― 医科歯科連携で支える全身管理としての口腔ケア ―
日本医科大学千葉北総病院 歯科では、2012年度に「周術期口腔機能管理」が診療報酬に新設されたことを契機に、手術前後の口腔管理に本格的に取り組み始めました。この取り組みは2025年で13年目を迎えます。
医科各科と連携しながら、手術前後の全身管理の一環として、安全な周術期医療に資する口腔ケアの提供体制を構築してきました。
手術前後の口腔内は、感染源となり得る細菌が多く存在する環境です。特に全身麻酔手術では、口腔内細菌による術後肺炎や創部感染のリスクが高まることが知られています。
当科では、全身麻酔手術を受けるすべての患者を対象に、術前の口腔衛生管理および必要な歯科治療を実施しています。
加えて、義歯や動揺歯による誤嚥・脱落事故の予防も、術中の安全確保において重要な目的です。
2015年7月には、病院内の未使用スペース(旧洗濯室)を改装し、専用の「周術期室」を設置しました。
限られたスペースでも通常の外来診療と同等の処置が可能となっています。
また、患者の病状や移動制限に応じて、病棟・病室での対応も柔軟に実施しており、歯科衛生士と連携したチームケアにより、ベッドサイドでの安全な処置提供を行っています。
当院では、がん、心疾患、脳血管疾患などさまざまな基礎疾患を有する患者が多く、周術期口腔管理においても各診療科との連携・情報共有が不可欠です。
実際に、内科、外科、循環器内科、麻酔科などと連携しながら、タイムリーかつ的確な対応を図る体制が整備されています。
歯科は、全身の治療と安全な手術の一翼を担う専門領域として、多職種と連携しながら、患者中心の医療に貢献しています。
これまで当科の周術期口腔管理は、1日あたり10名程度の患者を対象に提供してきましたが、ここ数年で依頼件数や対応患者数が増加し、現在では1日20名程度に達しています。
このように患者数が増加している背景には、医科各科の先生方が口腔ケアの重要性をご理解くださり、積極的にご依頼いただいていることがあります。医療安全への共通認識のもと、連携体制も年々強化されています。
13年にわたる実績を踏まえ、対象患者のさらなる拡大や、運用の効率化・質的向上を図っていきます。
また、医科各科との情報共有や連携を深めることで、院内外における周術期口腔管理の理解と実践のさらなる普及を図ってまいります。
2012年度より「周術期口腔機能管理」に本格的に取り組み開始
2015年に専用の「周術期室」を設置し、可搬機器で病棟対応も可能に
全身麻酔手術を受けるすべての患者を対象に、安全確保と感染予防を実施
医科との連携体制を整備し、全身管理の一環として口腔ケアを提供
現在、1日約20名の患者に対応。今後さらなる質的・体制的拡充へ