を推定できる指標が求められている.既往研究では外水上昇時の議論が中心となっていたが,研究室では外水下降時における堤防の堤防脆弱性指標を提示している.そして現地河川に本指標を用いて提体内浸潤線の挙動が堤防の安定性に及ぼす影響を考察している.
Mountain river
山地河川
山地部の河川は,巨岩・巨石等の影響による三次元的に複雑な流れ場となる. こうした複雑な流れ場では,高精度な解析法である非静水圧準三次元解析法(Q3D-FEBS)を用いても,流体力の評価に課題があることから,高精度な評価法構築に向けて,非静水圧準三次元解析法(Q3D-FEBS)の改良を行う.改良したモデルを実河川で適用することで,巨石の移動解析法の構築を目指す.
Dam
ダム
ダム下流の山地河川の洪水流の解明を行うことは難しく,ダム貯水池の有効利用に課題がある.特に,河川上流部における粒径のばらつきの大きいダムの計画放流量を適切に設定するためには,準三次元解析法を用いた高精度な洪水流ならびに河床変動解析を行う必要がある. 例えば,黒部川の出し平ダム,宇奈月ダムは,機能維持を目的とした連携排砂が行われており,排砂時の土砂移動機構を解明することは工学上有用であることから,当研究室で開発された高精度モデルを用いた検討が行われている.
▲温井ダム(大野氏(博士論文))
Environment
河川環境
生物にとって棲みやすい河川環境の整備を行うことは,洪水を適切に流下させる治水的な河道整備と同様に重要な課題である. 環境変化の検討は,長期的な視点から行うことが必要である.本研究室では,長期間にわたる航空写真,河川測量データ,植生調査を基に,洪水や河道改修の結果,河道や河川環境がどのように変化したのかについて分析を行っている.また,洪水の再現計算を行うことにより,魚類の避難場所の考察などを行っている.
Retarding basin
遊水地,調整池
河川・遊水地・調節池を一体とした解析法の構築
豪雨により,下流での氾濫の危険性があがった際,河川の水を引き込むことで,河川の水位を低下させ,氾濫の危険性を下げる役割を持つ. 洪水時に正しく遊水地・調節池を用いることができるか,また,その効果はどの程度となるのかを分析することは,河川整備においてとても重要である.過去の洪水と同規模の洪水が起きた際の遊水地・調節池の効果についての研究を行っている.
Estuary
河口
河口は海と川の接続部分で波の影響を大きく受けている.そして粒度分布のばらつきが大きく,複雑な地形を構成している.例えば,高知県に存在する一級河川の物部川河口では2~100mm程度の石礫を主材料とする砂州が発達し,河口を閉塞する事例が頻繁に発生している.そのため,河口礫洲の適正な管理に向け,現象解明が求められている.研究室では石礫河川の河床変動解析法と非静水圧準三次元解析法を組み合わせた洪水流・河床変動解析法を構築している.そして本解析法により,河口礫洲の変形機構をどの程度説明しているかを検討している.