運転士作業基準・標識等について
~~~運転安全規範~~~
綱 領
1 安全の確保は、輸送の生命である。
2 規程の遵守は、安全の基礎である。
3 執務の厳正は、安全の要件である。
東武博物館所蔵(筆者撮影、遠近法補正)
標識について
運転する上で、理解が必須となる標識・信号の一覧(一部)を以下に示します。名称は正確な名称が分かりませんので、実際と異なる場合があります。
①停車場における絶対信号機(場内・出発信号機)の確認喚呼位置に設けられています。※喚呼方法は下記[喚呼について]参照
②①以外の信号機=許容・閉塞信号機の確認喚呼位置に設置されています。
③東武ATSでは、運転手は速度計の60および15のランプ(或いは速度計の60および15の位置の青色の▼)のみでしか、パターンの発生状況を確認できません。
そのため、一部箇所では可視的にパターン速度の降下を把握できるよう、このような標識が線路上に設けられております。図のATS15標識の意味は、先の信号が停止の場合、この位置付近でパターン速度降下が15キロに到達することを示しています。基本的に出発信号が発車時以外停止現示(R定位)の駅に設けられています。
ATS10、ATS5などの表記があるものは、前項の2点タイマー式速度照査ATSの照査速度を示します。
④上は自動踏切支障報知装置動作時or手動押釦式踏切支障報知装置動作時or踏切設備故障時に上段赤、下段黄のランプが斜め交互に点灯します。
下は点灯時に踏切遮断完了、消灯時は踏切未動作/遮断未完了状態を示します。
[発光信号現示時の取扱方]※bveで再現はしません
直ちに非常制動を扱い停車→指令に報告→前途支障なし確認後、該踏切道手前まで15キロ以下で進行→一旦停止し指令に踏切の異常の有無を報告→運転再開。
※踏切防護ATS動作時は、ATS復帰スイッチを扱う。
※継続動作中の発光信号機は、係員による復帰扱いor列車の当該踏切通過により復帰する。
⑤全て、この位置からの速度制限を示しますが、以下の通り区別があります。
・白色地標識(第一種標識):線路の曲線による制限。
・黄色地標識(第二種標識):線路の曲線によらない制限。
端に黒色地三角の印があるものは、制限箇所の方向を示し、図の制限45は左に分岐する列車のみが制限を受けます。
区間最高速度以上の制限部など、全ての制限箇所に設置されている訳ではありません。
⑥⑤による、第二種標識による速度制限を受けている、「制限箇所の終わり」に設けられています。
そのため、制限解除・再力行には10両編成後部の通過完了を待つ必要があります。全ての制限解除箇所に設置されている訳ではありません。
⑦⑤による、第一種標識による制限区間を、10両編成の後部が通過完了したことを示します。この標識を通過後に列車は初めて速度フリーとなります。
全ての制限解除箇所に設置されている訳ではありません。
⑧相応の勾配上(基準不明)にある駅の端に設けられています。設置駅では残圧停車は控え、停車後はすぐに増圧して転動防止手配を執る必要があります。
なお、東上線の8000系以外の車両には「転動防止装置」があり、ドア開扉中はブレーキ位置にかからわず200kpa以上の圧力がかかるようになっております(BVEでは未実装)。
⑨左が設置位置がエアセクション区間内であること、右がエアセクション区間を10両編成の後部が通過完了したことを示します。緊急時を除き、エアセクション内で停車・起動することは、架線溶断・車両起動不能につながるため禁止です。よく交直セクションの加速禁止と勘違いしている例を見ますが、エアセクションですので加速は問題ありません。起動厳禁です。
エアセクション付近で停車する際は、エアセクション標識の手前orエアセクション10両後部クリア標識を超えてから停車するようにします(下図参照)。
防護受信時などの有事の際、セクション内で停車してしまった場合は、直ちにパンタを降下。エアセクション区間外のパンタを手動で上昇させ、エアセクション区間を脱出します。
○:停車可能 ×:停車・起動禁止
エアセクション存在区間(下り基準)は下記の通り
下板橋~大山 2か所あり(板橋変電所付近)
ときわ台~上板橋(ときわ台変電所付近)
東武練馬~下赤塚 2か所あり(練馬変電所付近)
朝霞~朝霞台(朝霞変電所先)
朝霞台~志木、志木~柳瀬川(志木き電区分所付近)
柳瀬川~みずほ台 2か所あり(柳瀬川変電所付近)
鶴瀬~ふじみ野 2か所あり(ふじみ野変電所手前)
上福岡出発場面(上福岡き電区分所)
川越~川越市(川越変電所付近)
先行接近時などにやむを得ず駅間停車時する際は、エアセクション内に絶対に停車しないよう要注意下さい。
区間最高速度について
東上線では、上記の速度制限とは別に、種別・区間ごとに最高速度が設けられております。
この制限速度を守らずに走行すると、特段制限標識のない曲線・下り勾配等の制限速度を超過する箇所があります。
また、前頁説明の通り踏切防護にも関与し、踏切支障による発光信号現示時に正しく非常制動手配/踏切防護ATS動作しても、該踏切までに停車できなくなる恐れがあります。区間最高速度は如何なる場合でも厳守して運転して下さい。
区間最高速度は下記表の通りです。※現行ATC時代と、制限速度は異なります。ATC化後の現在では、区間制限は全種別共通となっています。
bve設定上での速度制限も、下記表の通り設定しているほか、時刻表にも記載しております。
bve時刻表における区間最高速度表記
bveデフォルト時刻表に区間最高速度を表記しました。
駅名の前に記された数値が、次駅までの駅間速度になります。
右写真の黄色○は池袋~北池袋間の最高速度が80キロであることを示します。
※実際の仕業表にはこのような表記はありません。仕業表裏に一覧表があるだけで、運転中に確認することは当然ありません。全て記憶するのは言うまでもなく基本中の基本です。
車内ブザー合図取扱
東武では、駅発車時および停車駅の手前で、ブザーを用いた確認作業が以下の通りに行われています。
発車時
車掌からの発車合図ブザー:長1打[ー] ※戸閉後、車掌による車側安全確認完了後
停車時
車掌からの停車確認ブザー:短2打[・・] ※停車駅の進入手前にて
運転手の了解合図ブザー:短1打[・]
BVEでもメトロ総合プラグインを用いて、このギミックを再現しております。
車掌からの停車確認ブザーを聞いたら、再度種別・駅を確認の上、了解合図(endキー、短一打[・])を送ってください。
発車時は知らせ灯点灯に加え、車掌からの発車ブザーを確認の上、発車して下さい。
※入換及び入庫ブザーの取り扱いは、次項[基準運転方法]を参照ください。
喚呼について
東上線ATS時代における基本的な喚呼例を以下に示します。
複数年の前面展望ビデオなども参考にしていますが、同じ年に撮影されたものでも喚呼方法が異なっている箇所もあり、基準は不明です。
信号喚呼:上図標識一覧の①信号警標、②閉塞信号喚呼標識設置箇所で指差喚呼します。
○○:現示により「進行」「減速」「注意」「警戒」「停止」
出発信号機:「出発○○」 ※進路が別の場合や信号が複数ある場合には、先にそれを喚呼する (例)「外第三出発進行」
場内信号機:「場内○○」 ※進路が別の場合や信号が複数ある場合には、先にそれを喚呼する (例)「本線第二場内警戒」
閉塞信号機:「○○」 ※閉塞番号は喚呼しません
入換信号機:「入換進行/停止」 ※入換開始時一旦起立、発車時警笛鳴動
※停車駅の出発・出発相当信号機は、発車直前に喚呼する(後述の通り)
駅発車時の喚呼
「知らせ灯点」 ※知らせ灯点を指差確認しながら
「ブザーよし」 ※車掌からのブザー(長1打)を確認後。ブザーに手をかける場合あり
「進行」 ※上述の信号現示喚呼に準ずる。信号機を指差確認しながら
「発車」 ※発車と喚呼したのちにブレーキ緩解
「圧力よし」 ※省略の場合あり
「次駅停車○○(駅名)、下り本線/下り1番線/下り中線進入」 ※発車後に喚呼。次駅停車駅の進路が複数の場合は、着線進路も喚呼する。
駅進入時
「(駅名)停車/通過」
※進入駅の場内(場内相当閉塞)信号機の確認喚呼位置、或いは車掌からの停車確認ブザー応答時に喚呼。
場内信号機が複数ある場合は、一番内方の場内信号喚呼位置で喚呼。
停車後
「滅」 ※知らせ灯の滅灯を指差確認しながら
「転動防止」 ※基本省略
その他
「踏切よし」 ※踏切動作反応灯点灯を指差確認して。踏切が連続している場合など場合により「踏切2つよし」などと喚呼。基本喚呼省略。
制限速度に対する喚呼は基本的にありませんが、第二種速度制限標は喚呼することが標準のようです。
前照灯の取扱
列車進行中は滅灯しない。
減光装置は、進行中、停車中にかかわらず使用してよい。
駅構内において列車行違いとなる場合、停車している列車の前照灯は滅灯してよい。ただし、起動前には必ず点灯すること。
※退避中、前照灯は滅灯して下さい。
※対向列車で前照灯の点灯忘れがあった場合は自列車の「尾灯」を点灯、或いは自列車前照灯のパッシングにより、対向運転士に知らせます。気づいた対向の運転手は手の合図で応えます。
仕業表および列車種別表の掲出
列車運転中は仕業表を所定箇所に掲出し、列車種別表の装着を基本とする。
警笛鳴動について
以下の場合には警笛を鳴動して下さい。なお、東上線には警笛鳴動標の設置箇所はありません。
保線係員等の列車接近了解合図(黄旗の掲示/片腕の上昇)を認めた場合。
ホーム上の旅客が、黄色い線の外側にいる場合。
対向列車とのすれ違い直後に、踏切を通過する場合。※死角からの自列車の接近を公衆に知らせ、直前横断等の事故を防止するため。
入換発車時
その他危険を認めた場合。
各車種別基本ブレーキ操作
9000系列、10000系列、30000系、50000系列
ハンドルを4ステップで一旦止め、その後全ステップ位置へ、速度に応じて徐々に弛めて、1~2ステップ位置で停車する。
8000系
ハンドルを約60度で一旦止め、その後に全ブレーキ位置へ、速度に応じて徐々に弛めてラップ停車する。
※実際の運転シーンでは、2~4ステップ位置程度で数秒止め、その後に5~6ステップ程度に移して、徐々に弛めて停車がよく見る運転です。
ゆっくりと電制を立ち上げて、その後に強めていくイメージです。一気に5ステップ以上に持っていくことは、あまりありません。
常用最大ブレーキを使用しての停車も、ほとんどありません。ゆっくり、優しく、余裕をもって停めましょう。
※見習い運転手さんは、一人立ちまでの間に、上記の基本制動+75キロ弱の高速進入+追加制動無しで定位置停車する技術を習得することが徹底されているようです。
東武博物館 10030型シミュレーション 2回制動階段弛めのコツ(博物館公式見解)
23年10月、しばらく故障休止していた東武博物館の10030型シミュレーションがリニューアルされました。
路線は新規映像収録(音楽館)にて行われ、東上線についてはT-DATCが完全再現され、志木~池袋上り普通、池袋~川越市下り急行での運転が可能です。
従来のものとは変わり、人数限定、30分、有料(500円)となり、動力車操縦者試験(国家試験)をイメージした試験が行われ、採点が行われるようになりました。
また、50点以上:運転士見習、70点以上:運転士、90点以上:主任運転士と認定され、認定後は、位に応じた他線区ができるようになるという、本格的なシミュレーターになりました。
中でも、当サイトでも兼ねてより記載していましたが、上記の東武鉄道運転士作業基準に定められた2回制動階段弛も採点項目にあり、十分やり応えがあります。
BVEのような運転シミュレーター好きの方は十分に楽しめる内容となっているので、まだの方は是非トライされると良いでしょう。音や性能の感覚、視野角についてもほぼ違和感なく運転可能です。
また東武博物館公式YouTubeのコメント欄に、2回制動階段弛めのコツについての公式見解が載っていましたので引用いたします。
詳細は動画を参照→東武博物館10030型シミュレーション解説 北春日部―大袋
=====以下引用======
東武鉄道の基本制動について、2回制動階段弛めのコツは、一回目を停止目標のかなり先で停まるタイミングで掛け、あとは停止目標目標を見ながら(カーブで見えない場所では位置をイメージしながら)過走ギリギリのところで2回目を掛けるようにすると弛め動作が楽になりますし、停止位置を合わせやすいです。
多くのお客様は、早めに(かなり適当な位置で)全制動(7段)まで入れてしまい、いわゆる「弛め合わせ」になってしまい、最後に流れてしまって苦労しているようですね。
自動制動の古い電車では、低速で制動力が上がるので「一回制動階段弛め」での「弛め合わせ」が基本でしたが、電磁直通、あるいは電気指令式で、合成制輪子を使っている新しい電車では、低速での制動力の変化がないので「弛め合わせ」より「制動合わせ」の方が合理的で乗り心地もよく、定時運転も確保しやすいようです。
シミュレーションをされる際は参考にして下さい。
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上記見解の通りですので、是非当方東上線データとA7様の10000系列データにてよく練習の上トライされると良いでしょう。
90点以上の主任認定で、当方製作データでも収録されている東上線下り急行池袋~川越市のT-DATCでの運転が可能です!
因みに当方は3回目で主任でした、毎回最初の数駅が感覚が掴み切れず苦労しました。これでも十分早いほうとのことです。
転動防止・転動防止装置
停車後は直ちに200kpa以上を目安で転動防止手配を執ってください。B5程度がよく見るイメージです。常用最大や非常投入は不要です。
退避時は「非常」or「常用最大」、レバーサー「切」が基本のようです。※8000系では退避中に非常に入れることはありません。
転動防止装置について
東上線森林公園所属の車両(8000系を除く)には、転動防止装置が装備されています。これはドア開扉中、ブレーキハンドル位置に関わらず200kpaかかるものです。ドア開~戸閉操作まで有効で、車掌が閉扉動作に入ったと同時に緩解されます。bveでは再現ありませんので、停車後は直ちに転動防止して下さい。
許容停止位置範囲について
東上線各駅の標準有効長は210mですので、ほとんどの駅に5m程度の過走余裕があることになります。5m程度の過走であれば何ら問題なく乗降扱いを行います。車掌の後部限界表示も5mあります。経験上、仮に5mを超過している場合でも、乗降ドアがホームにかかっていれば、運転手と車掌が密に連絡を取り合い、安全を確認したうえでドア開扉しています。わざわざ遅延させて停止位置修正を行うことはありません。
BVEデータでは、10両編成200mの全てがホームにかかっている場合、ドアは開閉するように設定しております。そのため、停止位置許容範囲は各駅共通ではありません。各駅ホーム有効長により異なった設定となっています。概ね5m+α程度です。
これも経験上からですが、制動中に定位置停車が難しいと判断した場合には、直ちに非常制動を扱い、停止位置修正とならないように努めて下さい。但し、ギリギリまでは常用最大で粘りつつ、ホーム端も超過しそうな場合は即非常投入、停車時全緩解で衝動緩和に努めて下さい。ホーム端に収まれば問題ありません。非常緩解に時間を要す8000系では、出発(出発相当)閉塞をも越境しそうな場合は非常投入、その恐れがない場合は常用で停めてその後修正した方が早い可能性があります。
2012年頃から、ATC化に先駆けてホーム検知用地上子が設置・導入されています。そのためATC化対応済みの車両は、車両先端がホームにかかっていない場合、ドアは開扉しません。
[停止位置修正時の取扱方]
出発・出発相当閉塞信号機を超過している場合:必ず指令に報告し、指令の指示を受ける
出発・出発相当閉塞信号機を超過していない場合:指令への報告の必要なし
そのうえで、必ず車掌と打ち合わせまたはブザー合図により、よく安全を確認したうえで15キロ以下で後退。
bveでは、停止位置行過により車掌からの修正ブザー合図を受けたら、安全をよく確認の上、15キロ以下で停止位置を修正してください。
修正完了後はレバーサーの「前」切り替えを忘れずに行ってください。