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木造建築への想い

有松つなぐ会では、現在、建物を名古屋市提供のプレハブから自力の木造建設へ変更し、計画をすすめています。有松つなぐ会や有松学童保育所の状況をお伝えしたいと思います。

木造建築を選択した理由

有松学童保育所は、1985年(昭和60年)の開所から、地域の方々のご理解の元、父母や指導員が共に協力し運営してきたため、現在もこの3学区での運営が継続しています。今までも運営上の大きな問題を乗り切ってきましたが、移転問題は「運営上の大きな問題」の最高レベルで、対応は困難を極めます。有松学童保育所父母会は、移転の根本解決のため、2020年3月臨時父母総会にて、土地の購入を目指し法人設立の決議を行いました。その法人が、一般社団法人有松つなぐ会です。(詳しくは有松つなぐ会についてをご確認ください。)
さらに、2021年4市の家賃補助拡充が決定したため有松つなぐ会が、木の香るあおぞらの会(あおぞらの会)さんにて構築された「法人による自力建築及び施設運営」に取り組むことも可能なのではないかと考えました。有松つなぐ会が自前で建築した場合と市にプレハブを建築してもらう場合との2通りの検討を行いましたが、有松つなぐ会が建物を建築して学童に入居してもらい家賃収入を得たほうが将来的には資金を十分蓄え、学童のために土地・建物の整備を積極的に行うことが可能です。逆に、土地に市のプレハブを建てたとすれば、収入を得る手段を持たない有松つなぐ会を学童がずっと支えなければいけません。
2021年5月に、あおぞらの会さん木造保育室建築を担当した東海林建築設計事務所による板倉構法」と、室内環境が子どもに及ぼす影響などの説明会を行いました。また、父母会役員からは父母に対して質疑及び資金シミレーション説明会も実施しました。どちらも多くの父母に出席していただき、高い関心をもっていただいたと感じています。そして、2021年6月、父母総会にて「木造建築実施」可決。9月には建築費用増加に伴い「父母借入金枠の変更(増額)」決議を行い、こちらも可決。有松つなぐ会ではその結果を受け、木造建築実施を決定しました。父母会では木造建築活動推進のため作業班を作成普段の運営活動である実行委員との二重構成で対応しています。
有松学童保育所が対象とする3学区は、児童数が緩やかに減少すると予測されている地域です。今回の移転でプレハブを選択した場合、見た目が「プレハブ」であることによって、学童が放課後の居場所として選択されず、さらに児童数が減ってしまい、学童運営自体が立ち行かなくなる恐れもあります。私達が木造建築を決断した理由は、今在籍する子どもや父母が「通いたい」「通わせたい」と思える学童保育施設を作り、将来、小さな子どもを抱えながら就労する私達と同じ父母のために、この地域有松学童保育所を存続させたいからです
この取り組みは、移転する今しかできません。たまたまこの移転時に在籍した父母が、移転や建築のための仕事を背負い、資金を提供し、実現しようとしています。
また、有松学童保育所では、今まで単年度の予算組みを行っていましたが、今回の検討を通して、初めて学童運営に対する長期的な視野を持ちました。市に頼らない学童施設運営事業の始まりです。
有松つなぐ会を通して、この地で長く運営してきた有松学童保育所を、次の保育を必要とする世代へ引き継ぎます。

二つの学童を一緒に


私達が見つけた「廉価な土地」では、貸家で運営している有松第二学童保育所(通称:第二)同一敷地で運営させることもできるかもしれないと期待していましたが、建蔽率(けんぺいりつ)のために建築できないことが分かったときはショックでした。
現在、第二の子どもたちは、グラウンドのある第一で、かなりの時間合同保育で過ごしています。理由は、班活動と第一にあるグラウンドの存在です。
班活動は有松学童保育所の特徴的な取り組みで、1年生から6年生の子どもが一班約10人ほどに分かれ、班が学童生活の基盤となります。班毎に机に集まりおやつを食べ、班の名前を決める会議をしたり、学年を超えた活動を行います。班のメンバー替えは年に3回ほど。有識者による調査結果として「子ども自身がお互いを生活のメンバーとして知り合い認め合える規模として、おおむね40人程度までとすることが望ましい 」とありますが、有松学童保育所にはこの班活動や、集団遊びも定期的にあるので、第一、第二に在籍する児童を”お互いを知らない”といった状況にはなりません。違う学年の子どもと仲良くなったり、慕われたり、高学年は低学年の振る舞いに我慢を強いられることも多いようですが、同じ学年で一緒に勉強する小学校とは違った関係が築かれます。縦横無尽にできた関係を無視して、第一、第二と常時分けることは、子どもたちにとってメリットがありません。
また、第二の所属になった児童に「グラウンドは使えない」という制限を与えるわけにもいきません。子どもたちは、グラウンドで遊ぶのか、室内がいいのかを、その時の気分によって選択することができます。小学校から開放された時間、子どもたちが遊びを選ぶ権利を持つことは非常に重要です。
ただ、40人用プレハブで2つの学童を室内で合同保育すると、正直、子どもと指導員ががプレハブにギッシリ詰まった状態になります。晴れた日ならば、外のグラウンドや半外のテラスで遊ぶ子どもが多いため人の密度も低下しますが、雨や酷暑で屋外が使えない日は、さすがに合同保育は厳しい。第二の存在は室内の密度を下げるには役立ちますが、若干距離が離れていることもあり、子どもたちだけで自由な行き来はできませんし、指導員の配置も多く必要です。

「廉価な土地」建蔽率は30%。建物に使える面積は敷地の3割以下、という意味です。近隣の住宅地は建蔽率が40%から60%であることが多いようですが、30%となると、建築するには非常に厳しい。さらに、敷地内には高低差もあり、造成費用を抑えて作る平面面積も限られてきます。
加えて、市が提供する40人保育用のプレハブの条件は、基本6×4間(10.8m×7.2m)のみ市の助成要綱では「児童はおおむね40 人まで」「児童の数1 人あたりおおむね1.65 ㎡以上の専用区画を有するもの」と定められており、それに沿った大きさとなっています。そのサイズを40人以上保育できるような大きさに変更することも、形を変えることもできません。このプレハブを敷地に2つ設置することは建蔽率のためどうしてもできません。
第一が新しい場所に移転しても、第二がこれまで通りの貸家では、この合同保育は続きます。なんとか解決したいけれど、建蔽率はその土地の都市計画が変更にならないと変わらないと聞きました。やはり、新しい土地には学童プレハブは1つ、第一だけの移転と覚悟を決めた頃、突然でてきたのが木造建築の可能性です。自力建設なら、今の学童の大きさに上階を作り、子どもたちに常時面積基準を守った室内空間を提供することができます。雨の日や暑すぎて外に出れない日はもちろん、隅っこにいたいとき、静かなところにいたいとき、増えた室内空間で子どものいろんな心を支えてくれることを期待します。

プレハブと自前建設

プレハブの欠点として、夏がひどく暑くて、冬寒いことが挙げられます。有松学童保育所の父母会がリースで建てた指導員室用のプレハブは、本格的な冬の時期になると、壁の鋼板が非常に冷たく、壁に触れると、まるで氷を触っているようエアコンはいつまでたってもガーガー音を立てて暖房しています。建築から5年経った今は、床クロスが浮いてはがれてきています。まさしく仮設品質。長期で使うものではありません。
ただ、保育室に利用している市貸与のプレハブの床は、5年建った今でも綺麗です。建築の際、父母会が費用を出してちょっといい床材を選定したこともありますが、多くの児童がドタドタやっているわりには、傷は多くあってもめくれてはいません。また、市の助成によってエアコンは換気ができる最新式を購入することができたため、通常の名古屋の夏なら35度以下に冷やすことができ、冬もそこそこ暖かく過ごせます。それに、令和元年(2020年)の記録的な夏の暑さから、令和2年度には市提供のプレハブは断熱材が増強され窓はペアガラスになりました。更に、令和3年度からはコロナウイルス対策として標準提供される手洗い設備が増えました。また、同時期に室内木質化の予算が通ったことで、保育室の床はクッションフロアから木質系フローリングに変更壁も板張りになるので、鋼板の冷たい感じがなくなるでしょう。更に、市は鉄が錆びないようメンテナンススケジュールを組んでおり、建物償却期限まで使えるよう計画されています。学童を運営する父母が建物本体のメンテナンス計画を立てて実行をする手間がありません。
この新しい仕様の専用プレハブは、市が組んだ建替スケジュールによって提供されます。建替は約20年ごとですが、私達は移転による建替を理由に、たった6年で最新仕様のプレハブに切り替える権利を得る予定でした。土地を確保し、仕様レベルがあがったプレハブを設置、さらに外構を自分達で整備していけば、現在の場所にある学童保育所を超えて、いい施設に育てていけると考えていました。
今回の移転では、プレハブではなく自力建築を選択することになりましたが、そうすると施設管理を父母が行うことになります。建物無垢の木を多く利用するので定期的なワックスがけ必要ですし、水周りや建物本体を定期的に点検し、メンテナンスや設備更新する必要もあるでしょう。ただ、市から貸与されるプレハブと違い、児童がいない時間帯は、施設所有者である有松つなぐ会が学童保育以外貸し出しすることが可能です。地域に対しても、この施設を通して有松つなぐ会ができることがあるかもしれません。なにより、今後は移転がないので、継続してずっと施設を育てることができるのです。
土地も建物も、の有松学童保育所を超えて、子ども達の豊かな放課後に貢献できる施設を目指します。
※ページ上部の写真は、あおぞら学童保育クラブさんの建物です。