再生農業は、しばしば炭素循環農法とも呼ばれ、菌類、菌根菌ネットワーク、光合成細菌の力を利用して土壌の健康を回復し、炭素を地下に固定する。単に作物を育てる以上のこの革新的なアプローチは、気候変動への解決策、持続可能な食糧生産の青写真として世界中で注目を集めています。
当社では炭素循環農法の普及活動をしています。
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炭素循環農法とは?
炭素循環農法は、化学肥料や農薬を使わずに、土壌の微生物の働きを活かして作物を育てる農法です。パーマカルチャーやオーガニック農法の要素を取り入れながら、短期間で土壌の改善を可能にします(1〜3年)。
炭素循環農法の特徴
化学肥料・農薬・コンポスト不要:土壌微生物が自然に養分を供給するため、追加の肥料は必要ありません。
炭素資材を活用:もみ殻、枯れかけた竹、木材チップなどを土に加え、微生物の活動を促します。
虫害・病害の抑制:土壌が健全になることで、害虫や病気の発生が減ります。
炭素循環農法の仕組み
土壌を育てることで作物を育てる
通常の農法では、作物に直接栄養を与えるために肥料を施します。しかし、炭素循環農法では、まず土壌を育て、微生物の力で作物を育てるのが基本です。
微生物が作物の肥料を生み出す
特に重要なのが「糸状菌」という微生物です。この菌が活発に働くと、土が柔らかくなり、分泌物が作物の養分になります。自然農法でも同じ仕組みが働きますが、土壌の改良には7年ほどかかることがあります。炭素資材を使うことで、この期間を1〜3年に短縮できます。
炭素資材とは?
炭素資材とは、炭素を多く含み、微生物のエサとなる有機物です。適切な炭素資材を使うことで、土壌の微生物が活性化し、豊かな土を作ります。
適した炭素資材の例(重要な順)
枯れかけた竹(若竹はNG)
炭素量が多く、長期間にわたって分解が進むため、安定した土壌改良に貢献します。
もみ殻
入手しやすく、炭素が多いため長期間効果を発揮します。
木材チップ(細かく砕いたもの)
ゆっくり分解され、土壌の水はけや通気性を改善します。
Q1. 慣行農法から徐々に切り替えられる?
A. はい。通常の作付けを続けながら、炭素資材を追加することで、徐々に土壌を改善できます。
Q2. 炭素資材の量はどれくらい必要?
A. 土壌の状態によりますが、1反(約1000㎡)あたり50kg〜200kgの炭素資材が目安です。
Q3. なぜ虫害や病気が少なくなるの?
A. 硝酸態窒素が過剰な土では、葉が柔らかくなり、害虫のエサになります。炭素資材を活用すると、微生物が余分な硝酸態窒素を分解し、作物が丈夫になるため、虫害や病害が自然に減ります。
炭素循環農法は、自然の力を活かしながら、より効率的に土を育てる農法です。土を健康にすることで、持続可能で安定した農業を実現できます。
1. 虫食いが発生する理由:硝酸態窒素の影響
植物が土壌中の硝酸態窒素(NO₃⁻)を多く吸収すると、葉が柔らかくなり、害虫にとって食べやすくなる。
硝酸態窒素を多く含む植物は水分量が多く、虫の成長を助けるため、食害が増える。
2. 硝酸態窒素が増える仕組み
農薬や化学肥料の使用 → 土壌微生物が減少
農薬や化学肥料により、土壌の有益な微生物が減少し、土のバランスが崩れる。
特に、酸素を必要とする好気性菌が減り、土壌が固くなりやすくなる。
土壌の酸欠 → 嫌気性の腐敗菌が増加
土壌の通気性が悪化すると酸素不足になり、嫌気性菌(酸素を必要としない菌)が増える。
嫌気性菌が増えると、有機物が不完全に分解される。
不完全な分解 → 硝酸態窒素の増加
嫌気性菌の活動により、硝酸態窒素(NO₃⁻)が多く生成される。
硝酸態窒素は水に溶けやすく、植物が過剰に吸収しやすくなる。
植物が硝酸態窒素を吸収 → 虫害が増える
硝酸態窒素を吸収した植物は葉が柔らかくなり、害虫にとって理想的なエサとなる。
水分が多い葉は病原菌の繁殖にも適し、病害のリスクも増加する。
3. 解決策:炭素循環農法で土を改善
炭素資材で土の通気性を向上
竹チップや籾殻などを施すことで、好気性微生物(酸素を必要とする菌)の働きを促す。
土の団粒構造が整い、水はけと通気性が向上し、酸欠を防ぐ。
微生物バランスを改善し、硝酸態窒素を抑制
炭素資材が微生物のエサとなり、土壌の分解プロセスが正常化する。
硝酸態窒素の過剰生成を防ぎ、害虫が付きにくい植物が育つ。
農薬の必要性を減らし、害虫や病気を抑える
土壌が健康になれば、作物自体が丈夫になり、虫や病気に強くなる。
✅ 害虫が多い畑は、硝酸態窒素が過剰で土壌バランスが崩れている可能性が高い。
✅ 炭素循環農法を実践すると、酸欠を防ぎ、硝酸態窒素の増加を抑え、害虫被害を軽減できる。
害虫と硝酸態窒素の関係についての仮説
害虫にとって、硝酸態窒素は間接的に良い餌となる可能性がある。
硝酸態窒素が多いと、植物の葉は水分を多く含み柔らかくなる。これにより、害虫(アブラムシやヨトウムシなど)が食べやすくなり、結果として集まりやすくなると考えられる。
また、硝酸態窒素が過剰な土壌では、根腐れのリスクが高まるため、植物はこれを吸収しようとする。その結果、硝酸態窒素を多く含む葉が成長し、害虫の餌となる。
ここで考えられる仮説として、害虫が植物の葉を食べることで、土壌の窒素バランスが調整される可能性がある。害虫の排泄物や死骸が土に戻ることで、微生物がそれを分解し、最終的に土壌が改善されるのではないか。
この考え方が正しければ、害虫は単なる害ではなく、土壌を浄化する役割を持っているとも言える。
ただし、これは仮説の段階であり、植物が意図的に害虫を利用しているかどうかは、さらなる検証が必要である。
畝を掘る(40cm以上の深さ)
土を深く掘る。
上の土と下の土を入れ替える。
**炭素資材(炭や木くずなど)**を混ぜる。
生の草は入れない(腐敗を防ぐため)。
微生物の餌を与える
煎り塩1:水1500 または 海水1:水50 を土にまく。
米ぬかか黒砂糖を少量加える(バクテリアの餌)。
土を軽く圧縮する
少し踏み固めて、酸素を減らす。
その後、透明ビニールで覆う。
透明ビニールをかける
畝を透明ビニールで覆い、密閉する。
太陽光を当てて、**光合成細菌(好気性菌)**を増やす。
光合成細菌が増殖する
光合成細菌は土の有機物を分解する。
それにより、放線菌が増えやすい環境になる。
1~2ヵ月後、透明ビニールを剥がす
光合成細菌は減少する(日光や環境変化の影響)。
放線菌が増殖し、炭素資材を分解し始める。
土を軽く耕し、再び圧縮する
軽く耕して酸素を供給する。
その後、土を再び軽く踏み固める。
黒いビニールをかける(1ヵ月)
黒いビニールで光を遮断する。
酸素が減り、嫌気性菌(Clostridiumなど)が増える。
嫌気性菌は放線菌の残骸や有機物を分解する。
黒いビニールを剥がす
空気に触れた土で、糸状菌が増える。
糸状菌が土を改良する
糸状菌は微生物の残骸や有機物を分解する。
土が団粒化(粒がまとまり、水はけと通気性が良くなる)。
作物が育ちやすい土になる。
土が団粒化し、水はけ・保水性・通気性が良くなる
病害に強い土壌になる
肥料をほとんど必要としない
自然の循環で作物が育つ
工程1(透明ビニールの密封)
透明ビニールで 密封 し、内部の湿度と温度を高める。
太陽光を透過させることで、好気性菌(光合成細菌など)が活性化 する。
好気性菌が有機物を分解する過程で、酸素が消費され、土壌内の酸素濃度が次第に低下 する。
この状態は、次の工程で嫌気性菌が増殖しやすい環境を作る準備となる。
✅ 透明ビニールの密封は、好気性菌の増殖と、次の嫌気環境への移行をスムーズにする役割を持つ。
工程2(黒ビニールの使用、ただし密閉はしない)
透明ビニールを剥がすと、土壌内の酸素は既に減少している。
ここで 黒ビニールをかぶせ、日光を遮断 することで、光合成細菌が死滅し、嫌気性菌が優勢になる。
ただし、黒ビニールを 完全に密閉すると、腐敗菌が増えるリスクがある。
適度な空気の流れを確保することで、放線菌が優勢になり、土壌のバランスが整いやすくなる。
✅ 黒ビニールは光を遮断するが、密閉はせずに放線菌の活動を促す環境を作ることが重要。
工程1では密封が必要 → 好気性菌の増殖と、酸素を減少させることで嫌気環境の準備を行う。
工程2では密閉しない → 適度な空気の流れを確保し、放線菌の増殖を促すことで、土壌の健全な発酵を進める。
この方法により、腐敗を防ぎつつ、土壌の微生物バランスを最適化できる。
作物の成長を助け、肥料の使用を減らすには、土壌を改良しながら微生物のバランスを整えることが重要です。特に、最初に糸状菌を増やして土壌環境を整えた後、菌根菌を増やす方法は、持続可能な農業に適した方法の一つです。
目的:作物と菌根菌を共生させ、養分の吸収を助ける。
菌根菌と相性の良い作物を選ぶ
ナス科(ナス、トマト、ピーマン)
マメ科(エンドウ、ソラマメ、大豆)
イネ科(トウモロコシ、イネ)
リン酸肥料を控える
リン酸濃度が高いと、菌根菌との共生が進みにくい。
初期は有機肥料や堆肥を使用し、化学肥料の使用を抑える。
菌根菌を畑に入れる(必要に応じて)
市販の菌根菌資材(グロムス菌など)を使う。
菌根菌が多い土を少量混ぜることで、自然に増やすことも可能。
耕す回数を減らす(不耕起栽培)
菌根菌は地中に菌糸ネットワークを作るため、頻繁に耕すとダメージを受ける。
耕作を浅くするか、不耕起栽培を検討する。
リン酸・ミネラルの吸収が良くなる(肥料の節約)。
水分を保持し、乾燥に強くなる。
病害耐性が向上し、作物が健康に育つ。
土壌環境が安定し、長期的に良い状態を保ちやすい。
✅ 糸状菌を増やすことで、菌根菌が定着しやすい土壌を作る。
✅ リン酸を控え、耕す回数を減らすと、菌根菌が増えやすい。
✅ この方法により、肥料の使用を減らしながら、健康な土を維持できる。
この流れを意識すれば、自然の力を活かした持続可能な農業が可能になる。
この工程は、土壌の微生物バランスを整え、自然の力を活用して植物の成長を促すために有効です。以下の理由があります。
1️⃣ 微生物の役割を活かす
光合成細菌は有機物を分解し、土壌の環境を改善する。
放線菌は病原菌を抑えながら、土壌を豊かにする。
嫌気性菌は放線菌の残骸を分解し、土壌のバランスを安定させる。
糸状菌は有機物を分解し、団粒構造を形成する。
菌根菌は植物の根と共生し、栄養や水の吸収を助ける。
2️⃣ 土壌の団粒化を促進する
糸状菌の働きで水はけと保水性が良くなり、根が伸びやすい土壌になる。
団粒構造ができると、酸素と水がバランスよく供給され、作物が健康に育つ。
3️⃣ 病害菌を抑え、農薬を減らせる
放線菌や糸状菌は、病原菌と競争して増殖を抑える働きを持つ。
これにより、農薬に頼らず健康な作物を育てることができる。
4️⃣ 化学肥料を減らし、土壌の持続性を高める
菌根菌が育つことで、リンや窒素などの栄養素を効率よく吸収できる。
微生物の働きで有機物が自然に分解され、肥料に頼らなくても土が豊かになる。
5️⃣ 持続可能な農業につながる
微生物の働きを活かすことで、環境負荷を減らしながら収穫量を維持できる。
土壌が健康なまま維持されるため、長期的に安定した農業が可能になる。
この工程は、土壌の微生物の力を最大限に活かし、健康な作物を育てるための自然な仕組みです。
農薬や化学肥料を減らし、持続可能な農業を実現するために有効な方法と言えます。
これは土壌の水捌けが悪い場合に特に有効
1. 排水溝を掘る
畑の通路に沿って、深さ40cm~60cmの排水溝を作ります。
2. ハードパンを貫通させる
一部の場所では80cmまで掘り、ハードパン(硬い地層)を突き抜けます。これにより、水が下に流れやすくなります。
3. ハードパンの影響
ハードパンがあると、水が下に流れにくくなり、溜まった水が腐ることがあります。
4. 植物への影響
腐った水を植物が吸収すると、害虫が発生したり、病気になったりする原因になります。
5. 適切な深さ
排水溝の深さは40cm~60cmが基本です。
一部の場所を80cmまで掘ると、水はけがよくなります。
地表から地下水位までの距離は20cm~40cmが適切です。
20cm掘ったときに湿った土が出る場合、地下水位が近いことを意味します。
6. 注意
地形や季節によって状況が変わるため、現場の状態をよく確認しながら作業してください。
ドレインの深さを平均40〜60センチにし、局所的に80センチの穴を掘ってハードパンを貫通させると、作業工程を減らせます。
1. 竹を配置する(第1層)
完全に枯れた竹を、一番下に敷く。
目的は土の密度を調整することであり、微生物を増やすためではない。
この層がドレインの水の流れを作る。
2. 土をかぶせる(第2層)
竹の上に土をかける。
3. もう一度竹を敷く(第3層)
さらに竹を敷き、ドレインの機能を強化する。
水が流れやすくなり、空気も通るようにする。
4. 最後に土をかぶせ、埋め戻す(第4層)
土をかけ、元の地面の高さに戻す。
5. 陥没への対応
時間が経つと、土が沈むことがあるが、これは自然な現象。
地下に水の流れが既にできているため、ドレインの機能は維持される。
沈んだ部分には、籾殻を混ぜた土を入れ、再び平らにする。
ドレインに竹を入れるのは、土の密度を調整するため。
完全に枯れた竹を使うので、腐敗の影響はほとんどない。
沈下が起きても、地下水路ができているため、ドレインの機能は続く。
定期的に沈んだ部分を埋め戻すと、長期間安定した排水ができる。