宮城県気仙沼市スローシティの研修

イタリア発祥のまちづくり運動「スローシティ」を研究している鈴木ゼミでは、2022年9月21日から23日にゼミ生8名と鈴木先生で、前橋の共愛学園前橋国際大学と合同で気仙沼研修を行いました。気仙沼市は2013年に日本で初めて国際スローシティ連盟に認定された都市であり、今回は東日本大震災やスローシティについて、現地の方からお話を伺うことができました。

 

〇1日目

7時半に東京駅に集合し、新幹線と電車で約4時間かけて気仙沼駅へ到着。早速昼食で美味しい海鮮丼を頂いてから、気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館(以下、伝承館)へ。途中の道のりでは、関心を持ってみないと気付かないような震災の爪痕を感じることができました。

伝承館では、東日本大震災で津波の被害に遭った高校の校舎がほぼ当時のままの状態で保存されていました。そして実際に津波を経験された語り部さんにお話を伺いながら校舎内を見学しました。車がそのまま残った教室、流された建物が衝突してむき出しになった4階の壁面、指定の避難場所で津波に襲われ逃げ遅れた人々の話、どれも言葉に表せないほどの衝撃を受けました。被害の本当の大きさを目の当たりにしました。

人々の心にも街全体にも甚大な傷跡を残した震災を、気仙沼の人々はどのように乗り越え、前を向いて生きてきたのかを考えるきっかけになりました。

〇2日目

朝は早起きをして、眠い目をこすりながら日の出を見に行きました。前日の伝承館で海の恐ろしさを目の当たりにし、これだけの被害に直面してなお「海と生きる」ことを選んだ住民たちの感覚をすぐには理解できませんでした。しかし、港から見た海は言葉では表せないほどの絶景でした。毎日この海と生活している気仙沼の人々にとって、震災は確かに大きな傷跡を残しましたが、海との喧嘩は終わり、これから共に生きていくのだろうかと考えさせられました。

2日目は朝から頭をきりかえ切り替えて勉強会です。気仙沼市商工会議所にて、気仙沼市の菅原茂市長、スローシティ気仙沼の菅原昭彦理事長、気仙沼市役所の職員の方から貴重な話を聞かせていただきました。

私たちは普段のゼミ活動でスローシティの研究と実践を行っていますが、まだ学び始めたばかりだったため、この研修でスローシティの理解がとても深まりました。特にスローシティやスローフードは単なる記号、手段であり、真の目的は住民が心豊かに生活を送ることが重要であると学びました。さらにスローシティの推進というより、住民の生活のために数々の活動を行うことが、結果としてスローシティの推進に繋がることを理解しました。

こうして森・里・川・海と自然の恵みが豊富にある気仙沼市では、前橋市とは異なったスローシティであり、地域の独自性を感じることができました。気仙沼といえば海というイメージでしたが、海だけが単独してあるのではなく、森・里・川・海といった流域全体で自然の魅力が成り立っていることを実感しました。

夕方には地域の方や企業の方が集まってくださり、東洋大学と共愛学園前橋国際大学の学生が現在取り組んでいる地域活動について発表を行いました。

〇3日目

午前に気仙沼市移住・定住支援センターMINATOの加藤航也センター長からお話を伺い、「外の人」だった人が気仙沼で活動をすることが、地元の人や出身者の関心を高め、Uターンを促進することを学びました。

この3日間を経て、生活が海とともにあり、人々が海への誇りと畏敬の念を抱きながら生き、その恵みを大切に暮らしてきたという歴史が、スローシティ的な精神の形成に繋がっていると感じました。11年前の震災と津波で全てを失い、それでも「海と生きる」覚悟を決めた人々がいま暮らすからこそ、「気仙沼を良くしたい!」という強い気持ちがあり、気仙沼を愛していて、街のために何かをしたいというそのパワーが「外の人」にも魅力的に見えるのだと思います。本当に貴重な経験をさせて頂きました。気仙沼の方々に深く感謝いたします。

(執筆者:東洋大学国際学部国際地域学科3年谷内拓未、白石朝香、鈴木鉄忠准教授)