北大や札幌,北海道の魅力を100個も並べました.こういう風に良いことばかりを並べられると,人は「本当かな... もしかして,だまされている?」と心配になるものです.(私はそうです.)
そこで,北大で学ぶ上で気をつけないといけないこと,覚悟しておかないといけないこと,といった注意事項を,あえて付け加えておきます.ここの記載内容の受け取り方も人それぞれでしょう.「全然問題ない」という人から「北大,やっぱムリ」という人までいろいろでしょう.
こうしたことに覚悟をもって入学してきてもらいたいと思います.
冬場は道が凍結します.新雪が積もった道は歩いていて楽しいですが,いったん溶けた雪が再凍結した道は非常に滑ります.滑らないように冬靴という防滑ソールの靴を履いてもやはり滑ります.札幌市では毎冬,1,000人近い人が冬道で転倒して病院に救急搬送されています.特に滑りやすいのは,交通量の多い交差点の横断歩道と,轍の形で凍り付いた凸凹道です.受験に物理をとっている人は,摩擦係数,運動方程式,運動量保存則,慣性モーメントといった用語を思い浮かべながら慎重に歩いてください.
前期日程の総合入試制度(大くくり入試)は入学後に落ち着いて進学する学科・コースを選べるということで,北大の「売り」の一つなのですが,全員が希望のところに進学できる訳ではなく,そこには競争があります.具体的には人気学科・コースに進学するには履修する科目で良い成績をとるための努力が必要です.2年生になるときに入学時に希望していた学科・コースに進学できずに気落ちしている学生も少なからずいます.でも,進学した先で学ぶうちに新たな興味が湧いてくることも多いですが.
豊かな自然が魅力の北海道ですが,ときどき不快な自然現象に遭遇することがあります.まずは,初雪が降る前の雪虫の乱舞.雪虫はアブラムシの一種で,ショウジョウバエと蚊の中間のような虫で,大群で空中を浮遊します.これに遭遇すると服にはりついたり眼や口に入ったりします.大量発生するのは数日間でその間の辛抱ですが,札幌で暮らす上では年中行事としての覚悟が必要です.次に臭いについて.北大の13条門のイチョウ並木は黄葉が見事ですが,その後,大量の銀杏を地面に落とし,それが通行人に踏み潰されることで靴裏に臭い銀杏の実が貼り付き,閉口します(別に北海道に限った話ではないですが).あと,不快ではないですが,初夏に柳絮(りゅうじょ)というポプラの種子の綿毛が大量に飛びます.私は札幌に来た最初の年には,綿毛が道端に吹き溜まっているのを見て,どこかで綿の布団が破いて捨ててあるのかと思ったほどです.
大都会の札幌ですが,東京や大阪と比べて物流のハンディキャップを負っている面があります.雑誌などの発売日が東京より2日ほど遅かったりします.出張で東京の書店で見かけた新刊書や雑誌が,札幌に戻って書店をのぞいてもまだ販売されていない,ということがよくあります.電子書籍ならば出版日の遅れはないですが,印刷所が本州の紙媒体ではやむを得ません.
それと日本の物流の中心の本州から荷物を送るのは時間とコストがかかります.宅配便でも標準的な100サイズの送料は東京から大阪が1,500円なのに対して東京から札幌は1,830円と2割増しです.
ただ,このことを裏返すと,北海道は北海道の産品を本州より安く早く手に入れることが出来ます.朝市などに並ぶ朝採りトウキビ,朝採りアスパラなどは鮮度が違います.
冬は雪が積もるので,ほとんどの屋外スポーツは冬期は屋内での基礎トレーニングが中心となります.例えば,テニスコートは11月になると霜柱が立ったり雪が降ったりして使えなくなりますし,4月になって雪が消えても土が乾いて利用可能になるのはGW前です.ゴルフ場も営業期間が短いです.あと,夏は短いので屋外プールが使える期間も7,8月の1ヶ月半程度です.そうした環境の中で活躍する北海道のトップアスリートは偉いと思います.
200万人に近い人口を持つ札幌ですが,郊外の住宅地近くにはヒグマが出没します.札幌市ではヒグマ出没情報をインターネットで毎日,配信して注意を喚起しています.北大札幌キャンパスには(いまのところ)ヒグマは出ませんが,札幌市の観光地である藻岩山や定山渓温泉ではよく足跡や姿が目撃されますし,,ハイキングや釣りで郊外の林や川に立ち入るときには要注意です.北大札幌キャンパスではキタキツネを目にすることがありますが,決して近づいてはいけません.エキノコックスという人間に怖い寄生虫を宿している可能性があります.
北海道では交通機関が乱れることが冬場に多く発生します.荒天のため飛行機が欠航になったり,新千歳空港に向かっていた飛行機が雪のため着陸できず出発地に戻る,ということは珍しいことではありません.また,JRや路線バスのダイヤが遅延して乱れるのは冬場には常に想定しておかないといけません.除雪での車線減少や事故で道路も渋滞しやすくなるので,タクシーでの移動も時間がかかるようになります.そうした中,北大の最寄り駅(さっぽろ駅,北12条駅,北18条駅)がある札幌市営地下鉄は冬場でも天候によらず安定した運転状況です.
北大では自家用車やバイクでの通学は原則禁止なので,通学は徒歩か自転車になります.そのため,登下校時や昼休みには構内には非常に多くの自転車が行き交います.そのため,構内で道を渡るときには「歩行者優先」の意識のない無謀自転車や,夜間の無灯火自転車に注意をしてください.自転車を運転する側になったときには歩行車に十分注意してください.学生が事故の加害者側になり,過失と賠償責任を問われる事例が発生しています.また,大学周辺や札幌市の中心部には自転車の駐輪禁止となっている区域がありますので注意してください.