年度末は、いろいろあって、結果的に久しぶりに OpenFOAM 関連の作業にリトライしました。ここでは、動かすことを第一義に、いろんな計算をやってみて、是非は後日考えていく方針でいきます。強引に推し進めるゴールは、VAWT周りの三次元流れです。もう一つの方針は、ローコストあるいはノーコストです。人件費は別として、中小零細業でもそこそこの労力で計算結果を手に入れられるような方針で進めていきたいと思います。
すでにこのWEBを弄られた方はなんとなくおわかりと思いますが、具体的には、
FreeCAD → XSim → OpenFOAM → ParaVIEW
の流れで進めていきます。現時点では、 XSim に頼っているところは不確定要因と受け止めています。
モデルから OpenFOAM 入力ファイル群を作成するのは、当面、人力では無理な気がします。スクリプト支援がなければ、人力では無理、というスタンスで、XSim の手助けを頼りに上記手順で当座、進めます。
したがって、計算条件等も適当で、境界条件は試行錯誤、あるいは、予想通りになるか実験的でいきます。
以下に、本気地頭所時点での関連記事のリストを示します。
FreeCAD
FreeCAD といいつつ、モデル作成方法から ParaVIEW での可視化まで概観しています。
ParaVIEW
序盤の断片情報です。流体数値計算の手順としては、5回目が最もすっきりしているかも。
openFOAM
Reboot編は今後、これから。それまでは混沌とした内容かも知れません、いや、混沌としています。インストール方法と、今となっては意味のないグラボトラブル、後はチュートリアルのキャビティ流れの設定ファイルの中身が見れるくらいでしょうか。
投稿日時:2021年3月31日 3:23 PM
もう十数年前、まだエアコンは贅沢品で年額60万円ちょっとの教育研究費予算で、二階の研究室では室外機は屋上設置してください、というお役所ルールで、クレーン工事費でエアコン導入は100万円いるとされていた平成の時代の話です。
いくら配管掃除しても、老朽化した排水管が直ぐ詰まって、男子便所の小便器からは、水洗の水があふれ出し、尿石が詰まるからと水を流しながら用を足すと、とてもここではかけない状況が当たり前だった時代の話です。
当然、トイレはくさくなるので換気が必要です。ところが、優秀な大学からやってきた優秀な教授陣を要する機械系の建物なのに、トイレの開放可能な窓とドアは全開。外からの風で臭気は館内に蔓延しました。特にトイレ横の居室では、その臭気がダイレクトに室内に入ってきました。換気扇を正しく使用しているものにとっては、大変迷惑な状況でした。
そこで、啓蒙もかねて、学部流体工学の試験問題に、もちろん手計算ですが、トイレ内の流れに関連する試験問題を出しました。まぁ、予想通り出来はよくありませんでした。
それから長い年月が過ぎました。私も老人になり、トイレもきれいに改装されましたが、新型コロナが発生して以降、また似たような換気の問題が世の中や報道ニュースバラエティ番組で発生しています。
これを機に、いっちょ openFOAM で計算してみよう、という事例です。
まずはモデルから。
何でこんな形状にしたのか。
XSim の説明をいい加減に読んでしまい、アップロードファイル数が5つ、って思い込んでしまいました。まぁ、それだけではないんですが、それが動機になったのは間違いないです。ちなみに正しくは、アップロードファイルの総容量が 5MB でした。
モデルコンセプト
トイレ室は、図中右上にある横長長方形部分です。それに続く右側エリアは、ドアの外の空間のイメージです。下を横断する流路は、左のチャンバーからの接続流路です。
換気扇は、トイレ室左上にあるという設計です。そこから細いダクトを経て端面に達します。この端面で外向き(左向き)流速指定境界条件を付します。その左には、左チャンバーへの空気吸入口があります。ここを、換気扇と同流速で吸い込み境界条件にしようと考えました。吸い込まれた気流は、チャンバーで減速して、流れに応じて窓とドアに適当に成り行きで分かれるであろう、と考えました。流出入の面数を2つに減らして STLファイル数を減らそうと考えたわけです。
境界条件等
部屋: 横 10 m / 高さ 2 m
換気扇:流出速度 10m/s
吸気口 :自由流出入
流路側面壁および部屋以外の壁面 滑り壁
部屋の壁 静止壁
安定性関係パラメーター:デフォウルト
計算所要時間:数分(2分くらい?)
計算結果
解釈(注:計算条件等は十分には検討されていません、念のため)
見ての通り、左チャンバーからトイレ室左の窓に続くダクトで、気流が速くなっています。大局的に見ると、流路全体で時計回りの流れになっているようです。流路面積の関係で、上述の流路が最も流速が早いですが、流量からいけば、大流量の循環流れになっています。
時間発展を見ると、当初は予想通り、換気扇に流入する流れは、窓(に続くダクト)の上壁に沿った早い流れのみで、それ以外の流速は小さく、流量もそれが多勢を占めていました。しかし、壁面近くの流れの粘性または運動量交換によって、ダクトの速度が上壁面側から加速し始めて、最終的には上図のような結果になってしましました。
チャンバーの容量が小さかったこと、何よりも、窓ダクトの長さが長かったことから、エゼクター(現代の機械工学科では絶語化していますので、各人調べてください)効果によって、どんどん運動量が供給されて、エネルギー損失を上回るエネルギー供給によって、換気扇によって換気される流れを遙かにうわまわる流れ場が形成されてしまったようです。流路を滑り壁にしたことも敗因の一つのようです。
まぁ、失敗計算例としては非常にわかりやすいよい例です。
とはいえ、上述のように、外から風が吹き込んだ場合の最悪のケースの流れのメニズムは、多分この結果の流れと基本的には同じ機構となっている、という意味で、奇しくもその状況が結果として得られています。
投稿日時:2021年3月31日 3:57 PM
前回、早とちりもあってモデルに無理があったので、今回は単純に作り直しました。とはいえ、FreeCAD の練習も兼ねたモデルなので、二次元といいながら、厚みがそこそこあります。
モデルコンセプト
勘違いも解けたので、シンプルなモデルに変更しました。面の区別の都合で、換気扇、窓、ドア、の三部分が突出してます。若干長さがあるようですが、まぁ大丈夫だろう、という感じです。厚味がある以外は、標準的な方かもしれません、いかがでしょう。
計算条件
詳細は場当たり的に設定したので、おおよその雰囲気と受け止めてください。
部屋の置き差は、長さ 10 m 、 高さ 2m、くらい。
トイレ室内の周囲の壁は静止壁で、それ以外は滑り壁
換気扇は 高さ 40 cm くらいで 10 m/s の流速指定
窓とドアは、自由流入出にしようと思いましたが、静圧 0 Pa 指定にしてみました。
それ以外はほぼデフォウルト設定
計算結果
解釈(注:計算条件は十分には検討されていません。念のため)
計算開始直後は、上の図のように流れはじめの影響が全計算域に現れていますが、計算の終盤に近づくと、窓の換気扇に近い側から、換気扇にな晴れ混んでいる様子が見られます。部屋の大部分は、流線がありますが、流速は非常に小さくなっています。流線が蛇行しているのは、もうかなり流速は小さいということでしょう。
気になるところは、前回の失敗と同様に、換気扇の流れに巻き込まれて、窓下半分からの流れは若干強くなってきているように見えるところです。いえ、コンターを見ると、やっぱり絶賛加速中のようです。
計算の結果としては、換気扇をつけても、窓とドアを開けていると、そのほとんどは、換気扇と窓の最短距離を通って空気が流れるだけで、換気の観点からはイマイチということがわかります。せっかく電力をつぎ込んでも、直ぐ下の窓から吸い込んで吸い出すだけなら、あんまり有効とはいえず、はっきりいって、エネルギーの無駄、です。しかも、その流れは窓の上半分に集中しています。
あれ!衝撃波!?
さてこちらは、計算の最終局面です。へやのまんなかあたりで、まるで衝撃波であるかのような流線の密集した線が見られます。でもご安心ください。投影図で見ると、厚さ方向に流線が歪曲しているだけです。流速が遅いこともあってか、計算が進むにつれて、計算誤差による三次元性の方が、計算の流れよりも大きくなってしまったのでしょうか。実際なら、エネルギー消散や、現実には流れの揺らぎのようなものなのでしょうか。どっちにしてもおかしなことが起こり始めています。二次元計算といいながら、ちょっと厚みを持たせると、ややこしくなってくるという感じです。実際この後、発散してしまったようです。多分それは、上述の加速の結果、流速が、とっても大きくなってしまったからのようです。速度が桁違いに大きくなってしまっています。
投稿日時:2021年3月31日 4:46 PM
さて、前回はまぁまぁの結果が得られてたようです。最後の方に計算が破綻していたのがなぜでしょう。安定性を高めるために、乱流モデルだけどエネルギー消散とかを増やせばいいんでしょうか。まぁ、それは今は先の話です。換気、が一応テーマなので、窓とドアの開放条件を変えて計算結果を示すべきですが、モデルを今回は薄くしてみましょう。
モデルコンセプト
モデル側面は前回とそれほど大差ありません。薄さはかなり薄くなりましたが、それでも二層になっているので、何かあればおかしなことが生じやすいのかもしれません。まぁ、その程度でおかしくなるのも問題かもしれません。
計算条件も前回と基本的に同じです。
計算条件
前回同様。
部屋の置き差は、長さ 10 m 、 高さ 2m、くらい。
トイレ室内の周囲の壁は静止壁で、それ以外は滑り壁
換気扇は 高さ 40 cm くらいで 10 m/s の流速指定
窓、ドアは静圧 0 Pa 指定。
それ以外はほぼデフォウルト設定
計算結果
解釈(注:計算条件は十分には検討されていません。念のため)
計算開始直後は、上の図のように吸い込みの影響が換気扇付近に見られるようです。これは圧力分布がコンターで示されているので、流速が速い部分で圧力が低下しています。少し時間がたったのちは、圧力も少し落ち着いているような感じです。
換気扇と窓との間で流れが生じている結果は概ね同じです。厚みのあるモデルでは、多分空間的な影響で渦の形がやや複雑でしたが、二次元性が強いためか、きれいに循環流れが見えます(以下)。
循環流れが成長するのと同じく、換気扇付近には不穏な静圧と負圧が生じています。換気扇吸い込み口付近では負圧が、祖農法の天井付近には静圧部分が生じています。そもそも、換気扇部分の流量は速度一定なので限界があるはずですが、負圧行きが成長していくのはなぜでしょう。
窓の右下の循環領域は次第に成長していきます。そして、中心圧力も低下していき、先行きが不安になります。しかし、成長した渦は次第に右手に移動していきます。さらに静圧領域が広がってどうなるか、と思いましたが、エネルギー消散の影響か、圧力低下が緩和差レッツ身非手に移動していくようです。移動するにつれて、窓の右下には新しい循環流れが発生、成長してきます。
循環領域が生成、移動を繰り返すのかと思いきや、右上の角には不気味な高圧領域が発生しています。換気扇周辺も穏やかではありません。結局最終的には、流れ場は発散してしまったようです。
今回も、流れ場の雰囲気はいい感じだったんですが、信頼に足る計算結果か、といわれると、かなり怪しそうです。モデルの二次元性はかなり前回に比べて改善されたように思いますが、やはり、強い流れによって引き起こされる何かが、累積していくと数値的に発散してしまうようです。モデル形状よりも数値の安定性のパラメーターに原因があるのかもしれませんが、当初の目的のために、とりあえずは先に進みます。
次回はドアは開放で、窓を閉めた計算です。
投稿日時:2021年3月31日 6:59 PM
前回使用した薄いモデルを使用して、境界条件だけを変更して、窓は全閉、ドアは全開、の条件で計算を行います。
モデルコンセプト
モデル側面は前回とおなじ。
計算条件も前回と同じです。
計算条件
前回同様。
部屋の置き差は、長さ 10 m 、 高さ 2m、くらい。
トイレ室内の周囲の壁は静止壁で、それ以外は滑り壁
換気扇は 高さ 40 cm くらいで 10 m/s の流速指定
窓は静止壁、ドアは静圧 0 Pa 指定。
それ以外はほぼデフォウルト設定
計算結果
解釈(注:計算条件は十分には検討されていません。念のため)
やはり計算当初では圧力が少し高くなるようです。その後落ち着いて、今回は、ドア側から換気扇に向かってきれいな流線が描かれています。上の二枚目の図卯のように、一時圧力コンターが村々になりますが、これもまたその後落ち着きました(以下の図)。
換気、という観点からは、大変理想的な流れのようです。圧力分布も概ね一様に見えます。
流れが一様になった後、左下のコーナーに循環流れの小さな領域が発生しますが、この循環流れは園語安定して移動しませんでした。ドア近傍に圧力の高いエリアが発生しましたが、これも落ち着いたようです。今回は、計算の周期の間では発散しませんでした。
うまくいってるのかどうかは置いておいて、換気にはやっぱり、貫通流れを意識することが大切そうであることはいえるかもしれません。また、計算においては、循環、特にエネルギー供給によって発生している流れやその近傍は、注意がいるのかもしれませんね。でも、そんな気配りって、浪花節っぽくっていやですね。きっときちんとした合理的な方法があるはずです、きっと。
投稿日時:2021年4月1日 2:37 PM
今回も、前回同様、前々回使用した薄いモデルを使用して、境界条件だけを変更して、窓は全開、ドアは全閉、の条件で計算を行います。今回は、これまでの経緯を踏まえれば、窓、ドア、全開よりも早い段階で発散するのではないか、と予測されます。果たして結果は如何や。
モデルコンセプト
モデル側面、計算条件も前と基本的に同じです。
計算条件
前と同様。
部屋の置き差は、長さ 10 m 、 高さ 2m、くらい。
トイレ室内の周囲の壁は静止壁で、それ以外は滑り壁
換気扇は 高さ 40 cm くらいで 10 m/s の流速指定
窓は静圧 0 Pa 指定、ドアは静止壁。
それ以外はほぼデフォウルト設定
計算結果
解釈(注:計算条件は十分には検討されていません。念のため)
計算の開始直後の流れ場(上の図)は、やはり換気扇のオーバーシュートで、計算領域全体が負圧になっているようです。次のステップでは直ぐに圧力は0付近に戻ります。その後、やはり予想通り、換気扇周辺は負圧が強くなっていくようです。
負圧の領域が広がり始めました。赤い静圧の領域も成長し始めます。
計算領域全体もなんとなく赤みを帯びてきています。窓からの流れの勢いが強くなって、室内の圧力を上昇させているのでしょうか。
計算領域内の圧力が大きくなり、換気扇部分は低くなって二極化が進みます。
最終的には値が非常に大きくなって発散してしまったようです。
予想通り、かなり早い段階で計算は発散してしまったようです。このあたりの流れに対する対処を、パラメーターを操作する必要があるのでしょうか。逆に、予想通りなので、まぁそれなりの結果である、ともいえます。
投稿日時:2021年4月1日 3:03 PM
さて、二次元の計算モデルで長らく遊んできました。なんとなく、トイレの中の流れと、換気扇、窓、ドアの関係が見えたのではないでしょうか。
OpenFOAM は元々三次元で計算をするようなので、二次元の流れを扱おうとすると、暑さが1パネルになるように設定するのは、オートメッシュの時点では少しこつがいるようです。もっとも、今回の直方体の部屋の場合は、 XSim ではなくても、OpenFOAM 付属の blockMesh の得意とするところですから、きっちりと方眼用紙に座標を書いて臨んでもよかったのかもしれません。その意味では、三次元流れですら、同様ですね。でも、裏返しとして、ちょっと複雑で縁故などが入っているモデル作成の場合は、 XSim を利用するといいのかもしれません。
使用した計算モデル
今回の計算モデルは、よくあるように、窓の上に換気扇が配置されていて、その対面の壁に入り口がある形状です。窓とドアは、体格に配置されています。計算ケースは二次元の場合と同様に、換気扇から吸い出した条件で、窓とドア全開、ドアのみ全開、窓のみ全開、です。
計算結果1– 窓とドアを全開
二次元での計算結果と同様に、窓とドアから空気の流れがあります。換気扇への空気の流れはすべてその直ぐ下にある窓からのもので、窓の流れの一部がドアの方に向かって流れていますが、その流速は小さいようです。つまり、二次元の計算結果と同様に、換気という意味ではその効果は限定的で、換気扇を使用している効果を考えると、非常に無駄です。
計算結果2– ドアのみを全開
これも二次元での計算結果と結果は同じです。換気扇への空気の流れは、唯一の開口部であるドアから入ってきます。流速の村はあるものの、部屋全体に流線が広がっているようです。つまり、換気としては非常に効率的に思います。
計算結果3–窓のみ全開
これもまた、二次元計算結果と結果は同じです。窓から入った空気は特に換気扇に近いところで流速が大きく、離れるにつれて流速が小さくなっているため、換気口かは限定的です。ゆっくりとした渦が出来ているので、ドアに近いところではあまり空気は動いていないようです。
今回の計算結果はいずれも、時間ステップの早期から流れが安定して、ほぼ流れのパターンが変化なく落ち着いていました。OpenFOAMは 3次元の方が安定して計算できるのでしょうか。詳細は計算条件の違いにあるのかもしれません。乱流エネルギー消散等の安定性を高めた結果が効果として現れているかも知れません。
令和の時代に平成の時代の話をぶり返した内容でしたが、今は新型コロナ CORVID-19 の時代。マスコミや行政の曖昧な言葉の情報を独自解釈で鵜呑みにするのではなく、きちんとメカニズムを考えて解釈できるようになるのが工学技術者のスキルと思います。今回の結果は、視覚化したという意味で、少しはイメージ獲得の足しになったでしょうか。
次回からは円柱周りの流れに挑戦してみたいと思います。パラメーターの効果はそこで試してみたいと思います。
投稿日時:2021年4月1日 5:58 PM