「腱固定作用」と呼ばれます。
手の力を抜いた状態で手首を動かしてみましょう。指が自然に曲がったり伸びたりすることを経験できると思います。
手首を手の甲側に反らすと指は自然に曲がります。
手首を手の平側に曲げると指は自然に伸びます。
指を曲げ伸ばしする筋肉が関節をまたいでいるので手首の動きによって腱が引っ張られたり緩んだりすることで指が受動的に動く作用です。
C6レベルの頚髄損傷の方は長橈側手根伸筋や短橈側手根伸筋が機能している場合が多く、手指屈筋群は機能していない事が多いため何かを持つ際に力で握ることが出来にくい状態です。
そこでテノデーシスアクションを用いることで受動的に手指が屈曲してものを掴むことが出来ます。
代償動作の分かりやすい例と言えます。
代償動作・・・本来の動作を行うために必要な機能が障害されているため、代わりに他の機能や方法を使ってその動作を遂行しようとすること。
さてこれを柔術に使うとすればどうでしょうか。型稽古の中でお伝えしていることにこの事が一部含まれているかもしれません。
アナトミートレイン経絡との共通点として東洋医学の経絡は「気血の流れの道」とされ、12本の正経(プラス任脈・督脈)があります。
経絡のうち、特に筋肉や腱に関係が深いとされる「経筋(けいきん)」の走行は、アナトミートレインの筋膜ラインと極めて高い一致が見られます。アナトミートレインの提唱者であるトム・マイヤーズ氏自身も、経絡との類似性を認めています。
2000年以上前の古代中国で、解剖学のない時代に、現在の筋膜連結システム(アナトミートレイン)と類似した経筋の概念があったことは、東洋医学の奥深さを示すものとして驚きをもって受け止められています。
ただしアナトミートレイン=経絡であると断定することはまだ確定していません。関係性はあるかもなという程度の認識にしておいた方が良いでしょう。
それを踏まえてアナトミートレインと同じような働きをしていると仮定すると良い姿勢を取るときや技を掛けるさいに八光流では経絡をイメージしやすいですが筋膜でも見てみるとまた興味深いものがあります。
腸腰筋は、正しい姿勢の維持に不可欠なインナーマッスルです。
腸腰筋は、大腰筋、小腰筋(個人差あり)、腸骨筋の総称で、上半身と下半身をつなぐ深部の筋肉です。腰椎から骨盤を通り、大腿骨に付着しています。
この筋肉が適切に働くことで、骨盤を安定させ、腰椎の適切な前弯を維持し、背筋が伸びた良い姿勢を保つことができます。腸腰筋は、骨盤を前傾する働きを助け、直立した姿勢を保つのに重要な役割を果たします。
硬くなり短縮した場合(特にデスクワークなどで長時間座る人)には骨盤が過度に前傾し、腰椎の過前弯(反り腰)を引き起こすことがあり腰痛の原因となることもあります。
筋力低下した場合は骨盤を支える力が弱まり、骨盤が後傾しやすくなります。猫背やぽっこりお腹の原因となり、歩行時につまずきやすくなるなど、日常生活の動作にも影響が出ます。
武道における袴の背当は単なる装飾や着崩れ防止以上の、姿勢と体幹意識に関わる重要な役割を持つと推察されます。
背当てが背中に当たることで、着用者は常に背中が伸びた状態、特に腰の部分の意識を自然と持つよう促されます。
これにより、骨盤が後傾しがちな姿勢(猫背)から、骨盤を立てて背筋を伸ばした「正中線」を意識した武道の基本姿勢を取りやすくなります。これは、腸腰筋が適切に働きやすい状態、すなわち体幹が安定した状態に導く助けになります。
武道において重視される「丹田に力が入る」「腰を入れる」といった感覚は、深層の腸腰筋を含むインナーマッスル群の適切な活動と連動しています。背当ては、腰を引いたり、背中を丸めたりする不適切な姿勢をとろうとすると違和感や圧迫感を生じさせ、着用者に「姿勢を正せ」というフィードバックを与えます。
この外部からのフィードバックは、体幹を前後に安定させ、結果的に腸腰筋が姿勢維持のために働きやすい(あるいは、より意識的に働かせやすい)環境を間接的に整える役割を果たしていると考えられます。
体の「軸」の安定が求められる武道では、背当ては体幹の安定、特に体幹の垂直方向の意識を強化します。安定した姿勢は、手足の動作よりも先に体幹深部(腸腰筋周辺)の準備ができている状態を意味し、力の伝達効率を高めることにつながります。
袴の背当ては「触覚による姿勢のセンサー」として機能し、武道の基本となる正しい直立姿勢(腸腰筋が関与する体幹の安定した姿勢)を意識的かつ無意識的に維持させるための重要な要素ではないでしょうか。
仕事着のズボンに背当てが付いていたら姿勢が良い状態がキープ出来て良いかもしれませんね。
アウターマッスルが「大きなパワーを発揮する」ことではなく、「体幹で生まれた力を効率よく手先に伝える」ためのインナーマッスル(ローテーターカフや前鋸筋など)による肩甲骨と上腕骨の安定化が大切です。力みとは、本来安定に使うべきインナーマッスルがサボり、アウターマッスルが安定と運動の両方を無理に担おうとする状態とも言えます。
アウターマッスルが柔らかい状態でインナーマッスルがしっかり働いているということはすなわち外柔内剛との関連もありそうです。細やかな動きを相手に感付かれずに行う場合はアウターマッスルではなく細かなインナーマッスルの活用が大切ですね。
三角線維軟骨複合体(TFCC)は、手関節の尺側(小指側)に位置する靭帯・線維軟骨・腱鞘などからなる複合体であり、運動中の手関節機能において、生理学的・力学的役割を担っています。
まず手関節に加わる地面や物体に手をついたときにかかる力を吸収・分散する重要な「ショックアブソーバー」として機能します。
前腕の骨である尺骨は、手関節の全荷重のうち約20%を担うとされます。TFCCの線維軟骨部分は、この荷重を効果的に分散し、橈骨と尺骨の間でスムーズに力を受け渡す役割を果たします。手首に強い衝撃やひねりが加わる運動において、TFCCのクッション作用が関節軟骨の保護と手首の安定性維持に不可欠となります。
次に、手関節の中でも特に不安定になりやすい遠位橈尺関節の安定性を、静的・動的の両面から制御します。
静的安定性: 複合体内の強靭な靭帯(特に背側および掌側の橈尺靭帯)が、外力に対して遠位橈尺関節がグラつかないよう物理的に固定する「パッシブ(受動的)」な安定性を担います。
動的安定性(運動制御): 前腕の回内・回外といった動作時、TFCCは遠位橈尺関節が適切な位置でスムーズに回転できるようガイドする役割を果たします。これは、スポーツ動作における「モーターコントロール(運動制御)」の要素です。
TFCCが損傷すると、以上のショックアブソーバーやクッション作用が失われ、かなり強い痛みが出やすいです。また、3か月から6か月位の長い回復期間がかかる事があります。果たして柔術へどのような関りがあるでしょうか。実はとても大切な機能であり組織だと思います。