1. Quantum computing using floating electrons on cryogenic substrates: Potential And Challenges.
A. Jennings, X. Zhou, I. Grytsenko, E. Kawakami, Appl. Phys. Lett. 124, 120501 (2024).
概要:液体ヘリウム表面上の電子、固体ネオン表面上の電子などをはじめとする真空中に浮いている電子のスピン状態を量子ビット状態として使用し、量子コンピューティングに利用する方法について議論する。電子の電荷状態はLC共振器と結合し、人工的に導入されたスピン-電荷結合を介してスピン状態の制御と読み出しを実現する。
2. Blueprint for quantum computing using electrons on helium.
E. Kawakami, J. Chen, M. Benito, D. Konstantinov, Physical Review Applied, 20, 054022 (2023).
概要:液体ヘリウム表面上の電子のスピン状態を量子ビットの状態として誤り耐性のある量子コンピュータを実現するための方法を理論的に提案した。局所的な磁場勾配を生成するために強磁性のマイクロピラーを作成し、電荷とスピンの自由度がハイブリッド化することにより、スピン状態のコヒーレンス時間を大幅に低下させることなく、高速な量子ビットゲートを実行し、高忠実度の量子ビットゲートを実現する。量子状態の読み出しには「鏡像電荷検出」を用いる。
3. Relaxation of the Excited Rydberg States of Surface Electrons on Liquid Helium.
E. Kawakami, A. Elarabi, D. Konstantinov, Physical Review Letters, 126, 106802 (2021).
概要:液体ヘリウム表面上の電子のリュードベリ状態の励起状態から基底状態への緩和時間をパルスマイクロ波励起に対する電子のリアルタイム応答によって測定した。測定された緩和時間の中で最も長いものは、最低温度135 mKの条件下で測定された約1マイクロ秒であった。
4. Image-charge detection of the Rydberg states of surface electrons on liquid helium.
E. Kawakami, A. Elarabi, D. Konstantinov, Physical Review Letters with Editors’ Suggestion, 123, 086801 (2019).
概要:液体ヘリウム表面上の電子のリュードベリ状態を読み出す方法、「鏡像電荷検出」を提案し、実験的に実証した。この方法は単一電子の量子状態を検出するためにも利用でき、液体ヘリウム表面上の電子を量子コンピューティングに利用する道を開くことを示した。
5. The impact of classical control electronics on qubit fidelity.
J.P.G. van Dijk, E. Kawakami, R.N. Schouten, M. Veldhorst, L.M.K. Vandersypen, M. Babaie, E. Charbon, and F. Sebastiano, Physical Review Applied, 12, 044054 (2019).
概要:シリコン中の電子を量子ビットとして集積化し、量子コンピュータを実現するためには、多数の量子ビットを量子操作するために多数の電子機器が必要となる。十分に信頼度の高い量子ビットを実現するために必要となる電子機器の仕様についての分析を行った。
6. A programmable two-qubit quantum processor in silicon.
T. F. Watson, S. G. J. Philips, E. Kawakami, D. R. Ward, P. Scarlino, M. Veldhorst, D. E. Savage, M. G. Lagally, Mark Friesen, S. N. Coppersmith, M. A. Eriksson & L. M. K. Vandersypen, Nature 555, 633 (2018).
概要:シリコン中の電子スピンを量子ビットの状態として、初期化、読み出し、1量子ビットゲートおよび2量子ビットゲートといった量子コンピュータを実現するために必要な最小単位の量子操作の要素を実現した。
7. Valley dependent anisotropic spin splitting in silicon quantum dots.
R. Ferdous, E. Kawakami, P. Scarlino, M. Novak, D. E. Savage, M. G. Lagally, Mark Friesen, S. N. Coppersmith, M. A. Eriksson, L.M. K. Vandersypen, and R. Rahman, Nature Quantum Information 4, 26 (2018).
概要:シリコン中の単一電子スピンのスピン状態の基底状態と励起状態のエネルギー差が異方性を持つということを測定した。このエネルギー差はバレー状態に依存し、電子が閉じ込められた界面の原子レベルの詳細に大きく影響される。これらの実験結果は理論的な分析によっても裏付けられた。
8. Gate fidelity and coherence of an electron spin in a Si/SiGe quantum dot with micromagnet.
E. Kawakami, T. Jullien, P. Scarlino, D. R. Ward, D. E. Savage, M. G. Lagally, Viatcheslav Dobrovitski, Mark Friesen, S. N. Coppersmith, M. A. Eriksson, and L. M. K. Vandersypen, Proceedings of the National Academy of Sciences 113, 42, 11738 (2016).
概要:シリコン中の単一電子のスピン状態を量子ビットの状態として量子操作がどれほど信頼性をもって実験的に達成できるかを測定した。量子コンピュータの実現には99%以上の信頼度が求められるが、この実験ではその信頼度の閾値を超えることに成功し、量子コンピュータ実現に向けた重要なマイルストーンを達成した。
9. Electrical control of a long-lived spin qubit in a Si/SiGe quantum dot.
E. Kawakami*, P. Scarlino*, D. R. Ward, F. R. Braakman, D. E. Savage, M. G. Lagally, Mark Friesen, S. N. Coppersmith, M. A. Eriksson, and L. M. K. Vandersypen, Nature Nanotechnology 9, 666-670 (2014).
概要:シリコン中に単一電子を束縛し、電子のスピン状態のコヒーレンス時間が40マイクロ秒であることを測定した。これは、従来のようにガリウムヒ素を半導体として使用する場合に比べ100倍程度長く、半導体中の電子を用いて量子コンピュータを実現する可能性を大きく向上させた。
10. Excitation of a Si/SiGe quantum dot using an on-chip microwave antenna.
E. Kawakami, P. Scarlino, L. R. Schreiber, J. R. Prance, D. E. Savage, M. G. Lagally, M. A. Eriksson, L. M. K. Vandersypen, Applied Physics Letters 103, 132410 (2013).
概要:シリコン/シリコンゲルマニウム(Si/SiGe)とよばれる半導体ヘテロ構造を作成し、シリコン中に少数電子を束縛した。それらの電子に対しチップ上の小さいアンテナからマイクロ波を印加し、電子のスピン状態を操作するために必要な条件を満たしているか見積もった。