【 DLPD 】

種別:シナリオフック

「手を挙げろ!」


この世界に於いて、警察の権力は失墜して久しい。

超人種犯罪は法では裁けない、そんな言葉が日々声高に叫ばれ、留置所代わりのロックウェイブ島への搬送だって、ヒーローの協力無くしては成り立たない現状が続いている。凶悪なヴィランを前に警察官たちが出来ることなんて無いも同然だし、警察上層部がヴィラン組織と癒着していた……なんてニュースは、もう驚かれもしない。

では、彼らは不要な存在か? 答えはNOだ。少なくとも、警察として生きることを選んだ者たちは、そう信じている。事実はどうあれ、そう信じようとしている。そして考えている。自分たちに出来ることは何なのか、を。

何より、ヒーローが「道を踏み外した」時、それを取り締まるのは彼らの役目だ。 出来る・出来ないに関わらず……法治国家である以上、そこは揺らがない。

警察は時としてヒーローに協力することもあるが、多くの場合、目的や手段の違いから完全に連携の取れている組織ではない。ヒーローの中には警察を無能と公言する者もいるし、警察の中にはヒーローを目の上のコブと考える者もいる。ヒーローは個人としての戦闘能力と狭い範囲の調査能力に秀で、警察は組織立っての広い範囲の調査能力に優れる反面、ヒーローほどの戦闘能力を持たない。G6と手を組んでると見せかけて、双方情報を隠している、なんてこともザラだ。

超人種犯罪の立証困難性、およびセカンド・カラミティ以後に激増したヴィランの活動に推され、超法規的行動をとるヒーローの存在は、多くの警察関係者に黙認されている。しかし正義の大義名分のもとに、殺人、窃盗、情報漏洩を厭わないヒーローも多く、それらが軋轢の種となっている。

そういう状況なものだから、元々は書類上に記された、小難しい用語が由来だっただろうそれは、今ではそんな彼らを揶揄するスラングとして定着している。

──それが「 Dead Line Police Department.(死にかけのお巡りさん)」だとよ!

ふざけやがって、F×ck(クソッタレ)!

※※※

以下に記すのは、そんなDLPDのモデルケース二名だ。

彼らは決してヒーローではない。

時としてヒーローのか弱い協力者になったり、鬱陶しい妨害者になったりする彼らは、どこかの国、どこかの都市、どこかの部署で働く……ただのお巡りさん(シナリオフック)たちだ。

立ち絵(自作。使用フリー)

ダニー・ウルフ刑事

「よぉヒーロー、暇か?」


若き旧世代・ダニー刑事は不良警官だ。 彼は超人種犯罪に警察だけで立ち向かうのは無理だと諦めた。 諦めて、割り切って、それでも見て見ぬ振りが出来なくて……仕方ないので、市民の平和の為、出来ることを積極的に行うことにした。 彼の場合、それはヒーローへの情報漏洩という形になった。
ダニー刑事の情報漏洩のやり方は多岐に渡る。夜の警察署屋上にヒーローを呼び出したり、ヒーローの行きつけの店に張り込んだり、パトカーで事務所に押し掛けたり、場合によってはメール一本で片をつけたりもする。当然、組織としては大問題だ。おかげで彼はしょっちゅう謹慎処分を受けてるし、いつクビになってもおかしくはない。
彼は概ね、ヒーローにとって「都合の良い」存在だ。 だが、「味方」かと言われると、別にそうでもない。彼はあくまで、ヒーローという民間人を利用しているに過ぎない。もっと都合の良い存在が現れたり、ヒーローが彼の眼鏡に敵わなければ、彼はあっさりヒーローを見限って、新たな都合の良い誰かに、情報を丸投げすることもあるだろう。

エレクトラ・マーティン警部補

「これ以上、深入りするのは止めなさい」


間も無く還暦を迎える女警官、エレクトラ警部補は、厳格で保守的な人物として知られている。冷徹で、無情で、容赦をしない、鉄の女だ。
梟のサイオンである彼女は、しかしヒーローのようなスーパーパワーは持たない、ただの一般人だ。そんな彼女は警察官として、何より世の秩序が保たれることを重視する。 それが多くの市民の安寧を守ることになるのだと判断すれば、彼女は情報を伏せ、闇に葬り、隠蔽し、カバーストーリーを作り上げる。その為ならば、ヒーローに対する妨害工作だって厭わない。そうして自身の家族すら切り捨てたこともあるのだと、風の噂で囁かれている。
警察は正義の味方ではなく、あくまで、秩序の番人。……そう断ずる反面、彼女はそれが、多数の為に少数を犠牲にするやり方であるとも理解している。 だから、もしもヒーロー達が、彼女の協力者となれたなら──彼女はヒーローに、「正義の味方」であることを期待するだろう。
立ち絵(自作。使用フリー)