(株)伊藤園へのインタビュー
~SDGsと茶殻~

はじめに

今回、あの「お~いお茶」で有名な伊藤園さんにTUEPがオンラインでインタビューを行いました! 伊藤園さんのSDGsに関する取組や皆さんがまだ知らない“茶殻”を活用したエコな取り組みの魅力を発信したいと思いますので、是非最後までご覧ください!

どうして伊藤園さんにインタビューしたの?

2021年8月に開催したデザインコンテストの製品のひとつが、株式会社イムラ封筒さんの製品である「茶殻入り紙製マスクケース」でしたが、実はこの製品、伊藤園さんの独自技術である茶殻リサイクルシステムが使われており、通常は廃棄してしまう茶殻をリサイクルした環境にとってもやさしいアップサイクル※製品なんです! 茶殻を活用することで、ただのリサイクル製品ではなく、お茶の香りや抗菌・消臭効果を持つ製品に生まれ変わっています! SDGsに取り組む私達TUEPは、この素晴らしいシステムを考案された伊藤園さんにインタビューを行いました。

※アップサイクルって?
サスティナブル(持続可能)なものづくりの新たな方法論のひとつで、従来のリサイクル(再循環)と異なり、単なる素材の原料化やその再利用ではなく、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すことを、最終的な目的とするもの。

伊藤園さんってどんな会社?

 伊藤園は「世界のティーカンパニー」を長期ビジョンに掲げている会社です。

 1980年世界初の「缶入りウーロン茶」の開発、1984年「缶入り煎茶」の開発など 技術的に不可能と言われた無糖飲料の開発に成功し、新たなマーケットを創造してきました。

 ロゴマークの「四つ葉のクローバー」には、関係者の皆様の幸せを願う「想い」が込められています。

 伊藤園の特筆すべき環境活動は、2030年までにペットボトルに使用するリサイクル素材等の割合を100%にすることを目指していることや、気候変動問題については、2030年度、2050年度のCO2排出量削減目標としてそれぞれ、製造工程の排出で総量26%削減、50%削減、それ以外の排出で原単位26%削減、50%削減(基準年はすべて2018年度)を掲げている点などです。

ではさっそく、インタビューに行ってみましょう!

―SDGsに関する取り組みの目標(SDGsを通して社会に伝えたい事、果たしたい役割) がありましたら教えてください。

SDGsについては、元々CSR(企業の社会的責任)経営推進をする上で中核主題としていた項目と関連するSDGsの目標を紐付ける形で取り組んでいました。また、私たちはお茶のリーディングカンパニーとして、社会的責任だけではなく、経済的成長も合わせて世の中にプラスになるような貢献をしたいと考えていますので、今後もCSV※の取り組みとして継続していきたいですね。

※CSV(Creating Shared Value)って?
共有価値の創造=社会にとっての価値と企業にとっての価値を両立させて、企業の事業活動を通じて社会的な課題を解決していくことを目指す考え方。

↓中核主題のうち特に重点テーマとしている「消費者課題」「コミュニティへの参画及びコミュニティの発展」「地球環境」の項目とSDGsの対応表。

―SDGs などの環境に関する取り組みと会社の利益は、一部相反してしまうことがあると思いますが、どのようにして折り合いをつけているのでしょうか。

短期的に見たら確かにそうかもしれませんね。しかし、ある程度長期的に見ると会社に利益還元されると考えています。環境に関する取り組みは新たな知的財産や次のステップアップとなるので、損をしているといった感覚はないですね。
 

―ホームページを読ませていただきましたが、茶殻をリサイクルするには茶殻が腐敗しやすいことや、茶殻の乾燥などの前処理で余計なエネルギーを消費してしまうなど、いくつもの課題があったようですが、それでも諦めずに茶殻リサイクルの開発を続けた理由を教えてください。

そもそも開発を始めたきっかけは、実は入社して1年ほど(!)の社員が始めたいという想いを掲げたことなんです。確かに苦難は沢山ありましたがそれでも続けられたのは、当時の社員の使命感があったからだと思います。どんどん生産量が増えていく「お~いお茶」と共に排出量が増えていく茶殻を、堆肥や飼料以外でも活用したいということは、会社としても検討していましたので、地道に取り組んでいた結果、達成できたのだと思います。
ただし、現在では茶殻はほぼ100%リサイクルされていますが、茶殻の主な用途は肥料や飼料に使用されており、工業製品や日用品、雑貨などに応用されている茶殻はまだ10%に届いていないというのが現状です。


―かなり沢山の茶殻リサイクル製品(茶殻リサイクルシステムにより誕生した製品)がありますが、どのようにして多種多様な企業と協力して製品を作るまでに至ったのでしょうか。

開発者の強い想いもありましたが、様々な商品を出すことによって、人々が生活の場で茶殻リサイクル製品に触れる機会を増やし、皆さんに広げていきたい!という想いがありました。そして、伊藤園との取引先の企業様にはスーパーマーケット、コンビニ、自動販売機の関連企業などがありますが、様々な業種の方々と接点があったことから共同開発の話を持ち掛けることができました。
また、一業種一社の構えがあったからこそ、お互いにタイアップして高めあっていけたことがきっかけです。

↓茶殻リサイクル製品は、こんなにたくさん!!!

―茶殻入りの紙を作るのには普通の紙で作るよりも多くのコストや燃料を消費してしまうのでしょうか?


茶殻のすべては国産の茶葉から出たものを使用していますが、一方で普通の紙は大半が海外から輸入されています。そのため距離を考えると茶殻入りの紙のほうが燃料の消費は少ないです。ただし、普通の紙と比べると茶殻入りの紙の生産量は微々たるものなので、金額という意味では普通の紙よりもかかってしまいます。

―様々な茶殻リサイクル製品がありますが、どのように宣伝したのでしょうか?

自社のホームページと共同開発している企業様のホームページに掲載したり、「お~いお茶」の販促や展示会で発信を行ったりしています。静岡で開催された「世界お茶まつり」※ではイムラ封筒さんの封筒を3千枚程度配りました。日本人だけでなく海外の人にもアピールして、地道な活動を行っています。
※三年に一度静岡で開催されている茶の総合博覧会。2019年度においては26の国と地域から参加し、日本国内だけでなく、世界に向けて茶の魅力を発信している。


―実際に家で出た茶殻を再利用することはできるのでしょうか?また、再利用できるのであればおすすめの利用方法を教えていただきたいです。

使用した直後の茶殻であれば料理に活用して、たとえば佃煮や茶粥などにできます。
また、茶殻に含まれるカテキンの消臭効果の特性を活かし、茶殻を乾かしてパックにすることで、冷蔵庫や下駄箱に入れて消臭剤として使えます。
ちなみに茶殻リサイクルシステムを研究していた社員は、おばあちゃんの知恵袋(畳に茶殻を撒いて掃除する)にヒントを得て、茶殻リサイクル製品第1号の「お茶入り畳」を開発したので、もちろん掃除にも活用できると思います。


―緑茶の茶殻以外にも麦茶の茶殻やコーヒーのシルバースキンのリサイクルをされているようですが、それ以外にもリサイクルをしたい、しようとしているものはあるのでしょうか?

他には野菜ジュースに使われるにんじんをベースとしたもののリサイクルも考えています。野菜の皮や端の部分などは家庭で食べる際に廃棄されてしまいますが、リサイクルできるところは活用していきたいと考えています。
緑茶以外にも烏龍茶などもリサイクルに取り組んでいます。しかし、量的に生産が難しいのが現状です。

―今後新しく開発しようとしている茶殻の製品はありますか?

これからやりたいことはたくさんあるのですが・・・今お話することはできません。ごめんなさい(涙)  ですが先日新たにリリースした商品があるのでご紹介します。その商品は革製品です。茶殻に含まれるカテキンは革を柔らかくする鞣しの作業に役立ちます。最近では海外から輸入した鞣剤(じゅうざい)が主流ですが、お茶は国産のため、輸入コストや輸送にかかるCO2排出量の削減にも貢献します。お話できることはここまでになります(笑)。


―話は変わりますが、ペットボトルの軽量化を行ったという話を聞いて、他のペットボトルは軽量化するとペコペコ凹むので使いづらくなったという印象を受けますが、伊藤園さんのお~いお茶などのペットボトルは今までどおり、凹まずに安定して手に持てるので、軽量化する際に持ちやすさなどの使いやすさという観点でもデザインが考えられているのかお聞きしたいです。 

品質保持性とリサイクルのしやすさを意識しています。特に品質保持性についてはペットボトルの肩部にギザギザの線が70本入っているんです。ただのデザインだと思われることもあるんですが、実は光を乱反射させてお茶に影響を与える有害光線を2~3割ほどカットしているんです。お茶は光と酸素に弱いのでこのような工夫をしています。
また、2リットルのペットボトルですと「持ちにくい」との意見もあります。一時はペットボトルに取っ手をつけた商品もありました。持ちやすさに関しては、お客様の声を聞いてまだまだこれから改良していくつもりです。伊藤園は日々進化していきます!