「複言語」(plurilingual) は一人の人間の中に複数のことば(言語)が共存し、補完し合っている状態を指す用語です。それに対して「多言語(multilingual)」はどちらかというと社会の中に多様な言語が並存する状態を指します(※)。
「複言語」はそれぞれのことばの習得レベルの差を不完全なものとしてとらえるのではなく、それぞれに同等の価値があり、何らかの役割を担って、個人の生活を豊かにしていると考えます。そして、複数のことばは互いに関連し合い、補い合いながら、一人一人異なる「その人ならではのことば」「わたし語」を作り上げているという考え方です。
「複文化」(pluricultural)も文化という観点で同じように考えます。
この考え方は、人権、民主主義、法の支配等を守る分野で活動する国際機関「欧州評議会」による『ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR: Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment)』で広く認知されるようになりました。
※「多言語」の定義は、使用者、場面によっていろいろあります
heritage language という英語の日本語訳で、住んでいる国の公用語や主要言語以外の言語で、自分の家族や所属コミュニティにつながりのある言語を指す用語です。
北米の言語学分野で使われ始め、代表的な用語として使われています。同じ英語圏でお隣のオーストラリアでは、community languageと呼ばれ、日本語訳として「繋生(けいしょう)語」を提唱しています。その他にも国によって「出自語」や「ルーツ語」などと呼ばれることもあります。
Aotearoa NZでは今のところ機関や研究者によって「heritage language」「home language」「community language」「first language」など様々な呼称が使われています。
3歳ごろまでに自然に身につけた言語です。必ず1つとは限らず、「母語がバイリンガル」となることもあります。また、一番強い言語が母語ではないこともよくあります。
お父さん、お母さんにとっての母語は、一番自信をもって使え、思いや経験をことば豊かに感情豊かに語れることばです。
全ての家族に当てはまる答えはなく、各家庭、地域社会の状況によって異なります。
お子さんのことばの土台作りだけでなく、非認知能力(共感力、協調性、コミュニケーション能力、自己管理力、自制心、忍耐力など、人の心や社会性に関係する力、)を育むためには、生まれた時からの「ことばのシャワー」と「情緒豊かな関わり」が大切です。
その時のことばは、コミュニケーションがとれるというだけでなく、「豊かに」「細やかに」伝えることができることば、「安心して、自信をもって、気持ちよく使える」ことばがよいと言われています。
とはいえ、答えは一つではありません。大切なのは、家族でことばについて話し合い、ことばに対する思いを共有することです。その結果、現地の主要言語(Aotearoa NZでは多くの場合が英語)のみでの子育てになることもあるかと思います。それでも、家族で間共有した「ことばに対する思い」は家族の心の中に残ります。
また、一度決めたから生涯そのままではなく、お子さんの成長や家族の出来事に合わせ、節目節目で話し合うことも大切です。お子さんがある程度成長したら、お子さんも交えて思いを伝え合ってみてはいかがでしょうか。
チラシ「複言語と母語」やリンク集の「もっと知り方へ」」も参考にしてみてください。
Aotearoa NZで日本語とつながる複言語キッズのことばと心の成長、そしてその家族を応援する有志が頑張っています!
プレイグループ、保護者による自助グループ、日本語学習機関、補習授業校、プライベートレッスンなど、Aotearoa NZの様々な学びの場で活動している指導者・運営者の集まりです。
オンライン茶話会をきっかけに、「どんなグループ・団体・機関があるか、Aotearoa NZ全域について知りたい」「複言語キッズの学びと成長について仲間と考えたい」「Aotearoa NZ国内で繋がって情報交換したい」という思いから始まりました。
複言語、複文化の「複」には「複数」「複合」など様々な意味合いがあります。複言語、複文化はもちろん、関わる人たちの「福」につながることを願って「ふくふく」と名付けました。