(1) 事業の概要
株式会社アダムス医療は、現代表者の父が昭和54年10月に設立し、ラ・セーヌの店舗名で、女性利用者に対し、痩身、美顔等のエステティックサロン運営事業を全国展開していました。
2000 年代前半には、直営店及びFC 店併せて全国約90店舗を展開するまでに成長し、2005 年3 月期には約21億円の売上高を計上するに至りました。
(2) 経営悪化の経過
FC 店とのトラブルによって採算の取れない店舗を直営店として運営せざるを得なくなったこと、直営店舗の増加に伴う管理不足が生じたことなどを原因として業績が著しく悪化していきました。
2011 年には、持病の悪化等を理由に退任した父に代わって渡邉敏司が株式会社アダムス医療の代表取締役に就任しましたが、その前から、株式会社アダムス医療は、金融機関からリスケジュールの金融支援を受ける状況となっており、店舗数も減少し続けていきました。
(3) 経営努力の内容とその結果
現代表者は、外部からの経営人材を投入する等して、業績の回復を目指していましたが、同業者との競合が激化する市場環境の中で、状況を改善するには至りませんでした。決算申告書によれば、2022 年3 月期の売上は約7.5 億円、経常利益は約1000 万円、2023 年3 月期の売上は約6.9 億円、経常損失は約1900万円、2024 年3 月期の売上は約6.1 億円、経常損失は約2100 万円を計上しました。直近の業績低迷には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による利用者離れも一つの要因となっていました。
そのような中、アダムス医療は、利用者の方へのエステティックサービスの提供の継続や従業員の方の雇用確保等を企図して、スポンサー候補者の探索を進めました。複数のスポンサーが興味・感心を示したものの、店舗の設置状況等の要因により、合意には至りませんでした。
現代表者は、アダムス医療の資金繰りを維持するために、個人で保有する自宅・保険等の資産を換価し、アダムス医療の運転資金に投じてきました。しかし、それも限界となったこと、スポンサー候補者との間で合意に至る具体的な見込が立たないことなどから、株式会社アダムス医療は、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済する目処が立たなくなりました。
(4) 破産の申立て
そこで、アダムス医療は事業の再生を断念して破産申立てを行う決断をし、全国19店舗の閉鎖及び全従業員の解雇を行い、令和6年9月9日、名古屋地方裁判所に破産手続開始の申立てを行い、同日破産手続開始決定を受けました。
なお、代表者である渡邉敏司についても、今後名古屋地方裁判所に破産手続開始の申立てを予定しています。