健康保険適応の歯科インプラント(広範囲顎骨支持型装置)治療
助教・医員 木下 陽介(きのした ようすけ)
今日、歯科インプラント治療は、失った咬合を回復させる治療法の一つとして定着しており、患者さんの生活に大きく貢献しています。一方、歯科インプラント治療は健康保険適応範囲外の治療であり、医療費が高額になってくるという問題が存在します。
2012年度より、健康保険適応歯科インプラント治療が、広範囲顎骨支持型装置」という名称でスタートし、その後、数回の改正を経て、徐々に適応範囲が拡大されてきました。
2024年度現在の対象は以下のとおりです。
(1)腫瘍、顎骨嚢胞、顎骨骨髄炎、外傷等による広範囲な顎骨欠損もしくは歯槽骨欠損症例またはこれらが骨移植等により再建された症例。
(2)外胚葉異形成症等または唇顎口蓋裂等の先天性疾患であり、顎堤形成不全であること、あるいは多数歯欠損。
(3)6歯以上の先天性部分無歯症または、前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全。
以前は顎義歯や義歯しか治療選択肢がなかった前記症例患者さんに新たな選択肢が加わり、大変有意義な制度であると考えます。
当院は、広範囲顎骨支持型装置埋入手術施設基準届出保険医療機関となっており、上記対象症例・患者さんに健康保険での歯科インプラント治療を提供できます。
当科では、歯科大学附属病院で、長く歯科インプラント科長を務め、顎顔面インプラント専門医・指導医、口腔外科専門医・指導医である笹倉裕一の指導のもと、日々より良い治療を提供できるよう医局員全員でつとめております。上記対象患者さんを診察されている医療機関の先生方には、当科にご相談いただければ幸いです。
また、当科では、通常の歯科インプラント治療もおこなっており、特に、歯槽骨の萎縮により顎骨量が不足している症例に対し、様々な骨造成術をおこない、骨量を回復しての歯科インプラント治療を多く手掛けております。
このような骨造成術を伴う歯科インプラント治療についてもご相談いただければ幸いです。
最後に私たちが行っている広範囲顎骨支持型装置による咬合回復を行った治療例を供覧します。
写真1 下顎骨区域切除後、チタンメッシュトレー法を用い、腸骨細片骨で再建した下顎骨へのインプラント埋入
写真2 生理的な口腔形態に近づけるため、口蓋粘膜移植による口腔前庭拡張術施行
写真3 最終補綴物装着
写真4 最終補綴物装着時の口腔内写真