6月7日あさおサークル祭の会場に能面を展示させて頂きました。 謡曲研究会の発表会と体験講座の会場に展示させて頂く事など夢にも思っておりませんでした。今回が初めてのことで大変嬉しくまた感激いたしました。
展示させて頂いた面は10数年前に初めて打った「小面」「翁」から最近完成した「大癋見(おおべしみ)」まで愚作ばかり10点を展示させていただきました。
今までの面打ち仲間の発表会とは違いプロの先生方はじめ、能楽を嗜み能舞台に最も近いところで活躍される皆様の鋭い眼で観て頂いたことで緊張もしました。
一方、面打ち仲間の発表会は通常年に一度開催しており一人1点~多い人で4点ほど出展します。来場者は面打ち仲間とその家族、知人等の関係者、その他一般の比較的幅広い層の方々です。
謡の勉強を始めて1年余りですが面打ちに対する気持ちが少し変化したように思います。ただ漠然と面の造形と彩色に没頭していたのと、その面が使用される曲を多少なりとも理解したうえで製作するのでは心構えが異なるような気が致します。謡のお稽古でもその曲に使う面の表情を頭の中に描きながら吟じたいものですが、残念ながら次の詞が出てこなかったり、間違えないように発声するのが精いっぱいです。
昨年11月国立能楽堂行われた万葉会では「猩々」を独吟させて頂き、柏崎真由子師の「猩々」も観賞させて頂きました。その後「猩々」の面を打ってみたいと思うようになり、準備を進め最近製作に着手しました。完成まで多分1年近くかかると思います。
今回の展示に際し、会場での展示を許諾下さった中村先生はじめ展示を発案しこの様な機会を設けて下さった諸先輩・会員の皆様方に感謝申し上げます。ありがとうございました。
小林 喜久雄
老松
この曲は、シテ謡と地謡の掛け合いが多い曲です。先生にお願いして、謡部分の練習してから舞の練習に入りましたが、遅々として進まず、お稽古が了った時は正直ほっとしたことでした。老体の神とはいえ、常若の象徴である“松の精”を表現するのは難しかったですが、よい経験をさせて頂きました。地謡を引き受けて下さった皆様には心より感謝致します。
吉崎
さる6月7日(土)、折からの雨の中麻生区のサークル祭が開催され、私たち「あさお謡曲研究会」も「高砂のハイライトを謡う」と題して1年間の稽古の成果の発表を行いました。私も地謡と連吟の1員として参加しましたがその時の感想を遅ればせながら記したいと思います。
当日は生憎の雨のためか例年に比べてお客様は少なかったものの出演者の熱気はすさまじいものがありました。
会員の成果発表は昼の部ベテランの吉崎洋子さんによる「老松」の仕舞で幕を開けました。豊かな声量と重厚な舞は流石と思わせるものがあります。
二番手は入会して僅か半年の真鍋英子さんの仕舞「小鍛冶」です。その軽やかな所作を見ていると半年でこれだけの動きができるのかとただただ感心するばかりでした。終了後の打ち上げで「上がることもなく楽しく舞うことができた」と言われていたのを聴いてこの会に有望な新人が入られたことを痛感し、また頼もしく思いました。
「老松」と「小鍛冶」の地謡はの男性陣の担当で強吟(ごうぎん)らしく力強く謡うことが出来たと思っています。
三番手の平野玲さんの「熊野」の仕舞は長身ながら動きの軽やかさと堂々たる所作、伸びやかな声と共に一昨年暮れに発足した「夕べの会」における研鑽の並並ならないことをうかがわせます。
四番手,築野俊雄さんの「西王母」の仕舞ですが少し細身ですが、三番手の平野さん同様、長身で見栄えも良く1年半のキャリアーとは思えない動きと声量は今後のあさお謡曲研究会を支える方だと思います。
それにしても「夕べの会」メンバーの方々は全員,仕舞の稽古をされているとか、まことに心強いものがあります。
「熊野」、「西王母」の地謡は昼の部、夕べの会の女性全員が担当されましたが多人数にもかかわらず良く声が揃っていたと感心しました。
殿(しんがり)は私たちのエース林静枝さんの「遊行柳」の仕舞です。林さんの静かな所作の中にもメリハリのある動きはこの長丁場の仕舞でもいかんなく発揮されました。加えて客員、永松文子さんを頭とする地謡は昼の部のベテラン女性軍でそれらと相俟って素晴らしい舞が繰り広げられました。
最後は「高砂」の全員による連吟です。冒頭の(今をはじめの)は男性、中盤の(四海波)は昼の部の女性、(高砂や)は夕べの会の女性、最後の(千秋楽)は全員と中村先生の振り分けに従って整然と謡いました。
次いで中村先生による「体験講座」、(高砂のハイライトを謡う)は婚礼の謡いとして有名な(高砂やこの浦舟に、帆をあげて。)の部分を先生のご指導で一節づつ口移しで何回か繰り返しているうちに全員が謡えるようになりました。
講座の最後にプロの能楽師を目指して修行中の河野未有ちゃんの地謡で中村先生の「高砂」の仕舞が披露されました。能楽堂の舞台に劣らぬ迫力に全員がその妙技に酔いしれました。
今回の発表会と体験講座に花を添えたのは一昨年から稽古を共にしている
小林喜久雄さんが自作の「能面」、十数点を出品されたことです。すばらしいご趣味をお持ちの小林さんに感謝いたします。
それにしても、前会長の宮崎さんが企画された「能楽公開講座」を契機に有望な新人が入会されその中から「舞囃子」まで進まれようとされる方がいらっしゃるのは誠に喜ばしいことで大いに楽しみにしています。
小川 芳邦