10:00-10:05 開会の辞
10:05-10:45 岩田覚(東京大学)「重み付き線形マトロイド・パリティ」
効率的な厳密解法が設計できる組合せ最適化問題として,マッチングとマトロイド交叉が知られている.両者の共通の一般化として導入されたマトロイド・パリティ問題は,一般のマトロイド上で指数時間を必要とする.これに対し,Lovasz (1980) は,行列表現が与えられた線形マトロイド上での最大最小定理を証明し,多項式時間解法を設計した.
本講演では,小林佑輔(筑波大学)との共同研究に基いて,重み付き線形マトロイド・パリティ問題に対する多項式時間解法を紹介する.
10:45-11:00 休憩
11:00-11:25 根本俊男(文教大学)「参議院選挙合区に対する数理的考察」
参議院議員通常選挙の選挙区において合区(鳥取と島根,高知と徳島で1選挙区)が始まった.一票の較差是正に対し各都道府県への議席数配分変更による従来のアプローチに加えて区割変更のアプローチも採用したといえる.この合区は都道府県の組合せによる格差是正への取り組みであり最適化モデルの構造が現れる.ここでは合区と一票の較差をめぐる議論に対し最適化モデルの観点からの知見を提供する.
なお,本講演は堀田敬介(文教大学),和田淳一郎(横浜市立大学)と取り組んでいる共同研究の一部である.
11:25-11:55 安藤和敏(静岡大学)「subdominant 閉路完全距離の特徴付けとそれに対する効率的なアルゴリズム」
系統学における重要な問題は,生物種間の相違を表す相違写像が与えられたときに,これらの生物種の進化の歴史を忠実に表現する系統樹を推定することである.系統樹のモデルとして最も基本的なものは超距離木であり,超距離木に対応する相違写像は超距離と呼ばれる.最近,Trudeau(2012) は最小費用全域木ゲームの文脈において閉路完全距離という概念を導入した.閉路完全距離は超距離の自然な一般化であり超距離に対して成り立つsubdominant の存在のような良い性質を保存している.本研究では,subdominant閉路完全距離の特徴付けを与え,それに基づいて任意の相違写像に対する subdominant閉路完全距離を求める効率的なアルゴリズムを与える.さらに,このアルゴリズムから最小費用全域木ゲームの閉路完全解に対する同じ計算量を持つアルゴリズムを導く.
11:55-13:40 お昼休み
13:40-14:20 室田一雄(首都大学東京)「整凸関数の離散凸解析における役割」
1990年にFavatiとTardellaによって提示された整凸関数の概念は.離散凸解析における関数クラスの基本的な枠組みとなっている.本講演では,その定義と特徴づけの精密化,近接定理,射影演算などの最近の研究結果も含めて,整凸関数の性質を概観し,整凸関数の意義について議論する.
14:20-14:50 田村明久(慶應義塾大学)「離散凸解析を用いたマッチングモデルの展開」
2003年の藤重先生との共同研究から派生した研究成果について振り返る.2003年の理論研究から始まった離散凸解析を用いたマッチングモデルの研究について,その後の理論的な展開,応用への可能性の示唆,実務問題への展開について紹介する.
14:50-15:10 休憩
15:10-15:40 平井広志(東京大学)「CAT(0)空間上のアルゴリズムと最適化について」
CAT(0)空間と呼ばれるユークリッド空間や双曲空間を一般化した距離空間がある.CAT(0)とは,「曲率が非正」ということを意味している.この空間は,ユークリッド空間で成り立つ様々な良い性質を引き継いでいる.特に,任意の2点を結ぶ測地線( = 最短路)が一意に定まる.このことから凸関数なども自然に定義される.最近になって,CAT(0)空間を利用したモデリングやその上でのアルゴリズム・最適化理論が展開され始めている.本発表では,そのような試みの一端を紹介する.
15:40-16:10 谷川眞一(東京大学)「周期グラフの大域剛性」
ある結晶構造と同じ組成をもち幾何形状が異なる物質が存在するかを判定したい.幾何的制約条件のみを抜き出し問題を数理モデル化すると,この問題は空間内に埋め込まれた周期的無限グラフが辺長を変えずに異なる形状へ変形可能であるかを判定する問題として捉えることができる.一定の仮定のもと,この問題が劣モジュラ関数最小化の繰り返しで解けることを示す.
本研究はViktoria Kaszanitzky氏とBernd Schulze氏との共同研究である.
16:10-16:30 牧野和久(京都大学)「正モジュラ関数の最適化」
正モジュラ関数は,様々な組合せ最適化問題に関連して現れ,効率的なアルゴリズム設計の鍵となる重要かつ中心的な構造的性質の一つである.本講演では,正モジュラ関数最小化問題,最大化問題の計算量がともに指数時間であることを示す.
本研究はMagnus Halldorsson氏,石井利昌氏,高澤兼二郎氏との共同研究である.
16:30-16:50 休憩
16:50-17:40 藤重悟(京都大学)「最小ノルム点問題と離散最適化」
ノルム最小化に関わる離散最適化の諸問題について,最近までの話題とこれからの展望についてお話ししたい.
17:40-17:45 閉会の辞