平成元年 法律 第八十四号
日本国「土地基本法」の読解
目次
第一章 総則(第一条 ~ 第十一条)
第二章 土地に関する基本的施策(第十二条 ~ 第二十条)
第三章 土地に関する基本的な方針(第二十一条)
第四章 国土審議会の調査審議等(第二十二条)
附則
第一章 総則
この法律は、土地についての 基本理念 を定め、並びに、土地所有者等、国、地方公共団体、事業者、及び、国民の土地についての 基本理念 に係る責務を明らかにするとともに、土地に関する施策の基本となる事項を定めることにより、土地が有する効用の十分な発揮、現在、及び、将来における地域の良好な環境の確保、並びに、災害予防、災害応急対策、災害復旧、及び、災害からの復興に資する適正な土地の利用、及び、管理、並びに、これらを促進するための土地の取引の円滑化、及び、適正な地価の形成に関する施策 を総合的に推進し、もって地域の活性化、及び、安全で持続可能な社会の形成 を図り、国民生活の安定向上と、国民経済の健全な発展 に寄与することを目的とする。
土地は、現在、及び、将来における国民のための限られた貴重な資源であること、国民の諸活動にとって不可欠の基盤であること、その利用、及び、管理が、他の土地の利用、及び、管理 と密接な関係を有するものであること、その価値が、主として人口、及び、産業の動向、土地の利用、及び、管理の動向、社会資本の整備状況、その他の社会的経済的条件により変動するものであること等、公共の利害に関係する特性を有していることに鑑み、土地については、公共の福祉を優先 させるものとする。
土地は、その所在する地域の自然的、社会的、経済的、及び、文化的諸条件に応じて適正に利用し、又は管理されるものとする。
2 土地は、その周辺地域の良好な環境の形成を図るとともに、当該周辺地域への悪影響を防止する観点から、適正に利用し、又は管理されるものとする。
3 土地は、適正かつ合理的な土地の利用、及び、管理を図るため策定された土地の利用、及び、管理に関する計画に従って利用し、又は、管理されるものとする。
土地は、土地の所有者、又は、土地を使用収益する権原を有する者(以下「土地所有者等」という)による適正な利用、及び、管理を促進する観点から、円滑に取引されるものとする。
2 土地は、投機的取引の対象とされてはならない。
☞ 「投機的取引」とは、なんら公益性が無く、その土地の公示相場の上下動にて、土地を売買して儲ける取引のこと。違法性が大きいので、会社としては禁止する。
土地の価値が、その所在する地域における 第二条 に規定する、社会的/経済的条件 の変化により増加する場合には、土地所有者等に対し、その「価値の増加に伴う利益」に応じて、適切な負担が求められるものとする。
2 土地の価値が、地域住民、その他の土地所有者等以外の者による、まちづくり の推進、その他の地域における、公共の利益の増進を図る活動により維持され、又は、増加する場合には、土地所有者等に対し、その価値の維持、又は、増加に要する費用に応じて、適切な負担が求められるものとする。
土地所有者等は、第二条 から 前条 までに定める土地についての 基本理念(以下「土地についての基本理念」という)にのっとり、土地の利用、及び、管理、並びに、取引を行う責務を有する。
2 土地の所有者は、前項の責務を遂行するに当たっては、その所有する土地に関する 登記手続、その他の権利関係の明確化のための措置、及び、当該土地の所有権の境界の明確化のための措置 を適切に講ずるように努めなければならない。
3 土地所有者等は、国、又は、地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力しなければならない。
国、及び、地方公共団体は、土地についての基本理念にのっとり、土地に関する施策を総合的に策定し、及び、これを実施する責務を有する。
2 国、及び、地方公共団体は、前項の責務を遂行するに当たっては、土地所有者等による適正な土地の利用、及び、管理を確保するため、必要な措置を講ずるように努めるとともに、地域住民、その他の土地所有者等以外の者による、当該利用、及び、管理を補完する取組を推進するため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。
3 国、及び、地方公共団体は、広報活動等を通じて、土地についての基本理念に関する国民の理解を深めるよう、適切な措置を講じなければならない。
事業者は、土地の利用、及び、管理、並びに、取引(これを支援する行為を含む)に当たっては、土地についての 基本理念 に従わなければならない。
2 事業者は、国、及び、地方公共団体が、実施する土地に関する施策に協力しなければならない。
国民は、土地の利用、及び、管理、並びに、取引に当たっては、土地についての 基本理念 を尊重しなければならない。
2 国民は、国、及び、地方公共団体が、実施する土地に関する施策に協力するように、努めなければならない。
政府は、土地に関する施策を実施するため、必要な法制上、財政上、及び、金融上の措置を講じなければならない。
政府は、毎年、国会に、不動産市場、土地の利用、及び、管理、その他の土地に関する動向、及び、政府が土地に関して講じた基本的な施策 に関する報告を提出しなければならない。
2 政府は、毎年、前項の報告に係る、土地に関する動向を考慮して、講じようとする基本的な施策を、明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。
3 政府は、前項の講じようとする、基本的な施策を明らかにした文書を、作成するには、国土審議会の意見を聴かなければならない。
第二章 土地に関する基本的施策
国、及び、地方公共団体は、適正かつ合理的な土地の利用、及び、管理 を図るため、人口、及び、産業の将来の見通し、土地の利用、及び、管理の動向、その他の自然的、社会的、経済的、及び、文化的諸条件を勘案し、必要な土地の利用、及び、管理に関する計画を策定するものとする。
2 前項の場合において、国、及び、地方公共団体は、地域の特性を考慮して、良好な環境の形成、若しくは、保全、災害の防止、良好な環境に配慮した土地の高度利用、又は、土地利用の適正な転換を図るため、特に必要があると認めるときは、同項の計画を詳細に策定するものとし、地域における社会経済活動の広域的な展開を考慮して、特に必要がある、と認めるときは同項の計画を、広域の見地に配慮して、策定するものとする。
3 第一項 の場合において、国、及び、地方公共団体は、住民、その他の関係者の意見を、反映させるものとする。
4 国、及び、地方公共団体は、第一項に規定する諸条件の変化を勘案して、必要があると認めるときは、同項の計画を変更するものとする。
国、及び、地方公共団体は、前条 第一項 の計画に従って行われる良好な環境の形成、又は、保全、災害の防止、良好な環境に配慮した土地の高度利用、土地利用の適正な転換、その他適正な土地の利用、及び、管理の確保を図るため、土地の利用、又は、管理の規制、又は、誘導に関する措置を適切に講ずるとともに、同項の計画に係る事業の実施、及び、当該事業の用に供する土地の境界の明確化、その他必要な措置を講ずるものとする。
2 国、及び、地方公共団体は、前項の措置を講ずるに当たっては、公共事業の用に供する土地、その他の土地の所有権、又は、当該土地の利用、若しくは、管理に必要な権原の取得に関する措置を、講ずるように努めるものとする。
3 国、及び、地方公共団体は、第一項 の措置を講ずるに当たっては、需要に応じた、宅地の供給が図られるように、努めるものとする。
4 国、及び、地方公共団体は、第一項の措置を講ずるに当たっては、低未利用土地(居住の用、業務の用、その他の用途に供されておらず、又は、その利用の程度が、その周辺の地域における同一の用途、若しくは、これに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し、著しく劣っていると認められる土地をいう。以下、この項において同じ)に係る、情報の提供、低未利用土地の取得の支援等、低未利用土地の適正な利用、及び、管理の促進に努めるものとする。
5 国、及び、地方公共団体は、第一項の措置を講ずるに当たっては、所有者不明土地(相当な努力を払って探索を行っても、なお、その所有者の全部、又は、一部を確知することができない土地をいう)の発生の抑制、及び、解消、並びに、円滑な利用、及び、管理の確保が図られるように努めるものとする。
国及び地方公共団体は、円滑な土地の取引に資するため、不動産市場の整備に関する措置、その他必要な措置を講ずるものとする。
2 国、及び、地方公共団体は、土地の投機的取引、及び、地価の高騰が、国民生活に及ぼす弊害を除去し、適正な地価の形成に資するため、土地取引の規制に関する措置、その他必要な措置を講ずるものとする。
国、及び、地方公共団体は、社会資本の整備に関連して、土地所有者等が、著しく利益を受けることとなる場合において、地域の特性等を勘案して、適切であると認めるときは、その利益に応じて、その社会資本の整備についての、適切な負担を課するための必要な措置を講ずるものとする。
国、及び、地方公共団体は、土地についての基本理念にのっとり、土地に関する施策を踏まえ、税負担の公平の確保を図りつつ、土地に関し、適正な税制上の措置を講ずるものとする。
国は、適正な地価の形成、及び、課税の適正化に資するため、土地の正常な価格を公示するとともに、公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする。
国、及び、地方公共団体は、土地に関する施策の総合的かつ効率的な実施を図るため、地籍、土地の利用、及び、管理の状況、不動産市場の動向等に関し、調査を実施し、資料を収集する等、必要な措置を講ずるものとする。
2 国、及び、地方公共団体は、土地に関する施策の円滑な実施に資するため、個人の権利利益の保護に配慮しつつ、国民に対し、地籍、土地の利用、及び、管理の状況、不動産市場の動向等 の土地に関する情報を提供するように、努めるものとする。
国、及び、地方公共団体は、土地に関する施策を講ずるにつき、相協力し、その整合性を確保するように努めるものとする。
2 国、及び、地方公共団体は、土地に関する施策を講ずるにつき、総合的見地に立った行政組織の整備、及び、行政運営の改善に努めるものとする。
国は、地方公共団体が実施する、土地に関する施策を支援するため、情報の提供、その他必要な措置を講ずるように努めるものとする。
第三章 土地に関する基本的な方針
政府は、土地についての 基本理念 にのっとり、前章に定める土地の利用、及び、管理、土地の取引、土地の調査、並びに、土地に関する情報の提供に関する基本的施策、その他の土地に関する施策の総合的な推進 を図るため、土地に関する基本的な方針(以下、この条において「土地基本方針」という)を定めなければならない。
2 土地基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 第十二条 第一項 の計画の策定等に関する基本的事項。
二 適正な土地の利用、及び、管理の確保を図るための措置に関する基本的事項。
三 土地の取引に関する措置に関する基本的事項。
四 土地に関する調査の実施、及び、資料の収集に関する措置、並びに、第十八条 第二項 に規定する土地に関する情報の提供に関する基本的事項。
五 前各号に掲げるもののほか、土地に関する施策の総合的な推進を図るために必要な事項。
3 国土交通大臣は、土地基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 国土交通大臣は、前項の規定により 土地基本方針 の案を作成しようとするときは、あらかじめ、国民の意見を反映させるために、必要な措置を講ずるとともに、国土審議会の意見を聴かなければならない。
5 国土交通大臣は、第三項の閣議の決定があったときは、直ちに、土地基本方針 を告示しなければならない。
6 前三項の規定は、土地基本方針 の変更について準用する。
第四章 国土審議会の調査審議等
国土審議会 は、国土交通大臣の諮問に応じ、土地に関する総合的かつ基本的な施策に関する事項、及び、国土の利用に関する基本的な事項を調査審議する。
2 国土審議会は、前項に規定する事項に関し、国土交通大臣に対し、及び、国土交通大臣を通じて関係行政機関の長に対し、意見を申し出ることができる。
3 関係行政機関の長は、土地に関する総合的かつ基本的な施策に関する事項で、その所掌に係るもの、及び、国土の利用に関する基本的な事項で、その所掌に係るものについて、国土審議会の意見を聴くことができる。
1 この法律は、公布の日から施行する。