脅威!空手の源流だと言われる南派拳法とは
脅威!空手の源流だと言われる南派拳法とは
編集/中国武術WEB編集部
揚子江(長江)より北で誕生した拳法は北派といい、南で生まれた拳法を南派拳術という。
古くから中国では「南船北馬」という諺があるが、平野が多い北方地方と違って、河川や運河が多い南方地方では、移動や輸送の手段に船を利用する事が多く、それが南派拳術を発展させたという。
また「南拳北腿」と区別され、北派はわりと大きく伸びやかな動作が見られるが、南派は船の上で戦ったり、狭い所で戦うのに利便性を考慮してからか、小さく小刻みな動作という違いがある。
南派拳術においても、広東系と福建系と分かれており、「短橋狭馬」と「長橋大馬」と区別されている。「橋」は手、腕を意味し、「馬」は歩幅を意味する。広東系を代表するのは洪家拳であり、福建系を代表するのは詠春拳、白鶴拳である。
空手の源流とされ、琉球(沖縄)に伝承があった那覇手は、中国との外交、貿易において中国へ行き、あるいは琉球を訪れた中国人から中国武術を学び、これを独自に発展させたものであると考えられている。
白鶴拳にはサンチン類似の開手の套路(型)があり、明治期、沖縄の那覇手を修得していた東恩納寛量が中国で鳴鶴拳を学び、さらに東恩納寛量の高弟である宮城長順が中国の福州に渡り、白鶴拳を学び帰島した後、師・東恩納寛量と図り、白鶴拳の技と沖縄古来の「手」と組み合わせて体系作りをし、後に「剛柔流」と命名したことは広く知られている。
今回は台湾の武術家とその関係者のみなさんの協力のもとで掲載する事となったので、地理の関係上、「短橋狭馬」系の南派拳術を紹介する事とする。
福建 白鶴拳
台湾で指導されている鄭顕気老師による白鶴拳
「三戦」といった立ち方があり、空手道に大きな影響を与えてきたといわれている。台湾は福建とは海を隔てた近い位置であるので、数多くの白鶴拳の名手がいる。
お馴染みの鄭顕気老師は今年88歳になるが、その実力は衰えを知らない。毎朝公園で門弟に稽古をつけている。まさに鉄人だ!
白鶴拳の他に太極拳の名人として知られている鄭顕気老師は「放鬆」を特に強調され、非常にやわらかい動きをおこなう。
白鶴拳は、方七娘という女性が福建少林寺に出入りしていた父から学んだ拳法と鶴の動きを合わせて研究して編み出された拳法だと言われ、それから分派され、白鶴拳でも多くの種類がある。福建省を中心に台湾にも伝承がある。
沖縄空手に多くの影響を与えてきた拳法としても知られており(※現に今でも沖縄空手の師範であられる人がお忍びで台湾に行って白鶴拳を習っている)、強い呼気や運気をおこないながら拳を練るのが特徴である。今回演武してくださった鄭顕気老師は白鶴拳の中でも鳴鶴拳を得意とされ、「コー-」という呼気音の他に、「クオ」や「ヒュ-ウ」といった鶴の鳴き声を真似た呼気音がある。呼吸は、吸う時には胸を開き、吐く時に命門穴(腰にあるツボ)からの運気と強調させながら、丹田に向って求心力を加えるかのように気を送り込む。詳しい方法はとても文章では説明しきれないので、省略する。気を練る練習は正しい指導のもとで練習しなければ、体に害を与えたり、頭がおかしくなってしまうこともあるので、正しい指導の下で学習する事を望む。
また空手道のように腕や手を打って鍛えたりするが、ただ力任せにおこなうのでなく、「八歩連」といった基本型を練りながら、呼吸と合わせて内面から鍛えていく、そのようにして練った腕で叩かれると、鉄の棒でぶん殴られたかのように強烈である。
白鶴拳 火形手対打
火で攻め水で流すといった動作を連続に繰り返していく。
白鶴拳は金形手、木形手、火形手、土形手、水形手といった五行の森羅万象の特性を拳技に反映した技法がある。
これらは互いに関連しあい、万物を形成するように、白鶴拳の技法においても根本に位置するものである。
白鶴拳基本拳路八歩連の実戦技法の中にある対打練習
剛柔流空手の源流だと言われている白鶴拳であるが、粘りっこくてやわらかい対打である。
実戦では指先で相手の肝臓を突き刺す危険な技となる。
白鶴拳 土形手対打
動画ではやわらかく動いているように見えるが、実際に鄭顕気老師とやってみるとすごく重い。
白鶴拳を練りながら、神奇内勁練功法「鬆身五法」で練ってきた成果であると鄭顕気老師は語る。
~ここだけの重要な話~
晩年車椅子生活を送っていた黄性賢(鄭顕気老師の師)は座った状態でも、軽く触れただけで、巨漢な相手をふっ飛ばしていたという。
黄性賢は武術だけでなく導引気功も練習していたという。
神奇内勁練功法「鬆身五法」も導引気功を取り入れながら鄭曼青の太極拳のエッセンスを凝縮して編み出したという。
「鬆身五法」を編み出した当時、黄性賢の太極拳の兄弟弟子であった鄭曼青の弟子は批判し、黄性賢のもとへ訪ねていった。
その時黄性賢は「鬆身五法」で編み出した内勁を遺憾なく発揮し、兄弟弟子を納得させて帰したという。
その黄性賢から鄭顕気老師へ導引気功が伝わっていることは殆どの人は知られていない。
台湾の鄭顕気一門でも3人ぐらいしか伝授されていないのだ。日本では今回東京の太極気功養生教室に特別伝授される事となった。
導引気功は黄性賢一門の間で秘密裏に伝授されていたらしく、鄭顕気老師さえ黄性賢から伝授を受けた時は、窓を閉め切って周りから見させないようにしていたという。
もしかして導引気功は黄性賢一門の秘伝もしくは核心部分かもしれない。
≫≫太極気功養生教室のホームページ(鄭顕気老師公認)はこちらから
広東 周家蟷螂拳拳
亜洲電視台の取材による模様
こちらの道場主は前宗家の娘婿・呉師である。
急所を蹴り上げてもびくともしないデモンストレーションをおこなっている。
周家蟷螂拳は、広東で起こった拳法であり、祖師の周亜南が少林寺で修行した後、カマキリと雀の闘う姿にヒントを得て創始したとされている。
軽やかなフットワークを多用する北派螳螂拳とは、技術内容がまったく異なり 、向かってきた相手の攻撃を打ち落としたりするようなどっしりとしたスタンスを取る剛の拳法であるといえる。背中や肋骨などをバネのように使用し波打つようにおこなう打撃は長短と距離は関係なく、点穴や急所を迅猛な手法で攻撃するのが特徴である。
また内功に優れたカリキュラムがあるといわれ、吊陰功はとても有名である。
ブルースリーが学んだ 詠春拳
南派拳術の「短橋狭馬」に属す。ブルースリーが学んでいた拳術として有名。伝説では厳詠春が創始したとされている。姿勢が高く、歩幅は狭く接近短打を強調する拳法である。上半身の動きを主体として、手技が多く発達している。また、あらゆる防禦技術はダイレクトな攻撃技に直結している。
本来は主に広東省や香港に伝承があったが、最近では欧米を初め国外に多く伝わってきている。
日本ではまだ殆ど知られていない。詠春拳は実戦に対して非常に明快で合理的な技術体系と練習体系を持っている。
詠春拳 黐手
接近戦で粘りっこくおこなうのが特徴である。
詠春拳 木人
詠春拳は、他流派の南派の拳術と同様木人を打って拳を練るのが特徴である。
詠春拳は欧米を中心に国外で多く普及されている。
香港 詠春拳家・梁國華老師
台湾での擂台試合(実戦形式に近い組手)の模様
香港を代表し、門派の面子をかけて台湾武術界に挑んで勝つ!
後に"抽選勝利"という意味不明な結果となり、台湾武術界と香港武術界との間で問題となった。
梁國華老師は葉問の関門弟子である梁挺老師の弟子である。日本ではまだ知っている人が少ないが、梁挺老師系の詠春拳は実戦的なものとして広く知られていて、欧米の軍隊や特殊部隊に採用されており、空手の世界チャンピオンまで門を叩いている。