“3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析の医療への利用促進を図るスタディグループ”の活動記録

4D Flow研究会の前身は3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析の医療への利用促進を図るスタディグループです。日本磁気共鳴医学会のサポートで、2012年に発足し、これまで7年間にわたり年二回のミーティング・学術発表活動をしてまいりました。

以下に3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析の医療への利用促進を図るスタディグループの設置申請書と7年間の活動報告書、ならびにこの7年間でグループメンバーから発信された論文を列挙します。



磁気共鳴医学会スタディグループ設置申請

2012年7月30日

設置申請書

申請者

浜松医科大学医学部附属病院放射線部 竹原康雄

名古屋大学医学部保健学科 礒田治夫

1) 設立スタディグループ名

3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析の医療への利用促進を図るスタディグループ


2) 設立目的

近年の生理学分野における基礎研究で、血行動態が動脈壁の健全性や血管形態変化(特に動脈硬化や動脈瘤の形成)に深く関与していることが解明されつつある。流線解析や剪断応力解析など、生理的な環境下で、これらを3次元的に、しかも広い視野で計測できるモダリティは、現時点ではMRIのみである。従って、MRIを用いた非侵襲的、生理的血行動態計測と解析が心血管疾患の病態解明、診断と治療に大きなブレークスルーをもたらす可能性が出てきている。

MRIによるシネ位相コントラスト法の歴史は古く、血管の血流解析や、脳脊髄液の流れの可視化、定量などにおいて貢献してきたが、いずれも2次元情報であり、検査中に設定された断面のみでの評価しか行えず、また、空間分解能(特にスライス選択方向での)も制約されたものであった。近年、3次元シネ位相コントラスト法が現実的な撮像時間で撮影できるようになり、また進歩した後処理アプリケーションを使用すれば、3次元的な血行動態の情報を様々な角度から解析することが可能となってきている。しかし、その普及は遅々として進んでおらず、本邦では少数の施設においてのみ行われている。本スタディグループの目標は、こうした血行動態情報が診療に利用することができるように、データ収集系のアプリケーションの普及と、改善、後処理アプリケーションの普及と改善、血行動態データの信頼性に関する基礎的な裏付けデータを多施設で集積し、もって3次元位相コントラスト法による血行動態解析をルーチン検査として組み込み、血管病変の評価の精度を向上させ、将来的には心血管病変の予知、予防を可能とし、もって広く医学・医療に貢献できるように活動することである。


3) 当面の事業計画等

(1)3次元シネ位相コントラスト法の普及を促し、アプリケーションの改善をメーカーに助言する。

(2)後処理アプリケーション(現状ではFlova;アールテック社とGT flow;Gyrotool社のアプリケーションが存在)の普及と改良を助言。

(3)これらによる多施設共同臨床データ収集とファントームスタディなど、計測データの信頼性を裏付けるデータの集積、解析・検討を行う。



4) 発起人名簿

(1)浜松医科大学医学部附属病院放射線部 竹原 康雄(たけはら やすお)

(2)名古屋大学医学部保健学科放射線技術科学専攻基礎放射線技術学講座 礒田 治夫(いそだ はるお)

(3)愛媛大学大学院 医学系研究科 生体画像応用医学分野 望月 輝一(もちづきてるひと)

(4)川崎医科大学医学部放射線科 伊東 克能(いとうかつよし)

(5)神戸大学大学院医学研究科内科系講座放射線医学分野 機能・画像診断学部門 大野 良治(おおの よしはる)

(6)日本医科大学付属病院放射線科 天野 康雄(あまの やすお)

(7)札幌医科大学放射線科 兵頭 秀樹(ひょうどう ひでき)

(8)旭川市立旭川病院 放射線科 花輪 真(はなわ まこと)

(9)聖隷三方原病院放射線科 高橋 護(たかはし まもる)

(10)青森県立中央病院放射線部 佐藤 兼也(さとう けんや)

(11)磐田市立総合病院放射線技術科 寺田 理希(てらだ まさき)


5) 参画想定人数

50人~100人


7年間の長きにわたり、日本磁気共鳴医学会のご援助を賜り、活動してまいりましたが、

このほど4D FLOW研究会として新たに発足しました。


第1回キックオフミーティング

1. 日時 2012年9月6日

2. 場所 京都国際会館 Room 102

3. 出席者 メンバーのみ10名

4. 内容

(ア)スタディグループ設立までの経緯と設立目的の説明(竹原)

(イ)自己紹介

(ウ)自由発言

① 現時点での後処理ソフトは、Flova(アールテック社)とGT flow(Gyrotool)のみ、シーメンスが4D flow demonstrationを作っている。

② データ収集に関しては、現時点で、クリニカルモードで3D cine PCが可能なのはPhilipsのIngeniaのみ。

③ 4D flowという呼び方も可

④ スタディグループとしてはどこのメーカーでも撮影できるように働きかける必要がある。できれば後処理ソフトも標準装備で。

⑤ 次回のスタディグループのミーティングは、年2回程度。

⑥ メーリングリストを作って密な連絡や情報交換をする。

(エ)閉会の挨拶(礒田)

2013年活動報告

“3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析の医療への利用促進を図るスタディグループ”は、2012年磁気共鳴医学会の拡大選奨委員会に設立を公式に認められ発足始動した。発起人メンバーは、申請者の竹原康雄と礒田治夫を含む11人。その後、メンバーからの推薦と承認によりメンバーが増え、2013年度終了時点では、計23名となっている。

スタディグループの活動は、主に年2回のミーティングとメーリングリストを用いた情報交換と議論となっており、2013年度も、計2回のミーティングが行われている。

1回目(第二回ミーティング)は、第72回日本医学放射線学会総会ならびに第69回日本放射線技術学会総会学術大会に合わせ、2013年4月14日にパシフィコ横浜会議センター(3階「311+312」)で行われた。出席者はメンバー12名、非メンバー18名。今回から、事前にメーリングリストにて推薦承諾されていた7名が新たにメンバーに加わった。4D flowの現状や今後の展望の把握のために装置メーカー(5社)に依頼し、プレゼンテーションを行なって頂いた。また、自由討論では、エディーカレントなど各種補正や3D cine PCの精度の検証など今後の課題も浮き彫りとなった。2回目(第三回ミーティング)は、第37回日本磁気共鳴医学会大会時の2013年9月19日(木) にアスティとくしま内(第2会場)で行われた。出席者はメンバー13名、非メンバー50名。事前にメーリングリストにて推薦承諾されていた2名が新たにメンバーに加わった。国内外の血流解析アプリケーションメーカー(4社)からの4D flowへの対応状況のプレゼンテーションが行われた。いずれも基本的な血流解析や流れの視覚化を実現できていた。新たな計測値・表現法の導入や、また、既存の技術を生かし、独自性強調するメーカーもあった。質疑応答や自由発言で集中したのは、血管のセグメンテーション法であった。特に体幹部においては、現時点で正確なセグメンテーションは困難であり、この値に大きく影響されるWSSなどの算出値の正確性などに関しても議論が集中した。

第2回 3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析の医療への利用促進を図るスタディグループ”

1. 日時 2013年4月14日 15:30~17:30

2. 場所 パシフィコ横浜会議センター3階「311+312

3. 出席者

メンバー 12名、非メンバー 18名

4.

第一部

(ア) スタディグループ設立の経緯とその目的についての説明(竹原)

(イ) 3D cine PCによる血流解析の総論(礒田)

(ウ) 新メンバー(7名)の確認

(エ) 自己紹介

第二部

(オ) 各メーカーへのプレゼン依頼趣旨説明・スタディグループの説明(竹原)

(カ) 装置メーカーによるプレゼン

GE、Philips、Siemens、東芝、日立メディコ

(キ) 自由発言

① エディーカレントなど各種補正に関する問題の確認

② 3D cine PCの精度検証について。

③ 次回は、ポストプロセスをするメーカーによるプレゼンをしてもらう予定。

(ク)閉会の挨拶(礒田)


第3回スタディグループミーティング

(63名)

2013年9月19日(木) 18:30 – 20:00 第2会場(アスティとくしま)

新メンバー(2名) 日本医大 高木 亮、北里大学 板谷 慶一 (23名に)

血流解析アプリケーションの各メーカーからのプレゼンテーション

(AZE, アミン、アールテック,Gyrotools)


第4回 スタディグループミーティング

(42名)

2014年4月13日(日)15:30-17:30、パシフィコ横浜 311+312

新メンバーなし

4D flowの臨床応用

1.“4D flow撮影の臨床 日本医科大学” 関根 哲朗先生(日本医科大学付属病院

2.“脳動脈瘤コイル塞栓術におけるPhase contrast MRIを用いた血行動態解析” 佐野 貴則先生(三重大学 脳神経外科))

3.“3D Cine PC MRIを用いた血行力学指標の算出と血管内腔抽出法の現状と課題”宮崎 翔平先生(北里大学 血流解析学講座)

4.“腹部分枝動脈の4D flow”竹原 康雄先生(浜松医科大学医学部附属病院放射線部)


第5回 スタディグループミーティング

(79名)

2014年9月18日(木)17:00 – 19:00、第4会場(ホテルグランヴィア京都)

新メンバー(2名)広南病院 杉山慎一郎先生、東北大学の新妻邦泰先生 (25名に)

MR装置ベンダー各社による4D flowへの対応状況(第二報)

(日立、フィリップス、シーメンス、GE)



第6回 スタディグループミーティング

参加者(44名)

2015年4月19日(日)15:30-18:00、 パシフィコ横浜 313・314

新メンバー 慶應義塾大学医学部放射線診断科 奥田 茂男先生 (26名に)

① ポストプロセッシングメーカーの4D flowに関連する開発の進捗状況について

(アールテック、アミン、AZE)

② 臨床系からの4D flowを用いた研究成果発表

1. 東北大学病院放射線診断科 大田英揮先生

「4D Flow MRIを用いた肺動脈血流評価: 慢性肺血栓塞栓症に対する治療効果との関連について」

2. 浜松医科大学医学部 第三内科 諏訪賢一郎先生

「Characteristics of intra-left atrial flow dynamics and factors affecting formation of the vortex flow」


2015年活動記録

“3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析の医療への利用促進を図るスタディグループ”は、2012年磁気共鳴医学会の拡大選奨委員会に設立を公式に認められ発足始動した。発起人メンバーは、申請者の竹原康雄と礒田治夫を含む11人。その後、メンバーからの推薦と承認によりメンバーが増え、2015年度終了時点では、計27名となっている。

スタディグループの活動は、主に年2回のミーティングとメーリングリストを用いた情報交換と議論となっており、2015年度も、計2回のミーティングが行われている。情報の共有やメンバー間の意見交換をより効率的に行うために、第7回ミーティングに合わせて、スタディグループのwebサイト(https://sites.google.com/site/studygroupof4dflowmriinjapan/)も試験的に開始した。

平成27年度1回目(第6回ミーティング)は、第74回日本医学放射線学会総会ならびに第71回日本放射線技術学会総会学術大会に合わせ、2015年4月19日にパシフィコ横浜会議センター(3階「313+314」)で行われた。出席者はメンバー10名、非メンバー34名の計44名。“ポストプロセッシングメーカーの4D flowに関連する開発の進捗状況について”と“臨床系からの4D flowを用いた研究成果”の2つのテーマで行われた。前者は、株式会社アールテック,アミン株式会社と株式会社AZEの3社から製品の紹介や最近の開発の進捗状況の説明があった。後者は、東北大学病院放射線診断科の大田英揮先生から「4D Flow MRIを用いた肺動脈血流評価: 慢性肺血栓塞栓症に対する治療効果との関連について」、浜松医科大学医学部第三内科の諏訪賢一郎先生から「Characteristics of intra-left atrial flow dynamics and factors affecting formation of the vortex flow」の2つの研究発表があった。

平成27年度2回目(第7回ミーティング)は、第43回日本磁気共鳴医学会大会時の2015年9月10日(木) に東京ドームホテル(第一会場)で行われた。出席者はメンバー10名、非メンバー31名の計41名。 聖マリアンナ医科大学の小林泰之先生が正式にメンバーに認められ,会員数は全部で27名となった。“4D flowの臨床応用“というテーマで、聖隷三方原病院放射線科の高橋 護先生より「蛇行が大動脈の血行動態に与える影響」、磐田市立総合病院放射線診断技術科の寺田 理希先生より「3D cine PC法において速度ノイズが血流解析に与える影響について」、大阪大学大学院 医学研究科 放射線医学講座の渡邉 嘉之先生より「4D-FLOW MRIを用いた前交通動脈瘤におけるCross Flowの評価」と題して3つの研究発表があった。

スタディグループ延長申請


磁気共鳴医学会スタディグループ活動期間延長申請書

申請者 共同代表

名古屋大学大学院医学系研究科

新規低侵襲画像診断法基盤開発研究寄附講座 竹原康雄

名古屋大学医学部保健学科

医療技術学専攻 脳とこころの科学講座(協力講座)礒田治夫

1) スタディグループ名

3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析の医療への利用促進を図るスタディグループ

2)活動延長目的

“3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析の医療への利用促進を図るスタディグループ”は、2012年磁気共鳴医学会の拡大選奨委員会に設立を公式に認められ、発足始動した。発起人メンバーは、申請代表者の竹原康雄と礒田治夫を含む11人。その後、メンバーからの推薦と承認によりメンバーが増え、現時点では、計26名となっている。スタディグループの活動は、主に年2回のミーティングとメーリングリストによる情報交換を行っている。ミーティングは現在まで9回行われており、30-70名ほどの出席者(会員以外を含む)があり、毎回活発な発表や議論が行われている。

撮像できる装置がかなり限られていたスタディグループ発足時と比べると、現在は多くの最新のMR撮像装置で3次元シネ位相コントラスト法を撮像できるようになってきており、また、後処理アプリケーションも新製品の登場や改良修正が加えられ、撮影環境は整ってきた。当グループでは、同技術の臨床応用の発表、新たな撮影法やアプリケーションの紹介、撮影条件の工夫・validationの結果の報告など、最新の動向の効率的な情報収集や情報共有を行うことができた。また、臨床の場とメーカーとの議論の場を提供するなど、本邦での普及に一定の役割を担うことができたと考えている(添付業績リスト参照)。

当グループの設立目的は、グループ名にあるように、3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析の医療への利用促進を図ることであるが、徐々に数を増やしてきたとはいえ、その普及は、まだ、十分とは言えない段階である。近年、欧米を中心として、高速撮像法を用いた撮像時間短縮や高度で煩雑な後処理をクラウドサービスで提供するというような新たな試みも始まっている。ISMRMでもPlenary sessionで紹介されたり、ワークショップが開催されるなど、3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析は、世界的にも注目が集まってきている。今後、本邦でも導入あるいは導入を検討する施設が増えていくと思われ、当スタディグループの存在意義がより高まると考えられる。当スタディグループが発足し4年が経過し、設置期限の5年を迎えようとしているが、今後も継続して活動を行えるよう設置延長を希望する次第である。

2017年度成果報告


“3次元シネ位相コントラスト法による血行動態解析の医療への利用促進を図るスタディグループ”は、2012年磁気共鳴医学会の拡大選奨委員会に設立を公式に認められ発足始動した。発起人メンバーは、申請者の竹原康雄と礒田治夫を含む11人。その後、メンバーからの推薦と承認によりメンバーが増え、2017年度終了時点では、計27名となっている。

スタディグループの活動は、主に年2回のミーティングとメーリングリストを用いた情報交換と議論となっており、2017年度も、計2回のミーティングが行われている。2017年度1回目(第10回ミーティング)は、第76回日本医学放射線学会総会ならびに第73回日本放射線技術学会総会学術大会に合わせ、2017年4月15日(土)にパシフィコ横浜展示ホール2階 ハーバーラウンジAで行われた。出席者はメンバー6名、非メンバー16名の計22名。第一部のメンバーのみのミーティングでは、今後のスタディグループの活動に関して話し合われた。スタディグループは開設から5年経過し、2年間延長し活動していくことと今後は研究会へと発展させていくことが承認された。第二部のプレゼンテーションでは、日本医科大学付属病院 関根 鉄朗先生「GT flowとPmodの紹介」、名古屋大学大学院医学系研究科 石黒 健太君(代 水野君)「血流速度に基づいたバイオマーカーによる脳動脈瘤増大とブレブ発生予測の検討」、名古屋大学大学院医学系研究科 田嶋 駿亮君「7T MR装置と3T MR装置を用いた3次元シネ位相コントラスト磁気共鳴法の基礎的検討」の3題の研究発表と名古屋大学大学院医学系研究科 竹原康雄教授より、JMRIに採用された浜松医大の泌尿器科との共同研究の論文「Four-Dimensional Phase-Contrast Vastly Undersampled Isotropic Projection Reconstruction (4D PC-VIPR) MR Evaluation of the Renal Arteries in Transplant Recipients: Preliminary Results」の紹介がなされた。2017年度2回目(第11回ミーティング)は、第45回日本磁気共鳴医学会大会時の2017年9月14日(木) に宇都宮東武ホテルグランデ (第4会場)で行われた。出席者はメンバー7名、非メンバー24名の計31名。第一部のメンバーのみのミーティングでは、スタディグループの後身となる研究会(MR 流体解析研究会)の準備状況についての報告があった。第二部のプレゼンテーションでは、名古屋大学 竹原 康雄教授から心臓血管外科との共同研究の論文の紹介「Characterizing saccular aortic arch aneurysms from the geometry-flow dynamics relationship.」があった。

当スタディグループは開設期間限度の5年目を終え、延長1年目を迎えた。今後も活動継続の方針であるが、同時に今後研究会へと発展させていくことが承認され、規約案の承認と、世話人、幹事の意向確認は終了し、代表幹事に竹原と礒田が就任することが承認され、発足に向けての準備が整った。