大國神社に鎮まります大穴牟遅命(おおなむちのみこと)は、大国主命(おおくにぬしのみこと)というお名前で広く知られる男神さまであり、島根県の出雲大社の御祭神として著名でございます。
『古事記』および『先代旧事本紀』には、大国主命のご活躍がイキイキと記されております。特に、傷ついて泣き叫んでいた白うさぎを助けて療養の術を教えた「いなばの白うさぎ」のお話しは、大国主命の優しいお心を今に伝えます。
『古語拾遺』には、
「大己貴神(※大國主命)は、少彦名神と心を合はせ力を一つに、天下を経営(つく)りたまひ、蒼生畜産(あをひとぐさけもの)の為に療養之方(やまひをなほすわざ)を定め、また鳥獣昆虫(とりけものはふむし)の災(わざはひ)を攘(はら)はむが為に、禁厭之法(まじなひののり)をも定めたまひき。百姓(おほみたから)今に至るまで、ことごとく恩頼(みたまのふゆ)を蒙(かがふ)りて、皆効験(みなしるし)有り。」
と記されております。
これらの神話から、大国主命は、国土開拓はもちろんのこと、病気平癒、医療、さらには農業、畜産など幅広い御神徳を持つ神様でもあることがわかります。
また、古来「えんむすび」(良縁成就)の神様として庶民から広く崇敬されてきた神様でもあります。
中世以降は七福神の大黒天と習合し、福神さまとして信仰されています。
わが国の国土は、伊邪那岐命(いざなきのみこと)という男神さまと伊邪那美命(いざなみのみこと)という女神さまの夫婦が力を合わせてお生みになられたものであり、『葦原中国(あしはらのなかつくに)』と呼ばれたその国土を、大国主命は少彦名神(すくなひこなのかみ)と力を合わせ心を一つにして開拓なさりました。
その後、伊邪那岐命の子である天照大御神(あまてらすおおみかみ)という女神さまは、
「この国は私の子孫が統治するべき国である。」
と仰せになり、使者の神さまを遣わせて、そのことを大国主命へお伝えなさいました。
そして、交渉の結果、大国主命は国土の統治を天照大御神のご子孫へお譲りになることを承諾なさいました。
この時、大国主命は、その条件として、高天原(天上世界)に届くほど立派な住居を造ることを求めました。
これが、天日隅宮(出雲大社)のご創建です。
また、『日本書紀』によると、大国主命は、この時、
「現世のことは皇孫がお治めください。私は神事を治めます。」
と仰せになりました。
つまり、目に見える世界(顕界)のことは天照大御神が、目に見えない世界(幽界)のことは大国主命が治めることになったのであります。
そのため、大国主命は、私たち人間が亡くなった後に行く冥界を主宰する神様(幽世大神)としても信仰されております。