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この座談会について

 2016年1月、京都市立芸術大学(以下京芸)のギャラリー@KCUAで、アーティストの丹羽良徳さんによるワークショップ「88の提案の実現に向けて」が行われました。同ワークショップはその前年にポーランドより招へいした美術作家のパヴェウ・アルトハメルとアルトゥル・ジミェフスキによる若手芸術家を対象としたワークショップ「House of Day, House of Night 昼の家、夜の家」参加者の成果発表的な位置付けのものでした[1]。同ワークショップでは丹羽さんが提示した「88の提案」の中から、『そのままで実現できそうなもの、少し解釈を加えることが必要となりそうなもの、更にそのままでは実現が非常に困難か、公共区間では実施不可能な項目も選ばれ、その「諸条件を検討」することが目指され』ました[2]。その4項目の中に「デリバリーヘルスのサービスを会場に呼ぶ」という項目があったことから、まずツイッターで批判の声があがり[3]、その後この件は多くのサイトや書籍で論じられることとなりました[4]。

 ワークショップでは実際にデリバリーヘルスのサービスが呼ばれることはなく、相談をうけた女優パフォーマー元セックスワーカーのげいまきまきさんが会場に来られて参加者と話をされました。当時現場で何があったかについては、ワークショップ「昼の家、夜の家」の報告書[1]には詳細は記載されていませんが、げいまきまきさんたちが立ち上げたサイトには比較的詳細に書かれており[5]や、丹羽さんと当日の参加者の方が参加されていた対談録[6]でも触れられています。

 今回の座談会は、同ワークショップで何があったのかを直接見聞きしたわけではない京芸の学生と卒業生、そして教員の有志で企画しました。企画者である私たちは、様々な記録や関係者のお話から、ワークショップの趣旨が実際にデリバリーヘルスのサービスを会場に呼ぶことにあったのではなく、そのことを含むいくつかの「提案」について考えてみるということだったと理解しています。同時に、たとえそうであったとしても、当日その場でおきたこと、そしてその後ネット上や様々な言論の場でこの件について語られたことには、表現に携わる当事者として考え、議論するべきことが多くあると思っています。

 本座談会では、当日ギャラリー@KCUAに来られたげいまきまきさんをゲストにお招きして、当時のことやこの件を経て考えておられることについてお話しを聞きます。また、当時在学していた京芸卒業生と今の在学生がげいまきまきさんを囲んで、思うところを話し合います。美術関係者以外の視点も欲しいということで、文化人類学的な手法でやその集団を対象にした研究をしている京都大学の院生にも座談会メンバー/ファシリテータとして参加して頂きます。座談会メンバー以外の参加者もオンラインのチャット機能を使って対話に参加することができます。

 会の目的は、当日何があったかを検証することではありません。この件に関してネット上で見聞きして、違和感やもやもやしたものを抱えていた京芸の学生たちが、そのことについて自分の思いを言葉にし、他の誰かと語り合う機会を持つことです。もちろん、実際に何があったのかをできるだけ正確に知り、問題点を整理することは大事なことであり、いずれそういう場も持ちたいと考えています。ですが今回の会については、京芸の学生たちが安心して自分の思いを話せる場を作ることを重視し、原則として参加者は京芸の関係者のみに限っています。その代わりに事後に開催報告を本サイトに掲載します。ご理解頂ければ幸いです。(文責:磯部)

企画者それぞれがこの会を開催するに際して考えてきたことを「企画者より」のページに掲載しています。また、この件の経緯をよくご存知ない方のために、「背景の整理」のページで簡単に説明してあります。

[1] Artist Workshop @KCUA House of Day, House of Night(昼の家、夜の家) 事業報告書, 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA, 2016(京芸図書館とギャラリー@KCUAで閲覧できます)

[2] 同報告書 p23

[3] https://togetter.com/li/932391 https://togetter.com/li/932439

[4] 関連文献・サイトのページをご覧ください

[5] Don’t exploit my anger!わたしの怒りを盗むな (リンクに一部不具合がありますが、ページの下の方にある"Read More..."をクリックしてゆくとどのエントリーも読むことができます。 最終閲覧 2022.2.14)

[6] 「芸術祭の公共圏 ―敵対と居心地の悪さは超えられるか?」http://www.nadiff.com/?p=15369 このサイトでは省略されている部分(本件への言及を含む)も含めたものが 丹羽良徳, 藤田直哉, 丸山美佳, F.アツミ「芸術祭の公共圏: 敵対と居心地の悪さは超えられるか?」2019, Art-Phil, (Kindle版のみ)に掲載されています。


簡単な報告:2月22日に開催された座談会は50名程の参加者がありました。話されたことの概要が分かる記録と、座談会を受けての企画メンバーおよび参加者がそれぞれの考えを記したテキストを、4月半ばくらいを目処に準備しています。準備ができたものからこのサイトに掲載します。

2022.4.5 追記 座談会後に企画メンバーがそれぞれの考えを書いたテキストも準備しています。完成したものから順次アーカイブのページに掲載しています。

2022.10.3 当日の文字起こしをアーカイブに掲載しました。

開催要領

日時:2022年2月22日(火) 18:00-20:00

場所:Google Meetを用いてオンライン方式で行います


プログラム

18:00 趣旨説明と諸注意

18:05 げいまきまきさんのお話

18:50 座談会

座談会メンバー:河原雪花、松岡美里、濱口芽(京芸卒業生)、北村花、峰松沙矢(京芸在学生)、竹田響、渡辺彩加(京都大学大学院生)+げいまきまきさん

ファシリテータ:駒井志帆(京芸在学生)、土田亮(京都大学大学院生)

20:00 一旦修了。その後、希望者で懇談の会を続けます。

参加方法

京芸のGoogleアカウントを持っている人は、当日時間になったら以下のリンクからGoogle Meetに参加して下さい。京芸アカウント以外からは承認した人以外は参加できない仕様になっています。学外の方は原則としてお断りしていますが、卒業生や関係者でKCUAアカウントが使えない事情等がある方は事前にご相談下さい。

https://meet.google.com/uic-wzgp-rka


本座談会は以下のメンバーで企画しました(50音順)

磯部洋明(京芸美術学部教員、責任者)、河原雪花(京芸院修了)、北村花(京芸在学中)、駒井志帆(京芸在学中)、土田亮(京都大学大学院生)、濱口芽(京芸院修了)、松岡美里(京芸院修了)、峰松沙矢(京芸在学中)


また、企画にあたってはブブ・ド・ラ・マドレーヌさんに色々と相談に乗って頂きました。企画者一同、お礼申しあげます。


本座談会に関するお問合せは asg@isobehiroaki.info までメールでお願いします。