首・肩・腰の痛みの主な原因
首・肩・腰の痛みの主な原因
デスクワークなどの場合
◇筋・筋膜性筋肉痛(きん・きんまくせいきんにくつう)
「筋・筋膜性筋肉痛」はデスクワークなど長時間にわたり偏った姿勢を続けていたりすると起こる筋肉痛のことです。
普段激しい運動などはしていなくても肩こり・首コリ・腰痛などの自覚がある場合、筋・筋膜性筋肉痛である可能性が考えられます。
激しい運動をしなくても、姿勢が悪い状態で一定時間キープしてしまうとそれはそれで体に痛みが発生してしまいます。
シンプルにいうと筋肉の血行不良が原因で体に痛みが発生してしまうのです。
不良姿勢などで肩や腰の筋肉に負担をかけすぎてしまうと、これらの筋肉を動かす運動神経が興奮して筋繊維を収縮させるアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質を過剰に分泌させ、それによって筋肉は縮みっぱなしになってしまいます。
筋肉は神経の興奮によって動かされるため、運動神経が筋繊維に繋がってくるのですが、この神経の末端部分と筋肉の本体の間は神経が直接繋がっているのではなく、神経伝達物質(アセチルコリン)が分泌されることによって筋肉は神経系の刺激を受ける仕組みになっています。
悪い姿勢をずっと取っていると常に筋肉は「縮め!」「その姿勢を保ち続けろ!」というサインを受け続けることになるため、神経系が常に興奮して神経伝達物質が垂れ流し状態になってしまいます。すると筋肉としてはずっと縮みっぱなしの状態になってしまうのです。
縮んだ筋繊維はA T P(アデノシン三リン酸)という新しいエネルギー源を利用して元どおりに緩むのですが、A T Pの筋肉内の貯蔵量は限られているため、縮む作業一辺倒の指令を受けている筋肉はエネルギー不足になってしまいます。 ATPの量は限られているため、ずっと縮みっぱなしになっている筋肉はATPの使用量が供給量を上回ってしまうことで不足状態になってしまいます。
本来ならば血管から酸素が供給されてA T Pを生成するのですが、硬く縮んだ筋肉は血管を圧迫してこれを阻んでしまいます。筋肉としては最悪な労働環境下に置かれている状況です・・・。ただでさえエネルギー不足に陥っているのにもかかわらず、エネルギー不足に陥っている筋肉は硬く圧迫されている状態になるため、血管も細くなってしまい新たなエネルギーが入ってこない状態になってしまいます。エネルギーがないと緩むことができないのにエネルギーを供給する術を阻んでしまっているという悪循環状になってしまっているということになります。
血行が悪くなって組織が酸素不足に陥ってしまうと、周囲の細胞から放出された発痛物質が知覚神経や自律神経を刺激して痛みが生じます。言い換えると組織は酸素不足になっているということです。酸素不足の状態というのは生命にとって危機であるため、「この状態だと危ないよ!」というサインを体としては出すのです。
A T Pが足りないと筋繊維はいつまで経っても緩むことができず、やがて筋肉を包む筋膜までも固まってコリが出てしまいます。
筋肉が硬くなるのはもちろんですが、筋肉と筋肉をつないでいる筋膜が硬くなってしまうと体を柔らかくする上では、非常にハードルが高くなってしまいます。筋膜を柔らかくするのはなかなか大変なので、筋膜までもが硬くならないように常に筋肉を柔らかい状態に保っておくということがとても大切なのです。
運動後などの場合
◇遅発性筋肉痛(ちはつせいきんにくつう)
「遅発性筋肉痛」は激しい運動の後などに発生する筋肉痛のことです。
筋肉の動きには筋繊維が「力を出しながら短くなる短縮性動作(コンセントリックの動き)」と「力を出しながら伸びる伸張性動作(エキセントリックの動き)」があります。
例えば、ベンチプレスで胸元に構えたバーベルを押し上げていく動作などがそれにあたります。
このような動きでは、大きなパワー発揮が必要になるため速筋が優位に働きます。その反面、筋肉にはストレスがかかりやすく、筋繊維内部の構造が壊れたり筋繊維を包む膜に小さな傷がついたりします。
筋繊維が壊れると、修復作業のためにその周辺に白血球が集まってきます。その時に損傷した細胞を分解して新たに作り直す「炎症反応」が起こります。炎症反応が起こると、道路工事で車線を制限したような状態になり、その分だけ周りに対して血液やリンパの循環が滞る形になってしまいます。
こうなると炎症や腫れなどが内側から筋肉を圧迫し、筋肉を包む膜にある知覚神経を刺激して痛みを出します。
これがいわゆる激しい運動をした後になどに起こる遅発性筋肉痛の仕組みです。
流れとしては、「修復作業が始まる」→「周辺の血液やリンパの循環が滞る」→それによって「身体が全体的に圧迫状態」→圧迫状態が起こると「知覚神経が刺激されて痛みになる」ということです。
この筋肉痛が運動直後ではなく、遅れて発生するのは炎症反応が広がるまでに2、3日かかるからです。
修復作業が始まった時に初めて圧迫状態になるのですが、年齢と共に筋肉痛が生じるまでの時間が長くなってしまうのは、加齢によって免疫反応の一種である炎症反応の進行が遅くなるからです。
痛みは炎症反応が起こることによって引き起こされるので、炎症反応が遅ければその分痛みを感じるのも遅くなるということです。年齢を重ねていくと免疫反応も少しずつ遅延し、修復作業が遅くなってくるため、歳を重ねていくと、筋トレした翌日に筋肉痛が来ず、2日後や3日後にくるというような状況になるのです。
主な症状例
肩・首まわりの症状例
◆肩関節周囲炎症
・加齢によって肩関節の動きが悪くなり、痛みやコリを伴う。
・40〜50歳ごろになるとかかることが多いため、通称で四十肩・五十肩と呼ばれている。
・肩を酷使したり打撲したりしたことがないにもかかわらず肩に痛みや不快感が現れる。
・ケアをしないでいると痛みが強くなり肩を動かすことが困難になる。
・肩周りの動きに違和感があっても特に痛みは感じていなかったのに急に激痛が起こる。
◆頸肩腕症候群
・首から肩や腕にかけてこりや痛みがあるが、検査で原因が確定できない。
・肩甲骨周辺から僧帽筋にかけて痛みやこりが現れる。
・肩、首、腕、手指の怠さや痛みがあり、脱力感などの症状が現れる。
・腕を頭よりも上にあげた状態が継続されると痛み、痺れが出る場合がある。
・腕・手指の血行不良により怠さやむくみ、痛みなどが現れる。
◆胸郭出口症候群
・肋骨と鎖骨の間が狭くなり、腕を上げた時に血管や神経が圧迫されて起こる症状。
・首、肩、手指などに痛みが現れる。
・腕を頭より上にあげた状態の継続で症状が現れる。
・腕、手指の怠さやむくみが出る。
・血行障害で手の爪が青紫色の状態になる場合がある。
◆頸椎椎間板ヘルニア
・頸椎(首の骨)をつなぐ椎間板の髄核がはみ出して脊髄や神経を圧迫して痛みや痺れが起こる状態。
・首の後ろの動きに支障が出る、背中の痛み、腕の脱力感、痺れなどの症状が現れる。
・髄核が首の後方中央に大きくはみ出した場合には、胸〜腕・足首〜太腿にも痺れや麻痺が出る場合もある。
・症状が進行すると階段の昇り降りや歩行に支障をきたす場合がある。
腰まわりの症状例
◆筋膜性腰痛
・激しいスポーツなどの急激な動作で筋や筋肉が過度に伸ばされたり部分的に断裂が生じることで起こる。
・慢性のものは筋肉疲労や、肉離れなどで一度痛めた箇所が回復して硬くなった組織による循環障害や刺激が原因になる。
◆根性坐骨神経痛
・腰椎(5つある腰の骨)の4番目、5番目・腰椎5番・仙椎1番・椎間板の椎間孔(背骨から横に向かって伸びている神経が通るあな)周りで起こりやすい。
・上記の坐骨神経の神経根が障害されると神経根性の坐骨神経痛が起こりやすくなる。
・腰椎椎間板ヘルニア(後述)、変形性脊椎症(加齢とともに軟骨の水分が減少することで骨同士がぶつかり合って変形しトゲができ、それが石脊椎を走る神経を刺激して痛みが生じる症状)、腰部脊柱管狭窄症(後述)などの原因にもなる。
◆梨状筋症候群
・椎間板の椎間孔を出た神経根は神経の束を形成して坐骨神経となって下肢へ広がるが、その走行経路が坐骨結節(坐骨の最下部)と梨状筋(臀部の深い部分にある洋梨型の筋肉)の狭い間を通るため、梨状筋が緊張で硬くなり坐骨神経を圧迫することで痛みを生じると言われている。
◆急性腰痛症(ギックリ腰)
・突然激しい腰部の痛みに襲われる。
・上半身と下半身のバランスを取る役割を担う腰椎の4番・5番は身体のバランスを取る上で最も重要な部分である分、負荷も大きくかかる部位であり、腰の曲げ伸ばしやひねりなどの際に腰椎の4、5番に特に力を入れることで自覚できる。
◆腰部脊柱管狭窄症
・比較的高齢の方に多い。脊椎管内が狭くなり神経を刺激して起こる。
・初期は腰から足にかけて痛みや痺れが発生するが休憩を取ることで軽減し、歩行を再開できるようになるという症状だが、徐々に歩行できる距離が短くなってくる。
◆腰部椎間板ヘルニア
・加齢による変化や運動による負荷などがきっかけで腰部の椎間板の髄核がはみ出して脊髄および神経を圧迫することで腰や足の痛みや痺れといった症状を引き起こす。
・軽度の場合は姿勢や動作に気を付けることで自然治癒することもあるが、重度になると手術を必要とする場合もある。
頭まわりの症状例
◆緊張型頭痛
・頭にお椀を被ったように締め付けられるような痛みが持続する。
・痛みの強さは仕事や家事を休むほどではないが長引く特徴がある。
・頭の痛み以外にも肩や首のこりが併せて出ていることも多く、肩や首の筋肉を押圧すると圧痛点がある。
◆偏頭痛
・頭の片側にズキンズキンと脈打つような痛みが出るのが特徴で、寝込んでしまうほどの強い痛みが1日の中で1〜2回程度起こる。
・両方の側頭部が痛む場合もあり、光や音、臭いに対して過敏になり吐き気を催す場合もあり、人によっては嘔吐することもある。
◆混合型頭痛
・頭痛が慢性化すると緊張型頭痛と偏頭痛の性質が合わさった頭痛となる場合がある。
◆自律神経失調症
・自律神経には交感神経と副交感神経がある。簡単に表すと交感神経は活動する神経、副交感神経は休む神経。両者はONとOFFでバランスをとり調和が取れていると身体の動きが円滑になるが、この調和が乱れてくると身体の調子が悪くなる。この状態が自律神経失調症と呼ばれている。
・交感神経は仕事や運動をする時など、心臓の働きを活発にし血圧を高め、精神活動を盛んにしてくれる。対して副交感神経は睡眠や休息をとる時などに働く。
・副交感神経優位の時には下痢などの症状が出ることがあり、交感神経が優位になると便秘を引き起こすと言われている。