日本学術会議からの提案
「日本学術会議法案の修正について」に賛同します
2025年3月7日に閣議決定された「日本学術会議法案」は、日本学術会議の独立性および学問の自由を根本から揺るがすおそれのある重大な問題を含んでいます。本法案は、政府が日本学術会議の会員選考や運営に制度的関与を及ぼすことを可能にするものであり、日本国憲法第23条の保障する学問の自由と両立しがたい内容です。
こうした懸念に対して、日本学術会議が2025年4月15日に示した「提案 日本学術会議法案の修正について」では、政府案の問題点が具体的に指摘されるとともに、学術の自律性と会議の独立性を確保するための修正案が提示されています。私たちはこの提案の趣旨に深く共感し、学術の自由と公共性が確保される制度設計がなされることを強く望みます。
私たち仏教文学会委員有志は、2020年10月および2022年12月の声明においても、日本学術会議の独立性を損なう政府の姿勢に対し、深い憂慮と不信感を表明してきました。今回の法案は、それらの懸念を制度的に固定化する危険性をはらんでおり、学術の自律を守る立場から到底容認できるものではありません。それにもかかわらず、本法案はすでに衆議院本会議において可決され、事態は深刻な局面に入っています。私たちは、引き続きこの法案の行方に強い危機感をもって注視し、学問の自由と独立を損なういかなる動きにも、断固として反対の意を表明します。
また、私たちは、学問が国家権力によって統制されることの危険性を、歴史的経験から痛感しています。とりわけ、戦時下において文学研究者が国策に動員された過去を思い起こすとき、学術の独立がいかに不可欠なものであるかを、あらためて確認せざるをえません。私たちは、この歴史を直視し、同じ過ちを繰り返さないためにも、学術の自由と公共性の確保に向けて、引き続き声を上げていきます。
本法案に対し、強く反対の意を表明するとともに、その慎重な再検討をあらためて強く求めます。
2025年5月14日
仏教文学会委員会 代表委員 橋本正俊・委員有志