東上線を支える車両たち

東上線で活躍する、個性あふれる各車両の紹介です。

・所属編成は、2021年12月現在東上線(=森林公園研修区)に所属する両数です。

・車両概要/性能数値は、東武鉄道公式HPの車両紹介のページを参照しております。

・紹介文、運転面での特徴/難易度等は、当然ながら実車を運転したこともないど素人の独断と偏見と贔屓による、個人的な見解です。

・本頁を除き、「系」「型」の表記使い分けは基本的に致しません。

8000型 私鉄最多の「712両」が製造された、昭和から今日へ至るまでの東武通勤型の象徴

造:1963年~1983年 制御装置:総括制御自動加減速バーニア式カム軸式  ブレーキ装置:電磁直通空気ブレーキ

加速度:2.23km/h/s  減速度:3.7km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常) 

東上線所属:44両(4両×11編成)※小川町~寄居、坂戸~越生間のみでワンマン運用中。池袋~小川町からは2015年1月をもって撤退。 

1963年~83年という20年間に亘り、大きく仕様を変更することなく、私鉄最多の712両が製造され、東武各線で長らく主力として活躍しました。20m車4扉、旧性能車の置き換え、大量製造かつ製造時期が近いことなどから、「私鉄の103系」の異名を持ちます。

しかし103系とは異なる点も多く、駅間距離や乗車時間が他社に比べて長いことから、加減速性能は追求せず電制は無しMT比は1:1と極力簡素化し経済性を重視

一方では長時間/高速走行にも耐えうる乗り心地/性能となるよう、空気ばね台車超多段バーニア抵抗制御、高出力電動機の採用など、東武線での運用に合わせた車両となりました。「シンプル、経済性重視」といった車両コンセプトは、今の東武の通勤車にも踏襲されており、まさに東武通勤型の「礎」となった車両といえるでしょう。

1986年からは修繕工事が順次施工され、1987年以降の修繕車からは前面デザインが大きく変更されました。登場から40年を過ぎた2004年まで、1両の廃車も出さず活躍していましたが、50000系列の台頭などにより以降急速に廃車が進行。最長組成であった花形10連運用は、2015年1月の東上線池袋~小川町間での運用撤退をもって終了。以降は野田線や各支線でのワンマン運用に活躍は限られてきましたが、2022年現在でも、車齢50年を超える編成も含め約200両が現役であり、令和時代においてもその存在感はまだまだ健在で、ファンからの人気も別格です。

~~~運転面での特徴~~~ 

上述の通り加減速は弱く、東上線に於いては特に各停/準急運用ではネックとなります。一方で、不要な機構がないため癖は少ないです。加速は25キロ付近での直並列渡りの際にショックがありますが、抵抗車特有の自動進段時のショックは、超多段バーニア制御のお陰でそれ以外ほぼありません。ブレーキも電制がないため、全速度帯において圧力計の通り、かけた分だけかかるイメージです。応答性も良いです。後継の電制を持つ10000型が登場した際、「ブレーキは80型(本形式のこと)の方が扱いやすい」、と乗務員から不評の声があったのは有名な話です。

ブレーキシューには耐久性に優れた「レジン」が用いられ、駅停車時には「東武匂」と呼ばれるゴムが焼けたような独特のにおいが構内に滞留します。

運転難易度:易★★★★☆

000/9050 東武初のステンレス 新機軸が多数導入された、営団有楽町線直通向け車両

造:9000→1981年~1991年 9050型→1994年 

制御装置:9000型→自動界磁式主回路チョッパ制御 9050型→VVVFインバータ  ブレーキ装置:回生ブレーキ併用全電気指令式空気ブレーキ 

加速度:3.3km/h/s  減速度:9000型→3.7km/h/s 9050型→3.9km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常) 

東上線所属:9000型→80両(10両×8編成) 9050型→20両(10両×2編成)

営団有楽町線との直通に際し、両車合わせて100両が東上線系統向けに製造されました。8000系以来、約20年ぶりの新車となり、コルゲート仕様の東武初ステンレス車体左右非対称の前面チョッパ装置/回生制動採用など、経済性を重視しつつも新機軸が多数盛り込まれました。9000型最終第8編からは、10030型同様に車体がコルゲート→ビートプレス仕様に変更。さらに1994年には、制御装置に東洋GTOのVVVFインバータ装置を用いた9050型2編成20両が登場しました。

2008年の副都心線直通の対応の為、2007年より修繕工事が施工されました。走行機器は従来のままです。車体規格の違いから、唯一修繕工事がなされなかった第一編成(試作車)9101Fは、その後地下鉄運用から撤退。東上線地上専用車として、ほぼ原形の姿のまま活躍しており、東上線池袋口の最古参編成です。

~~~運転面での特徴~~~

登場時は全車ツーハンドルでしたが、9101Fを除き、修繕工事によりワンハンドルに変更されました。地下鉄規格に合わせるため性能は高めですが、ブレーキは制動開始時の電制の立ち上がりや、停車直前の電制失効時など、癖があります。東上線の車両ではかなり運転しづらい部類に入るかと思います。

運転難易度易★★★★難

9101F廃車に際して、、、~乗務員さんの辛い?思い出~ 2024.1追記

デビュー後の苦情

など合計13項目

引用:誰も書かなかった東武鉄道(河出書房新社)

その他 

乗務員から研修区へ

引用:東武博物館だより No.118 2024.1 


登場時は斬新で「銀電」と注目を浴び、未修繕のまま生き残ったこともあり、最後までファンには愛された存在でしたが、

特に運転・保守面においては厳しい評価をされている文献を多く見かけます。ただこれがパイオニア電車の宿命なのかもしれません。

登場時の華々しさとは対照的に、最期は車両不具合からの長期運用離脱→復帰することなく静かに廃車(23/10/17)となりました。

9101F、40年以上の活躍、お疲れさまでした!

10000/10030/10050 9000型をベースとした、東武地上線用の通勤車

造:10000型→1983年~ 10030型→1988年~ 10050型→1992年~1996年

制御装置:他励界磁チョッパ制御 VVVFインバーター制御(一部編成のみ)  ブレーキ装置:回生ブレーキ併用全電気指令式空気ブレーキ 

加速度:2.5km/h/s  減速度:3.9km/h/s ※10000型→3.7km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常) 

東上線所属:10000型→40両(10両×4編成)10030型→110両(10両×2編成、6両×9編成、4両×9編成)10050型→10両(6両×1編成、4両×1編成)

10000型は東武各線に残っていた旧性能車の置き換え、輸送力増強用として1983年に登場しました。

車体はステンレス(コルゲート仕様)の9000型のスタイルを踏襲しましたが、前面デザインは左右対称、走行機器も界磁チョッパ制御となりました。1988年にはコルゲートを廃し前面デザイン等も変更した10030型が登場。さらに1992年には車椅子スペースの設置、空調設備等の仕様が変更された10050型が登場しました。

2007年から(東上線の車両は2011年から)は修繕工事が順次施工されており、内装刷新、行先表示のLED化、スカート設置、前照灯のHID/LED化などが施されました。また東上線所属の2編成(032F、639F+443F)は、既存車両の部品確保も兼ねて、修繕に際して制御装置のVVVFインバータ化が行われました。

~~~運転面での特徴~~~

加速は25キロ、40キロあたりでの回路つなぎの際にそれぞれショックがあります。減速は電制の立ち上がりは比較的スムーズですが、加速同様40キロ付近でショックがあり、電制も25キロ程度で失効するので注意が必要です。減速度一定ではありません。総じて性能は9000型よりも悪いですが、ブレーキは癖はあるものの本形式の方が扱いやすいかと思います。なお、VVVF更新がなされた2編成は、加減速共に抜群で癖もそこまでなく、運転しやすいかと思います。

運転難易度易★★★★☆難 ※VF修繕車:易★★☆☆☆難

30000系 次世代通勤型への架け橋 東武ステンレスマルーンの最後を飾る、集大成的存在

造:1996年~2003年

制御装置:VVVFインバーター制御  ブレーキ装置:回生ブレーキ併用全電気指令式空気ブレーキ  ※純電気ブレーキ制御方式(2002年~)

加速度:3.3km/h/s  減速度:3.7km/h/s(常用) 4.5km/h/s(非常) 

東上線所属:150両(10両×15編成、全編成)

2003年からの東武本線における営団半蔵門線↔東急田園都市線との相互直通乗り入れ向け車両として、1996年より計150両(6両×15編成、4両×15編成)が製造されました。東武で初めてT字型ワンハンドルマスコン純電気ブレーキ制御(2002年~)などが採用されました。

当初は全車が東武本線に所属しておりましたが、2006年には早くも後継50050型が地下鉄直通専用車として登場。以降30000系は本線地上車として順次転用されました。

更に2011年からは、東上線のATC化に伴う車両改修工事の効率化のため東上線への転用が進められました。2021年には30000系全車両の東上線転用が完了し、単独形式としては東上線最多15編成150両が活躍しています。東上線での転用に際し、運転台の東武初のグラスコックピット化、急行灯の撤去、6+4貫通部分の運転台の撤去並びに「クハ」→「サハ」への型式変更がなされました。直近では前照灯のLED化および行先表示のフルカラー化が進められ、現在運用されています。

9000型からの約20年に亘る、東武ステンレスマルーンの歴史に終止符を打ったのがこの30000系です。以降は日立アルミ車モデル「Aトレイン」を採用した、50000型に製造が切り替えられました。従前のマルーンを纏いながらも現在でも遜色ない十二分な走行機器・性能前面左右対照で内装外観共に派手に飾らずスマートなデザインの中にも、昭和の歴代東武車が持っていた「無骨さ」「重々しさ」「迫力」を感じさせる、個人的には申し分のない、大変完成度の高い車両です。東武マルーンの集大成と評して良いでしょう。

そしてまた、東武マルーンの集大成であると同時に、50000型への移行を見据えた走行機器を積んでおり、「新旧東武通勤型の架け橋」的な存在とも言えるでしょう。

~~~運転面での特徴~~

もともと地下鉄直通向け車両ということもあり、加減速性能は大変良いです。特に制動力は東上線で抜群で一番良いと思われ、ホーム端75キロでも大きく余裕をもって停車できるほどの性能を持ちます(本線時代と性能違う?)。停止まで電制が有効ですので、加減速共に癖は少なく、非常に運転しやすい車両でしょう。電笛の音が他の車両と異なり、優しい音色をしています。気のせい?

運転難易度易★☆☆☆☆難

BVE30000系、東上線仕様データの制作・公開心よりお待ちしております

→23/2/9 A7様より東上線仕様公開いただきました!ありがとうございます!

0000/50070/50090型  東武アルミ新時代の幕開けを、鮮やかに彩ったシャイニーオレンジ

造:2005年~2012

制御装置:VVVFインバーター制御  ブレーキ装置:回生ブレーキ併用全電気指令式空気ブレーキ  ※純電気ブレーキ制御方式

加速度:3.3km/h/s  減速度:3.5km/h/s(常用) 4.5km/h/s(非常) 

東上線所属:50000型→70両(10両×7編成) 50070型→70両(10両×7編成) 50090型→60両(10両×6編成)

東武の次世代型通勤車として、東武通勤型初のアルミ車体・ダブルスキン構造(日立「Aトレイン」モデル)を採用し、2005年に東上線に第一編成が登場。以降、各種仕様を変更した同系列計400両が製造されました。車体のカラーリングは、従来の東武車のイメージを大きく刷新する、シャイニー(shiny=輝く)オレンジを採用しました。

配色は前面に大きくオレンジを配し、側面は戸袋部分のみにシールを張り付けた、当時としては斬新なブロックパターンのデザインとなりました。この鮮やかな色をブロックパターンで、シンプルに配するデザインは、以降の60000型以降にも踏襲されています。

東上線に配属となったプロトタイプ第一編成は前面非貫通でしたが、以降の同系列は全て前面貫通に変更されました。

2006年には、半蔵門線・東急田園都市線直通向け車両として東武本線に50050型。2007年にはメトロ有楽町/副都心線、東急東横線、横浜高速みなとみらい線直通運用向けとして東上線に50070型。2008年には、東上線の着席指定通勤ライナー「TJライナー」登場に際して、ロング/クロスシート転換設備を備えた50090型が登場しました。50090型は基本的に、TJライナー/川越特急/夕方上りの快速急行での運用時にクロスシート、それ以外の運用時はロングシートで運用されています(例外多数あり)。首都圏通勤ライナーL/Cカーパイオニア的存在になりました。

更に東上線の通勤ライナー「TJライナー」向けの50090型には、東上線の路線カラー「」に「TOJO LINE」の文字が加えられた帯が車体に巻かれ、一般車との差別化がなされました。

~~~運転面での特徴~~

加減速共に良好です。停止まで電制有効で、癖もなく思ったように停まってくれます。その他特に言うことはないですが、カーブ通過時などの台車からの「ガコッ、ガコッ」という独特のノイズと揺れが、この形式の特徴です。

運転難易度:易★☆☆☆☆難

~~~東上線に乗り入れる他社車両+α~~~

東京地下鉄 7000系 10000系

東京急行電鉄 5050系

横浜高速鉄道 Y500系

和光市~志木間に限り、横浜高速鉄道Y500系が乗り入れている。@東急線内にて

~~番外編~~ 西武鉄道 6000

乗り入れそうで乗り入れない西武6000系です。有楽町線で和光市まで来るため、和光市駅では並びますが、東上線内への入線は一度もありません。同様に東武車が西武線内に行くこともありません。