水槽実験と野外調査を組み合わせることによってガンガゼ個体群の摂食圧を推定した下記論文についての紹介です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pbr/15/2/15_B150201/_article
Ishikawa, T., Kurashima, A. (2020) Estimation of the feeding pressure of a sea urchin (Diadema setosum) population on a barren ground in a temperate region of Japan. Plankton and Benthos Research 15(2): 112-120.
ガンガゼ類による食害は磯焼けの原因になることから、ガンガゼ類は多くの海藻を食べていると考えられます。
しかし、野外においてガンガゼ類を含むベントス個体群の摂食圧(どの程度、食物を食べるか)を調べた知見は少ないです。
そこで、ガンガゼ個体群の摂食圧を推定することを目的に実験を行いました。
磯焼け海域にはガンガゼ以外の動物も生息していることから、海の中で直接、ガンガゼのみの摂食圧を求めることは困難です。
そのため、本論文では水槽実験によってガンガゼの摂食特性を求めました。
飼育水温を変えたり、ガンガゼの大きさを変えて、水槽内でガンガゼに海藻を食べさせました。
その結果、ガンガゼは体(殻径)が大きいほど、そして、水温が高いほど摂食量が増えることが明らかとなりました。
磯焼け海域には大小様々な大きさのガンガゼが生息しています。
三重県尾鷲市 賀田湾古江のガンガゼが優占する磯焼け海域において野外調査を行い、生息するガンガゼの大きさ別の個体数を調べました。
古江の磯焼け海域では、殻径が4~5 cmほどのガンガゼが多く生息することが明らかとなりました。
飼育実験によって得られたガンガゼの摂食特性と野外調査によるガンガゼ個体群のデータを組み合わせて、磯焼け海域におけるガンガゼ個体群の摂食圧を推定しました。
磯焼け海域におけるガンガゼ個体群の摂食圧は水温が高くなる夏に高い値を示し、冬に低くなるという季節変動を示すことが明らかとなりました。
本ページは表題論文の一部を改変、要約して作成しました。