翠生農学振興会では、以下の3分野に対し助成を行っています。
・外国派遣研究者助成金交付募集
農学研究者等の外国派遣への助成
・外国人招へい研究者助成金交付募集
外国人研究者等の受入れへの助成
・翠生農学研究助成の募集
若手研究者による農学に関する調査・研究への助成
・令和7年度外国派遣研究者助成金交付募集
1.募集人員
第1期(令和7年4月1日~令和7年 7月31日出国)若干名
第2期(令和7年8月1日~令和7年11月30日出国)若干名
第3期(令和7年12月1日~令和8年 3月31日出国)若干名
ただし、渡航期間が各期にまたがる場合は、帰国日の属する期とすることができる。
2.助成額
渡航目的地を次の地帯に区分し、地帯別に定めた額の範囲内で、航空賃の実費を助成する。
第1地帯 (アジア、オセアニア) 10万円
第2地帯 (北米、中米、中近東、ヨーロッパ) 15万円
第3地帯 (アフリカ、南米) 20万円
※申請者多数の場合、減額支給となることもあります。
3.応募資格者
(1)宮城県の農学系大学院に在学する学生
(2)宮城県に在住する農学系若手研究者(原則として40歳未満)
(3)東北大学農学部の同窓生で農学の研究に携わっている者
(4)東北大学農学部に教員として在職した者
4.応募手続き
別記様式の申請書(外国派遣)に次の文書を必ず添えて提出すること。
(1)国際会議等のプログラム等の写し
(2)先方よりの招待状の写し
(3)旅行代理店による渡航費の見積書(最も経済的なルートで、かつ低廉なもの)
(4)略歴書(型式自由、履歴書でも可)
(5)主要な業績リスト(主な発表論文・著書等、2ページ程度)
(6)・指導教員の推薦状(学生の場合)
・所属長の承認書(学生以外 教授は研究科長、准教授及び助手は講座の教授)
(7)旅行日程
※下記2点、審査の際に聞かれることがありますので、念の為ご用意ください。
1.発表申込の有無と発表要旨
(回答例)学会では口頭発表を行う予定です。(題名と発表要旨)
2.論文のアクセプト状況
5.提出期限(必着のこと)土日休日に当たる場合は翌平日で可
第1期 令和7年3月15日
第2期 令和7年 7月15日
第3期 令和7年11月15日
6.提出先
〒980-0845 仙台市青葉区荒巻字青葉468-1
東北大学大学院農学研究科内
公益財団法人 翠生農学振興会
TEL&FAX :022-757-4070 Mail:suisei@grp.tohoku.ac.jp
7.選考結果の通知
助成の可否は、選考委員会で選考の上、採否と助成金額を次の期日までに通知する。
第1期 令和7年 3月31日
第2期 令和7年 7月30日
第3期 令和7年11月30日
(土日休日に当たる場合は翌平日)
8.報告書
帰国後に報告書、渡航費の領収書の写し、発表の様子の写真をご提出願います。
(概ね帰国後約1週間~10日位内)
農学研究者の外国派遣実績
令和7年度 第1期 ムロンバ パスカル シンバラシェ 東北大・農学研究科・前期課程 農業経済学分野 アメリカ 令和7.5.11~18
令和7年度 第2期 霜野 七鳳 東北大・農学研究科・前期課程2年 土壌立地学分野 韓国 令和7.9.22~26
令和7年度 第2期 持田 貴紀 東北大・農学研究科・前期課程1年 土壌立地学分野 韓国 令和7.9.22~26
令和7年度 第2期 吉澤 俊明 東北大・農学研究科・前期課程1年 土壌立地学分野 韓国 令和7.9.22~26
令和6年度 第1期 松本 夏歩 東北大・農学研究科・前期課程 動物食品機能学分野 タイ 令和6.5.28~6.2
令和6年度 第2期 増田 航大 東北大・農学研究科・前期課程 動物生理科学分野 アメリカ 令和6.8.25~8.31
令和6年度 第2期 但 申 東北大・農学研究科・後期課程 草地-動物生産生態学分野 イタリア 令和6.8.29~9.17
令和6年度 第2期 李 厚承(イ フスン)東北大・農学研究科・後期課程 動物生理科学分野 アメリカ 令和6.8.25~8.31
令和6年度 第2期 JIAN CHUANZHEN(カン テンシン)東北大・農学研究科・前期課程 土壌立地学分野 インドネシア 令和6.8.26~9.1
令和6年度 第2期 柴田 隼太郎 東北大・農学研究科・前期課程 土壌立地学分野 インドネシア 令和6.8.26~9.1
令和6年度 第3期 横山 将己 東北大・農学研究科・後期課程 真核微生物機能学分野 アイルランド 令和7.2.28~3.7
令和5年度 第1期 北島 周 東北大・農学研究科・前期課程 生物海洋学分野 南アフリカ共和国 令和5.6.30~7.9
令和5年度 第2期 髙塚 歩 東北大・農学研究科・後期課程 環境適応植物工学分野 フィリピン 令和5.10.15~10.20
令和5年度 第2期 堀江 莉那 東北大・農学研究科・前期課程 水圏植物生態学分野 台湾 令和5.10.26~11.1
令和5年度 第2期 金田 貴聖 東北大・農学研究科・前期課程 水圏植物生態学分野 台湾 令和5.10.26~11.1
令和5年度 第2期 新津 彩花 東北大・農学研究科・前期課程 水圏植物生態学分野 台湾 令和5.10.26~11.1
令和5年度 第3期 ジョン・ダミン(Jeong Da Min 鄭 多珉)東北大・農学研究科・後期課程 真核微生物機能学分野 アメリカ 令和6.3.11~3.18
令和4年度 第1期 コロナとウクライナ情勢のため中止
令和4年度 第2期 千葉 勇輝 東北大・農学研究科・後期課程 応用昆虫学分野 マレーシア 令和4.8.7~8.14
令和4年度 第3期 薄田 隼弥 東北大・農学研究科・前期課程 応用微生物学分野 オーストリア 令和5.3.3~3.10
令和4年度 第3期 高橋 尚央 東北大・農学研究科・前期課程 応用微生物学分野 オーストリア 令和5.3.3~3.10
令和3年度 コロナのため中止
令和2年度 コロナのため延期
令和元年度 第1期 周 冰卉 東北大・農学研究科・後期課程 動物資源化学分野 ヘルシンキ 令和1.7.6~7.16
令和元年度 第2期 Wahyu Dwi Saputra 東北大・農学研究科・後期課程 栄養学分野 バリ、ジャカルタ 令和1.8.2~8.27
令和元年度 第2期 西原 昂来 東北大・農学研究科・後期課程 動物生理科学分野 ライプツィヒ 令和1.9.2~9.8
令和元年度 第2期 Afi fah Zahra Agista 東北大・農学研究科・後期課程 栄養学分野 バリ 令和1.8.2~8.27
令和元年度 第2期 中野 颯 東北大・農学研究科・前期課程 生物制御機能学分野 杭州 令和1.10.8~10.14
令和元年度 第2期 助友 千尋 東北大・農学研究科・前期課程 環境適応生物工学分野 台北 令和1.11.3~11.7
令和元年度 第2期 加藤 萌子 東北大・農学研究科・前期課程 生物海洋学分野 台北 令和1.11.3~11.7
令和元年度 第2期 大沼 佐保子 東北大・農学研究科・前期課程 土壌立地学分野 台北 令和1.11.2~11.8
平成30年度 第2期 太箸 誠 東北大・農学研究科・前期課程 動物生理科学分野 マレーシア 平成30.7.30~8.5
平成29年度 第1期 井形 愛美 東北大・農学研究科・前期課程 動物資源化学分野 スペイン 平成29.7.8~7.16
平成29年度 第2期 小西 範幸 岡山大・資源植物科学研究科・助教 植物栄養学 デンマーク 平成29.8.19~8.26
平成29年度 第3期 伊藤 浩吉 東北大・農学研究科・前期課程 水圏植物生態学分野 フィリピン 平成29.12.3~12.9
平成29年度 第3期 村上 哲也 東北大・農学研究科・前期課程 環境適応生物工学分野 インドネシア 平成30.2.27~3.1
平成28年度 第2期 小野寺 駿 東北大・農学研究科・前期課程 生物制御機能学分野 アメリカ合衆国 平成28.9.24~10.2
平成28年度 第3期 宮澤 拳 東北大・農学研究科・前期課程 応用微生物学分野 アメリカ合衆国 平成29.3.13~3.20
平成28年度 第3期 井上 大志 東北大・農学研究科・前期課程 遺伝子情報システム学分野 アメリカ合衆国 平成29.3.13~3.21
このページの下方に報告があります。
・外国人招へい研究者助成金交付募集
1.募集人員
前 期(令和7年 4月1日~令和7年 9月30日到着)若干名
後 期(令和7年10月1日~令和8年 3月31日出国)若干名
2.助成額
招へい者の出発地を次の地帯に区分し、地帯ごとに定めた額の範囲内で、航空賃の実費を助成する。
第1地帯 (アジア、オセアニア) 15万円
第2地帯 (北米、中米、中近東、ヨーロッパ) 20万円
第3地帯 (アフリカ、南米) 25万円
3.受入れ有資格者
東北大学大学院農学研究科及び宮城県の農学系大学に在籍する教員
4.応募手続き
別記様式の申請書に次の文書を必ず添えて提出すること。
(1)招へい研究者の略歴
(2)招へい研究者の主要な業績リスト
(3 招へい研究者の承諾書の写し
(4)旅行代理店による渡航費用の見積書(最も経済的なルートで、かつ低廉なもの)
5.提出期限(必着のこと)土日休日に当たる場合は翌平日で可
前 期 令和7年3月15日
後 期 令和7年9月15日
6.提出先
〒980-0845 仙台市青葉区荒巻字青葉468-1
東北大学大学院農学研究科内
公益財団法人 翠生農学振興会
TEL&FAX 022-757-4070 Mail:suisei@grp.tohoku.ac.jp
7.選考結果の通知
選考委員会で選考の上、採否と助成金額を次の期日までに通知する。
前 期 令和7年3月31日
後 期 令和7年9月30日
・翠生農学研究助成の募集
1.趣旨
公益財団法人翠生農学振興会は、若手研究者(大学院生を含む)もしくは若手研究者グループ等による宮城県の農林水産業及び食産業の育成発展に資する学術調査・研究に対して、研究助成を行う。
2.助成対象の調査・研究テーマ及び採用予定件数
助成する学術調査・研究のテーマは次の通りとする。
(1)特定研究(1件予定)
宮城県の持続可能な農林水産業及び食産業の将来像に関する社会科学研究
例えば、農業と異業種との連携の可能性や大規模農地の効率的・省力的な圃場管理など
(2)一般研究(1件予定)
宮城県の農林水産業及び食産業の育成発展に関する自然科学研究
3.応募資格
国内の大学及び短期大学、専修学校、国・地方公共団体の設置する研究所、独立行政法人の研究機関等で学術研究を行っている40歳未満の研究者(大学院生含む)等とする。
なお、年齢は助成期間開始日時点での満年齢によるものとする。
4.応募の要件
①国内外に未発表の研究であること。
②外部への研究発表に際して、公益財団法人翠生農学振興会の研究助成を受けたことを明らかにすること。
③研究成果については、公益財団法人翠生農学振興会に報告書を提出し、評価を受けること。
5.助成期間
助成期間は、原則として一年(令和8年1月1日~12月31日)とする。ただし、やむを得ぬ事情により研究の継続が必要な場合には、公益財団法人翠生農学振興会の審査を経て、研究を継続することができる。
6.助成額
一件当たり原則として30万円(消費税込)以内とする。なお、当該助成額に間接経費は計上されておりません。
7.助成額の支出基準
助成額の支出基準は、次のとおりとする。
原 材 料 費 : 実験用材料等の購入費(固定資産となる備品は対象となりません)
資 料 費 : 研究用図書等の購入費
賃 借 料 : 測定機器、カメラ、計算機等の賃借料
賃 金 : 実験補助員、調査補助員等に対する賃金
会 議 費 : 調査、打ち合わせ等に係る会議費
謝 金 等 : 調査、打ち合わせ等に係る謝金及び礼金等
旅 費 : 調査、打ち合わせ等に係る旅費とし、実費により支出するもの。
なお、単なる学会出席のための旅費、参加費は対象となりません。
通信運搬費 : 郵便料、振込手数料等
印 刷 費 : 報告書作成等に係る印刷、製本費
投 稿 料 : 研究成果の学会誌発表のための投稿料(受理された場合に限る。)
上記以外の経費項目については、具体的な内容の項目を記載し、それぞれの経費の金額を記載すること。
8.応募方法
下記の令和7年度翠生農学振興会研究助成申請書に必要事項を記入の上、公益財団法人翠生農学振興会事務局(suisei@grp.tohoku.ac.jp)宛にpdfファイルを提出すること
9.応募期間
令和7年8月1日(金)~令和7年10月31日(金)(10月31日必着)
10.選考方法
助成の可否は、公益財団法人翠生農学振興会「助成金選考委員会」が選考を行った上で、当財団の理事長が決定する。
11.選考結果
選考結果は令和7年12月上旬に通知する。
なお、公益財団法人翠生農学振興会のホームページにおいて研究助成対象者等を公表する。
12.研究報告書等の提出
研究者等は、研究報告書(A4サイズ、横書き)及び収支報告書を研究期間終了後30日以内に提出しなければならない。なお、研究報告書の構成、引用文献リスト及び図表の記載法については特に指定はないが、題名は申請時と同じものにすること。
なお、研究を中止する場合、または助成金の使途が不適当とみられる場合には、助成金の一部または全額を返還請求することがある。
13.研究成果の公表
本研究助成を受けた研究者等は、報告書を提出した後で一年以内に開催される農学カルチャー講座(主催:東北大学大学院農学研究科・公益財団法人翠生農学振興会)において、調査・研究結果等の発表を行わなければならない。
14.個人情報の取り扱い
本研究助成の申請に関わる個人情報は、本業務の目的以外には一切使用しないこととする。
15.翠生農学研究助成に関する問い合わせ先・提出先
〒980-0845
仙台市青葉区荒巻字青葉468-1 東北大学大学院農学研究科内
公益財団法人翠生農学振興会事務局 担当:柴田 恭子
TEL&FAX 022-757-4070 E-mail:suisei@grp.tohoku.ac.jp
令和6年度 翠生農学研究助成実績
(2)特定研究
成澤 朋紀 東北大・農学研究科・博士課程後期1年
申請課題:宮城県三陸海岸周辺における竹林管理の実態に関する研究
令和5年度 翠生農学研究助成実績
申請なし
令和4年度 翠生農学研究助成実績
(2)特定研究
孟 源 東北大・農学研究科・博士課程後期3年
申請課題:牛の伝染症の防疫に関する経済的評価
令和3年度 翠生農学研究助成実績
(1)一般研究
川邉 悠介 東北大・農学研究科・博士課程前期1年
申請課題:ウシ体外精子形成系の構築に向けた農医工連携研究
(2)特定研究
早川 紘平 東北大・農学研究科・博士課程後期3年
申請課題:農業法人経営における人材ポートフォリオの規定要因に関する実証研究
令和2年度 翠生農学研究助成実績
(1)特定研究
大鐘 智香子 東北大・農学研究科・博士課程後期1年
申請課題:仙台市における食料品アクセス問題の発生要因に関する研究
平成28年度 翠生農学研究助成実績
(1)一般研究
山本 雅也 東北大・農学研究科・助教
申請課題:アブラナ科自家不和合性の形質発現における高温の影響の研究
(2)特定研究
水木 麻人 東北大・農学研究科・助教
申請課題:水田作経営における地下水位制御システムの導入に至る意思決定プロセスの分析
平成27年度 翠生農学研究助成実績
(1)一般研究
長澤 一衛 東北大・農学研究科・助教
申請課題:二枚貝類の種苗清高度化を目指したホルモン投与の開発
翠生農学研究助成申請書
令和7年度 外国派遣研究者報告
10 Atlanta Conference on Science and Innovation Policy at the Georgia Institute of Technology USA
渡航機関:令和7.5.11~18
渡航場所:アメリカ(アトランタ)
所属:Graduate School of Agricultural Science, Tohoku University
International Development Studies Laboratory
Agricultural Economics Course
学年:M1
氏名: Pascal S Muromba
Between May 14-16, I had the opportunity to participate in the 10th Atlanta Conference on Science and Innovation Policy held at the Georgia Institute of Technology in Atlanta, Georgia, USA, as an early career poster presenter. I was one of 31 early career poster presenters at the conference, which hosted 215 attendees, 65 oral sessions, and 174 papers presented by scholars representing 32 nations. This marked my third conference presentation in 2025, my first international conference, and a significant milestone in my early academic career.
The conference opened with a keynote speech by Professor Barry Bozeman, a renowned policy expert and Professor Emeritus at Arizona State University, where he served as founding Director of the Center for Organization Research and Design, Regents' Professor, and Arizona Centennial Professor of Technology Policy and Public Management. He was joined on stage by Professor Cassidy Sugimoto, Chair in the School of Public Policy at Georgia Institute of Technology, and Mr. Kei Koizumi, who previously served in the United States White House Office of Science and Technology Policy. Their discussion centered on policy development, research funding, and the future of global education during times of political uncertainty. This panel discussion provided valuable insights into current trends in research funding and policy development.
Throughout the three-day conference, I attended numerous oral sessions, some related to my agricultural studies and others outside my academic scope. One recurring theme that emerged across discussions and presentations was artificial intelligence and its impact on policy development and innovation, as well as what the future of science and innovation might look like in an AI-driven world. This gave me an opportunity to reflect on my own research and consider how I might incorporate AI elements into my work, particularly since AI is becoming increasingly prevalent in agriculture. Additionally, I used these oral presentations as learning opportunities to observe how experts present their academic findings, from preparation of presentation materials to delivery techniques, question handling, and meaningful dialogue with session attendees. I plan to implement these skills in my future presentations as I continue my studies.
On May 15th, I presented my research work at the Fox Theater, where the conference poster session took place simultaneously with a banquet dinner. This created a relaxed atmosphere as experts moved around the room viewing the posters we had arranged at the front of the space. I engaged in lengthy discussions with various professors who offered advice on improving my work, particularly its conceptual rigor to make it suitable for publication in international journals. I also received feedback on how to articulate my research in ways that are accessible to non-experts and likely to attract collaborations. I carefully documented all this feedback and plan to implement these suggestions as I continue my research studies.
Over the three-day period, I had numerous networking opportunities with professors, postdoctoral students, and doctoral students currently studying at US universities. Most were generous in sharing their academic journeys and offered advice on crafting competitive research proposals for graduate programs. I connected with many participants on LinkedIn, and most welcomed me to contact them when I begin applying for PhD programs so they can review my work and help me prepare for PhD interviews.
Despite the challenge of having to rebook my flight at Haneda Airport due to a visa issue with my original itinerary that passed through Taiwan where I discovered at the last minute that Zimbabweans need transit visas my experience at the 10th Atlanta Conference on Science and Innovation Policy at Georgia Institute of Technology was highly rewarding. I successfully presented my research work, received constructive feedback from world-renowned academic experts, expanded my professional network, and learned how to present scientific studies to broad audiences in large academic settings. I would like to thank Professor Fuyuki and Professor Keeni for their continued support and guidance, as well as my colleagues in the International Development Studies lab for their support, and the Suisei Agricultural Science Promotion Association for providing the financial grant that enabled me to attend this conference.
Copyright ©公益財団法人 翠生農学振興会 All rights reserved.
令和7年度 外国派遣研究者報告
10 Atlanta Conference on Science and Innovation Policy at the Georgia Institute of Technology USA
渡航機関:令和7.5.11~18
渡航場所:アメリカ(アトランタ)
所属:Graduate School of Agricultural Science, Tohoku University
International Development Studies Laboratory
Agricultural Economics Course
学年:M1
氏名: Pascal S Muromba
Between May 14-16, I had the opportunity to participate in the 10th Atlanta Conference on Science and Innovation Policy held at the Georgia Institute of Technology in Atlanta, Georgia, USA, as an early career poster presenter. I was one of 31 early career poster presenters at the conference, which hosted 215 attendees, 65 oral sessions, and 174 papers presented by scholars representing 32 nations. This marked my third conference presentation in 2025, my first international conference, and a significant milestone in my early academic career.
The conference opened with a keynote speech by Professor Barry Bozeman, a renowned policy expert and Professor Emeritus at Arizona State University, where he served as founding Director of the Center for Organization Research and Design, Regents' Professor, and Arizona Centennial Professor of Technology Policy and Public Management. He was joined on stage by Professor Cassidy Sugimoto, Chair in the School of Public Policy at Georgia Institute of Technology, and Mr. Kei Koizumi, who previously served in the United States White House Office of Science and Technology Policy. Their discussion centered on policy development, research funding, and the future of global education during times of political uncertainty. This panel discussion provided valuable insights into current trends in research funding and policy development.
Throughout the three-day conference, I attended numerous oral sessions, some related to my agricultural studies and others outside my academic scope. One recurring theme that emerged across discussions and presentations was artificial intelligence and its impact on policy development and innovation, as well as what the future of science and innovation might look like in an AI-driven world. This gave me an opportunity to reflect on my own research and consider how I might incorporate AI elements into my work, particularly since AI is becoming increasingly prevalent in agriculture. Additionally, I used these oral presentations as learning opportunities to observe how experts present their academic findings, from preparation of presentation materials to delivery techniques, question handling, and meaningful dialogue with session attendees. I plan to implement these skills in my future presentations as I continue my studies.
On May 15th, I presented my research work at the Fox Theater, where the conference poster session took place simultaneously with a banquet dinner. This created a relaxed atmosphere as experts moved around the room viewing the posters we had arranged at the front of the space. I engaged in lengthy discussions with various professors who offered advice on improving my work, particularly its conceptual rigor to make it suitable for publication in international journals. I also received feedback on how to articulate my research in ways that are accessible to non-experts and likely to attract collaborations. I carefully documented all this feedback and plan to implement these suggestions as I continue my research studies.
Over the three-day period, I had numerous networking opportunities with professors, postdoctoral students, and doctoral students currently studying at US universities. Most were generous in sharing their academic journeys and offered advice on crafting competitive research proposals for graduate programs. I connected with many participants on LinkedIn, and most welcomed me to contact them when I begin applying for PhD programs so they can review my work and help me prepare for PhD interviews.
Despite the challenge of having to rebook my flight at Haneda Airport due to a visa issue with my original itinerary that passed through Taiwan where I discovered at the last minute that Zimbabweans need transit visas my experience at the 10th Atlanta Conference on Science and Innovation Policy at Georgia Institute of Technology was highly rewarding. I successfully presented my research work, received constructive feedback from world-renowned academic experts, expanded my professional network, and learned how to present scientific studies to broad audiences in large academic settings. I would like to thank Professor Fuyuki and Professor Keeni for their continued support and guidance, as well as my colleagues in the International Development Studies lab for their support, and the Suisei Agricultural Science Promotion Association for providing the financial grant that enabled me to attend this conference.
令和6年度 外国派遣研究者報告
The 14th Asian Conference on Lactic Acid Bacteriaの参加報告
渡航期間:2024年5月28日~2024年6月2日
渡航場所:タイ(バンコク)
所属:東北大学大学院農学研究科
生物生産科学専攻 動物食品機能学分野
学年:博士課程前期2年
氏名:松本 夏歩
2024年5月29日~5月31日の3日間、タイのバンコクで開催された、The 14th Asian Conference on Lactic Acid Bacteriaに参加し、「Porcine small intestinal organoids to evaluate postimmunobiotics with anti-rotavirus activity」というタイトルで口頭発表を行いました。私は、腸管粘膜免疫調節作用を持つイムノバイオティクス乳酸菌に着目し、宿主と細菌の相互関係を小腸オルガノイドを用いて明らかにすることを主軸とした研究に取り組んでいます。特に、不活性化処理した乳酸菌の菌体(ポストイムノバイオティクス)を用いることで、家畜生産現場への応用に向けた研究を目指しています。本発表では、樹立したブタ小腸由来のオルガノイドの特徴付けを行うと共に、ブタの糞便などから単離した抗ウイルス効果を有すると考えられる乳酸菌株を用い、オルガノイドにおけるロタウイルス感染抑制効果の評価について発表しました。発表終了後には、他の参加者の方と意見交換ができ、異なる国ならではの視点からの意見を聞くことで、新しいアイデアを得る良い機会になりました。今後、乳酸菌による抗ウイルス作用の詳細解析のため、乳酸菌と小腸オルガノイドの共培養系を用いることでより生体に近い状態を再現し、乳酸菌の有するどのような因子が寄与するのか、乳酸菌の代謝産物などに着目し分子メカニズムを調べていきたいと考えています。
学会では、国際的に活躍されている研究者による講演も聞くことができ、国内学会では得られない最先端の情報を学ぶことができました。最も興味深かったのは、微小真菌が作る代替肉の原料である、マイコプロテインに関する研究です。マイコプロテインは、タンパク質と食物繊維を豊富に含み、日本では馴染みがないですが、ビーガンやベジタリアンが多い国では、マイコプロテインを使った商品が広く市販されているようです。彼らの研究では、赤肉や加工肉をマイコプロテインに置き換えることにより、腸内に有益な菌が増加したことから、肉の優れた代替品になることを示していました。世界の食糧問題の解決策として、我々は健康な家畜の育成に焦点を当てていますが、食肉の代替品を開発するという別の視点からの取り組みも非常に興味深いと感じました。
今回の学会が、自身にとって初めての口頭発表であったため、発表の仕方についてもとても勉強になりました。要点を的確にまとめ、ストーリーとして分かりやすく人に伝えることに加え、英語での発表ということで、発音や抑揚を重視し、聞く人を惹きつけるような発表を意識して練習しました。その結果、Best Oral Presentation Awardを受賞することができました。自身の研究が世界に認められたように感じ、大きな達成感を得られました。
今回、翠生農学振興会外国派遣研究者助成金事業に採択頂き心より感謝申し上げます。この経験を刺激としてさらに研究を発展させ、研究者として大きく成長したいと思います。
International Symposium on Ruminamt Phisiology 2024の参加報告
渡航期間:令和6年8月25日~令和6年8月31日
渡航場所:アメリカ イリノイ州 シカゴ
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
動物生命科学講座 動物生理科学分野
学年:博士課程前期2年
氏名:増田 航大
今回参加したInternational Symposium on Ruminant Physiology 2024では、"Difference of feeding concentrate- versus fermented forage-based starter diets in weaning dairy calves under intensive milk feeding program: rumen fermentation and microbiome"という題目で、8月25日にポスター発表を行いました。さらに、多くの世界的に著名な研究者の講演や最新研究のポスター発表を聴講し、議論することができました。
ポスター発表では、哺乳期および離乳期の子牛に通常とは異なる固形飼料を給餌した際のルーメン微生物叢の変化について発表しました。多くの研究者から貴重なフィードバックをいただき、特にルーメン微生物叢の群間比較解析において、より精度の高い解析ツールの存在を知りました。今後、この新しいツールの利用方法を学び、私の研究に応用する予定です。
講演では、データサイエンスから飼養評価、代謝機構の解明まで、反芻家畜生産における幅広いトピックについて学ぶことができました。特に印象に残ったのは、微生物叢と家畜の関連性を取り上げた"Holobiont"という概念です。Holobiontは、宿主とその微生物叢を一体として捉える考え方であり、飼料や環境といった外的要因がHolobiontにどのように影響を与えるかが紹介されました。この考え方は、私が行っている研究においても非常に有用であると感じました。今後、子牛に給餌する飼料の違いがルーメン微生物叢に及ぼす影響に加え、宿主である子牛自体への影響を包括的に調査していきたいと考えています。
ポスター発表見学では、細かい試験条件の比較や、海外の研究者との交流を通じて新たな知見を得ることができました。特に、私と同様の哺乳法を採用している研究者との議論では、哺乳条件の微妙な違いが成長や健康に与える影響についての視点を広げることができました。また、アメリカの研究機関が発表していた牛の肝臓の細菌叢解析についても興味深く感じました。反芻家畜での菌叢解析は通常、ルーメンや腸内で行われますが、肝臓での解析という新しいアプローチを私の研究にどう応用できるか検討する価値があると感じました。
今回の学会参加を通じて痛感したのは、語学力の不足です。ポスター発表やディスカッションにおいて、自分の意見を正確に伝えられない場面がありました。より深い議論や建設的なフィードバックを得るためには、語学力の向上が不可欠であると実感しました。今後は語学力の強化に力を入れ、次回の国際学会に備えたいと思います。
今回の学会で得た知見を、自身の研究に活かし、研究の質をさらに高めるよう努めます。また、語学力の向上を目指し、次回の国際的な場でより自信を持って発表やディスカッションに臨めるよう努力していきます。これからも研究を進めつつ、国際的な視野を広げ、学術的な成長に努めてまいります。
イタリアEAAP国際会議参加の報告書
渡航期間:令和6.8.29~9.17
渡航場所:イタリア(フィレンツェ)、オランダ
所属:東北大学農学研究科 生物生産科学専攻
動物生命科学講座 草地-動物生産生態学分野
学年:博士課程後期3年
氏名:但 申
東北大学農学研究科博士課程3年の但です。私はイタリアのフィレンツェで開催されたヨーロッパ畜産学会(EAAP:2024.9.1-9.5)に参加し、ポスター発表を行いました。フィレンツェは歴史を感じさせる中世的な石造りの建物が特徴的で、日本とは異なる雰囲気を感じました。
その前日(2024.8.30-31)に同じ会場で開催されたWAFL (Welfare Assessment at Farm Levels)学会にも参加し、視聴しました。主に家畜のウェルフェアに関する議題に関して学び、なかで肉牛に関わるテーマとして出荷のための家畜の長時間輸送における問題にまつわる研究が印象的でした。そして9月1日から2日間会場にポスターを掲載し、立ち止まって観てくれた方と質疑応答を行いました。私は研究で肉牛の横臥休息中の姿勢変化を調査し、その寝床である牛床の清掃による影響を調べ、どの姿勢が休息快適性と関わるのかについて明らかにしました。研究方法や結果に関して不明な点について尋ねてくれたおかげで、自分の研究を明確に伝える練習となりました。また結果に対する考察に関してもアドバイス(例えば特定の横臥姿勢は何を意味するのか)をもらえ、博論の参考ともなりました。色んな初対面の人と交流できるのは有意義なことですが、個人的に特に嬉しかったのが、ポスターのおかげでオランダ大学院でのかつての友人にも声かけてもらえ、思いがけず再会を果たしたことでした。彼らもまだ研究に打ち込んでいることを知り、励みとなりました。
ポスター発表以外でも学会全日程を通して他の研究者の口頭発表を視聴しました。畜産学にまつわる幅広いテーマであったため、ウシの行動学のみならず、他の動物種(ニワトリ、ブタ、ヤギなど)や異なる分野(IoTを活かしたスマート畜産や飼料など)を学べました。同時に聞いても理解できなかった部分が多く、自分の専門知識や語学力の不足さも痛感しました。学会では世界中の多岐にわたる興味深い研究を知り、感銘を受けたと同時に、自分自身の研究は小規模ですが、ウシの横臥中姿勢変化という誰もできない独特性を誇ることも実感したのも収穫でした。
学会主催の農場ツアーにも参加しました。バスで2時間移動し、トスカーナ地方の臨海部にある肉牛および豚の農家を見学しました。ウシはマレマーナ種で、豚はシンタ・セネーゼ種で、どちらも珍しい地方の固有種でした。その農場ではウシを林内に放牧させ、生態系との共生を図るアグロフォレストリーと呼ばれる農法を実践しました。放牧の研究も行われている東北大の研究室の研究とも共通することに気づきました。また豚は親子ともに広い敷地内で放し飼いで飼われていました。家畜は出荷時通常トラックでと畜場に運ばれますが、本農場では家畜の輸送時のストレスを最小限にするために、専用のトレーラーカーを用いた農場内と畜を実践していました。とても革新的だと感じました。見学を通じてイタリア農場の畜産システムの多様性とアニマルウェルフェアへの配慮を実感しました。
学会終了後オランダに渡り、修士課程で学んだ母校のワーゲニンゲン大学を訪問しました。そこで農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)のオランダ駐在員の奥田充さんと面談しました。自分は来年度農研機構に研究員として就職しますが、機構での研究や生活および在外派遣制度を利用しての将来の海外留学に関してお話を聞けました。
ISRP学会の参加報告書
渡航機関:2024年8月25日~8月30日
渡航場所:アメリカ(シカゴ)
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
動物生命科学講座 動物生理科学分野
学年:博士後期課程3年
氏名:李 厚承
8月25日から8月30日にかけて、私は貴財団の支援を受け、アメリカ・シカゴで開催されたInternational Symposium on Ruminant Physiologyに参加しました。本学会は5年に一度開催される反芻動物生理学の分野で最も重要かつ影響力のある国際会議の一つであり、世界各国から多くの研究者が集まりました。会場となったシカゴは、歴史的な建物や美しい湖に囲まれた街並みが特徴的で、特に夏の時期には多くの観光客が訪れる魅力的な都市です。学会期間中は、学術的な交流だけでなく、シカゴの文化や美しい景観も存分に堪能することができ、非常に有意義な時間を過ごしました。
今回の学会では、午前と午後にわたり様々な講演セッションが行われ、100名以上の研究者がポスター発表を行いました。私はその中で博士論文の一部をポスター発表の形で報告し、「異なる代用乳が子牛の生理学的変化に与える影響」というテーマを取り上げました。私の研究は日本和牛に関するものであり、欧米ではあまり見られない研究対象であったことから、聴衆の関心を大いに引きました。特に、日本和牛はその特有の肉質で知られており、その生理学的特性や飼育方法に関する研究は国際的にも注目されています。発表においては、図や写真を多く使用し、テキストを最小限に抑え、ストーリーを明確にすることで、わかりやすく、興味深い発表を心がけました。その結果、多くの研究者から高い評価を受け、具体的なフィードバックもいただくことができました。
また、University of VermontのDr. Costaの研究室の学生の一人が、私と同様に代用乳の違いによる生理的変化を研究しており、牛の品種は異なるものの、共通点や相違点について意見を交換することができました。彼の研究は、代用乳が子牛の成長や健康にどのような影響を与えるかを中心にしており、特に免疫機能や腸内環境に対する影響についての議論が深まりました。学会後もこの研究室とはメールでやり取りを続けており、データに関する議論が進んでいます。これにより、共同研究の機会が得られる可能性が高まり、私自身の学問的な視野が広がることを期待しています。さらに、この交流を通じて、日本の和牛飼育技術を他国に紹介し、国際的な共同研究の基盤を築くことも視野に入れています。
今回の学会参加を通じて、博士課程修了後のキャリアについても考える機会を得ました。学会場で数名の海外教授と直接お話しすることができ、ポスドクのポジションについて具体的な情報交換を行いました。特に、アメリカやヨーロッパの研究機関でのポストに関する情報や、現地での生活環境、研究資金の調達方法など、非常に実践的なアドバイスをいただきました。これにより、将来的に海外での研究機会が広がる可能性を見出すことができ、大変有意義な時間となりました。さらに、学会期間中に出会った他の研究者たちとの交流を通じて、新しい研究のアイデアや手法についても学ぶことができ、これが今後の研究活動において非常に貴重な糧となるでしょう。
研究者としてのキャリアを築くためには、国内外を問わず、さまざまな研究者と積極的に交流し、最新の研究動向を把握することが重要です。今回の学会参加を通じて、世界の第一線で活躍する研究者たちとのネットワークを構築することができたのは、ひとえに貴財団の支援のおかげであり、心から感謝しております。この貴重な経験を生かし、今後もさらに面白い研究を追求し、日本のみならず、世界に貢献できる研究者を目指していく所存です。ご支援いただき、誠にありがとうございました。
2nd International Conference Sains Tanah (ICOSATA) 2024の参加報告
渡航期間:2024年8月28日~2024年8月30日
渡航場所:Surakarta, Indonesia
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
植物生命科学講座 土壌立地学分野
学年:博士課程前期2年
氏名:JIAN CHUANZHEN
1. はじめに
今回の海外学会支援金を受けて、無事に第2回ICOSATAに参加できましたことを心より感謝申し上げます。本学会では、世界中の研究者が集まり、最新の研究成果や技術について議論する場として大変有意義な経験を得ることができました。本報告書では、参加した学会での発表内容、得られた成果、そして今後の研究における展望について報告させていただきます。
2. 発表内容
今回の学会では、「Effects Of Wood Ash Application On The Dynamics Of Various Elements In Soil」というテーマで英語口頭発表を行いました。本研究では、木質灰を肥料として使用することが植物の成長に与える影響、特に施肥後の土壌溶液中の重金属の化学形態及び元素動態の調査を行いました。研究の結果、木質灰投入が土壌溶液中の有害金属含量を低減し、作物の成長を促進する(特にKの肥料効果)一方で、土壌中の有機質土壌溶液への溶出に伴い、銅とクロムは有機質と有機錯体が生じたことが示されました。この研究は、木質灰が化学肥料の代替肥料として、農業生産コストを低減させ、持続可能な農業における新たな施肥方法としての可能性を示唆していますが、有害金属には多変性の性質があるため、木質灰が環境に与える潜在的な影響については、長期的な実験調査が必要です。
3. 学会での議論とフィードバック
発表後、多くの参加者から質問やコメントをいただきました。特に、インドネシアの大学の教授からは、木質灰投入が植物の成長を促進した原因について、土壌溶液中のカリウム含量が上昇したことや土壌のpHが改良された可能性について質問を受けました。この質問を受け、木質灰の代わりに他のアルカリ性資材を肥料として実験を行うことを検討しています。また、木質灰の成分や種類についても多くの質問が寄せられ、今後の研究においてより詳細な調査が必要だと感じました。さらに、他の研究者とのディスカッションを通じて、異なる土壌での木質灰施肥の効果や、木質灰の種類による肥料効果と元素動態の違いについても検討し、新しい実験予定ができました。
4. 学会で得た知見
本学会では、他の研究者による発表も非常に参考になりました。特に、土壌養分と作物に関する最新の研究動向や、新技術の開発に関する講演は非常に有益でした。これらの知見は、私の今後の研究に大きな影響を与えると期待されます。例えば、Yiyi Sulamanによる「Calibration of portable soil nutrient detector on irrigated and rainfed soils, Java, Indonesia」の研究では、現地土壌養分検出器と実験室で測定した土壌データには顕著な線形関係があることが示されており、この方法を参考にすることで、私の使用する土壌の養分含量やpHをより迅速に把握できる可能性があります。ただし、この発表では得られた養分データが有効養分か総養分かについては言及がなかったため、さらに確認する必要があります。
5. 今後の研究に向けて
今回の学会参加を通じて、英語でのコミュニケーション、会議の運営、そして国際学会の進行に関する多くの経験を得ることができまして、世界中の研究者と知り合い、今後の共同研究や情報交換の可能性が広がりました。今後は、得られたフィードバックを基に研究の精度をさらに高めることを目指します。また、学会で得た新たな知見やネットワークを活用し、研究科内でのワークショップや国際学生研究交流会などの活動を組織し、学術的な表現能力やプレゼンテーション能力を向上させ、将来のキャリアの基盤を築くことを目指します。
6. おわりに
最後に、今回の学会参加にあたり、多大なるご支援を賜りましたことに改めて御礼申し上げます。この貴重な機会を最大限に活かし、今後も精力的に研究を続けて、積極的に学会に参加し、先進的な研究成果を交流し、自身の実験に役立て、社会に貢献したいと考えています。
第2回 ICOSATA (International Conference of Sains Tanah : Soil Science, Agriculture and Environment)への参加報告
渡航期間:2024年8月26日~2024年9月2日
渡航場所:インドネシア スラカルタ市
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
植物生命科学講座 土壌立地学分野
学年:博士課程前期2年
氏名:柴田隼太郎
学会の詳細
今回、私はインドネシアのスラカルタ市で開催された「第2回 ICOSATA (International Conference of Sains Tanah : Soil Science, Agriculture and Environment)」に参加しました。本学会は、2024年8月28日から30日の3日間にわたり、Sebelas Maret大学農学部土壌科学科が協力し、Solo Paragon Hotel & Residencesにて開催されました。この国際土壌科学学会は、分野や所属、国境を越えて、土壌科学に関する最新の学術・技術動向を共有し、新たな研究成果について発表や意見交換が行われました。学会はオフラインとオンラインのハイブリッド形式で、特に現地参加者が多く、非常に活気に満ちた国際会議となりました。
発表の概要
私は今回、「複数年にわたるゼロ価鉄が米粒および土壌溶液中のヒ素濃度に及ぼす影響の研究 (Impact of Zero-Valent Iron on Arsenic Levels in Rice Grains and Soil Solution: A Multi-Year Study)」というテーマで口頭発表を行いました。この研究は、ヒ素汚染が深刻な課題となっている水田において、ゼロ価鉄を使用することでヒ素濃度を抑制し、農産物の安全性を確保する方法を探るものです。
発表はすべて英語で行い、初めての国際学会であることから、多くの準備が必要でした。特に、専門的な用語を正確に伝えることや、質問に的確に答えるスキルが求められました。実際、質疑応答ではインドネシアの研究者から私が使用したゼロ価鉄の資材や処理方法に関して詳細な質問がありましたが、具体的な数値や手法を説明することで理解を深めてもらうことができました。
語彙や発音に関しては、まだ改善の余地があると感じましたが、非常に貴重な経験となりました。さらに、他の参加者の発表からも多くの刺激を受けました。特に、各国で行われている様々なフィールドワークや実験、独自の研究手法について学ぶことができ、自分の研究に新しい視点を得ることができました。特に、アジア各国の水田農業における同様の問題に関するディスカッションができたことは、私にとって大変貴重な経験となりました。他国の研究者からは、今後の研究を進めていくためのアドバイスや新しいアプローチの提案をいただき、自身の研究をさらに発展させるためのヒントを多く得ることができました。
学会終了後
学会の3日目には、スラカルタ市近郊にあるDayu MuseumやSangiran Museumへのフィールドトリップに参加しました。このフィールドトリップでは、インドネシアの地質形成過程や、過去の生物の化石について学ぶことができました。現地の案内人による分かりやすい説明を通じて、地質学と生態系の変遷について深く理解することができ、土壌科学の研究における視野が広がりました。特に、インドネシアが有する多様な地質環境と農業の関連性について知ることで、現地の課題にどのように応用できるかを考える良い機会となりました。残念ながら時間に限りがあったため、すべての展示をじっくり見ることはできませんでしたが、インドネシアの自然環境や歴史について多くを学び、非常に有意義な体験となりました。フィールドワークは、理論的な知識と実地のつながりを確認する絶好の機会であり、今後の研究活動に活かせる洞察を得ることができました。
総括
今回の海外出張は、私にとって非常に貴重な経験となりました。初めての国際学会での発表や、異なる文化圏での生活体験を通じて、自分の成長を実感しました。特に、国際的な視野で土壌科学や農業の課題に取り組む意義を強く感じ、今後もグローバルな観点から研究を進めていきたいという思いが一層強まりました。また、他国の研究者との意見交換を通じて、自身の研究を見直し、改善すべき点や新たな視点を取り入れることができたことは、今後の研究活動にとって大きな収穫です。
さいごに
最後に、今回の国際会議への参加を支援していただいた翠生農学振興会の皆様には、心から感謝申し上げます。皆様のご支援があったからこそ、このような充実した経験を積むことができました。今後も、今回学んだ知識や経験を基に、研究活動を通じて社会に貢献できるよう努力してまいります。
Asperfest21及びECFG17参加報告
渡航期間:令和7.2.28~3.7
渡航場所:アイルランド ダブリン
所属:東北大学大学院農学研究科 農芸化学専攻
生物化学講座 真核微生物機能学分野
学年:博士後期課程1年
氏名:横山将己
私は2025年3月1日から3月5日にかけて、アイルランド・ダブリンで開催された21st International Aspergillus Meeting (Asperfest 21) および 17th European Conference on Fungal Genetics (ECFG 17) に参加し、最新の研究成果を発表しました。ECFGは酵母から糸状菌に至るまで幅広い真菌の遺伝学を対象とした国際会議であり、AsperfestはAspergillus属に特化したサテライトワークショップとして開催されました。私は両会議においてポスター発表を行ったほか、Asperfest21では要旨の選考を経て、招待発表として口頭発表の機会を得ました。
開催地のアイルランドはイギリスの隣に位置する島国であり、ダブリンは3月上旬ながらも暖流の影響で比較的穏やかな気候でした。日中はダウンジャケットを着用せずに過ごせるほどの気温で、快適に滞在できました。ダブリン市内は近代的な都市の賑わいを見せる一方で、中心部には歴史ある石造りの建築物が立ち並び、落ち着いた雰囲気が感じられる街でした。滞在中の空き時間には市街を散策し、ダブリン城やアイルランド国立美術館、ギネスビールの工場を訪れ、街の歴史や文化に触れることができました。
本学会では、麹菌Aspergillus oryzaeにおける小胞体ストレス応答機構について発表しました。小胞体ストレスは、細胞がタンパク質を分泌・生産する過程で負荷がかかることで引き起こされ、酵母からヒトに至るまで広く保存された現象です。特に近年、糸状菌においては初めて報告された小胞体ストレス下における分泌タンパク質mRNAの分解機構に着目し、その詳細な解析結果と今後の応用の可能性について報告しました。
3月1日に現地入りし、その夜にはAsperfestのオープニングセレモニーが開催されました。翌2日の午前には口頭発表を実施しましたが、国内学会よりも発表時間が長く、さらに英語での発表であったため、非常に難易度の高い挑戦となりました。渡航前から入念に準備したものの、発表中に言葉が詰まる場面もあり、なんとか終えることはできたものの、質疑応答では十分に対応できず、課題の残る発表となりました。
しかし、その日の午後のポスターセッションでは、口頭発表を聞いた多くの参加者が関心を寄せ、私のポスターを訪れました。質疑応答では至らない点はあったものの、口頭発表を通じて研究の意図を伝えられたと実感し、活発な議論を交わすことができました。また、参加者がどのような点に関心を持ったのかを詳しく聞くことで、自身の研究の立ち位置を再認識し、今後の方針を考える貴重な機会となりました。
3日目からはECFGの本会がスタートし、私は5日目にもAsperfestと同様の内容でポスター発表を行いました。そこでは、国内の学会ではあまりできないような、真菌と小胞体ストレス応答機構に関する詳しい議論を行うことができました。その中で、現在の麹菌Aspergillus oryzaeを用いる意義やインパクトを改めて実感し、今後のモチベーションにつながりました。
本学会を通して、専門分野に対する理解がより深まり、今後の方針や着想を得ることができました。また、国際学会の場で招待され口頭発表を行うという、滅多に経験できない非常に貴重な機会を頂きました。今回の経験を通して、英語力や研究の発信力、デザイン力に課題を発見することができたとともに、自らの研究を客観的に見る機会にもなりました。この経験を活かし、今後の研究活動や日々の勉学に励んでいきたいと思います。
今回の学会に参加するにあたり、渡航費を援助して頂いた公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
令和5年度 外国派遣研究者報告
14th International Polychaete Conference(IPC14)参加報告
渡航期間:2023年6月30日~7月9日
所属:東北大学農学研究科 生物生産科学専攻
水圏生産科学講座 生物海洋学分野
学年:博士課程前期 2 年
氏名:北島周
私は2023年の7月3日から7日にかけて、南アフリカ共和国のステレンボッシュにおいて開催された、14th International Polychaete Conference(IPC)に参加しました。そこで「Long-term community dynamics of benthic polychaetes in the innermost part of Onagawa Bay, northeastern Japan from 2007 to 2022」というタイトルで私はポスター発表を行いました。海外への渡航の経験がほとんどない私にとって、日本から遠く離れた南アフリカ共和国に一週間近く滞在し国際学会に参加したということは、研究活動のみならず今後の人生においても大きな影響を与えるような体験でした。
南アフリカ共和国は南半球に位置しているため季節は冬でしたが、少し肌寒いくらいで日本と比べて過ごしやすい時期でした。雨季でもあり現地に到着する前日までは記録的な大雨や河川の氾濫もあったらしいのですが、学会の開催期間は概ね天候にも恵まれステレンボッシュ周辺の美しい景色を眺めることもできました。
IPCはこれまで3年おきに開催されてきましたが、今回はコロナウイルスのパンデミックを経て4年ぶりの開催でした。世界中の多毛類の研究者たちが4年ぶりの再会を喜んでおり、多毛類という分野におけるこれまで長く構築してきた研究者同士のネットワークを感じることができました。またそこに私のような新しい参加者が入ることで、ネットワークがより複雑に紡がれていくことを体感しました。
普段の日本での日常生活において多毛類に関する話題が会話にあがることはほぼありません。多毛類は主に水域の底質などに生息する、普通に生活していては直接関わることが少ない生物群です。しかし、このことをテーマに研究している方々が世界中から集まり、住む国や文化に関係なく共通のテーマで会話ができたことはとても貴重な経験でした。同時にそのような場で英語を十分に使いこなす能力の重要性と自分のその能力の無さを痛感しました。今後は、まずは英語を十分に聞き取り、そして相手に伝わるように伝えることができることを目指して英語学習を行っていきたいです。加えて、まったくの他者に対してオープンになりきれない自分の内面の障壁も感じました。自ら積極的に話しかけ、仲を深めていくことは日本語であっても私の苦手としていることだと再認識しました。学会期間中の様々な交流を通して少しはその壁を崩すことができたように感じるので、これからの日本の日々の生活でも改善していきたいです。そして、将来またこのような機会に恵まれた際には今回よりも一層交流ができるようになりたいです。
研究内容や発表に関しても様々な発見がありました。1つはポスター発表やディスカッションを通じて私の研究の面白い点を客観的に理解できたことです。私のポスターをご覧になってくださった方々とお話すると、長期的で大量の群集のデータを扱っている点を評価してくださることが多かったです。これからもこの点を発展させられるように、本学会で得た新しい観点なども活かしていきたいと強く感じました。加えて、発表のやり方にも学びがありました。今回私は口頭発表を行っていませんが他の参加者のプレゼンテーションを聞いていると、笑いが起きていることも多く非常に和やかな雰囲気でした。分かりやすく研究内容を伝えることは当然大切ですが、ユーモアを交えたり、楽しそうにプレゼンテーションを行うということも聞き手の理解のしやすさに影響を与えることを感じました。
最後になりましたが、今回助成金を頂戴しました公益財団法人翠生農学振興会に厚く御礼申し上げます。南アフリカ共和国という日本から非常に遠く離れた地で学会に参加できたということは大変貴重な経験でした。そして今後の研究への学びや気づき、モチベーションを得ることができました。この経験を活かし、今後より一層研究活動に邁進してきます。
6th International Rice Congress参加報告
渡航期間:6日間 2023年10月15日~10月20日
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
植物生命科学講座 環境適応植物工学分野
学年:博士後期課程2年
氏名:高塚歩
2023年10月16日から19日にかけて、フィリピンのマニラにあるフィリピン国際会議場にて開催された6th International Rice Congress / International Rice Congress 2023 (IRC2023)に参加した。本会は4年に一度開催されており、イネを対象とした研究者が研究分野を問わず世界中から参加する大変大規模な国際会議である。私も、学生の身分で参加できるのは今年が最後ということで、是が非でも参加したいと考えていた。今回、翠生農学振興会にご支援をいただいて本会議に参加することができ、大変貴重な経験をすることができた。
実はフィリピンに到着後、体調を崩してしまい、休養に徹した日もあるため4日間全日参加することは叶わなかった。疲労が蓄積していた自覚はあったが、実際に学会に参加できなくなるとやるせなく、ご支援もいただいているのに申し訳ないと思った。今後はこのようなことがないように、まずは体調管理を第一に、学会に集中して臨めるようにしたい。
IRC2023の研究者たちは、イネ材料の研究者といっても、生理学や生化学を駆使した基礎科学というよりは、食料生産を念頭におく農学研究者がほとんどであった。私は遺伝学、育種学をメインとしているが、どちらかというと基礎科学分野で研究を行っているため、実用・応用的思考を持った彼らの熱意はなかなかに新鮮であった。同時に、自身の研究も農業生産の現場に還元したいという思いと、農学は実学であるべきという考えを再認識した。全体的な印象として、AIや機械制御を利用する生産現場におけるデジタル化の推進や、種子を直接田畑に播種することで持続可能かつ効率的な生産・開発を目指す栽培体系の提案などに関する報告が多いと感じた。遺伝子解析により個体レベルでイネ栽培を制御しようという取り組みをしている私は、本会議の報告を聞いて研究成果を生産現場に直に適用できそうな分、安定した戦略を立てるのが大変そうだと感じた。お互いの分野でコラボレーションをすることで、安定かつ効果的な生産技術を生み出すことができそうだと想像した。
私の研究発表を含むセッションでは、本会議では数少ない遺伝学的なアプローチでイネの収量を増加させる研究報告が多かった。自身の研究内容と非常に近かったが、それでも彼らは技術応用を目指してさらに数歩踏み込み、各国に適した品種の探索などを行っていた。その研究は予想どおり、従来のイネ系統の遺伝的背景を利用した育種体系中心としたものであった。日本の当該分野とは毛色が異なり、自身の研究内容がさらに基礎科学寄りに感じられ、彼らの興味のある内容であるのか不安になった。それでも、口頭発表後はいくつか質問をしていただき、議論は盛り上がっていたのではないかと自負している。議論の内容としては、育種利用を目指した我々の新規イネ系統について、実際に使えそうなのかどうかというような現場利用を意識したものがやはり多かった。
口頭発表を通して、研究内容を振り返ることもできたが、同じくらい自身の英語でのコミュニケーション能力の低さを実感できた。質疑応答では正確に質問の意図を理解し、満足にこちらの考えを伝えることもできずにもどかしかった。終了後質問していただいた方、司会の方と話してようやく議論が進んだという印象だ。彼らは励ましてくれたが、非常に不甲斐ない思いである。世界の研究者と交流を深める機会であったが十分な情報発信ができず後悔が残る。
総括すると、トラブルもあったが世界の研究者のイネ科学に対する興味を知ることができ、非常に有意義な国際会議であった。新たな知識やトレンドを知ることができたことも大きいが、何より自身の研究課題のイネ科学研究における立ち位置を把握できたことが1番の収穫だと考えている。正直なところ、マイナーな研究課題であり、生産現場からすると早急の必要性はないものかもしれないと感じる。今一度、私の興味・経験を基にアプローチの仕方を考えて、どのようにして農業生産に貢献できるか再考する機会としたい。博士課程学生のタイミングで参加できたこともひとつ貴重であった。今後も世界的な課題やトレンドを意識し、海外での研究活動も視野に入れて勉強していきたい。
SCESAP Biodiversity Symposium (口頭発表) の参加報告書
渡航期間:2023/10/26 ~ 2023/10/31
所属:東北大学大学院農学研究科
生物生産科学専攻 水圏植物生態学分野
学年:博士課程前期 2 年
氏名:堀江 莉那
私は 2023 年 10 月 26 日から 31 日まで、台湾の高雄市にある国立中山大学にて開催された SCESAP International Biodiversity Symposium に参加いたしました。感染症による制限が緩和されたため、今回初めて対面の学会を経験することができました。
この学会に参加するにあたり、発表や他研究者からの学び以外に自分の英語力を試すという目的を持っていました。結果、どちらの目標も達成することができました。
この学会はアジア圏の研究者や学生が主として集まるもので、マレーシアやタイ、フィリピンなど暖かい地域からの参加が多くありました。そのため、サンゴの育成や保護に対しての研究が多くみられました。サンゴは暖かい地域での重要な観光資源であり、そのような日本では珍しい研究動機がとても新鮮でした。
私の発表は 2 日目の午後に口頭で行いました。大型海藻の光の色と栄養に対する反応という内容で今までの成果を発表しました。前述の通り海藻の研究発表は少数派だったので不安でしたが、興味を持って聞いてくださった方々のおかげで、問題なく話し終えることができました。これからの研究に取り入れたい案を頂くことができた一方、質問への受け答え中に勉強不足を改めて感じました。
他の参加者の口頭及びポスター発表からは、新しい知識や考え方と聞き手の興味を引くような発表の仕方を学ぶことができました。自身のテーマに似ているという理由から特に興味を持ったのは、サンゴに当てる光の色を変えてサンゴへの影響を調べるという研究を紹介したポスター発表です。これからデータを扱う上で有用である統計や、どのように論文を組み立てるかなどを学びました。学会を通して、ポスターを担当された方とお会いすることができなかったことが心残りです。また、口頭発表をされていた中に、特に聴衆の注意を惹くことが上手なマレーシアの学生がいらっしゃいました。話し方の緩急やスライドの構成で飽きさせないことはもちろん、間に挟む雑談で研究対象を身近に感じさせ、自身の研究の有用性を伝えていました。今までに見たことがない程研究の魅力を伝えることが上手く、自身の至らなさを実感すると共に目指すべきものを得られました。
さらに今回、学会後の交流も初めて経験することができました。日本人学生との交流では他大学の研究では何に注目しているかなど研究の様子を知ることができました。英語を用いた交流について、私は特に北京とフィリピン出身の方々と多くの時間を過ごしました。北京出身の方は台湾の大学で学ばれている方で、現地でおすすめのお店などを教えてくださいました。フィリピン出身の学生とは地元の文化について教え合い、先生からは新しい英語の表現を学びました。今回の台湾は私にとって、学部入学直前に参加した語学研修以来の海外でした。当時は伝えたいことを考えて、少しの会話をすることしかできませんでした。その後環境に恵まれ、研究室では留学生の方々と多くの時間を過ごし、感染症流行下にも関わらず英語に触れる機会を得ることができました。今回、応答のスピードが上がっていたことから語学力の成長を実感できました。一方語彙や発音について改善しなければならないことも多く、これからの課題となりました。
最後に、本学会への参加にあたり助成を賜りました翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。一度諦めた中、このような成果を持ち帰ることができたのは貴会のご支援あってのことでした。今回得た自信と認識できた不足点をもとに、これから学習を続けていく所存です。
SCESAP Biodiversity Symposium, Kaohsiung 2023の参加報告書
渡航期間:2023 年 10 月 26 日~ 11 月 2 日
所属:東北大学大学院農学研究科
生物生産科学専攻水圏植物生態学分野
学年:博士課程前期 1 年
氏名:金田 貴聖
私は2023年10月27日から31日にかけて台湾の高雄市で開催されました、SCESAP Biodiversity Symposium, Kaohsiung 2023に参加し、「Effects of field illumination with blue light on the aquaculture of Undaria pinnatifida」というテーマでポスター発表を行いました。本学会は沿岸の生態系と生物多様性に焦点を当てた学会となっており、アジア各国から参加者が集まっていました。
ポスター発表は2日間、口頭発表間のティーブレイクに行われました。今回の学会が私自身初めての国際学会でしたが休憩時間を兼ねていることもあり、比較的リラックスして発表することが出来ました。また、他の方のポスター発表、口頭発表を拝聴する時間も多くあり、見やすいポスターや分かりやすい、聞きやすい発表について学ぶことが出来ました。魅力的な発表をされた方はどなたも、明るく、抑揚をつけて話し、自信が感じられました。そして初めて見る図や挿絵の表現にも感嘆していたのですが、同時に現段階の自らの能力不足について痛感しました。ポスター自体もさることながらなんともしどろもどろな発表をしてしまっていました。初めての国際学会ということを差し引いても劣悪なものだったと思いますが、その分多くのことを吸収することが出来、有意義な時間を過ごすことができたと思っています。伸びしろです。
最も痛感したのは私自身の英語力の低さです。せっかく質問を頂いても何度も聞き返し、聞き取れても適切なフレーズで満足に答えることが出来ませんでした。きちんと質問に応えられていたのか、正直今も分かりません。雑談を含め様々な方と積極的に交流を行いましたが、伝えたいことを伝えられないもどかしさ、聞き取れない時の置いてかれている感は拭えませんでした。元々自分の英語のレベルを知りたいという思いもあり参加した学会でしたが、一種の挫折を味わったように感じます。ただマイナスなことだけではなく、何度か聞き返せばある程度理解できたこと、英語でジョークを言い合い笑いあえたこと、海外の方とインスタ交換まで漕ぎつけたことはなんとかなるという自信にも繋がっています。今回の経験から、ポスター、口頭での魅力的な発表方法、自分の英語レベルを確認できたこと、台湾という異文化を体験できたことはとても大きな財産になりました。
最後になりますが、今回の国際学会に参加するにあたり、渡航費用を助成して頂いた翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。この貴重な経験を今後の研究生活や人生に生かすよう努め、精進してまいります。
SCESAP 参加報告
渡航期間:2023年10月26日 ~ 11月1日
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
水圏生産科学講座 水圏植物生態学分野
学年:博士課程前期1年
氏名:新津彩花
私は、2023年10月27日から10月31日にかけて、台湾の高雄で開催されたSCESAPに参加し、口頭発表を行いました。SCESAPとは、Society for Coastal Ecosystems Studies – Asia Pacificの略であり、学会ではアジア諸国の人々が集まって海洋の生物多様性に関する研究の内容共有を行いました。近年、コロナウイルス蔓延の影響を受けて対面での交流の機会がなかなか得られなかったことから、各人が対面開催のありがたみを持って学会に臨んでいたように感じました。
私は学部4年次より、岩手県陸前高田市に位置する広田湾で海藻の種組成の調査を行っています。学会では、広田湾における現在の海藻の種組成と過去からの変化、種組成を決定付ける環境要因について発表しました。学会発表は今回で二度目でしたが、一度目はコロナウイルスの影響によりオンラインでの開催でした。また、前回は国内の学会であったことから、今回が初めての対面学会かつ国際学会となりました。そのため、発表時に緊張したことはもちろん、その他の交流の時間における英語でのコミュニケーションには苦労しました。しかし、こちらが身振り手振りを交えながら伝えたいという意志を示すと、どの参加者も熱心に聞いてくれました。発表は、緊張のため平常心を保つことができなかったこともあり、少々不本意な結果となりました。しかし、海藻を専門とする先生方が私の研究に興味を持ってくださり、今後の研究に関して助言をいただくことができ、参加して良かったと感じました。また、今回の失敗経験は、次回の学会発表をより良いものにするためのモチベーションとなりました。
今回の学会では、食事会や野外プログラムを企画していただいており、他の参加者との交流を深めることができました。食事会ではフィリピンの研究者グループや国立中山大学の学生とお話しました。研究の話に限らずお互いの文化や生活等について、お話することができ、大変楽しい時間を過ごすことができました。また、九州大学の学生・教授とも交流を深めることができ、研究のネットワークを広げることができました。
今回の国際学会で学んだことは大きく2点あります。一つ目は、他国の研究者のプレゼンテーションスキルの高さです。スライドやストーリーは筋が通っていて誰でも分かりやすい内容となっており、かなり作り込まれていると感じました。そして何より、活き活きとした話し方から研究に対する熱意が伝わり、思わず聴衆が引き込まれてしまうような発表でした。同時に、他国の研究者の英語力の高さを痛感しました。母語が英語でない参加者でも流暢な英語を話し、英語でのディスカッションを難なくこなしていました。これらのことから、自身の今後の課題は英語でのディスカッション力の向上と発表の魅せ方の工夫であると感じました。二つ目は、専門外の研究対象に関する知識です。今回の学会は南方地域出身の参加者が多かったことから、海藻よりもサンゴに関する研究が多く見られました。これらの発表から、サンゴが生み出す生態系やサンゴ礁造成の現状・課題など、サンゴに関する知識を得ることができました。私は、今まで海藻のみに焦点を当てて情報収集を行ってきたため、この経験は自身の知見を広げるきっかけとなりました。
このように、SCESAPに参加したことで自身の世界が広がったことはもちろん、研究に対する意欲が高まったと感じています。最後になりましたが、今回の国際学会に参加するにあたり、渡航費用を助成していただいた翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。この度の海外渡航で得た経験や知識を、今後の研究活動に活かし更なる成長を遂げるため、より一層精進してまいります。
32nd Fungal Genetics Conferenceの参加報告
渡航期間:2024年3月9日~2024年3月19日
渡航場所:米国、アシロマ
所属:東北大学大学院農学研究科 農芸化学専攻
生物化学講座 真核微生物機能学
学年:博士課程後期2年
氏名:ジョン ダミン
翠生農学振興会の助成金のおかげでアメリカのアシロマで開催された第32回Fungal Genetics Conference (FGC)およびコウジ関連内容が集まっているAsperfestに参加しました。この 学会は、菌類に関する最新の研究や発展について議論する貴重な機会であり、世界中から多くの研究者が集い、熱心な議論が交わされました。私の研究にとっても大変有益な経験となりました。
まず、Asperfestでは、コウジを利用する多くの研究者に会うことができました。日本人の研究者も多く見られ、日本でのコウジ関連研究の深さを改めて認識することができました。本会場では、糖輸送体についてプログラミングを通じて広範囲に予測する研究発表を聞いたり、未来の燃料産業のためのキシロース輸送体に関する研究についてポスターを見たりしました。現在、イソマルトース糖輸送体について研究しているので、とても興味がありました。従って輸送体に関する研究について多くの知識を得ることができ、現在の研究に大いに役立ちました。特に、自身の研究に関するポスター発表を通じて、様々な国籍の研究者とのディスカッションを行い、新しい視点やアイデアを得ることができました。さらに、学生優秀ポスターに選ばれ、200ドルの賞金を受賞することができました。予想外の喜びであり、とても誇りに思っています。
Asperfest以降、FGCではコウジ以外にもFusarium、Magnaporthe、Candidaなど、さまざまなカビを用いた研究内容について学ぶ機会がありました。菌類遺伝学に関する幅広いトピックに触れることができ、特にプログラミングを利用した予測分析ツールが多用されていることに興味を持ちました。これらのツールを自身の研究にも応用してみたいと考えています。これに関して、学会期間中にはワークショップやゼミも開催され、最新の技術や手法について学ぶことができました。 プログラミングを頻繁に使ってみなかったので、わかりにくかったのですが、新しいツールをたくさん見つけて楽しかったです。特に、本人の研究によく参考して利用するFungiDBの運営チームや開発者と会い、より詳細な利用方法や今後の開発方向について聞くことができた点は、他の学会では体験できない利点であったと考えます。
最後に、FGCでも自身の研究についてポスターセッションで発表する機会を得て、他の研究者との交流を通じて、新しいアイデアや知識を得ることができました。Asperfestと比べても人数が多く、多様性があり、他者の分野を尊重して理解しようとする姿勢が印象的でした。日本とは異なり、特に興味深かったのは、夕食後に自由に進行するポスターセッションという点です。朝から様々なワークショップやゼミに参加した後も 疲れを感じることなく飲み物やビールを楽しみながら自由に質問することが 続き、毎晩遅くまで続きました。これは研究に没頭し、またそれについて議論することを心から楽しんでいる人々が集まるからこそ可能だと感じました。私も今後、本人の研究について情熱的に議論しながら、より楽しむことを望んでいます。
まとめると、アシロマの学会に参加を通じて、次世代シーケンシング技術の進展や生物情報学の応用に関する情報を得ることができ、さまざまな研究者と議論が交わされました。これらの貴重な経験は今後の研究に大きな影響を与えるものと確信しています。その上、英語でのコミュニケーションは簡単ではありませんでしたが、様々な国の人々との対話、そしてアメリカ文化体験を通じて、個人的にもより広い視野を持つようになる経験でした。
令和4年度 外国派遣研究者報告
ISCE-APACE 3rd Joint Meeting参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
生物生産科学専攻専攻 応用昆虫学分野
学年:博士課程後期1年生
氏名:千葉 勇輝
私は2022年8月8日から8月12日まで、マレーシアのクアラルンプールで開催されたISCE-APACE 3rd Joint Meetingに参加し、本国際会議において口頭発表を行いました。今回参加した国際会議は、Asia-Pacifi c Association of Chemical Ecologists (APACE)およびInternational Society ofChemical Ecology(ISCE)という2つの化学生態学分野の国際学会によって共同で開催されました。昨今のコロナウイルス蔓延の影響も踏まえ、オンサイトとオンライン併用の学会となりましたが、約270題の演題が発表されオンサイトでの参加者も多くいたため、大いに盛り上がった国際会議となりました。
私は、コウチュウ目ハムシ科昆虫における体表ワックスの情報化学物質としての機能とその受容機構における味覚受容器の重要性について口頭発表を行いました。学会発表は初めての経験ではありませんが、以前発表した全ての学会発表がコロナウイルスの影響によりオンラインでの発表でしたので、本国際会議が私にとって初めてのオンサイトでの学会発表となりました。発表は少し緊張しましたが、幾度となく実施した発表練習のおかげで簡潔かつ明瞭な発表を行うことができました。また、私は本国際会議にてStudent Travel Awardを頂戴し、Future Generations of ChemicalEcologistsというシンポジウムで発表を行うことができたため、幸運にも多くの方が発表を聴講してくださいました。質疑応答では4名の方から質問を頂き、いずれも活発なディスカッションができました。さらに、発表後も多くの方からお声がけいただき、研究に関する意見交換を行うことができました。発表前は、自分の研究に興味を抱いてくれる方がどれだけいるか不安に感じたこともありましたが、予想を上回る反響が得られ、今後も研究を精力的に進めていくための糧にすることができたと感じています。
また、本国際会議を通して、他の参加者らの研究発表から大いに刺激を受けることができました。多大な労力を要するフィールドワークや私が知らない解析法を駆使した研究など、魅力的な研究発表を多く聴講することができました。その中には、自分の研究に生かせそうな知見を得られた発表もあり、研究をさらに発展させていくうえでも本国際会議は有意義なものでした。また、国際会議開催中に出会った研究者の中には連絡先を交換させていただいた方もいるので、国際共同研究なども視野に入れたグローバルな研究活動を展開できたらと考えています。
今回のマレーシアへの渡航は、私の人生で初めての東南アジアへの渡航でした。国際会議開催期間中は、合間を縫っていくつかの観光地にも赴くことができました。訪問した全ての場所で、日本とは全く異なる風土や文化、食、人々の価値観に触れることができ、日本では得がたい多くの経験を得ることができました。また、現在ではコロナウイルス蔓延に伴う渡航制限が緩和されたとはいえ、ワクチン接種証明に関する手続きやマレーシアの病院におけるPCR検査の実施など、多くの手続きが必要となる中での海外出張でした。また、単身での海外出張ということもあり、不安に感じていた点もありましたが、順調な海外出張にすることができました。国際会議への参加を通して研究者としてだけでなく、人間的にも成長できたと自負しております。最後となりますが、国際会議への参加を支援していただいた翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。皆様のご支援なくして実りある海外出張はなしえませんでした。今回の海外出張で得た経験や知識などを、今後の研究生活や人生に生かすよう努める所存です。
19th International Aspergillus Meetingおよび16th European Conference on Fungal Genetics参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
農芸科学専攻 応用微生物学分野
学年:博士課程前期1年生
氏名:薄田 隼弥
私は2023年3月3日から3月10日にかけて,オーストリアのインスブルックにて開催されました19th International Aspergillus Meeting(Asperfest 16) および16th European Conference on Fungal Genetics (ECFG 16) に参加いたしました.私は両会議にてポスター発表を実施した他,Asperfest 19 におきましては口頭発表にも招待され,発表いたしました.
旅程は本会であるカビ分子生物学会ECFGのサテライトワークショップであるAsperfestの参加より始まり,これはSoWi Universityにて開催されました.ワークショップとなりながらもポスター演題数は100弱,と日本国内で参加する同分野の学会レベルに匹敵するもので,糸状菌Aspergillus属に関わる多くの内容が議論される大変内容の濃い会議でした.私は1日目にAspergillus oryzaeの培養工学に関する内容のポスター発表を,2日目に同内容にて口頭発表を実施いたしました.ポスター発表では,他大学の研究グループから鋭い質問をいただいたほか,糸状菌培養に関わる高い技術を持つ企業の研究者と,国内学会ではできないような詳細な議論をすることができ,改めて海外の研究活動のレベルの高さと情報収集の卓越さを実感することとなりました.本ポスター発表につきましては,スポンサー企業の選出による学生ポスター賞を受賞させていただきました.2日目に行われた口頭
発表では,私は要旨内容から選抜されての招待口頭発表という区分で発表させていただきました.学会のメインテーマはカビの分子生物学であり.私の研究は培養工学寄りということでテーマに若干の解離があるかと思われましたが,質疑応答では興味を持ったご意見を多数いただき,また自身とは異なる視点の質問も受けたことで自身の研究に対する視野が広がる貴重な経験となりました.口頭発表終了後にホテルへ戻る帰路でも,他国の参加者から発表内容に関してご質問を受け,多くの方に関心を持っていただけたことと感じました.
3日目以降はCongress InnsbruckにてECFG大会が始まり,本会では私はAsperfestと同様の内容にてポスター発表を実施いたしました.本ポスター発表では,他国で糸状菌培養を研究される研究者とも議論することができ,研究室実務レベルのトライアンドエラーなど対面学会ならではの現実的な議論をさせていただきました.また,先日までのAsperfestにて私の口頭発表に興味を持ってくださった方から,もう一度詳しく発表してほしいというようなご要望もあり,口頭発表にて多くの研究者に私の研究をアピールすることができたのではと実感できました.
また,本会では日本の他大学より参加された研究グループの皆さんとも交流を深めることができました.これまでの国内学会ではコロナ禍によりオンライン開催が多く,見ず知らずで終わってしまいがちでしたが,国際学会の対面の場にて糸状菌研究の議論ができ,大変有意義な時間となりました.
最後になりましたが,本会議への参加にあたりまして助成賜りました貴財団へ厚く御礼申し上げます.ポスター賞受賞をはじめ多くの大変貴重な経験をさせていただく機会となり,大学院での研究過程において非常に重要なステップアップとなりました.重ねて御礼申し上げるとともに,今後も研究活動へ一層邁進してまいります.
国際学会参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
農芸科学専攻 応用微生物学分野
学年:博士課程前期1年生
氏名:高橋 尚央
私は2023年3月4日から3月5日にかけて開催された19th International Aspergillus Meeting(Asperfest19)と、2023年3月6日から3月8日にかけて開催された16th European Conference on Fungal Genetics (ECFG16)に参加し、発表を行いました。ECFG16は世界最大規模の真菌遺伝学学会であり、Asperfest19は真菌の中でも特にAspergillus属に分類されるカビを対象にした会議でした。いずれの学会もオーストリア・インスブルックで開催されました。インスブルックは、オーストリア西部チロル州の首府で、周りをアルプスの山々に囲まれた風光明媚な土地です。学会期間中は天候にも恵まれ、まだまだ雪の残る壮大なアルプスの山々を眺めながら、気持ちよく過ごすことができました。
私は二つの学会それぞれでポスター発表を行いました。初めての国際学会ということもあり英語でのコミュニケーションには苦労しましたが、こちらが熱意をもって接すると、どの研究者も熱意をもってそれに応えてくれました。コロナウイルスの影響で対面での学会がなかなか開催できない昨今の事情もあり、私自身もほとんど国内の対面学会での発表経験が無い状態で今回の国際学会に臨みました。緊張しながらも学会期間中に様々な国の研究者とディスカッションを交わしましたが、対面でのコミュニケーションでしか伝わらないような各人の研究に対するこだわりや、サイエンスに対する情熱が感じられ、とても刺激を受けました。またこのような場所で議論を交わしたい、と思えるような有意義な時間でした。
私の研究では、麹菌Aspergillus oryzaeの胞子・菌糸の表面を覆う『ハイドロフォビン』と呼ばれる小サイズの界面活性タンパク質を扱っています。今回学会で発表した内容はハイドロフォビンの物理化学的な解析を行ったものであったため、遺伝学的な研究の発表が多いAsperfest19・ECFG16では少し引きの弱い内容であったように感じました。しかし、他の研究者の発表を見て、テーマに関わらず内容のまとめ方や見せ方、発表の仕方がよく練られており、魅力的な発表に仕上がっていることに気が付きました。今回の私の発表が聴衆の気をあまり引けなかったのは、私自身のプレゼンテーション能力の不足であったと思います。自身の研究をより魅力的に他者に伝えることは研究者の重要な素養の一つであることを改めて実感しました。また、そもそも他者の目に魅力的に映るほど研究意義・問いを持った研究であったのか、その問いに答えるのに十分なデータセットを提示できていたのか、という研究全体のデザインについても更なる検討が必要であるように感じました。
このように反省点が多く上げられる学会でしたが、楽しいことも多々ありました。ハイドロフォビンはマイナーな研究対象ではありますが、ECFG16では同じくハイドロフォビンを扱うドイツの研究者と出会うことができました。話題を共有できることが嬉しく大分話し込んでしまったのですが、有益な情報交換ができとても貴重な体験となりました。また、学会後には韓国の研究チームと一緒に夕食に出かけ、同年代の学生と交流することができました。研究の話のみならず、お互いの国の文化や流行について話し、楽しい時間を過ごすことができました。
今回の海外出張では、研究発表を通して様々な課題を見つけることができました。研究デザイン、プレゼンテーション、コミュニケーションなど研究者としての能力を総合的に鍛える必要があると強く感じました。今後の研究のモチベーションにつながる素晴らしい経験ができたと思います。最後になりましたが、今回の国際学会に参加するにあたり、今回の渡航費用を助成して頂いた翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。この貴重な経験を日々の研究活動に生かし更なる成長を遂げるため、より一層精進してまいります。
令和元年度 外国派遣研究者報告
FEMS 2019 (8th congress of European microbiologists)参加報告
D2 Binghui Zhou
Laboratory of Animal Products Chemistry
Department of Science of Food Function and Health
Bioscience and Biotechnology for Future Bioindustries
Graduate School of Agricultural Scienc e
Tohoku University
I participated in FEMS 2019 (8th congress of European microbiologists) on 7th-11th, July, which was held in Glasgow, Scotland. I also attended a mini-symposium hosted by Professor Riitta Korpela , Faculty of Medicine, University of Helsinki in addition to the tour at her laboratory.
As the biggest city in Scotland, the third in the United Kingdom, Glasgow is a historic harbour city not only as a major center of Scottish Enlightenment in the eighteenth century but also as an economic center nowadays. It was a comfortable climate in July, the temperature was around 25℃ with lower humidity than Japan during the day. You can find historical buildings mainly in Glasgow Styleand Victorian architecture. The apartment we lived in this time was one of a series of the red sandstone building and it seemed to be atypical european style of apartment in Glasgow. As walking through the city, I was feeling staying in a huge museum because there wereso many historical train stations, ancient walls and old gorgeous restaurants. However, along the river Clyde, modern buildings alsoattracted my attention. The Scottish Exhibition Campus (SEC), in where FEMS 2019 was held, shaped like a metal UFO with several hallsand meeting rooms. Glasgow is such a charming city with both historical and modern atmosphere.
FEMS is held in European cities every two years and congresses are the only scientific meetings at European and international level providing discussion between all microbiological specialties. FEMS 2019 which we, Professor Haruki Kitazawa and postdoctoral fellow Dr.Aminul Islam, participated in this congress, was in collaboration with Society for Applied Microbiology (SFAM) and was a gathering of leading scientists in different fi elds of microbiology, together facing some of global challenges such as antimicrobial resistance, environment pollution and the emergence of pathogenic disease.
On welcome reception on the first night, a co-worker of Dr. Aminul happened to attend the congress in coincidence. They talked aboutthe research career these years and in the future. It felt to me amazing that friends who had not seen for many years could meet at acongress of microbiology because of science. I gave a presentation at the poster session on the second day of the congress. The title ofmy poster is “Selection of wakame assimilative lactobacilli and in vitro evaluation of their immunomodulatory potentials”. Although I wasnot worried about my English, as the fi rst time to present at an international congress, I became nervous when I presented in front ofstrangers. However, Professor Kitazawa and Dr. Aminul kept telling me to calm down and be relaxed because I knew most of my posterthan any of the others. Thanks to the advice and the practice, I was able to communicate with those who were interested in my research. I presented my poster in fluent English quite better than imagined. The main object of my research was wakame and lactic acid bacteria and I thought that wakame was known to everyone. Therefore, I did not prepare details about wakame. However, I realized that apparently, no one knew wakame in Europe because most of them who asked me questions started with “Can you tell me what is wakame?”. Things that are normally seen in daily life in Japan or Asia, maybe unique to the other side of the world. I wish Icould have brought the real wakame to show everyone in this time.
At the end of the poster session, there was a moment of regret that I wanted to say more about my research, but it was an unforgettable experience to introduce my research to the public in scientific English. It was an opportunity to improve my Scientific English speaking ability and also, knowledge of microbiology was broaden by attending lectures in different fi eld and presentation by young researchers.
After FEMS 2019, Prof. Kitazawa and I attended a mini-symposium hosted by Prof. Riitta Korpela , Faculty of Medicine, University of Helsinki . Prof. Korpela’s lab was doing researches on lactic acid bacteria contained in a traditional fermented dairy product Viili, which had a part overlapping with my research. It was a great opportunity to know about the trend of fermented products in Finland and Europe and to consider future research on lactic acid bacteria during the symposium and warm discussions with students after each talk. After the symposium, Prof. Ritta Korpela showed us around her laboratory. I have learned more about a new lactobacilli strain from theyoung researchers of the same generation at the mini-symposium, which contributed to a great improvement in motivation for futureresearch.
Last but not least, I would like to express my sincere appreciation to all members of Suisei Nougaku Shinkoukai for the grant. It was a great opportunity to participate in an international conference like FEMS 2019. I will try my best to make use of this experience and work harder in my research.
Indonesian Academic Trip (Asian Congress of Nutrition, University of Sebelas Maret, and Bakrie University)
参加報告
D1 Wahyu Dwi Saputra
Laboratory of Nutrition
During last August 2019, I had a chance to visit my home country, Indonesia, as a part of the academic program from the Laboratory of Nutrition, Tohoku University. Totally, I visited three separated events or institutions including the Asian Congress of Nutrition (ACN)2019 in Nusa Dua, Bali, the University of Sebelas Maret in Surakarta, and also Bakrie University in Jakarta.
I started my trip by attending the Asian Congress of Nutrition (ACN) on August 4th-7th, 2019 in Nusa Dua, Bali, Indonesia. The ACN is the biggest four-year meeting for nutrition-related experts throughout the Asian continent. In the fi rst day, August 4th, I attended theopening ceremony of ACN which was followed by the plenary presentation by Prof. Alfredo Martinez (President of International Union ofNutritional Society/IUNS) and Prof. Teruo Miyazawa (President of Federation of Asian Nutrition Societies/FANS). Prof. Alfredo Martinezgave a speech about nutrigenomics application for the precision of nutrition assessment, while Prof. Teruo Miyazawa gave a speechabout food innovation using world-cutting edges technologies. The day after, August 5th, I joined the company symposium sessions heldby FrieslandCampina Institute and DuPont. The topics of this symposium were about the balancing of protein using in early and later-stage of life and also the functional use of human milk oligosaccharides, respectively. Beside joining symposium, I also had a chance topresent my recent work in an oral presentation session. In this meeting, I presented my work about the Vitamin K2 attenuates thelipopolysaccharide-induced infl ammation in mouse microglial cells. In the following day, I attended the symposium held by the JapanSociety of Nutrition and Food Science (JSNFS) about elderly nutrition and nutrition management during emergency and disaster. Thespeeches were given by Dr. Marthalena Purba from Indonesia, Dr Noriko Sudo and Dr Nobuyo Kasaoka from Ochanomizu University andNational Institute of Health and Nutrition of Japan, respectively. I completed my ACN duty by attending some oral student presentationon the last day, August 7th.
After ACN activity, I traveled to my home town in Surakarta, Indonesia to visit University of Sebelas Maret Surakarta. In this university, I had a chance to speak about my work in Japan. Again, I presented my research which had been published in the International Journal of Molecular Science titled “Menaquinone-4 Suppresses Lipopolysaccharide-Induced Inflammation in MG6 Mouse Microglia-Derived Cells by Inhibiting the NF-κB Signaling Pathway”. After the presentation, Dr. Danar Praseptiangga, the head of the department of food scienceand technology introduced me personally all the laboratory work and facilities in his department. Currently, the department of foodscience and technology, University of Sebelas Maret developed a new chocolate-based product. They did several types of research tooptimize the production of chocolate but unfortunately, they still could not analyze the product physiological eff ect. The department offood science and technology, University of Sebelas Maret wish that in the near future, they can also do a nutrigenomic experiment inorder to evaluate their product benefi cial eff ect. Furtherly, they expected me to contribute in this collaboration in the near future.
Before coming back to Japan, I had a chance to visit the department of food science and technology, Bakrie University in Jakarta. In
this university, Dr. Ardiansyah, the head of the department gave me opportunity to share my experience regarding management of research in Japanese university. Interestingly, I did not only give speech but also received fruitful feedback because the audiences weresome young and energic lecturers. They also shared their current work and gave their opinions about how to increase the quality level of research among Indonesian university. It was much interesting that we agreed to have a nice collaboration in the future so that we can make a better and higher quality of nutrition research in Indonesia.
International Symposium on Ruminant Physiology参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
資源生物科学専攻 動物生理科学分野
学年:博士後期課程3年生
氏名:西原 昂来
私は、2019年9月3日から6日にかけてライプチヒで開催されたInternational Symposium on Ruminant Physiology(ISRP)に参加しました。通常のAnimal Scienceの学会は、動物種は指定されることはなく、ウシ、ブタ、ニワトリなどに関する研究が同じ会場で発表されることが多いです。しかし、本学会は、ウシといった反芻動物のみに焦点を当てた珍しい学会です。そのため、反芻動物における生理学分野の学会としては、世界で最も規模のある国際学会ということが出来ます。
会場となったライプチヒは、ドイツの東部に位置するため、元は旧東ドイツに属していたためか、少し寂しい街並みでした。訪れた時の気候は、昼間は暖かいものの夜になると寒かったです。一方、バッハやメンデルスゾーンらのゆかりの地であり、音楽の街として知られています。学会期間中には、バッハの博物館に足を運ぶことができました。また、自然の状態のままで動物を飼育しているライプチヒ動物園も回ることができました。
私は、学会2日目に「ルーメン上皮細胞のToll様受容体5(Roles of Toll-like receptor 5 ligand in the innate immune system in primary bovinerumen epithelial cells)」に関して口頭発表を行いました。国際学会で口頭発表するのは、二回目であるため、スライドを説明するのには問題がありませんでした。しかし、英語での質疑応答に非常に苦労しました。私の発表に関して、二名の方から質問があり、最初の一人からの質問には、何とか返答することができたのですが、二人目の質問を完全に理解できず、返答できませんでした。普段から英語でディスカッションする機会がなく、自 身の準備不足を痛感しました。発表後に質問内容を確認すると、何となくニュアンスは合っていたので、これからは、細かいところまで聞き取れるようリスニングを鍛えたいです。また、卒業後は、海外でポスドクを経験して、英語でのディスカッションも難なく行えるようになりたいです。
学会では、反芻動物に関する発表しかなかったため、とても有意義に聴講できました。特に、カナダの研究グループの「ルーメン上皮のルーメンアシドーシスへの適応機構」に関しての発表は、私の研究とも関連のあるテーマでした。また、論文で名前を見たことがある研究者の発表を実際に目にすることができ、彼らがどのような考えでその研究を思い立ったかを知ることができました。本学会で学んだことを自身の研究に早く還元したいです。全体の発表の内容を振り返ると、日本やドイツからの研究者の発表はマニアックなものが多く、伝わりにくかったと考えました。一方で、カナダやアメリカから来た研究者の発表は、目的がはっきりしていたため、分かりやすく感じました。これからは、研究の目的を、産業面からも分かりやすくして、理解しやすい発表に努めたいと思います。
学会期間中には、韓国人と中国人のドクターと夕食を取る機会を持つことができました。彼らとは、海外でポスドクをするという共通の目的があったため、話が盛り上がりました。また、将来、お互いが教員になった時には、担当している学生を交換留学させてお互いの研究を盛り上げようという話にもなりました。この目標を実現するために、これからの研究や後輩の指導に力を入れたいです。
今回の口頭発表のため、助成金を交付して頂きました公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。今回の経験を今後の研究や研究発表、また、将来、学生を指南する立場になった時に生かし、日本の農学、畜産研究の発展に貢献したいです。
Report of research trip to Indonesia, 2nd – 27th of August 2019参加報告
Tohoku University
Graduate School of Agricultural Science
Laboratory of Nutrition
Doctor program 1st year
Afi fah Zahra Agista
The trip lasted for 24 days in total. It began in 2nd of August through a flight from Narita International Airport to a connecting flight in Kuala Lumpur International Airport, and to its final destination in Ngurah Rai International Airport in Bali, Indonesia. Arrived on August3rd at 12.05 in Denpasar, it took around 45 minutes to get to Nusa Dua, where the Asian Congress of Nutrition 2019 was held. The fi rstday consisted of checked in, re-registration at the front desk, and confi rming the schedule for the next four days. The opening ceremony,exhibition and welcoming dinner were held on the next day. However, most of the symposiums, lectures and presentations were onlystarted on the 5th of August, the next day. On this day I attended some event including those on the theme of biochemistry, cancer &holistic-body composition, and innovations in nutrients for health and wellness. My poster presentation, on the title of “Anti-infl ammatoryeff ect of tryptophan metabolites in fermented rice bran” was held on the 6th of August. On the same day, I also attended somepresentation and symposium on several topics such as early life toddler physiology-gene expression & food innovation, and approachesto control obesity in Asia. The next day, August 7th was the day for oral presentation. The presentation was titled “Potential benefi ts offermented rice bran supplementation on muscle atrophy in streptozotocin-induced diabetic rats”. On top of this, I also attended lectureson the topic of prebiotics for gut microbiota support and beyond. The fl ight from Denpasar to Jakarta departed on the afternoon of 7thAugust. Since it was the beginning of a new term in the university, I attended some discussion session and attended some meetings inBogor Agricultural University starting from the 12th of August. The discussed topics revolted around the approach and result of the fermented rice bran research that has been done in Bogor Agricultural University and in Tohoku University. We also deliberated recent research topics in the fi eld of nutrition, functional food and ingredients, and food technology. These discussion sessions happened sporadically until Friday, 23rd of August. The flight back from Jakarta to Tokyo departed on the 26th of August, and arrived on August27th.
Result
Throughout this chain of programs, I managed to gain some connections and insight on the recent development of the research on fermented food, amino acid and functional food in general. I also managed to learn some intervention programs that had been conducted in several areas in Asia, and the trends on functional foods and its popularity among their consumer. There were chances to see the industry point of view and recognizing several functional food products that already in circulation of the general public. Overall, I think this experience will be useful in tackling the questions and problems that might arise in my own research. It will also assists the development of new research topic in the future and ensure that the next research will be valuable to the public health and wellness.
The 10th Conference of Asia-Pacifi c Association of Chemical Ecologists (APACE 2019)参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 環境生命科学講座 生物制御機能学分野
学年:博士課程前期1年
氏名:中野 颯
私は貴財団の支援を受けて、2019年10月8日~13日にかけて中国、杭州で開催されたThe 10th Conference of Asia-Pacific Association of Chemical Ecologists (APACE 2019)に参加し、ポスター発表を行いました。APACEは環太平洋地域の化学生態学を専門とする研究者を対象とした国際学会で、1997年に第1回大会が開催されてから今回で10回目の開催となります。今回の学会中には169題の口頭発表と66題のポスター発表があり、各国から300人を超える研究者が集まりました。
開催地の杭州は中国浙江省の都市で、中央部には世界遺産の西湖があり国内外から観光客が足を運びます。気候は温暖で、学会中はシャツ1枚で過ごせる日もあるほど過ごしやすい陽気でした。料理は日本人の口にもあう味付けのものが多く、日本でもなじみの深い小籠包はホテルのレストランで大人気のメニューでした。林立する摩天楼や圧倒的な人込みなど、急速な経済発展を遂げた中国の力強さを感じながら渡航期間を過ごしました。
ポスター発表では、キャベツ栽培における葉ダイコンリビングマルチを利用した害虫の抑制効果について報告を行いました。現在の作物栽培では化学農薬に偏重した病害虫防除体系を改め、適切な防除技術を矛盾なく組み合わせる総合的病害虫管理(IPM)に基づいた防除体系を構築することが望まれています。私が発表した葉ダイコンリビングマルチは、化学農薬に頼らない新たな害虫防除技術としてIPMに与する研究となります。本会は近年になってIPMに力を入れている中国での開催ということで、私と同じように新たな防除技術を試験している研究者が多数参加していました。したがって発表内ではそういった研究者の方々と専門性の高い議論を交わすことができたうえ、鋭い質問や貴重な意見をもらうことができました。英語での発表ということで、こちらが聞き取れなかったり、言葉に詰まったりすることもしばしばありました。それでも粘り強く説明を続けた結果として、たくさんの方から興味深い研究だと評価してもらうことができました。努力の甲斐あって、学会の最後にはBest Student Poster Presentation Awardを受賞することができました。流暢に英語を喋ることができなくても、発表への姿勢や研究内容をしっかりと評価してもらえたのだと万感の思いでした。
聴講した発表の中には私の研究内容と重なるものが数題ありました。それらの発表は私の研究の課題やこれから向かうべき方向について大きなヒントを与えてくれました。そのほか、学会中に様々な国の学生たちと意見を交わし各々の研究生活や将来を語ることができました。同世代の学生とのやり取りは私自身の研究へのモチベーションを大いに刺激する絶好の機会でした。連絡先を交換した学生とはこれからも互いの研究について情報交換を行 い、良き研究仲間として切磋琢磨していきたいと考えています。
私は今回が初めての海外渡航でしたが、未知の気候や風土、文化にたくさん遭遇したことで自身の固まっていた世界観に新たな視点を加えることができました。さらには世界の最前線で活躍する研究者たちの熱をこの肌で感じたことで、名状しがたい気持ちの高まりを覚えています。今回手にした様々な経験をこれからの研究生活の中にしっかりと還元し、1人の研究者として大きく成長していけるように研鑽を積んでいく決意です。最後にこの度助成金を交付いただいた公益財団法人翠生農学振興会の皆様には深くお礼申し上げます。このような素晴らしい機会を与えてくださり、誠にありがとうございました。
The 17th International Symposium on Rice Functional Genomics参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 環境適応生物工学分野
学年:博士前期課程2年生
氏名:助友 千尋
私は第2回外国派遣研究者助成金の支援によって、2019年11月3日から11月7日に台湾で開催される「The 17th International Symposium onRice Functional Genomics」という学会に参加してまいりました。こちらの学会は1992年から毎年開催されており、今回で17回目となっております。今回は世界24カ国から360人が集まりました。学会は3日間にわたって開催され、67の口頭発表と150のポスター発表が行われました。イネの遺伝的機能解析に関する研究をテーマごとに7つの分野に分けられており、私は「Genome editing」という部門で発表いたしました。
台北は熱帯に位置する台湾の首都であり、訪問前は暑いのだろうと思っていたのですが現地についてみると半袖で過ごすには涼しすぎる気候で拍子抜けした思い出があります。中心部は高層ビルが立ち並び発展している様子でしたが、スクーターが多かったり、中心部から少し離れると個人経営の小 さいお店しかなかったりと東南アジアのような雰囲気がありました。
私が今回の学会に参加して得た学びは大きく分けて3つあります。1つ目は、グローバルに活動し自分のこれまでの活動を伝えることに喜びや誇りを感じることができるということです。私は国内の学会で口頭発表はしたことがありましたが、国際学会に海外で参加すること、ポスター発表をすることは初めての経験でした。今回の経験で、英語を使い世界中の人に発表を紹介するという行為は学内から国内にとどまらず世界へと活動範囲が広がっていることを実感でき、研究してきた甲斐があったと実感できた瞬間でした。日常では実験室にいる場面が多くまた自身の研究について他の研究者にプレゼンをする場面が多くなかったため、自身の研究内容が他の人にどう思われているか、自分の専門性がどれくらい高まっているのかということを気にすることがあまりありませんでした。しかし、今回の学会に参加して発表し聞いてくださった研究者と意思疎通をはかっていく中で自分の研究活動や専門性は自分が思っている以上に高めてきたのだと知ることができたのはとても嬉しかったです。また、口頭発表では1対多数という関係でプレゼンをするので相手の反応が分かりにくかったりフィードバックを頂くことが困難であったりや興味を持って聞いている人だけではないと思います。一方でポスター発表では少人数での説明が可能であり、自分の研究に興味を持った研究者と話せるということからとても有意義な時間を過ごすことができました。
2つ目として世界中の有名な研究者と出会いディスカッションすることや直接話を聞くことができたのも大きな収穫でした。論文の中でしか知らない研究者が目の前に立ち、世界最先端の研究の話をしているのを聞くことはとてもワクワクしました。私の応募した分野であるゲノム編集技術における口頭発表では植物においても動物と同様に外来遺伝子を挿入せずにゲノム編集を導入することができる技術の研究が紹介されておりました。
3つ目として、同年代の学生の発表から大きな刺激を受けました。ポスターの作り方、発表の仕方から研究での悩みや将来の進路まで様々な話をしました。特に印象に残っているのは学部4年生が堂々と英語で口頭発表をしていたシーンで、あのような姿を目標に私も頑張っていこうと決心しました。
今後ですが私は修士課程をもって研究からは退き、新年度からは化学メーカーの技術営業職に就く予定です。今回の国際学会を通して、自分のこれまでの活動内容を他の人に伝えていくことに大きな喜びを感じられたことから、社内の誇れる技術を社外の人に伝えていく技術営業というは性に合っていると感じられました。このような学びが多かった貴重な機会は本助成金が無くては手にすることができなかったものです。公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。
AMBS 2019 (4 th Asian Marine Biology Symposium) 参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 環境生命科学講座 生物海洋学分野
学年:博士前期課程1年生
氏名:加藤 萌子
私は、2019 年11 月4 日から6 日に台湾、台北にて開催された、AMBS 2019 (4 th Asian Marine Biology Symposium) に参加しました。私は、この学会において、ポスター発表を行いました。
開催地の台北市は、台湾北部に位置する台湾の主要都市です。今回、私は初めての海外渡航であり、異国の空気を体感できることに心躍らせていました。台北は亜熱帯気候であり、11 月の肌寒くなってきた日本とは異なり、非常に過ごしやすい気候でした。道端に植えられている木、マンゴーやドラゴンフルーツを販売するお店からも、植生の違いが感じられました。街を散策すると、漢字ばかりの看板、多数の路上販売店が目に入り、日本と違った街並みを楽しむことができました。このように、初めての異国情緒を感じる一方で、台北には日本からの観光客も多く、商店街では、観光客の日 本語と店員さんの日本語が飛び交っていたり、日本のコンビニエンスストアが多く散見されたりとなんとも不思議な感覚でした。学会のパーティーや、留学生の友人に紹介してもらったお店での中華料理は日本と違う独特な風味が感じられ、量がとても多い上、どれもとても美味しいく、異国の食 文化を楽しむことができました。
AMBS は、2 年ごとにアジアの各都市で開催されており、今回で4 度目の開催でした。台湾、日本、タイ、韓国といったアジア諸国から約 200 名が参加しました。AMBS はアジアの海洋生物の研究者の研究交流を目的としており、研究対象となる生物、海域、分野 (生態学、生理学、分類学等) が異なる研究者が一堂に会します。3 日間を通して、幅広い研究領域の発表、セッションを聞き、海洋生物・環境についてより考えを深めることができました。加えて、内容が面白い研究や、伝え方の上手なプレゼンテーション、同世代の研究者の活躍を見て、自分ももっと頑張らなくてはと刺激を受けました。また、学会全体として、アットホームで和気あいあいとした雰囲気を感じました。休憩やポスターセッション中には、おいしいお菓子をいただきつつ、パーティーやバンケットでは美味しい中華料理と現地の伝統的な歌と楽器の演奏を聴きながら、研究者の方々と交流することができました。話す内容は、アイデア交換や共同の実験計画など研究に関することだけでなく、台湾での観光や趣味についてなど多岐に及びました。私自身も、研究に関する情報を提供していただく約束を取り付けたり、他大学の学生とお互いの研究室の風習について話したりと楽しく交流しました。
私は、Seasonal change of benthic diatoms in Gamo Lagoon, Miyagi Prefecture, northeastern Japan というタイトルでポスター発表を行いました。底生珪藻は干潟域の重要な一次生産者で、生物生産の基礎を担う生物です。しかし、その研究の煩雑さから研究例が少なくなっています。今回、その底生珪藻の個体数密度、群集組成を長期間にわたって分析したデータを発表しました。自分の発表した研究には未解明な部分、課題も多いので、他の研究者から、生物の採集方法やデータ解析方法、海洋の一般的な知識など様々な面からのアドバイスを頂きました。私は、学会発表は初めてであり、その上英語での発表であったため、数カ月前から英語の勉強をし、発表練習も何十回と繰り返して臨みました。そのため、本番では、拙い英語ではありますが、落ち着いて発表、意見交換をすることができました。
今回の学会への参加を通し、自分の研究の糧となる知識やアイデアを得ることができました。さらに、英語でのコミュニケーション能力や、研究への取り組み方、今後の課題も学ぶことができ、非常に有意義な機会となりました。最後になりましたが、学会参加にあたって、渡航費を援助してくださった公益財団法人翠生農学振興会の皆さまには厚く御礼申し上げます。今後、この経験を活かし、研究活動により真摯に取り組み、精進したいと考えています。
14th International Conference of the East and Southeast Asia Federation of Soil Science Societies
(ESAFS 2019)参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
資源生物科学専攻 植物生産科学講座 土壌立地学分野
学年:博士前期課程2年生
氏名:大沼 佐保子
私は11月2日から8日にかけて開催された、14th International Conference of the East and Southeast Asia Federation of Soil ScienceSocieties (ESAFS 2019)に参加し、口頭発表を行いました。
ESAFSは東・東南アジア地域における土壌科学、肥料管理、植物栄養学の研究者たちのプラットフォームの役割を果たしている学会であり、今回は国立台湾大学のGIS Convention Centerにおいて、「持続可能な農業のためのスマート土壌管理」をメインテーマに講演や口頭発表、ポスター発表が行 われました。
本学会で私は、学部・修士と取り組んできた、宮城県中央部に分布する黒ボク土類縁土壌の生成と分類に関して口頭発表を行いました。具体的には、これまで土壌学には応用されてこなかったクリプトテフラ(肉眼視できない火山噴出物)識別を用いることで、黒ボク土類縁土壌の生成に関する検討に、テフラ編年学的視点を加えることができるという研究結果を発表しました。本学会が私にとって初めての国際学会への参加であり、口頭発表をする上では、土壌科学の他分野の研究者の方々に対し、自身の研究を適切に説明できるのかが懸念要素となっていました。結果としては、何とか問題なく発表を終えることができ、口頭発表の質疑応答時間や発表後には新たな視点からの質問や、今後検討すべき観点のアドバイスを頂くことができました。また、個人的に非常に感銘を受けたのが、様々な方から頂いた、「発表を聞いて興味を抱いた」、「面白い研究だ」というコメントでした。これまで、研究室内で議論を重ねる機会は多かったものの、外部の、さらには海外の研究者の方々に自分が取り組んでいる研究がどう映るのかは未知数のところで、その中で非常にポジティブな反応とアドバイスを頂くことができたことは、今後の修士論文のとりまとめや投稿論文を執筆するにあたっての大きなモチベーションにつながりました。
また、学会中には他の研究者の方々の口頭発表・ポスター発表の他、著名な研究者の方々による講演も実施されました。講演は、気候変動による影響が特に深刻であると予想される台湾において進められている、「Smart Agriculture 4.0」と呼ばれる、持続可能な農業を実現するための土壌情報を含むブロックチェーン技術を用いた農業のIT化プロジェクトの紹介の他、「気候変動」・「持続可能な農業」をキーワードに行われました。それらを通し、日頃自分の研究テーマに没頭する中で薄れていた、農学を研究するうえでの現在や未来の環境問題や食糧問題解決への貢献という大きなテーマを改めて強く認識させられました。
最後になりましたが、今回助成金を頂戴しました公益財団法人翠生農学振興会に厚く御礼申し上げます。初めての国際学会参加の機会を頂き、今後の研究の糧となる大きな学びや気づきを得ることができました。この経験を活かし、より一層研究活動に邁進していく所存です。
平成30年度 外国派遣研究者報告
18th Asian Australasian Animal Production Congress(AAAP 2018) 参加報告書
東北大学大学院農学研究科
資源生物科学専攻 動物生産科学講座 動物生理科学分野
博士課程前期1年
氏名:太箸 誠
私は、8月の1日から4日にかけてマレーシアのクチンで開催された18th Asian Australasian Animal Production Congress (AAAP2018)に参加し、自分が行 った研究に関するポスター発表を行いました。
クチンは、マレーシアのボルネオ島の西部に位置するサラワク川のほとりにある港町で、中国やインドなど様々な文化が入り混じった不思議な街でした。食 べ物に関しても周辺国の文化の影響を大きく受けており、中華料理やインド料理の要素を多く取り込みつつもどこかマレーシアを感じさせるエスニックな料理でとても美味しかったです。滞在期間中クチンの気温は30℃前後であったものの、乾期にあたる季節であったため湿度は低く、日本に比べて過ごしやすく感じました。
AAAPは、2年ごとにアジア・オセアニアの各都市で開催される畜産分野の学会です。アジア・オセアニア諸国から多くの研究グループが参加をしており、発表数は口頭とポスターを合わせて約550と非常に大規模な学会でした。初日に行われたオープニングセレモニーでは、現地の伝統的な踊りや音楽などが披露されたり、他国の研究者の方々と談笑したりと、とても賑やかな夕食会になりました。
私のポスター発表は初日に行われました。私のポスターのテーマは「Effects of butyrate in bovine rumen epithelium using Ussing Chamber」であり、以下に示す内容を発表しました。反芻動物は離乳に際して第一胃(ルーメン)の上皮組織が発達し、エネルギー源である揮発性脂肪酸(VFA)を吸収します。VFAの中でも酪酸は、in vivoにおいて上皮組織の発達を促進する効果を有しています。しかしin vitroにおいてはルーメン上皮細胞の増殖を抑制するという真逆の効果を有しています。この酪酸がルーメン上皮組織に対する作用機序についてUssing Chamberという器具を用いて分析しました。Ussing Chamberとは、ルーメン上皮組織を挟んだ後、管腔側と基底側にそれぞれ培養液を入れることで、ルーメン上皮組織を、生体内を模した状態で培養することのできる器具である。その結果、離乳前の子牛のルーメン上皮組織に対しては大きな影響はみられませんでした。しかし離乳後の成畜のルーメン上皮組織に対しては、酪酸を添加することによって1時間後のルーメン上皮組織のバリア機能はControlに比べ低下するのですが、6時間後のバリア機能は回復傾向にあることが明らかになりました。また遺伝子発現に関して分析したところ、ルーメン上皮細胞間の結合を担うタイトジャンクションの遺伝子発現が有意に低下していることが明らかになりました。
私自身学会に出席するのは初めてであり、その発表が英語ということもあってとても緊張していましが、私の研究内容に興味を持ち、質問してきてくださった海外の研究者の方々のおかげで後半にはリラックスして発表することができました。しかしながら自分の英語力の無さを痛感するとともに、自分の研究内容を十分に伝えることができなかったことに悔しさを感じ、英語の会話力を向上させなければと強く思いました。2日目以降は他国の研究者の方々の発表を聞き、積極的にコミュニケーションをとることで、自分の研究に対する新たな視点および解釈を多く得ることができ、また自分の研究分野以外の研究に関しても広く勉強することができたため非常に有意義な学会でした。
今回の学会への出席は、自分の研究に関して多くの知識を得られたという点だけでなく、研究や英語勉強に対するモチベーションの向上という点においても大変貴重な経験になりました。このような機会を得られたのも、渡航費を助成してくださいました公益財団法人翠生農学振興会の皆様のおかげだと深く感謝しております。今回得られた知識、経験を活かし、より一層研究活動に精進していきたいと思います。
平成29年度 外国派遣研究者報告
FEMS 2017( 7th congress of European microbiologists ) 参加報告
東北大学大学院農学研究科
生物産業創成科学専攻 食品機能健康科学講座 動物資源化学分野
博士前期課程1年
氏名:井形 愛美
私は2017年7月9日から13日までスペイン、バレンシアで開催されたFEMS 2017( 7th congress of European microbiologists )に参加し、それに加えバレンシアの研究都市にあるNational Council for Scientific Research (CSIC)、Institute of Agrochemistry and Food Technology (IATA)の研究室を訪問し、研究交流を行いました。
バレンシアは地中海に面した港町です。日中は30℃程度まで気温が上がりますが、日本と比べ湿度が低いため非常に過ごしやすい気候でした。街を散策すると、ヨーロッパ調の建物やバロック様式やローマ時代など様々な時代背景を残した歴史的建造物が並び、街路樹のオレンジと相成って、壮健な街並みを演出していました。また町の中心部に大きな闘牛場があったり、各所でラテン音楽がかかっていたりと、街の随所にスペインらしさを感じ、滞在期間中は普段と違った日々を楽しむことができました。
FEMSは、2年ごとにヨーロッパの各都市で開催されており、ヨーロッパを代表する微生物学会です。今回私が参加したFEMS 2017はスペインのThe Spanish Society for Microbiology (SEM)と合同開催され、非常に大規模で参加人数の多い学会となりました。本大会では、様々な視点から微生物に関わる研究者が一堂に会し、感染や抗菌物質、微生物分類学など多岐に渡るセッションが行われました。
バレンシアはパエリア発祥の街としても有名であることから、学会初日のWelcome Receptionでは直径1 mもある平たい専用の鍋でパエリアが振る舞われ、参加者を大いに沸かせました。私は、学会3日目のポスターセッションでプレゼンテーションを行いました。私のポスターのテーマは、ブタ脂肪細胞における自然免疫系刺激による炎症・脂肪蓄積応答でした。初めての学会で、英語で発表を行うことに対し大きな不安を感じていましたが、今回一緒に参加した指導教官とポスドク研究員の方からの応援や、また現地で出会った研究者の方からのアドバイスのおかげで、どうにか落ち着いて発表に臨むことが出来ました。午前のポスター発表では研究内容を伝えることに精一杯でしたが、だんだんと緊張が解け、午後のポスターセッションでは拙い英語ながらも研究の展望やアイデアなどについて多くのコミュニケーションをとることができました。終わってみると、ポスターセッションの時間はあっという間で「もっと言いたかった。」と思う部分もありましたが、自分の研究の理解を深め、更に発信するという点で、非常に有意義な経験となりました。質問や意見に対して自分の考えを十分に伝えきれなかったことから、英語のスピーキング能力をもっと向上させなければと強く決心する機会となりました。また、発表日以外には、分野が異なるシンポジウムや若手研究者のプレゼンテーションを聴講し、微生物学の知識の幅を広げることが出来ました。
FEMS開催後には、腸管免疫と代謝に重点を置いて研究を行っているIATAに訪問しました。私の研究テーマとも重なる部分があり、これからの研究の刺激になるような話を聞くことができました。また、訪問中には意見交換や施設見学だけでなく、所属学生の研究発表を拝見することができました。発表では、腸内細菌による脂質代謝への影響について新たな視点から学び、同世代の研究者が活躍を目の当たりにすることで今後の研究へのモチベーションを大きく向上させるきっかけとなりました。
最後になりましたが、今回助成金を頂戴しました公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。初めての学会で、FEMSのような大規模な国際学会に参加する機会を頂き、多くのことを学ぶ大変貴重な経験となりました。この経験を活かし、一層精進して研究活動に取り組みたいと考えています。
平成29年度 外国派遣研究者報告
18th International Plant Nutrition Colloquium 参加報告書
岡山大学
資源植物科学研究所
特別契約職員助教
氏名:小西範幸
私は貴財団の支援を受けて、8月21日から8月24日にかけてデンマーク・コペンハーゲンで開催された第18回国際植物栄養会議に参加しました。本学会は、1954年にフランス・パリで開催されてから4年ごとに世界各地で開催され、植物栄養学を牽引してきた大規模な国際学会です。18回目の開催となった今回の学会には、50以上の国々から約550人以上が参加し、口頭とポスターを合わせておよそ500題の発表が行われました。会議が行われたデンマークの首都コペンハーゲンは、中世の街並みが残る非常に美しい港町でした。
さて、本会議で私は、以下に示す内容の博士論文の一部をポスター発表で報告しました。植物が利用できる主要な窒素源であるアンモニウムの大部分は、土壌から吸収された後にすぐさま根で同化されます。植物においてアンモニウム同化の最初の反応はグルタミン合成酵素によって触媒されます。アブラナ科のモデル植物であるシロイヌナズナの根には主に4種類のグルタミン合成酵素 (GLN1;1, GLN1;2, GLN1;3, GLN1;4) が発現していることが分かっていました。大腸菌でこれらのグルタミン合成酵素をそれぞれ発現させた場合、GLN1;2とGLN1;3はアンモニウムに対して低い親和性を示し、GLN1;1とGLN1;4は高い親和性を示しました。この結果は、グルタミン合成酵素には分子種ごとの機能分担があることを示唆していますが、植物体内におけるグルタミン合成酵素分子種の生理的役割の違いは分かっていませんでした。本発表では、低濃度と高濃度のアンモニウムを与えた条件でGLN1;2とGLN1;3の遺伝子破壊変異体を生育させ、根におけるこれら2遺伝子の生理的機能の違いを解析しました。GLN1;2単変異体を高濃度のアンモニウムを与えて生育させると、導管液のアンモニウム濃度の著しい上昇とグルタミン濃度の低下、50%以上の新鮮重量の減少を示しました。一方、GLN1;3単変異体はいずれのアンモニウム条件でも野生型と比べて有意な表現型を示しませんでした。ただし、GLN1;2:GLN1;3二重変異体は、導管液のグルタミン濃度と新鮮重量がGLN1;2単変異体と比べて有意に減少しました。GLN1;2またはGLN1;3のプロモーターGFPを用いてこれらの組織分布を解析すると、GLN1;2は根の表皮・皮層・内皮といった表層細胞群に分布するのに対し、GLN1;3は導管への物質の積み込みに関わる内鞘細胞 (内側の細胞群) に分布していました。これらの結果からGLN1;2は根の表層細胞群で高濃度のアンモニウムを中心的に同化し、GLN1;3はGLN1;2の機能をサポートして導管液に積み込まれるグルタミンの合成に貢献することが明らかになりました。
ポスターセッションでは、多くの参加者と私の研究について議論を交わすことができました。この会議には、窒素以外にもリン酸、鉄、マグネシウム、ケイ素などの様々な栄養素の専門家が集まっているおり、幅広い観点から私の研究についての指摘をいただけたと感じております。口頭発表では、植物栄養の各分野を牽引する先生方の話を聞くことができました。これらの中には未発表な刺激的なデータもありましたし、論文を読むだけでは知ることのできない植物栄養分野のトレンド、研究に対する各人の取り組み方などの情報を収集できました。さらに、懇親会や休憩時間には、多くの先生方とお話しすることができ、これまで論文で名前を知っているだけだった方々と直接的な関係を築く端緒になったと感じております。
私は、この春に学位を取り、4月から岡山大学資源植物科学研究所でポスドクとして働いております。研究者として生き残るために非常に重要なこの時期に世界の研究者と交わる機会を得られたのはひとえに貴財団のご支援のおかげだと深く感謝しております。この経験を活かしてさらに面白い研究をできるように精進してまいります。ご支援いただき、ありがとうございました。
平成29年度 外国派遣研究者報告
Society for Coastal Ecosystems Studies – Asia Pacific 3rd International Symposium 参加報告書
東北大学大学院農学研究科
資源生物科学専攻 水圏生物生産学講座 水圏植物生態学分野
博士課程前期2年
氏名:伊藤 浩吉
私は、2017年12月4日から9日にフィリピンセブ島で開催された Society for Coastal Ecosystems Studies – Asia Pacific (通称 SCESAP) に参加し、自身の研究について英語による口頭発表を行いました。本大会は、アジア太平洋の沿岸域生態系に関する科学や、それらの保全・管理の在り方について議論し、当該分野の研究・教育を発展させることを目的に設立された比較的新しい学会です。2013年の九州天草、2015年のタイでの開催に引き続き、3回目となる本大会には、日本・中国・韓国だけでなく東南アジア諸国 (フィリピン・マレーシア・インドネシア) からも多くの学生・研究者が集いました。このため、欧米や日本といった先進国が中心となる他の国際学会と比べて、すべての国が対等に、分け隔てなく意見を交わすことのできる、とても雰囲気の良い学会でした。発表の場以外でも、ランチやディナー、学会で企画されたさまざまなエクスカーションを通じて参加者同士が交流できる場が数多く設けられており、誰とでもすぐに仲良く会話をすることができました。
開催地がセブということもあり、サンゴ礁やマングローブといった熱帯・亜熱帯生態系の研究報告がほとんどでした。私の研究は、東北太平洋沿岸の海藻藻場という全く環境の異なるテーマであったため、いかに聴衆の興味をひきつけるかが課題でした。図や写真を多用し、文字を少なくしてストーリーを明確にすることで、見やすく、分かりやすく、面白い発表を心掛けました。口頭発表の本番ではかなり緊張してしまいましたが、3分という少ない時間の中で3人の研究者からご質問やご意見を頂き、また発表後も見ず知らずの海外研究者から「面白い発表だった」と声をかけて頂きました。たとえ英語を流暢に話すことができなくとも、自分に自信をもってアピールすることのできる雰囲気、そしてそれを真摯に受け止めてくれる聴衆の方々がいてくださったからこそ成し得たのだと思います。
もちろん、美しい経験ばかりではありません。一歩学会の外に出ると、そこはやはり発展途上国なのだと思いました。開催地のセブ島はその美しい海のイメージで、観光ガイドにもよく載っています。しかし、実際に目にするセブの街中は信号がないにも関わらず交通量が多く、いたるところで路上生活者を目にしました。大型のショッピングモールや大通りではフィリピン人の他に、韓国人や中国人旅行者が多く、さまざまな言語が飛び交っていました。水道水も日本と同じように口にすることはできません。道は完全に舗装されている訳ではなく、建物にもいたるところにひびが入っていました。目にするもののほとんどすべてが、日本ではまず考えられないようなことばかりだったのです。私は改めて、日本がいかに安全で、特殊な環境であるかということを思い知らされました。
とはいえ、今回の渡航経験が私にとっての大きな自信につながったことは事実です。見ず知らずの土地で、母国語以外の言語で自分の意思を伝えるという作業は、学会発表の場だけでなく、滞在期間中の生活についても共通することでした。空港の警備員、ホテルのスタッフ、ショッピングモールの店員、タクシーの運転手……こうした現地の居住者ときちんと会話しコミュニケーションをとれたことも、得難い体験であったと感じています。
学会の最後には、サンカルロス大学の海洋ステーションを訪問し、自分と同じ海藻の研究者と出会うことができました。このつながりを活かして、将来的に南方系のホンダワラ類やその葉上動物も研究したいと考えています。海洋ステーションの後はオランゴに移動し、バードウォッチングやスノーケリング、マングローブ生態系の観察を楽しみました。
最後になりましたが、本学会発表並びに初めての海外旅行にあたり、渡航費を助成してくださいました公益財団法人翠生農学振興会の皆様に深く感謝申し上げます。やはり海外渡航には多くの費用が掛かり、今回も往復の飛行機代が最も大きな割合を占めておりました。この助成金によって、現地での人との交流や体験活動の幅が大きく広がったことは言うまでもありません。この機会に得たさまざまな教訓を今後の研究活動に活かしていきたいと考えております。ありがとうございました。
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平成29年度 外国派遣研究者報告
International Hybrid Rice Symposium 2018 (IHRS 2018) 参加報告
東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 環境生命科学講座 環境適応生物工学分野
博士前期課程2年
氏名:村上 哲也
私は、2月27日から3月1日にかけてインドネシア・ジョグジャカルタで開催されたInternational Hybrid Rice Symposium 2018 (IHRS 2018) に参加し、ポスター発表を行いました。
日本ではあまり馴染みがありませんが、ハイブリッドライスは、その超多収性という性質から、アジアを始めとした多くの国で作付面積が拡大しています。IHRSは、ハイブリッドライスに関わる最新のゲノミクスや分子育種から、経済学、各国の政策まで、非常に広い分野を扱う学会であり、各国から専門の異なる様々な研究者が集っていました。第7回となる本大会の開催地となったジョグジャカルタは、インドネシアのジャワ島に位置し、多くの大学が集中する教育学研都市、インドネシアの古都として独自の分化を残す観光都市という2つの顔を持つ魅力的な街でした。
ポスター発表では、ハイブリッドライスの育種に利用が期待される、雄性不稔性イネに関する分子遺伝学的な研究について報告しました。私は、英語でのコミュニケーションに大きな不安を抱いていたため、拙いながらにも英語で自分の考えを伝えることが出来たことは、私にとって非常に貴重な経験となりました。しかしながら、「本当はこう言いたいのに」と思う場面も多々あり、実用的にも、交流を楽しむためにも、英会話の能力を向上させたいと強く思いました。大会初日には、各国の研究機関による、自国におけるハイブリッドライス普及の現状について報告がありました。論文では既に確立された技術とされているハイブリッドライスですが、実際には、気象条件、国土の大きさ、他の農産物との関係など、多岐にわたる問題を複合的に考える必要があることを改めて実感し、実用化という段階の困難さを目の当たりにしました。私が行っている研究は、基礎的な側面が強いため、自身の研究に没頭していると視野が狭くなってしまいます。IHRSのような、分野が多岐にわたる学会に参加することで、改めて自分の研究の位置づけや、研究を通じてどのように社会に貢献できるのかを見つめ直すことができました。
研究以外にも強く印象に残っていることとして、ジンバブエの研究者の方と懇親会で同席したことが挙げ得られます。アジアとは大きく環境の異なる、アフリカ大陸のジンバブエでは稲作は一般的ではなく、食糧問題や貧困問題の解決策の1つとしてハイブリッドライスの勉強をしにきたという話を聞き、ハイブリッドライス研究の持つ影響力の大きさを実感するとともに、研究者の1人として責任感を持たなければという身の引き締まる思いがしました。また、私が以前チューターを務めた留学生の、指導教官にあたる方と懇親会で偶然同席するという出来事もあり、縁とは不思議なものだと感じると同時に、こういった場でのつながりを大切にしたいと思いました。
3日目の午後には、実際にハイブリッドライスが育てられている農場の見学をすることができました。仙台の気候ではハイブリッドライスを上手く育てることが難しいため、実際にハイブリッドライスを見るのは初めての経験でした。実際に通常のイネよりも多量に稔ったハイブリッドライスを目にして、以前までは数字だけの感覚であった多収性という性質を、実感を持って理解することができました。本大会を通じて、自分の中でぼんやりとしていた研究の全体像の、はっきりとした輪郭を認識できたような感覚を得ることができました。研究に関わる知識の幅を広げ、自身の研究についてより深く考えられるようになったと感じています。
最後になりましたが、本学会発表にあたり、助成金を交付してくださいました公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。当初開催が予定されていた、バリ島のアグン山噴火に伴う、開催地、開催期間の変更にも快く対応していただき, ありがとうございました。今回得られた知識、経験を活かし、研究活動に邁進していきたいと思います。
2016 XXV International Congress of Entomology参加の報告書
東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 生物制御機能学分野
博士課程前期2年
小野寺 駿
私は、9月25日から30日にかけてアメリカ合衆国フロリダ州にて開催された第25回国際昆虫学会2016 XXV International Congress ofEntomology(ICE2016)に参加いたしました。ICEは、昆虫に関する研究者が世界中から集まるため、今回もすべての講演数が1,000を超える非常に大きな学会となりました。
私はポスター発表でプレゼンテーションを行いました。国際会議への参加は今回が初めてであったので、非常に緊張しました。外国人研究者の方から何度か質問を受けましたが、英語での質問内容を理解してスムーズに返答することに苦戦しました。初めて国際学会に参加したことで、外国人研究者の方々と英語でコミュニケーションをとることの難しさを実感しました。それでも、何度も質問して下さる方や、次はどのようなデータを取るのがよいかをアドバイスして下さる方がおり、自身の研究に興味を持ってもらえたと感じるとともに、世界中の方々と意見交換を行うことができることをうれしく感じました。今回のICEでのポスター発表は良い刺激となり、非常に有意義な経験となったと思います。
他の方々の講演発表では、私の研究テーマである青色光の殺虫効果と近いテーマの発表はありませんでした。世界で初めて確認された現象に関する研究であるため、仕方なかったのですが、それでも世界中の最先端の研究に関する発表をいくつも聴くことができ、今後の研究にも活かすことができそうだと思いました。また、昆虫に関する研究者が世界中から集まったためか、中には昆虫と文化を絡めた研究発表もあり、国内ではまず聴けないような講演もあって、非常に新鮮で興味深く感じました。このように、今回の学会は多様な分野の研究発表を聴く機会が多かったので、英語の聞き取りや理解ができなかったことも多かったのですが、自身の英語能力を高める必要性を強く感じました。また、研究を進めるうえで、あらゆる分野からのアプローチが重要であると改めて感じ、今回の学会で聴いた数々の講演は良い刺激となったと思います。
最後に、今回助成金を交付して下さいました財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。大規模な国際会議に参加できたことは、たいへん貴重で有意義な経験になりました。学会では外国人研究者の方々とコミュニケーションをとることができ、最先端の研究に触れることもできたので、自身の研究を進めるうえでのヒントを得られただけでなく、研究に対するモチベーションを上げることにもつながりました。今後はこの学会で得られた知識を活かしてより一層研究に打ち込みたいと思います。このような貴重な経験をさせていただいたことに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
29th Fungal Genetics Conferenceおよび14th International Aspergillus Meetingの参加報告書
東北大学大学院農学研究科
生物産業創成科学専攻 微生物機能開発科学講座 応用微生物学分野
博士前期課程二年
宮澤 拳
私は2017年3月13日から14日に開催された14th International Aspergillus Meeting (Asperfest14)および同14日から19日にかけて開催された29th Fungal Genetics Conference (FGC)に参加しました。いずれの学会もアメリカ合衆国カリフォルニア州のパシフィックグローブで開催されました。29th FGCは参加者約900名、計6日間にわたる世界最大規模の真菌遺伝学学会です。私は両学会においてポスター発表を、29th FGCにおいては口頭発表も行いました。
開催地のパシフィックグローブは、ロサンゼルスから北に約500 kmのモンテレー半島に位置する太平洋に面した町です。3月中旬ながら日中は暖かく、時々曇り空が広がるものの学会期間中は好天に恵まれました。学会会場となったAsilomar Conference Groundは歴史的建造物が多数現存しており、また眼前には砂浜が広がる海風がとても心地よいところでした。近隣には米国で有名なモンテレー湾水族館があり、学会期間中に足を運びました。
29th FGCは真菌の様々な生命現象を研究課題とする研究者が一堂に会し、朝から夜遅くまで議論を重ねる場所でした。学会中の一日のスケジュールは、大変魅力あるものでした。午前中には全分野の研究者を集めた口頭発表が行われます。ランチを挟んで午後からは複数のセッションに分かれてより専門的な分野に特化した口頭発表が行われました。さらにディナーの後、ワインやビールを飲みながらポスター発表が行われ、夜10時半まで研究者同士がとてもフランクに議論していました。また、Asperfest14は真菌の研究者のうちAspergillus属の糸状菌を扱う研究者を集めた、29th FGCのサテライトミーティングとして開催されました。
私は、糸状菌のモデル生物であるAspergillus nidulansを用いて、糸状菌の細胞壁成分の一つであるα-1,3-グルカンの生物学的機能に関する研究を進めています。この度の学会でも「Comparative analysis of the function of α-1,3-glucan synthases, AgsA and AgsB, in Aspergillusnidulans」というテーマで発表を行いました。私にとって初めての国際学会発表となったAsperfest14のポスター発表では、多数の研究者から質問・意見をいただくことができました。拙い英語話者である私の発表を英語力関係なく聞いてくださった方がたくさんいらしたことが印象的でした。本会である29th FGCのポスター発表でも、世界の研究者とたくさんの議論を交わすことができました。特に、α-1,3-グルカンに詳しいドイツ人の研究者と、お互いの研究内容や将来の研究方針について長時間にわたり意見交換ができたことは貴重な経験となりました。
29th FGCの最終日には、本学会の大一番である口頭発表を行いました。私にとって英語の口頭発表は非常に難易度の高いものであり、渡米前から入念に準備をして発表に臨みました。本番の15分間の発表の中では、躓く箇所はあったものの、何とか最後まで話しきることができました。しかしながら、発表時間の超過や質疑応答の不備など、至らない点がたくさんありました。このような課題は残ったものの、会場の独特な雰囲気や英語での口頭発表の緊張感など、実際に体験しなければ感じ得ないことを修士二年の段階で経験できたことは、これからの研究生活において大変意味のあるものとなったと感じています。
最後になりましたが、本学会発表にあたり、助成金を交付してくださいました公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。この度の学会参加を通して得た知見・課題を今後の更なる研究活動の発展に生かせるよう、より一層精進して参る所存です。
29th Fungal Genetics Conferenceおよび14th International Aspergillus Meeting参加報告
東北大学大学院農学研究科
生物産業創成科学専攻 遺伝子情報システム学分野
博士課程前期2年
井上 大志
私は、2016年3月13日から19日にかけて、アメリカ、カリフォルニア州のパシフィック・グローブで開催された、29th Fungal Genetics Conference(FGC 29)および14th International Aspergillus Meeting(Asperfest 14)に参加し、両会議でポスターセッションによる発表を行いました。FGC 29は、一般的に酵母やカビ、キノコと呼ばれるような、真菌類の生物学に関する国際会議であり、Asperfest 14は、真菌類の中でも特にAspergillus属に分類されるカビを研究対象とした研究者が集まる会議でした。会場となったパシフィック・グローブは、太平洋に面した半島に位置し、豊かな自然に囲まれたリゾート地でした。涼しく、湿気の少ない気候で、会場のすぐ近くには白い砂浜が広がるビーチもあり、学会中は開放的な気分で気持ち良く過ごすことができました。
ポスター発表では、Aspergillus属カビの遺伝子発現制御機構に関する研究を報告しました。初めての国際学会での発表ということもあり、英語で自分の伝えたいことを説明することには正直苦労してしまいました。特に、せっかく興味を持って質問してくれた方に対しても、質問の意図を把握できず、適切に回答できなかったことは反省すべき点でした。自身の公表する研究成果は、世界中の様々な研究者に正しく知ってもらい、役立ててもらうことで初めて有意義なものになると思います。そのため、今回の国際学会で発表させてもらったことは、英語でのコミュニケーション能力の重要性を実感するいい機会となりました。一方本学会は、他の真菌類の様々な生命現象に関する研究について勉強する有意義な時間となりました。自分の専門分野と近い分野に関しては、日頃研究を進める上で参考にしている論文著者のグループの最先端の報告を聞き、実際に質問してディスカッションする中で、世界の様々な場所で研究が進められていることを感じ取ることができました。また、自分が研究対象としていない種類の真菌類や、分野が大 きく異なる研究内容もおおまかに把握することもでき、真菌類の生命現象に対する視野も広げられたと思います。特に、Neurospora属のカビを研究対象としたエピジェネティクスと転写制御に関する研究はとても興味深く、今後の研究方針を考える上でも非常に参考となりました。
本学会では、研究に関することだけでなく、初めて本格的に国際交流を経験した機会にもなりました。学会期間中は、本学会に一緒に参加した同研究科に所属する宮澤君と、ドイツと韓国から参加したドクターコースの学生の方、計4人で一週間宿泊しました。二人とも、私のつたない英語を根気よく聞き取ってくれて、コミュニケーションを取ってくれました。研究の話はもちろん、お互いの文化や食べ物についても話したり、食事を共にしたり、一緒にビーチを散歩したりと楽しく過ごすことができました。文化や言語の違いがある一方、生物の科学という共通の興味を持った人と交流できたことは、今後研究に取り組む上でのモチベーションにも繋がったと思います。また、たまたま昼食の席で隣になった、海外の大学でポスドクとして研究されている日本人の方とも知り合うことができました。海外での研究活動の経験についてお話して頂いたり、研究活動についてもアドバイスを頂いたりと、自分の将来を考える上でも貴重なお話しを聞かせていただきました。
今回の海外出張で、専門分野に対する理解が一層深まり、今後の研究の発展も期待できるような着想や人間関係を得ることができました。また、日 本では得られないような貴重な経験もすることができました。この経験を、さらによりよい研究につなげられるよう、これから日々精進して参ります。最後になりますが、今回の国際学会に参加するに当たり、渡航費を助成して頂いた公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。
令和6年度 外国派遣研究者報告
The 14th Asian Conference on Lactic Acid Bacteriaの参加報告
渡航期間:2024年5月28日~2024年6月2日
渡航場所:タイ(バンコク)
所属:東北大学大学院農学研究科
生物生産科学専攻 動物食品機能学分野
学年:博士課程前期2年
氏名:松本 夏歩
2024年5月29日~5月31日の3日間、タイのバンコクで開催された、The 14th Asian Conference on Lactic Acid Bacteriaに参加し、「Porcine small intestinal organoids to evaluate postimmunobiotics with anti-rotavirus activity」というタイトルで口頭発表を行いました。私は、腸管粘膜免疫調節作用を持つイムノバイオティクス乳酸菌に着目し、宿主と細菌の相互関係を小腸オルガノイドを用いて明らかにすることを主軸とした研究に取り組んでいます。特に、不活性化処理した乳酸菌の菌体(ポストイムノバイオティクス)を用いることで、家畜生産現場への応用に向けた研究を目指しています。本発表では、樹立したブタ小腸由来のオルガノイドの特徴付けを行うと共に、ブタの糞便などから単離した抗ウイルス効果を有すると考えられる乳酸菌株を用い、オルガノイドにおけるロタウイルス感染抑制効果の評価について発表しました。発表終了後には、他の参加者の方と意見交換ができ、異なる国ならではの視点からの意見を聞くことで、新しいアイデアを得る良い機会になりました。今後、乳酸菌による抗ウイルス作用の詳細解析のため、乳酸菌と小腸オルガノイドの共培養系を用いることでより生体に近い状態を再現し、乳酸菌の有するどのような因子が寄与するのか、乳酸菌の代謝産物などに着目し分子メカニズムを調べていきたいと考えています。
学会では、国際的に活躍されている研究者による講演も聞くことができ、国内学会では得られない最先端の情報を学ぶことができました。最も興味深かったのは、微小真菌が作る代替肉の原料である、マイコプロテインに関する研究です。マイコプロテインは、タンパク質と食物繊維を豊富に含み、日本では馴染みがないですが、ビーガンやベジタリアンが多い国では、マイコプロテインを使った商品が広く市販されているようです。彼らの研究では、赤肉や加工肉をマイコプロテインに置き換えることにより、腸内に有益な菌が増加したことから、肉の優れた代替品になることを示していました。世界の食糧問題の解決策として、我々は健康な家畜の育成に焦点を当てていますが、食肉の代替品を開発するという別の視点からの取り組みも非常に興味深いと感じました。
今回の学会が、自身にとって初めての口頭発表であったため、発表の仕方についてもとても勉強になりました。要点を的確にまとめ、ストーリーとして分かりやすく人に伝えることに加え、英語での発表ということで、発音や抑揚を重視し、聞く人を惹きつけるような発表を意識して練習しました。その結果、Best Oral Presentation Awardを受賞することができました。自身の研究が世界に認められたように感じ、大きな達成感を得られました。
今回、翠生農学振興会外国派遣研究者助成金事業に採択頂き心より感謝申し上げます。この経験を刺激としてさらに研究を発展させ、研究者として大きく成長したいと思います。
International Symposium on Ruminamt Phisiology 2024の参加報告
渡航期間:令和6年8月25日~令和6年8月31日
渡航場所:アメリカ イリノイ州 シカゴ
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
動物生命科学講座 動物生理科学分野
学年:博士課程前期2年
氏名:増田 航大
今回参加したInternational Symposium on Ruminant Physiology 2024では、"Difference of feeding concentrate- versus fermented forage-based starter diets in weaning dairy calves under intensive milk feeding program: rumen fermentation and microbiome"という題目で、8月25日にポスター発表を行いました。さらに、多くの世界的に著名な研究者の講演や最新研究のポスター発表を聴講し、議論することができました。
ポスター発表では、哺乳期および離乳期の子牛に通常とは異なる固形飼料を給餌した際のルーメン微生物叢の変化について発表しました。多くの研究者から貴重なフィードバックをいただき、特にルーメン微生物叢の群間比較解析において、より精度の高い解析ツールの存在を知りました。今後、この新しいツールの利用方法を学び、私の研究に応用する予定です。
講演では、データサイエンスから飼養評価、代謝機構の解明まで、反芻家畜生産における幅広いトピックについて学ぶことができました。特に印象に残ったのは、微生物叢と家畜の関連性を取り上げた"Holobiont"という概念です。Holobiontは、宿主とその微生物叢を一体として捉える考え方であり、飼料や環境といった外的要因がHolobiontにどのように影響を与えるかが紹介されました。この考え方は、私が行っている研究においても非常に有用であると感じました。今後、子牛に給餌する飼料の違いがルーメン微生物叢に及ぼす影響に加え、宿主である子牛自体への影響を包括的に調査していきたいと考えています。
ポスター発表見学では、細かい試験条件の比較や、海外の研究者との交流を通じて新たな知見を得ることができました。特に、私と同様の哺乳法を採用している研究者との議論では、哺乳条件の微妙な違いが成長や健康に与える影響についての視点を広げることができました。また、アメリカの研究機関が発表していた牛の肝臓の細菌叢解析についても興味深く感じました。反芻家畜での菌叢解析は通常、ルーメンや腸内で行われますが、肝臓での解析という新しいアプローチを私の研究にどう応用できるか検討する価値があると感じました。
今回の学会参加を通じて痛感したのは、語学力の不足です。ポスター発表やディスカッションにおいて、自分の意見を正確に伝えられない場面がありました。より深い議論や建設的なフィードバックを得るためには、語学力の向上が不可欠であると実感しました。今後は語学力の強化に力を入れ、次回の国際学会に備えたいと思います。
今回の学会で得た知見を、自身の研究に活かし、研究の質をさらに高めるよう努めます。また、語学力の向上を目指し、次回の国際的な場でより自信を持って発表やディスカッションに臨めるよう努力していきます。これからも研究を進めつつ、国際的な視野を広げ、学術的な成長に努めてまいります。
イタリアEAAP国際会議参加の報告書
渡航期間:令和6.8.29~9.17
渡航場所:イタリア(フィレンツェ)、オランダ
所属:東北大学農学研究科 生物生産科学専攻
動物生命科学講座 草地-動物生産生態学分野
学年:博士課程後期3年
氏名:但 申
東北大学農学研究科博士課程3年の但です。私はイタリアのフィレンツェで開催されたヨーロッパ畜産学会(EAAP:2024.9.1-9.5)に参加し、ポスター発表を行いました。フィレンツェは歴史を感じさせる中世的な石造りの建物が特徴的で、日本とは異なる雰囲気を感じました。
その前日(2024.8.30-31)に同じ会場で開催されたWAFL (Welfare Assessment at Farm Levels)学会にも参加し、視聴しました。主に家畜のウェルフェアに関する議題に関して学び、なかで肉牛に関わるテーマとして出荷のための家畜の長時間輸送における問題にまつわる研究が印象的でした。そして9月1日から2日間会場にポスターを掲載し、立ち止まって観てくれた方と質疑応答を行いました。私は研究で肉牛の横臥休息中の姿勢変化を調査し、その寝床である牛床の清掃による影響を調べ、どの姿勢が休息快適性と関わるのかについて明らかにしました。研究方法や結果に関して不明な点について尋ねてくれたおかげで、自分の研究を明確に伝える練習となりました。また結果に対する考察に関してもアドバイス(例えば特定の横臥姿勢は何を意味するのか)をもらえ、博論の参考ともなりました。色んな初対面の人と交流できるのは有意義なことですが、個人的に特に嬉しかったのが、ポスターのおかげでオランダ大学院でのかつての友人にも声かけてもらえ、思いがけず再会を果たしたことでした。彼らもまだ研究に打ち込んでいることを知り、励みとなりました。
ポスター発表以外でも学会全日程を通して他の研究者の口頭発表を視聴しました。畜産学にまつわる幅広いテーマであったため、ウシの行動学のみならず、他の動物種(ニワトリ、ブタ、ヤギなど)や異なる分野(IoTを活かしたスマート畜産や飼料など)を学べました。同時に聞いても理解できなかった部分が多く、自分の専門知識や語学力の不足さも痛感しました。学会では世界中の多岐にわたる興味深い研究を知り、感銘を受けたと同時に、自分自身の研究は小規模ですが、ウシの横臥中姿勢変化という誰もできない独特性を誇ることも実感したのも収穫でした。
学会主催の農場ツアーにも参加しました。バスで2時間移動し、トスカーナ地方の臨海部にある肉牛および豚の農家を見学しました。ウシはマレマーナ種で、豚はシンタ・セネーゼ種で、どちらも珍しい地方の固有種でした。その農場ではウシを林内に放牧させ、生態系との共生を図るアグロフォレストリーと呼ばれる農法を実践しました。放牧の研究も行われている東北大の研究室の研究とも共通することに気づきました。また豚は親子ともに広い敷地内で放し飼いで飼われていました。家畜は出荷時通常トラックでと畜場に運ばれますが、本農場では家畜の輸送時のストレスを最小限にするために、専用のトレーラーカーを用いた農場内と畜を実践していました。とても革新的だと感じました。見学を通じてイタリア農場の畜産システムの多様性とアニマルウェルフェアへの配慮を実感しました。
学会終了後オランダに渡り、修士課程で学んだ母校のワーゲニンゲン大学を訪問しました。そこで農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)のオランダ駐在員の奥田充さんと面談しました。自分は来年度農研機構に研究員として就職しますが、機構での研究や生活および在外派遣制度を利用しての将来の海外留学に関してお話を聞けました。
ISRP学会の参加報告書
渡航機関:2024年8月25日~8月30日
渡航場所:アメリカ(シカゴ)
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
動物生命科学講座 動物生理科学分野
学年:博士後期課程3年
氏名:李 厚承
8月25日から8月30日にかけて、私は貴財団の支援を受け、アメリカ・シカゴで開催されたInternational Symposium on Ruminant Physiologyに参加しました。本学会は5年に一度開催される反芻動物生理学の分野で最も重要かつ影響力のある国際会議の一つであり、世界各国から多くの研究者が集まりました。会場となったシカゴは、歴史的な建物や美しい湖に囲まれた街並みが特徴的で、特に夏の時期には多くの観光客が訪れる魅力的な都市です。学会期間中は、学術的な交流だけでなく、シカゴの文化や美しい景観も存分に堪能することができ、非常に有意義な時間を過ごしました。
今回の学会では、午前と午後にわたり様々な講演セッションが行われ、100名以上の研究者がポスター発表を行いました。私はその中で博士論文の一部をポスター発表の形で報告し、「異なる代用乳が子牛の生理学的変化に与える影響」というテーマを取り上げました。私の研究は日本和牛に関するものであり、欧米ではあまり見られない研究対象であったことから、聴衆の関心を大いに引きました。特に、日本和牛はその特有の肉質で知られており、その生理学的特性や飼育方法に関する研究は国際的にも注目されています。発表においては、図や写真を多く使用し、テキストを最小限に抑え、ストーリーを明確にすることで、わかりやすく、興味深い発表を心がけました。その結果、多くの研究者から高い評価を受け、具体的なフィードバックもいただくことができました。
また、University of VermontのDr. Costaの研究室の学生の一人が、私と同様に代用乳の違いによる生理的変化を研究しており、牛の品種は異なるものの、共通点や相違点について意見を交換することができました。彼の研究は、代用乳が子牛の成長や健康にどのような影響を与えるかを中心にしており、特に免疫機能や腸内環境に対する影響についての議論が深まりました。学会後もこの研究室とはメールでやり取りを続けており、データに関する議論が進んでいます。これにより、共同研究の機会が得られる可能性が高まり、私自身の学問的な視野が広がることを期待しています。さらに、この交流を通じて、日本の和牛飼育技術を他国に紹介し、国際的な共同研究の基盤を築くことも視野に入れています。
今回の学会参加を通じて、博士課程修了後のキャリアについても考える機会を得ました。学会場で数名の海外教授と直接お話しすることができ、ポスドクのポジションについて具体的な情報交換を行いました。特に、アメリカやヨーロッパの研究機関でのポストに関する情報や、現地での生活環境、研究資金の調達方法など、非常に実践的なアドバイスをいただきました。これにより、将来的に海外での研究機会が広がる可能性を見出すことができ、大変有意義な時間となりました。さらに、学会期間中に出会った他の研究者たちとの交流を通じて、新しい研究のアイデアや手法についても学ぶことができ、これが今後の研究活動において非常に貴重な糧となるでしょう。
研究者としてのキャリアを築くためには、国内外を問わず、さまざまな研究者と積極的に交流し、最新の研究動向を把握することが重要です。今回の学会参加を通じて、世界の第一線で活躍する研究者たちとのネットワークを構築することができたのは、ひとえに貴財団の支援のおかげであり、心から感謝しております。この貴重な経験を生かし、今後もさらに面白い研究を追求し、日本のみならず、世界に貢献できる研究者を目指していく所存です。ご支援いただき、誠にありがとうございました。
2nd International Conference Sains Tanah (ICOSATA) 2024の参加報告
渡航期間:2024年8月28日~2024年8月30日
渡航場所:Surakarta, Indonesia
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
植物生命科学講座 土壌立地学分野
学年:博士課程前期2年
氏名:JIAN CHUANZHEN
1. はじめに
今回の海外学会支援金を受けて、無事に第2回ICOSATAに参加できましたことを心より感謝申し上げます。本学会では、世界中の研究者が集まり、最新の研究成果や技術について議論する場として大変有意義な経験を得ることができました。本報告書では、参加した学会での発表内容、得られた成果、そして今後の研究における展望について報告させていただきます。
2. 発表内容
今回の学会では、「Effects Of Wood Ash Application On The Dynamics Of Various Elements In Soil」というテーマで英語口頭発表を行いました。本研究では、木質灰を肥料として使用することが植物の成長に与える影響、特に施肥後の土壌溶液中の重金属の化学形態及び元素動態の調査を行いました。研究の結果、木質灰投入が土壌溶液中の有害金属含量を低減し、作物の成長を促進する(特にKの肥料効果)一方で、土壌中の有機質土壌溶液への溶出に伴い、銅とクロムは有機質と有機錯体が生じたことが示されました。この研究は、木質灰が化学肥料の代替肥料として、農業生産コストを低減させ、持続可能な農業における新たな施肥方法としての可能性を示唆していますが、有害金属には多変性の性質があるため、木質灰が環境に与える潜在的な影響については、長期的な実験調査が必要です。
3. 学会での議論とフィードバック
発表後、多くの参加者から質問やコメントをいただきました。特に、インドネシアの大学の教授からは、木質灰投入が植物の成長を促進した原因について、土壌溶液中のカリウム含量が上昇したことや土壌のpHが改良された可能性について質問を受けました。この質問を受け、木質灰の代わりに他のアルカリ性資材を肥料として実験を行うことを検討しています。また、木質灰の成分や種類についても多くの質問が寄せられ、今後の研究においてより詳細な調査が必要だと感じました。さらに、他の研究者とのディスカッションを通じて、異なる土壌での木質灰施肥の効果や、木質灰の種類による肥料効果と元素動態の違いについても検討し、新しい実験予定ができました。
4. 学会で得た知見
本学会では、他の研究者による発表も非常に参考になりました。特に、土壌養分と作物に関する最新の研究動向や、新技術の開発に関する講演は非常に有益でした。これらの知見は、私の今後の研究に大きな影響を与えると期待されます。例えば、Yiyi Sulamanによる「Calibration of portable soil nutrient detector on irrigated and rainfed soils, Java, Indonesia」の研究では、現地土壌養分検出器と実験室で測定した土壌データには顕著な線形関係があることが示されており、この方法を参考にすることで、私の使用する土壌の養分含量やpHをより迅速に把握できる可能性があります。ただし、この発表では得られた養分データが有効養分か総養分かについては言及がなかったため、さらに確認する必要があります。
5. 今後の研究に向けて
今回の学会参加を通じて、英語でのコミュニケーション、会議の運営、そして国際学会の進行に関する多くの経験を得ることができまして、世界中の研究者と知り合い、今後の共同研究や情報交換の可能性が広がりました。今後は、得られたフィードバックを基に研究の精度をさらに高めることを目指します。また、学会で得た新たな知見やネットワークを活用し、研究科内でのワークショップや国際学生研究交流会などの活動を組織し、学術的な表現能力やプレゼンテーション能力を向上させ、将来のキャリアの基盤を築くことを目指します。
6. おわりに
最後に、今回の学会参加にあたり、多大なるご支援を賜りましたことに改めて御礼申し上げます。この貴重な機会を最大限に活かし、今後も精力的に研究を続けて、積極的に学会に参加し、先進的な研究成果を交流し、自身の実験に役立て、社会に貢献したいと考えています。
第2回 ICOSATA (International Conference of Sains Tanah : Soil Science, Agriculture and Environment)への参加報告
渡航期間:2024年8月26日~2024年9月2日
渡航場所:インドネシア スラカルタ市
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
植物生命科学講座 土壌立地学分野
学年:博士課程前期2年
氏名:柴田隼太郎
学会の詳細
今回、私はインドネシアのスラカルタ市で開催された「第2回 ICOSATA (International Conference of Sains Tanah : Soil Science, Agriculture and Environment)」に参加しました。本学会は、2024年8月28日から30日の3日間にわたり、Sebelas Maret大学農学部土壌科学科が協力し、Solo Paragon Hotel & Residencesにて開催されました。この国際土壌科学学会は、分野や所属、国境を越えて、土壌科学に関する最新の学術・技術動向を共有し、新たな研究成果について発表や意見交換が行われました。学会はオフラインとオンラインのハイブリッド形式で、特に現地参加者が多く、非常に活気に満ちた国際会議となりました。
発表の概要
私は今回、「複数年にわたるゼロ価鉄が米粒および土壌溶液中のヒ素濃度に及ぼす影響の研究 (Impact of Zero-Valent Iron on Arsenic Levels in Rice Grains and Soil Solution: A Multi-Year Study)」というテーマで口頭発表を行いました。この研究は、ヒ素汚染が深刻な課題となっている水田において、ゼロ価鉄を使用することでヒ素濃度を抑制し、農産物の安全性を確保する方法を探るものです。
発表はすべて英語で行い、初めての国際学会であることから、多くの準備が必要でした。特に、専門的な用語を正確に伝えることや、質問に的確に答えるスキルが求められました。実際、質疑応答ではインドネシアの研究者から私が使用したゼロ価鉄の資材や処理方法に関して詳細な質問がありましたが、具体的な数値や手法を説明することで理解を深めてもらうことができました。
語彙や発音に関しては、まだ改善の余地があると感じましたが、非常に貴重な経験となりました。さらに、他の参加者の発表からも多くの刺激を受けました。特に、各国で行われている様々なフィールドワークや実験、独自の研究手法について学ぶことができ、自分の研究に新しい視点を得ることができました。特に、アジア各国の水田農業における同様の問題に関するディスカッションができたことは、私にとって大変貴重な経験となりました。他国の研究者からは、今後の研究を進めていくためのアドバイスや新しいアプローチの提案をいただき、自身の研究をさらに発展させるためのヒントを多く得ることができました。
学会終了後
学会の3日目には、スラカルタ市近郊にあるDayu MuseumやSangiran Museumへのフィールドトリップに参加しました。このフィールドトリップでは、インドネシアの地質形成過程や、過去の生物の化石について学ぶことができました。現地の案内人による分かりやすい説明を通じて、地質学と生態系の変遷について深く理解することができ、土壌科学の研究における視野が広がりました。特に、インドネシアが有する多様な地質環境と農業の関連性について知ることで、現地の課題にどのように応用できるかを考える良い機会となりました。残念ながら時間に限りがあったため、すべての展示をじっくり見ることはできませんでしたが、インドネシアの自然環境や歴史について多くを学び、非常に有意義な体験となりました。フィールドワークは、理論的な知識と実地のつながりを確認する絶好の機会であり、今後の研究活動に活かせる洞察を得ることができました。
総括
今回の海外出張は、私にとって非常に貴重な経験となりました。初めての国際学会での発表や、異なる文化圏での生活体験を通じて、自分の成長を実感しました。特に、国際的な視野で土壌科学や農業の課題に取り組む意義を強く感じ、今後もグローバルな観点から研究を進めていきたいという思いが一層強まりました。また、他国の研究者との意見交換を通じて、自身の研究を見直し、改善すべき点や新たな視点を取り入れることができたことは、今後の研究活動にとって大きな収穫です。
さいごに
最後に、今回の国際会議への参加を支援していただいた翠生農学振興会の皆様には、心から感謝申し上げます。皆様のご支援があったからこそ、このような充実した経験を積むことができました。今後も、今回学んだ知識や経験を基に、研究活動を通じて社会に貢献できるよう努力してまいります。
Asperfest21及びECFG17参加報告
渡航期間:令和7.2.28~3.7
渡航場所:アイルランド ダブリン
所属:東北大学大学院農学研究科 農芸化学専攻
生物化学講座 真核微生物機能学分野
学年:博士後期課程1年
氏名:横山将己
私は2025年3月1日から3月5日にかけて、アイルランド・ダブリンで開催された21st International Aspergillus Meeting (Asperfest 21) および 17th European Conference on Fungal Genetics (ECFG 17) に参加し、最新の研究成果を発表しました。ECFGは酵母から糸状菌に至るまで幅広い真菌の遺伝学を対象とした国際会議であり、AsperfestはAspergillus属に特化したサテライトワークショップとして開催されました。私は両会議においてポスター発表を行ったほか、Asperfest21では要旨の選考を経て、招待発表として口頭発表の機会を得ました。
開催地のアイルランドはイギリスの隣に位置する島国であり、ダブリンは3月上旬ながらも暖流の影響で比較的穏やかな気候でした。日中はダウンジャケットを着用せずに過ごせるほどの気温で、快適に滞在できました。ダブリン市内は近代的な都市の賑わいを見せる一方で、中心部には歴史ある石造りの建築物が立ち並び、落ち着いた雰囲気が感じられる街でした。滞在中の空き時間には市街を散策し、ダブリン城やアイルランド国立美術館、ギネスビールの工場を訪れ、街の歴史や文化に触れることができました。
本学会では、麹菌Aspergillus oryzaeにおける小胞体ストレス応答機構について発表しました。小胞体ストレスは、細胞がタンパク質を分泌・生産する過程で負荷がかかることで引き起こされ、酵母からヒトに至るまで広く保存された現象です。特に近年、糸状菌においては初めて報告された小胞体ストレス下における分泌タンパク質mRNAの分解機構に着目し、その詳細な解析結果と今後の応用の可能性について報告しました。
3月1日に現地入りし、その夜にはAsperfestのオープニングセレモニーが開催されました。翌2日の午前には口頭発表を実施しましたが、国内学会よりも発表時間が長く、さらに英語での発表であったため、非常に難易度の高い挑戦となりました。渡航前から入念に準備したものの、発表中に言葉が詰まる場面もあり、なんとか終えることはできたものの、質疑応答では十分に対応できず、課題の残る発表となりました。
しかし、その日の午後のポスターセッションでは、口頭発表を聞いた多くの参加者が関心を寄せ、私のポスターを訪れました。質疑応答では至らない点はあったものの、口頭発表を通じて研究の意図を伝えられたと実感し、活発な議論を交わすことができました。また、参加者がどのような点に関心を持ったのかを詳しく聞くことで、自身の研究の立ち位置を再認識し、今後の方針を考える貴重な機会となりました。
3日目からはECFGの本会がスタートし、私は5日目にもAsperfestと同様の内容でポスター発表を行いました。そこでは、国内の学会ではあまりできないような、真菌と小胞体ストレス応答機構に関する詳しい議論を行うことができました。その中で、現在の麹菌Aspergillus oryzaeを用いる意義やインパクトを改めて実感し、今後のモチベーションにつながりました。
本学会を通して、専門分野に対する理解がより深まり、今後の方針や着想を得ることができました。また、国際学会の場で招待され口頭発表を行うという、滅多に経験できない非常に貴重な機会を頂きました。今回の経験を通して、英語力や研究の発信力、デザイン力に課題を発見することができたとともに、自らの研究を客観的に見る機会にもなりました。この経験を活かし、今後の研究活動や日々の勉学に励んでいきたいと思います。
今回の学会に参加するにあたり、渡航費を援助して頂いた公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
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令和5年度 外国派遣研究者報告
14th International Polychaete Conference(IPC14)参加報告
渡航期間:2023年6月30日~7月9日
所属:東北大学農学研究科 生物生産科学専攻
水圏生産科学講座 生物海洋学分野
学年:博士課程前期 2 年
氏名:北島周
私は2023年の7月3日から7日にかけて、南アフリカ共和国のステレンボッシュにおいて開催された、14th International Polychaete Conference(IPC)に参加しました。そこで「Long-term community dynamics of benthic polychaetes in the innermost part of Onagawa Bay, northeastern Japan from 2007 to 2022」というタイトルで私はポスター発表を行いました。海外への渡航の経験がほとんどない私にとって、日本から遠く離れた南アフリカ共和国に一週間近く滞在し国際学会に参加したということは、研究活動のみならず今後の人生においても大きな影響を与えるような体験でした。
南アフリカ共和国は南半球に位置しているため季節は冬でしたが、少し肌寒いくらいで日本と比べて過ごしやすい時期でした。雨季でもあり現地に到着する前日までは記録的な大雨や河川の氾濫もあったらしいのですが、学会の開催期間は概ね天候にも恵まれステレンボッシュ周辺の美しい景色を眺めることもできました。
IPCはこれまで3年おきに開催されてきましたが、今回はコロナウイルスのパンデミックを経て4年ぶりの開催でした。世界中の多毛類の研究者たちが4年ぶりの再会を喜んでおり、多毛類という分野におけるこれまで長く構築してきた研究者同士のネットワークを感じることができました。またそこに私のような新しい参加者が入ることで、ネットワークがより複雑に紡がれていくことを体感しました。
普段の日本での日常生活において多毛類に関する話題が会話にあがることはほぼありません。多毛類は主に水域の底質などに生息する、普通に生活していては直接関わることが少ない生物群です。しかし、このことをテーマに研究している方々が世界中から集まり、住む国や文化に関係なく共通のテーマで会話ができたことはとても貴重な経験でした。同時にそのような場で英語を十分に使いこなす能力の重要性と自分のその能力の無さを痛感しました。今後は、まずは英語を十分に聞き取り、そして相手に伝わるように伝えることができることを目指して英語学習を行っていきたいです。加えて、まったくの他者に対してオープンになりきれない自分の内面の障壁も感じました。自ら積極的に話しかけ、仲を深めていくことは日本語であっても私の苦手としていることだと再認識しました。学会期間中の様々な交流を通して少しはその壁を崩すことができたように感じるので、これからの日本の日々の生活でも改善していきたいです。そして、将来またこのような機会に恵まれた際には今回よりも一層交流ができるようになりたいです。
研究内容や発表に関しても様々な発見がありました。1つはポスター発表やディスカッションを通じて私の研究の面白い点を客観的に理解できたことです。私のポスターをご覧になってくださった方々とお話すると、長期的で大量の群集のデータを扱っている点を評価してくださることが多かったです。これからもこの点を発展させられるように、本学会で得た新しい観点なども活かしていきたいと強く感じました。加えて、発表のやり方にも学びがありました。今回私は口頭発表を行っていませんが他の参加者のプレゼンテーションを聞いていると、笑いが起きていることも多く非常に和やかな雰囲気でした。分かりやすく研究内容を伝えることは当然大切ですが、ユーモアを交えたり、楽しそうにプレゼンテーションを行うということも聞き手の理解のしやすさに影響を与えることを感じました。
最後になりましたが、今回助成金を頂戴しました公益財団法人翠生農学振興会に厚く御礼申し上げます。南アフリカ共和国という日本から非常に遠く離れた地で学会に参加できたということは大変貴重な経験でした。そして今後の研究への学びや気づき、モチベーションを得ることができました。この経験を活かし、今後より一層研究活動に邁進してきます。
6th International Rice Congress参加報告
渡航期間:6日間 2023年10月15日~10月20日
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
植物生命科学講座 環境適応植物工学分野
学年:博士後期課程2年
氏名:高塚歩
2023年10月16日から19日にかけて、フィリピンのマニラにあるフィリピン国際会議場にて開催された6th International Rice Congress / International Rice Congress 2023 (IRC2023)に参加した。本会は4年に一度開催されており、イネを対象とした研究者が研究分野を問わず世界中から参加する大変大規模な国際会議である。私も、学生の身分で参加できるのは今年が最後ということで、是が非でも参加したいと考えていた。今回、翠生農学振興会にご支援をいただいて本会議に参加することができ、大変貴重な経験をすることができた。
実はフィリピンに到着後、体調を崩してしまい、休養に徹した日もあるため4日間全日参加することは叶わなかった。疲労が蓄積していた自覚はあったが、実際に学会に参加できなくなるとやるせなく、ご支援もいただいているのに申し訳ないと思った。今後はこのようなことがないように、まずは体調管理を第一に、学会に集中して臨めるようにしたい。
IRC2023の研究者たちは、イネ材料の研究者といっても、生理学や生化学を駆使した基礎科学というよりは、食料生産を念頭におく農学研究者がほとんどであった。私は遺伝学、育種学をメインとしているが、どちらかというと基礎科学分野で研究を行っているため、実用・応用的思考を持った彼らの熱意はなかなかに新鮮であった。同時に、自身の研究も農業生産の現場に還元したいという思いと、農学は実学であるべきという考えを再認識した。全体的な印象として、AIや機械制御を利用する生産現場におけるデジタル化の推進や、種子を直接田畑に播種することで持続可能かつ効率的な生産・開発を目指す栽培体系の提案などに関する報告が多いと感じた。遺伝子解析により個体レベルでイネ栽培を制御しようという取り組みをしている私は、本会議の報告を聞いて研究成果を生産現場に直に適用できそうな分、安定した戦略を立てるのが大変そうだと感じた。お互いの分野でコラボレーションをすることで、安定かつ効果的な生産技術を生み出すことができそうだと想像した。
私の研究発表を含むセッションでは、本会議では数少ない遺伝学的なアプローチでイネの収量を増加させる研究報告が多かった。自身の研究内容と非常に近かったが、それでも彼らは技術応用を目指してさらに数歩踏み込み、各国に適した品種の探索などを行っていた。その研究は予想どおり、従来のイネ系統の遺伝的背景を利用した育種体系中心としたものであった。日本の当該分野とは毛色が異なり、自身の研究内容がさらに基礎科学寄りに感じられ、彼らの興味のある内容であるのか不安になった。それでも、口頭発表後はいくつか質問をしていただき、議論は盛り上がっていたのではないかと自負している。議論の内容としては、育種利用を目指した我々の新規イネ系統について、実際に使えそうなのかどうかというような現場利用を意識したものがやはり多かった。
口頭発表を通して、研究内容を振り返ることもできたが、同じくらい自身の英語でのコミュニケーション能力の低さを実感できた。質疑応答では正確に質問の意図を理解し、満足にこちらの考えを伝えることもできずにもどかしかった。終了後質問していただいた方、司会の方と話してようやく議論が進んだという印象だ。彼らは励ましてくれたが、非常に不甲斐ない思いである。世界の研究者と交流を深める機会であったが十分な情報発信ができず後悔が残る。
総括すると、トラブルもあったが世界の研究者のイネ科学に対する興味を知ることができ、非常に有意義な国際会議であった。新たな知識やトレンドを知ることができたことも大きいが、何より自身の研究課題のイネ科学研究における立ち位置を把握できたことが1番の収穫だと考えている。正直なところ、マイナーな研究課題であり、生産現場からすると早急の必要性はないものかもしれないと感じる。今一度、私の興味・経験を基にアプローチの仕方を考えて、どのようにして農業生産に貢献できるか再考する機会としたい。博士課程学生のタイミングで参加できたこともひとつ貴重であった。今後も世界的な課題やトレンドを意識し、海外での研究活動も視野に入れて勉強していきたい。
SCESAP Biodiversity Symposium (口頭発表) の参加報告書
渡航期間:2023/10/26 ~ 2023/10/31
所属:東北大学大学院農学研究科
生物生産科学専攻 水圏植物生態学分野
学年:博士課程前期 2 年
氏名:堀江 莉那
私は 2023 年 10 月 26 日から 31 日まで、台湾の高雄市にある国立中山大学にて開催された SCESAP International Biodiversity Symposium に参加いたしました。感染症による制限が緩和されたため、今回初めて対面の学会を経験することができました。
この学会に参加するにあたり、発表や他研究者からの学び以外に自分の英語力を試すという目的を持っていました。結果、どちらの目標も達成することができました。
この学会はアジア圏の研究者や学生が主として集まるもので、マレーシアやタイ、フィリピンなど暖かい地域からの参加が多くありました。そのため、サンゴの育成や保護に対しての研究が多くみられました。サンゴは暖かい地域での重要な観光資源であり、そのような日本では珍しい研究動機がとても新鮮でした。
私の発表は 2 日目の午後に口頭で行いました。大型海藻の光の色と栄養に対する反応という内容で今までの成果を発表しました。前述の通り海藻の研究発表は少数派だったので不安でしたが、興味を持って聞いてくださった方々のおかげで、問題なく話し終えることができました。これからの研究に取り入れたい案を頂くことができた一方、質問への受け答え中に勉強不足を改めて感じました。
他の参加者の口頭及びポスター発表からは、新しい知識や考え方と聞き手の興味を引くような発表の仕方を学ぶことができました。自身のテーマに似ているという理由から特に興味を持ったのは、サンゴに当てる光の色を変えてサンゴへの影響を調べるという研究を紹介したポスター発表です。これからデータを扱う上で有用である統計や、どのように論文を組み立てるかなどを学びました。学会を通して、ポスターを担当された方とお会いすることができなかったことが心残りです。また、口頭発表をされていた中に、特に聴衆の注意を惹くことが上手なマレーシアの学生がいらっしゃいました。話し方の緩急やスライドの構成で飽きさせないことはもちろん、間に挟む雑談で研究対象を身近に感じさせ、自身の研究の有用性を伝えていました。今までに見たことがない程研究の魅力を伝えることが上手く、自身の至らなさを実感すると共に目指すべきものを得られました。
さらに今回、学会後の交流も初めて経験することができました。日本人学生との交流では他大学の研究では何に注目しているかなど研究の様子を知ることができました。英語を用いた交流について、私は特に北京とフィリピン出身の方々と多くの時間を過ごしました。北京出身の方は台湾の大学で学ばれている方で、現地でおすすめのお店などを教えてくださいました。フィリピン出身の学生とは地元の文化について教え合い、先生からは新しい英語の表現を学びました。今回の台湾は私にとって、学部入学直前に参加した語学研修以来の海外でした。当時は伝えたいことを考えて、少しの会話をすることしかできませんでした。その後環境に恵まれ、研究室では留学生の方々と多くの時間を過ごし、感染症流行下にも関わらず英語に触れる機会を得ることができました。今回、応答のスピードが上がっていたことから語学力の成長を実感できました。一方語彙や発音について改善しなければならないことも多く、これからの課題となりました。
最後に、本学会への参加にあたり助成を賜りました翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。一度諦めた中、このような成果を持ち帰ることができたのは貴会のご支援あってのことでした。今回得た自信と認識できた不足点をもとに、これから学習を続けていく所存です。
SCESAP Biodiversity Symposium, Kaohsiung 2023の参加報告書
渡航期間:2023 年 10 月 26 日~ 11 月 2 日
所属:東北大学大学院農学研究科
生物生産科学専攻水圏植物生態学分野
学年:博士課程前期 1 年
氏名:金田 貴聖
私は2023年10月27日から31日にかけて台湾の高雄市で開催されました、SCESAP Biodiversity Symposium, Kaohsiung 2023に参加し、「Effects of field illumination with blue light on the aquaculture of Undaria pinnatifida」というテーマでポスター発表を行いました。本学会は沿岸の生態系と生物多様性に焦点を当てた学会となっており、アジア各国から参加者が集まっていました。
ポスター発表は2日間、口頭発表間のティーブレイクに行われました。今回の学会が私自身初めての国際学会でしたが休憩時間を兼ねていることもあり、比較的リラックスして発表することが出来ました。また、他の方のポスター発表、口頭発表を拝聴する時間も多くあり、見やすいポスターや分かりやすい、聞きやすい発表について学ぶことが出来ました。魅力的な発表をされた方はどなたも、明るく、抑揚をつけて話し、自信が感じられました。そして初めて見る図や挿絵の表現にも感嘆していたのですが、同時に現段階の自らの能力不足について痛感しました。ポスター自体もさることながらなんともしどろもどろな発表をしてしまっていました。初めての国際学会ということを差し引いても劣悪なものだったと思いますが、その分多くのことを吸収することが出来、有意義な時間を過ごすことができたと思っています。伸びしろです。
最も痛感したのは私自身の英語力の低さです。せっかく質問を頂いても何度も聞き返し、聞き取れても適切なフレーズで満足に答えることが出来ませんでした。きちんと質問に応えられていたのか、正直今も分かりません。雑談を含め様々な方と積極的に交流を行いましたが、伝えたいことを伝えられないもどかしさ、聞き取れない時の置いてかれている感は拭えませんでした。元々自分の英語のレベルを知りたいという思いもあり参加した学会でしたが、一種の挫折を味わったように感じます。ただマイナスなことだけではなく、何度か聞き返せばある程度理解できたこと、英語でジョークを言い合い笑いあえたこと、海外の方とインスタ交換まで漕ぎつけたことはなんとかなるという自信にも繋がっています。今回の経験から、ポスター、口頭での魅力的な発表方法、自分の英語レベルを確認できたこと、台湾という異文化を体験できたことはとても大きな財産になりました。
最後になりますが、今回の国際学会に参加するにあたり、渡航費用を助成して頂いた翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。この貴重な経験を今後の研究生活や人生に生かすよう努め、精進してまいります。
SCESAP 参加報告
渡航期間:2023年10月26日 ~ 11月1日
所属:東北大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻
水圏生産科学講座 水圏植物生態学分野
学年:博士課程前期1年
氏名:新津彩花
私は、2023年10月27日から10月31日にかけて、台湾の高雄で開催されたSCESAPに参加し、口頭発表を行いました。SCESAPとは、Society for Coastal Ecosystems Studies – Asia Pacificの略であり、学会ではアジア諸国の人々が集まって海洋の生物多様性に関する研究の内容共有を行いました。近年、コロナウイルス蔓延の影響を受けて対面での交流の機会がなかなか得られなかったことから、各人が対面開催のありがたみを持って学会に臨んでいたように感じました。
私は学部4年次より、岩手県陸前高田市に位置する広田湾で海藻の種組成の調査を行っています。学会では、広田湾における現在の海藻の種組成と過去からの変化、種組成を決定付ける環境要因について発表しました。学会発表は今回で二度目でしたが、一度目はコロナウイルスの影響によりオンラインでの開催でした。また、前回は国内の学会であったことから、今回が初めての対面学会かつ国際学会となりました。そのため、発表時に緊張したことはもちろん、その他の交流の時間における英語でのコミュニケーションには苦労しました。しかし、こちらが身振り手振りを交えながら伝えたいという意志を示すと、どの参加者も熱心に聞いてくれました。発表は、緊張のため平常心を保つことができなかったこともあり、少々不本意な結果となりました。しかし、海藻を専門とする先生方が私の研究に興味を持ってくださり、今後の研究に関して助言をいただくことができ、参加して良かったと感じました。また、今回の失敗経験は、次回の学会発表をより良いものにするためのモチベーションとなりました。
今回の学会では、食事会や野外プログラムを企画していただいており、他の参加者との交流を深めることができました。食事会ではフィリピンの研究者グループや国立中山大学の学生とお話しました。研究の話に限らずお互いの文化や生活等について、お話することができ、大変楽しい時間を過ごすことができました。また、九州大学の学生・教授とも交流を深めることができ、研究のネットワークを広げることができました。
今回の国際学会で学んだことは大きく2点あります。一つ目は、他国の研究者のプレゼンテーションスキルの高さです。スライドやストーリーは筋が通っていて誰でも分かりやすい内容となっており、かなり作り込まれていると感じました。そして何より、活き活きとした話し方から研究に対する熱意が伝わり、思わず聴衆が引き込まれてしまうような発表でした。同時に、他国の研究者の英語力の高さを痛感しました。母語が英語でない参加者でも流暢な英語を話し、英語でのディスカッションを難なくこなしていました。これらのことから、自身の今後の課題は英語でのディスカッション力の向上と発表の魅せ方の工夫であると感じました。二つ目は、専門外の研究対象に関する知識です。今回の学会は南方地域出身の参加者が多かったことから、海藻よりもサンゴに関する研究が多く見られました。これらの発表から、サンゴが生み出す生態系やサンゴ礁造成の現状・課題など、サンゴに関する知識を得ることができました。私は、今まで海藻のみに焦点を当てて情報収集を行ってきたため、この経験は自身の知見を広げるきっかけとなりました。
このように、SCESAPに参加したことで自身の世界が広がったことはもちろん、研究に対する意欲が高まったと感じています。最後になりましたが、今回の国際学会に参加するにあたり、渡航費用を助成していただいた翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。この度の海外渡航で得た経験や知識を、今後の研究活動に活かし更なる成長を遂げるため、より一層精進してまいります。
32nd Fungal Genetics Conferenceの参加報告
渡航期間:2024年3月9日~2024年3月19日
渡航場所:米国、アシロマ
所属:東北大学大学院農学研究科 農芸化学専攻
生物化学講座 真核微生物機能学
学年:博士課程後期2年
氏名:ジョン ダミン
翠生農学振興会の助成金のおかげでアメリカのアシロマで開催された第32回Fungal Genetics Conference (FGC)およびコウジ関連内容が集まっているAsperfestに参加しました。この 学会は、菌類に関する最新の研究や発展について議論する貴重な機会であり、世界中から多くの研究者が集い、熱心な議論が交わされました。私の研究にとっても大変有益な経験となりました。
まず、Asperfestでは、コウジを利用する多くの研究者に会うことができました。日本人の研究者も多く見られ、日本でのコウジ関連研究の深さを改めて認識することができました。本会場では、糖輸送体についてプログラミングを通じて広範囲に予測する研究発表を聞いたり、未来の燃料産業のためのキシロース輸送体に関する研究についてポスターを見たりしました。現在、イソマルトース糖輸送体について研究しているので、とても興味がありました。従って輸送体に関する研究について多くの知識を得ることができ、現在の研究に大いに役立ちました。特に、自身の研究に関するポスター発表を通じて、様々な国籍の研究者とのディスカッションを行い、新しい視点やアイデアを得ることができました。さらに、学生優秀ポスターに選ばれ、200ドルの賞金を受賞することができました。予想外の喜びであり、とても誇りに思っています。
Asperfest以降、FGCではコウジ以外にもFusarium、Magnaporthe、Candidaなど、さまざまなカビを用いた研究内容について学ぶ機会がありました。菌類遺伝学に関する幅広いトピックに触れることができ、特にプログラミングを利用した予測分析ツールが多用されていることに興味を持ちました。これらのツールを自身の研究にも応用してみたいと考えています。これに関して、学会期間中にはワークショップやゼミも開催され、最新の技術や手法について学ぶことができました。 プログラミングを頻繁に使ってみなかったので、わかりにくかったのですが、新しいツールをたくさん見つけて楽しかったです。特に、本人の研究によく参考して利用するFungiDBの運営チームや開発者と会い、より詳細な利用方法や今後の開発方向について聞くことができた点は、他の学会では体験できない利点であったと考えます。
最後に、FGCでも自身の研究についてポスターセッションで発表する機会を得て、他の研究者との交流を通じて、新しいアイデアや知識を得ることができました。Asperfestと比べても人数が多く、多様性があり、他者の分野を尊重して理解しようとする姿勢が印象的でした。日本とは異なり、特に興味深かったのは、夕食後に自由に進行するポスターセッションという点です。朝から様々なワークショップやゼミに参加した後も 疲れを感じることなく飲み物やビールを楽しみながら自由に質問することが 続き、毎晩遅くまで続きました。これは研究に没頭し、またそれについて議論することを心から楽しんでいる人々が集まるからこそ可能だと感じました。私も今後、本人の研究について情熱的に議論しながら、より楽しむことを望んでいます。
まとめると、アシロマの学会に参加を通じて、次世代シーケンシング技術の進展や生物情報学の応用に関する情報を得ることができ、さまざまな研究者と議論が交わされました。これらの貴重な経験は今後の研究に大きな影響を与えるものと確信しています。その上、英語でのコミュニケーションは簡単ではありませんでしたが、様々な国の人々との対話、そしてアメリカ文化体験を通じて、個人的にもより広い視野を持つようになる経験でした。
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令和4年度 外国派遣研究者報告
ISCE-APACE 3rd Joint Meeting参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
生物生産科学専攻専攻 応用昆虫学分野
学年:博士課程後期1年生
氏名:千葉 勇輝
私は2022年8月8日から8月12日まで、マレーシアのクアラルンプールで開催されたISCE-APACE 3rd Joint Meetingに参加し、本国際会議において口頭発表を行いました。今回参加した国際会議は、Asia-Pacifi c Association of Chemical Ecologists (APACE)およびInternational Society ofChemical Ecology(ISCE)という2つの化学生態学分野の国際学会によって共同で開催されました。昨今のコロナウイルス蔓延の影響も踏まえ、オンサイトとオンライン併用の学会となりましたが、約270題の演題が発表されオンサイトでの参加者も多くいたため、大いに盛り上がった国際会議となりました。
私は、コウチュウ目ハムシ科昆虫における体表ワックスの情報化学物質としての機能とその受容機構における味覚受容器の重要性について口頭発表を行いました。学会発表は初めての経験ではありませんが、以前発表した全ての学会発表がコロナウイルスの影響によりオンラインでの発表でしたので、本国際会議が私にとって初めてのオンサイトでの学会発表となりました。発表は少し緊張しましたが、幾度となく実施した発表練習のおかげで簡潔かつ明瞭な発表を行うことができました。また、私は本国際会議にてStudent Travel Awardを頂戴し、Future Generations of ChemicalEcologistsというシンポジウムで発表を行うことができたため、幸運にも多くの方が発表を聴講してくださいました。質疑応答では4名の方から質問を頂き、いずれも活発なディスカッションができました。さらに、発表後も多くの方からお声がけいただき、研究に関する意見交換を行うことができました。発表前は、自分の研究に興味を抱いてくれる方がどれだけいるか不安に感じたこともありましたが、予想を上回る反響が得られ、今後も研究を精力的に進めていくための糧にすることができたと感じています。
また、本国際会議を通して、他の参加者らの研究発表から大いに刺激を受けることができました。多大な労力を要するフィールドワークや私が知らない解析法を駆使した研究など、魅力的な研究発表を多く聴講することができました。その中には、自分の研究に生かせそうな知見を得られた発表もあり、研究をさらに発展させていくうえでも本国際会議は有意義なものでした。また、国際会議開催中に出会った研究者の中には連絡先を交換させていただいた方もいるので、国際共同研究なども視野に入れたグローバルな研究活動を展開できたらと考えています。
今回のマレーシアへの渡航は、私の人生で初めての東南アジアへの渡航でした。国際会議開催期間中は、合間を縫っていくつかの観光地にも赴くことができました。訪問した全ての場所で、日本とは全く異なる風土や文化、食、人々の価値観に触れることができ、日本では得がたい多くの経験を得ることができました。また、現在ではコロナウイルス蔓延に伴う渡航制限が緩和されたとはいえ、ワクチン接種証明に関する手続きやマレーシアの病院におけるPCR検査の実施など、多くの手続きが必要となる中での海外出張でした。また、単身での海外出張ということもあり、不安に感じていた点もありましたが、順調な海外出張にすることができました。国際会議への参加を通して研究者としてだけでなく、人間的にも成長できたと自負しております。最後となりますが、国際会議への参加を支援していただいた翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。皆様のご支援なくして実りある海外出張はなしえませんでした。今回の海外出張で得た経験や知識などを、今後の研究生活や人生に生かすよう努める所存です。
19th International Aspergillus Meetingおよび16th European Conference on Fungal Genetics参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
農芸科学専攻 応用微生物学分野
学年:博士課程前期1年生
氏名:薄田 隼弥
私は2023年3月3日から3月10日にかけて,オーストリアのインスブルックにて開催されました19th International Aspergillus Meeting(Asperfest 16) および16th European Conference on Fungal Genetics (ECFG 16) に参加いたしました.私は両会議にてポスター発表を実施した他,Asperfest 19 におきましては口頭発表にも招待され,発表いたしました.
旅程は本会であるカビ分子生物学会ECFGのサテライトワークショップであるAsperfestの参加より始まり,これはSoWi Universityにて開催されました.ワークショップとなりながらもポスター演題数は100弱,と日本国内で参加する同分野の学会レベルに匹敵するもので,糸状菌Aspergillus属に関わる多くの内容が議論される大変内容の濃い会議でした.私は1日目にAspergillus oryzaeの培養工学に関する内容のポスター発表を,2日目に同内容にて口頭発表を実施いたしました.ポスター発表では,他大学の研究グループから鋭い質問をいただいたほか,糸状菌培養に関わる高い技術を持つ企業の研究者と,国内学会ではできないような詳細な議論をすることができ,改めて海外の研究活動のレベルの高さと情報収集の卓越さを実感することとなりました.本ポスター発表につきましては,スポンサー企業の選出による学生ポスター賞を受賞させていただきました.2日目に行われた口頭
発表では,私は要旨内容から選抜されての招待口頭発表という区分で発表させていただきました.学会のメインテーマはカビの分子生物学であり.私の研究は培養工学寄りということでテーマに若干の解離があるかと思われましたが,質疑応答では興味を持ったご意見を多数いただき,また自身とは異なる視点の質問も受けたことで自身の研究に対する視野が広がる貴重な経験となりました.口頭発表終了後にホテルへ戻る帰路でも,他国の参加者から発表内容に関してご質問を受け,多くの方に関心を持っていただけたことと感じました.
3日目以降はCongress InnsbruckにてECFG大会が始まり,本会では私はAsperfestと同様の内容にてポスター発表を実施いたしました.本ポスター発表では,他国で糸状菌培養を研究される研究者とも議論することができ,研究室実務レベルのトライアンドエラーなど対面学会ならではの現実的な議論をさせていただきました.また,先日までのAsperfestにて私の口頭発表に興味を持ってくださった方から,もう一度詳しく発表してほしいというようなご要望もあり,口頭発表にて多くの研究者に私の研究をアピールすることができたのではと実感できました.
また,本会では日本の他大学より参加された研究グループの皆さんとも交流を深めることができました.これまでの国内学会ではコロナ禍によりオンライン開催が多く,見ず知らずで終わってしまいがちでしたが,国際学会の対面の場にて糸状菌研究の議論ができ,大変有意義な時間となりました.
最後になりましたが,本会議への参加にあたりまして助成賜りました貴財団へ厚く御礼申し上げます.ポスター賞受賞をはじめ多くの大変貴重な経験をさせていただく機会となり,大学院での研究過程において非常に重要なステップアップとなりました.重ねて御礼申し上げるとともに,今後も研究活動へ一層邁進してまいります.
国際学会参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
農芸科学専攻 応用微生物学分野
学年:博士課程前期1年生
氏名:高橋 尚央
私は2023年3月4日から3月5日にかけて開催された19th International Aspergillus Meeting(Asperfest19)と、2023年3月6日から3月8日にかけて開催された16th European Conference on Fungal Genetics (ECFG16)に参加し、発表を行いました。ECFG16は世界最大規模の真菌遺伝学学会であり、Asperfest19は真菌の中でも特にAspergillus属に分類されるカビを対象にした会議でした。いずれの学会もオーストリア・インスブルックで開催されました。インスブルックは、オーストリア西部チロル州の首府で、周りをアルプスの山々に囲まれた風光明媚な土地です。学会期間中は天候にも恵まれ、まだまだ雪の残る壮大なアルプスの山々を眺めながら、気持ちよく過ごすことができました。
私は二つの学会それぞれでポスター発表を行いました。初めての国際学会ということもあり英語でのコミュニケーションには苦労しましたが、こちらが熱意をもって接すると、どの研究者も熱意をもってそれに応えてくれました。コロナウイルスの影響で対面での学会がなかなか開催できない昨今の事情もあり、私自身もほとんど国内の対面学会での発表経験が無い状態で今回の国際学会に臨みました。緊張しながらも学会期間中に様々な国の研究者とディスカッションを交わしましたが、対面でのコミュニケーションでしか伝わらないような各人の研究に対するこだわりや、サイエンスに対する情熱が感じられ、とても刺激を受けました。またこのような場所で議論を交わしたい、と思えるような有意義な時間でした。
私の研究では、麹菌Aspergillus oryzaeの胞子・菌糸の表面を覆う『ハイドロフォビン』と呼ばれる小サイズの界面活性タンパク質を扱っています。今回学会で発表した内容はハイドロフォビンの物理化学的な解析を行ったものであったため、遺伝学的な研究の発表が多いAsperfest19・ECFG16では少し引きの弱い内容であったように感じました。しかし、他の研究者の発表を見て、テーマに関わらず内容のまとめ方や見せ方、発表の仕方がよく練られており、魅力的な発表に仕上がっていることに気が付きました。今回の私の発表が聴衆の気をあまり引けなかったのは、私自身のプレゼンテーション能力の不足であったと思います。自身の研究をより魅力的に他者に伝えることは研究者の重要な素養の一つであることを改めて実感しました。また、そもそも他者の目に魅力的に映るほど研究意義・問いを持った研究であったのか、その問いに答えるのに十分なデータセットを提示できていたのか、という研究全体のデザインについても更なる検討が必要であるように感じました。
このように反省点が多く上げられる学会でしたが、楽しいことも多々ありました。ハイドロフォビンはマイナーな研究対象ではありますが、ECFG16では同じくハイドロフォビンを扱うドイツの研究者と出会うことができました。話題を共有できることが嬉しく大分話し込んでしまったのですが、有益な情報交換ができとても貴重な体験となりました。また、学会後には韓国の研究チームと一緒に夕食に出かけ、同年代の学生と交流することができました。研究の話のみならず、お互いの国の文化や流行について話し、楽しい時間を過ごすことができました。
今回の海外出張では、研究発表を通して様々な課題を見つけることができました。研究デザイン、プレゼンテーション、コミュニケーションなど研究者としての能力を総合的に鍛える必要があると強く感じました。今後の研究のモチベーションにつながる素晴らしい経験ができたと思います。最後になりましたが、今回の国際学会に参加するにあたり、今回の渡航費用を助成して頂いた翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。この貴重な経験を日々の研究活動に生かし更なる成長を遂げるため、より一層精進してまいります。
令和元年度 外国派遣研究者報告
FEMS 2019 (8th congress of European microbiologists)参加報告
D2 Binghui Zhou
Laboratory of Animal Products Chemistry
Department of Science of Food Function and Health
Bioscience and Biotechnology for Future Bioindustries
Graduate School of Agricultural Scienc e
Tohoku University
I participated in FEMS 2019 (8th congress of European microbiologists) on 7th-11th, July, which was held in Glasgow, Scotland. I also attended a mini-symposium hosted by Professor Riitta Korpela , Faculty of Medicine, University of Helsinki in addition to the tour at her laboratory.
As the biggest city in Scotland, the third in the United Kingdom, Glasgow is a historic harbour city not only as a major center of Scottish Enlightenment in the eighteenth century but also as an economic center nowadays. It was a comfortable climate in July, the temperature was around 25℃ with lower humidity than Japan during the day. You can find historical buildings mainly in Glasgow Styleand Victorian architecture. The apartment we lived in this time was one of a series of the red sandstone building and it seemed to be atypical european style of apartment in Glasgow. As walking through the city, I was feeling staying in a huge museum because there wereso many historical train stations, ancient walls and old gorgeous restaurants. However, along the river Clyde, modern buildings alsoattracted my attention. The Scottish Exhibition Campus (SEC), in where FEMS 2019 was held, shaped like a metal UFO with several hallsand meeting rooms. Glasgow is such a charming city with both historical and modern atmosphere.
FEMS is held in European cities every two years and congresses are the only scientific meetings at European and international level providing discussion between all microbiological specialties. FEMS 2019 which we, Professor Haruki Kitazawa and postdoctoral fellow Dr.Aminul Islam, participated in this congress, was in collaboration with Society for Applied Microbiology (SFAM) and was a gathering of leading scientists in different fi elds of microbiology, together facing some of global challenges such as antimicrobial resistance, environment pollution and the emergence of pathogenic disease.
On welcome reception on the first night, a co-worker of Dr. Aminul happened to attend the congress in coincidence. They talked aboutthe research career these years and in the future. It felt to me amazing that friends who had not seen for many years could meet at acongress of microbiology because of science. I gave a presentation at the poster session on the second day of the congress. The title ofmy poster is “Selection of wakame assimilative lactobacilli and in vitro evaluation of their immunomodulatory potentials”. Although I wasnot worried about my English, as the fi rst time to present at an international congress, I became nervous when I presented in front ofstrangers. However, Professor Kitazawa and Dr. Aminul kept telling me to calm down and be relaxed because I knew most of my posterthan any of the others. Thanks to the advice and the practice, I was able to communicate with those who were interested in my research. I presented my poster in fluent English quite better than imagined. The main object of my research was wakame and lactic acid bacteria and I thought that wakame was known to everyone. Therefore, I did not prepare details about wakame. However, I realized that apparently, no one knew wakame in Europe because most of them who asked me questions started with “Can you tell me what is wakame?”. Things that are normally seen in daily life in Japan or Asia, maybe unique to the other side of the world. I wish Icould have brought the real wakame to show everyone in this time.
At the end of the poster session, there was a moment of regret that I wanted to say more about my research, but it was an unforgettable experience to introduce my research to the public in scientific English. It was an opportunity to improve my Scientific English speaking ability and also, knowledge of microbiology was broaden by attending lectures in different fi eld and presentation by young researchers.
After FEMS 2019, Prof. Kitazawa and I attended a mini-symposium hosted by Prof. Riitta Korpela , Faculty of Medicine, University of Helsinki . Prof. Korpela’s lab was doing researches on lactic acid bacteria contained in a traditional fermented dairy product Viili, which had a part overlapping with my research. It was a great opportunity to know about the trend of fermented products in Finland and Europe and to consider future research on lactic acid bacteria during the symposium and warm discussions with students after each talk. After the symposium, Prof. Ritta Korpela showed us around her laboratory. I have learned more about a new lactobacilli strain from theyoung researchers of the same generation at the mini-symposium, which contributed to a great improvement in motivation for futureresearch.
Last but not least, I would like to express my sincere appreciation to all members of Suisei Nougaku Shinkoukai for the grant. It was a great opportunity to participate in an international conference like FEMS 2019. I will try my best to make use of this experience and work harder in my research.
Indonesian Academic Trip (Asian Congress of Nutrition, University of Sebelas Maret, and Bakrie University)
参加報告
D1 Wahyu Dwi Saputra
Laboratory of Nutrition
During last August 2019, I had a chance to visit my home country, Indonesia, as a part of the academic program from the Laboratory of Nutrition, Tohoku University. Totally, I visited three separated events or institutions including the Asian Congress of Nutrition (ACN)2019 in Nusa Dua, Bali, the University of Sebelas Maret in Surakarta, and also Bakrie University in Jakarta.
I started my trip by attending the Asian Congress of Nutrition (ACN) on August 4th-7th, 2019 in Nusa Dua, Bali, Indonesia. The ACN is the biggest four-year meeting for nutrition-related experts throughout the Asian continent. In the fi rst day, August 4th, I attended theopening ceremony of ACN which was followed by the plenary presentation by Prof. Alfredo Martinez (President of International Union ofNutritional Society/IUNS) and Prof. Teruo Miyazawa (President of Federation of Asian Nutrition Societies/FANS). Prof. Alfredo Martinezgave a speech about nutrigenomics application for the precision of nutrition assessment, while Prof. Teruo Miyazawa gave a speechabout food innovation using world-cutting edges technologies. The day after, August 5th, I joined the company symposium sessions heldby FrieslandCampina Institute and DuPont. The topics of this symposium were about the balancing of protein using in early and later-stage of life and also the functional use of human milk oligosaccharides, respectively. Beside joining symposium, I also had a chance topresent my recent work in an oral presentation session. In this meeting, I presented my work about the Vitamin K2 attenuates thelipopolysaccharide-induced infl ammation in mouse microglial cells. In the following day, I attended the symposium held by the JapanSociety of Nutrition and Food Science (JSNFS) about elderly nutrition and nutrition management during emergency and disaster. Thespeeches were given by Dr. Marthalena Purba from Indonesia, Dr Noriko Sudo and Dr Nobuyo Kasaoka from Ochanomizu University andNational Institute of Health and Nutrition of Japan, respectively. I completed my ACN duty by attending some oral student presentationon the last day, August 7th.
After ACN activity, I traveled to my home town in Surakarta, Indonesia to visit University of Sebelas Maret Surakarta. In this university, I had a chance to speak about my work in Japan. Again, I presented my research which had been published in the International Journal of Molecular Science titled “Menaquinone-4 Suppresses Lipopolysaccharide-Induced Inflammation in MG6 Mouse Microglia-Derived Cells by Inhibiting the NF-κB Signaling Pathway”. After the presentation, Dr. Danar Praseptiangga, the head of the department of food scienceand technology introduced me personally all the laboratory work and facilities in his department. Currently, the department of foodscience and technology, University of Sebelas Maret developed a new chocolate-based product. They did several types of research tooptimize the production of chocolate but unfortunately, they still could not analyze the product physiological eff ect. The department offood science and technology, University of Sebelas Maret wish that in the near future, they can also do a nutrigenomic experiment inorder to evaluate their product benefi cial eff ect. Furtherly, they expected me to contribute in this collaboration in the near future.
Before coming back to Japan, I had a chance to visit the department of food science and technology, Bakrie University in Jakarta. In
this university, Dr. Ardiansyah, the head of the department gave me opportunity to share my experience regarding management of research in Japanese university. Interestingly, I did not only give speech but also received fruitful feedback because the audiences weresome young and energic lecturers. They also shared their current work and gave their opinions about how to increase the quality level of research among Indonesian university. It was much interesting that we agreed to have a nice collaboration in the future so that we can make a better and higher quality of nutrition research in Indonesia.
International Symposium on Ruminant Physiology参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
資源生物科学専攻 動物生理科学分野
学年:博士後期課程3年生
氏名:西原 昂来
私は、2019年9月3日から6日にかけてライプチヒで開催されたInternational Symposium on Ruminant Physiology(ISRP)に参加しました。通常のAnimal Scienceの学会は、動物種は指定されることはなく、ウシ、ブタ、ニワトリなどに関する研究が同じ会場で発表されることが多いです。しかし、本学会は、ウシといった反芻動物のみに焦点を当てた珍しい学会です。そのため、反芻動物における生理学分野の学会としては、世界で最も規模のある国際学会ということが出来ます。
会場となったライプチヒは、ドイツの東部に位置するため、元は旧東ドイツに属していたためか、少し寂しい街並みでした。訪れた時の気候は、昼間は暖かいものの夜になると寒かったです。一方、バッハやメンデルスゾーンらのゆかりの地であり、音楽の街として知られています。学会期間中には、バッハの博物館に足を運ぶことができました。また、自然の状態のままで動物を飼育しているライプチヒ動物園も回ることができました。
私は、学会2日目に「ルーメン上皮細胞のToll様受容体5(Roles of Toll-like receptor 5 ligand in the innate immune system in primary bovinerumen epithelial cells)」に関して口頭発表を行いました。国際学会で口頭発表するのは、二回目であるため、スライドを説明するのには問題がありませんでした。しかし、英語での質疑応答に非常に苦労しました。私の発表に関して、二名の方から質問があり、最初の一人からの質問には、何とか返答することができたのですが、二人目の質問を完全に理解できず、返答できませんでした。普段から英語でディスカッションする機会がなく、自 身の準備不足を痛感しました。発表後に質問内容を確認すると、何となくニュアンスは合っていたので、これからは、細かいところまで聞き取れるようリスニングを鍛えたいです。また、卒業後は、海外でポスドクを経験して、英語でのディスカッションも難なく行えるようになりたいです。
学会では、反芻動物に関する発表しかなかったため、とても有意義に聴講できました。特に、カナダの研究グループの「ルーメン上皮のルーメンアシドーシスへの適応機構」に関しての発表は、私の研究とも関連のあるテーマでした。また、論文で名前を見たことがある研究者の発表を実際に目にすることができ、彼らがどのような考えでその研究を思い立ったかを知ることができました。本学会で学んだことを自身の研究に早く還元したいです。全体の発表の内容を振り返ると、日本やドイツからの研究者の発表はマニアックなものが多く、伝わりにくかったと考えました。一方で、カナダやアメリカから来た研究者の発表は、目的がはっきりしていたため、分かりやすく感じました。これからは、研究の目的を、産業面からも分かりやすくして、理解しやすい発表に努めたいと思います。
学会期間中には、韓国人と中国人のドクターと夕食を取る機会を持つことができました。彼らとは、海外でポスドクをするという共通の目的があったため、話が盛り上がりました。また、将来、お互いが教員になった時には、担当している学生を交換留学させてお互いの研究を盛り上げようという話にもなりました。この目標を実現するために、これからの研究や後輩の指導に力を入れたいです。
今回の口頭発表のため、助成金を交付して頂きました公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。今回の経験を今後の研究や研究発表、また、将来、学生を指南する立場になった時に生かし、日本の農学、畜産研究の発展に貢献したいです。
Report of research trip to Indonesia, 2nd – 27th of August 2019参加報告
Tohoku University
Graduate School of Agricultural Science
Laboratory of Nutrition
Doctor program 1st year
Afi fah Zahra Agista
The trip lasted for 24 days in total. It began in 2nd of August through a flight from Narita International Airport to a connecting flight in Kuala Lumpur International Airport, and to its final destination in Ngurah Rai International Airport in Bali, Indonesia. Arrived on August3rd at 12.05 in Denpasar, it took around 45 minutes to get to Nusa Dua, where the Asian Congress of Nutrition 2019 was held. The fi rstday consisted of checked in, re-registration at the front desk, and confi rming the schedule for the next four days. The opening ceremony,exhibition and welcoming dinner were held on the next day. However, most of the symposiums, lectures and presentations were onlystarted on the 5th of August, the next day. On this day I attended some event including those on the theme of biochemistry, cancer &holistic-body composition, and innovations in nutrients for health and wellness. My poster presentation, on the title of “Anti-infl ammatoryeff ect of tryptophan metabolites in fermented rice bran” was held on the 6th of August. On the same day, I also attended somepresentation and symposium on several topics such as early life toddler physiology-gene expression & food innovation, and approachesto control obesity in Asia. The next day, August 7th was the day for oral presentation. The presentation was titled “Potential benefi ts offermented rice bran supplementation on muscle atrophy in streptozotocin-induced diabetic rats”. On top of this, I also attended lectureson the topic of prebiotics for gut microbiota support and beyond. The fl ight from Denpasar to Jakarta departed on the afternoon of 7thAugust. Since it was the beginning of a new term in the university, I attended some discussion session and attended some meetings inBogor Agricultural University starting from the 12th of August. The discussed topics revolted around the approach and result of the fermented rice bran research that has been done in Bogor Agricultural University and in Tohoku University. We also deliberated recent research topics in the fi eld of nutrition, functional food and ingredients, and food technology. These discussion sessions happened sporadically until Friday, 23rd of August. The flight back from Jakarta to Tokyo departed on the 26th of August, and arrived on August27th.
Result
Throughout this chain of programs, I managed to gain some connections and insight on the recent development of the research on fermented food, amino acid and functional food in general. I also managed to learn some intervention programs that had been conducted in several areas in Asia, and the trends on functional foods and its popularity among their consumer. There were chances to see the industry point of view and recognizing several functional food products that already in circulation of the general public. Overall, I think this experience will be useful in tackling the questions and problems that might arise in my own research. It will also assists the development of new research topic in the future and ensure that the next research will be valuable to the public health and wellness.
The 10th Conference of Asia-Pacifi c Association of Chemical Ecologists (APACE 2019)参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 環境生命科学講座 生物制御機能学分野
学年:博士課程前期1年
氏名:中野 颯
私は貴財団の支援を受けて、2019年10月8日~13日にかけて中国、杭州で開催されたThe 10th Conference of Asia-Pacific Association of Chemical Ecologists (APACE 2019)に参加し、ポスター発表を行いました。APACEは環太平洋地域の化学生態学を専門とする研究者を対象とした国際学会で、1997年に第1回大会が開催されてから今回で10回目の開催となります。今回の学会中には169題の口頭発表と66題のポスター発表があり、各国から300人を超える研究者が集まりました。
開催地の杭州は中国浙江省の都市で、中央部には世界遺産の西湖があり国内外から観光客が足を運びます。気候は温暖で、学会中はシャツ1枚で過ごせる日もあるほど過ごしやすい陽気でした。料理は日本人の口にもあう味付けのものが多く、日本でもなじみの深い小籠包はホテルのレストランで大人気のメニューでした。林立する摩天楼や圧倒的な人込みなど、急速な経済発展を遂げた中国の力強さを感じながら渡航期間を過ごしました。
ポスター発表では、キャベツ栽培における葉ダイコンリビングマルチを利用した害虫の抑制効果について報告を行いました。現在の作物栽培では化学農薬に偏重した病害虫防除体系を改め、適切な防除技術を矛盾なく組み合わせる総合的病害虫管理(IPM)に基づいた防除体系を構築することが望まれています。私が発表した葉ダイコンリビングマルチは、化学農薬に頼らない新たな害虫防除技術としてIPMに与する研究となります。本会は近年になってIPMに力を入れている中国での開催ということで、私と同じように新たな防除技術を試験している研究者が多数参加していました。したがって発表内ではそういった研究者の方々と専門性の高い議論を交わすことができたうえ、鋭い質問や貴重な意見をもらうことができました。英語での発表ということで、こちらが聞き取れなかったり、言葉に詰まったりすることもしばしばありました。それでも粘り強く説明を続けた結果として、たくさんの方から興味深い研究だと評価してもらうことができました。努力の甲斐あって、学会の最後にはBest Student Poster Presentation Awardを受賞することができました。流暢に英語を喋ることができなくても、発表への姿勢や研究内容をしっかりと評価してもらえたのだと万感の思いでした。
聴講した発表の中には私の研究内容と重なるものが数題ありました。それらの発表は私の研究の課題やこれから向かうべき方向について大きなヒントを与えてくれました。そのほか、学会中に様々な国の学生たちと意見を交わし各々の研究生活や将来を語ることができました。同世代の学生とのやり取りは私自身の研究へのモチベーションを大いに刺激する絶好の機会でした。連絡先を交換した学生とはこれからも互いの研究について情報交換を行 い、良き研究仲間として切磋琢磨していきたいと考えています。
私は今回が初めての海外渡航でしたが、未知の気候や風土、文化にたくさん遭遇したことで自身の固まっていた世界観に新たな視点を加えることができました。さらには世界の最前線で活躍する研究者たちの熱をこの肌で感じたことで、名状しがたい気持ちの高まりを覚えています。今回手にした様々な経験をこれからの研究生活の中にしっかりと還元し、1人の研究者として大きく成長していけるように研鑽を積んでいく決意です。最後にこの度助成金を交付いただいた公益財団法人翠生農学振興会の皆様には深くお礼申し上げます。このような素晴らしい機会を与えてくださり、誠にありがとうございました。
The 17th International Symposium on Rice Functional Genomics参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 環境適応生物工学分野
学年:博士前期課程2年生
氏名:助友 千尋
私は第2回外国派遣研究者助成金の支援によって、2019年11月3日から11月7日に台湾で開催される「The 17th International Symposium onRice Functional Genomics」という学会に参加してまいりました。こちらの学会は1992年から毎年開催されており、今回で17回目となっております。今回は世界24カ国から360人が集まりました。学会は3日間にわたって開催され、67の口頭発表と150のポスター発表が行われました。イネの遺伝的機能解析に関する研究をテーマごとに7つの分野に分けられており、私は「Genome editing」という部門で発表いたしました。
台北は熱帯に位置する台湾の首都であり、訪問前は暑いのだろうと思っていたのですが現地についてみると半袖で過ごすには涼しすぎる気候で拍子抜けした思い出があります。中心部は高層ビルが立ち並び発展している様子でしたが、スクーターが多かったり、中心部から少し離れると個人経営の小 さいお店しかなかったりと東南アジアのような雰囲気がありました。
私が今回の学会に参加して得た学びは大きく分けて3つあります。1つ目は、グローバルに活動し自分のこれまでの活動を伝えることに喜びや誇りを感じることができるということです。私は国内の学会で口頭発表はしたことがありましたが、国際学会に海外で参加すること、ポスター発表をすることは初めての経験でした。今回の経験で、英語を使い世界中の人に発表を紹介するという行為は学内から国内にとどまらず世界へと活動範囲が広がっていることを実感でき、研究してきた甲斐があったと実感できた瞬間でした。日常では実験室にいる場面が多くまた自身の研究について他の研究者にプレゼンをする場面が多くなかったため、自身の研究内容が他の人にどう思われているか、自分の専門性がどれくらい高まっているのかということを気にすることがあまりありませんでした。しかし、今回の学会に参加して発表し聞いてくださった研究者と意思疎通をはかっていく中で自分の研究活動や専門性は自分が思っている以上に高めてきたのだと知ることができたのはとても嬉しかったです。また、口頭発表では1対多数という関係でプレゼンをするので相手の反応が分かりにくかったりフィードバックを頂くことが困難であったりや興味を持って聞いている人だけではないと思います。一方でポスター発表では少人数での説明が可能であり、自分の研究に興味を持った研究者と話せるということからとても有意義な時間を過ごすことができました。
2つ目として世界中の有名な研究者と出会いディスカッションすることや直接話を聞くことができたのも大きな収穫でした。論文の中でしか知らない研究者が目の前に立ち、世界最先端の研究の話をしているのを聞くことはとてもワクワクしました。私の応募した分野であるゲノム編集技術における口頭発表では植物においても動物と同様に外来遺伝子を挿入せずにゲノム編集を導入することができる技術の研究が紹介されておりました。
3つ目として、同年代の学生の発表から大きな刺激を受けました。ポスターの作り方、発表の仕方から研究での悩みや将来の進路まで様々な話をしました。特に印象に残っているのは学部4年生が堂々と英語で口頭発表をしていたシーンで、あのような姿を目標に私も頑張っていこうと決心しました。
今後ですが私は修士課程をもって研究からは退き、新年度からは化学メーカーの技術営業職に就く予定です。今回の国際学会を通して、自分のこれまでの活動内容を他の人に伝えていくことに大きな喜びを感じられたことから、社内の誇れる技術を社外の人に伝えていく技術営業というは性に合っていると感じられました。このような学びが多かった貴重な機会は本助成金が無くては手にすることができなかったものです。公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。
AMBS 2019 (4 th Asian Marine Biology Symposium) 参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 環境生命科学講座 生物海洋学分野
学年:博士前期課程1年生
氏名:加藤 萌子
私は、2019 年11 月4 日から6 日に台湾、台北にて開催された、AMBS 2019 (4 th Asian Marine Biology Symposium) に参加しました。私は、この学会において、ポスター発表を行いました。
開催地の台北市は、台湾北部に位置する台湾の主要都市です。今回、私は初めての海外渡航であり、異国の空気を体感できることに心躍らせていました。台北は亜熱帯気候であり、11 月の肌寒くなってきた日本とは異なり、非常に過ごしやすい気候でした。道端に植えられている木、マンゴーやドラゴンフルーツを販売するお店からも、植生の違いが感じられました。街を散策すると、漢字ばかりの看板、多数の路上販売店が目に入り、日本と違った街並みを楽しむことができました。このように、初めての異国情緒を感じる一方で、台北には日本からの観光客も多く、商店街では、観光客の日 本語と店員さんの日本語が飛び交っていたり、日本のコンビニエンスストアが多く散見されたりとなんとも不思議な感覚でした。学会のパーティーや、留学生の友人に紹介してもらったお店での中華料理は日本と違う独特な風味が感じられ、量がとても多い上、どれもとても美味しいく、異国の食 文化を楽しむことができました。
AMBS は、2 年ごとにアジアの各都市で開催されており、今回で4 度目の開催でした。台湾、日本、タイ、韓国といったアジア諸国から約 200 名が参加しました。AMBS はアジアの海洋生物の研究者の研究交流を目的としており、研究対象となる生物、海域、分野 (生態学、生理学、分類学等) が異なる研究者が一堂に会します。3 日間を通して、幅広い研究領域の発表、セッションを聞き、海洋生物・環境についてより考えを深めることができました。加えて、内容が面白い研究や、伝え方の上手なプレゼンテーション、同世代の研究者の活躍を見て、自分ももっと頑張らなくてはと刺激を受けました。また、学会全体として、アットホームで和気あいあいとした雰囲気を感じました。休憩やポスターセッション中には、おいしいお菓子をいただきつつ、パーティーやバンケットでは美味しい中華料理と現地の伝統的な歌と楽器の演奏を聴きながら、研究者の方々と交流することができました。話す内容は、アイデア交換や共同の実験計画など研究に関することだけでなく、台湾での観光や趣味についてなど多岐に及びました。私自身も、研究に関する情報を提供していただく約束を取り付けたり、他大学の学生とお互いの研究室の風習について話したりと楽しく交流しました。
私は、Seasonal change of benthic diatoms in Gamo Lagoon, Miyagi Prefecture, northeastern Japan というタイトルでポスター発表を行いました。底生珪藻は干潟域の重要な一次生産者で、生物生産の基礎を担う生物です。しかし、その研究の煩雑さから研究例が少なくなっています。今回、その底生珪藻の個体数密度、群集組成を長期間にわたって分析したデータを発表しました。自分の発表した研究には未解明な部分、課題も多いので、他の研究者から、生物の採集方法やデータ解析方法、海洋の一般的な知識など様々な面からのアドバイスを頂きました。私は、学会発表は初めてであり、その上英語での発表であったため、数カ月前から英語の勉強をし、発表練習も何十回と繰り返して臨みました。そのため、本番では、拙い英語ではありますが、落ち着いて発表、意見交換をすることができました。
今回の学会への参加を通し、自分の研究の糧となる知識やアイデアを得ることができました。さらに、英語でのコミュニケーション能力や、研究への取り組み方、今後の課題も学ぶことができ、非常に有意義な機会となりました。最後になりましたが、学会参加にあたって、渡航費を援助してくださった公益財団法人翠生農学振興会の皆さまには厚く御礼申し上げます。今後、この経験を活かし、研究活動により真摯に取り組み、精進したいと考えています。
14th International Conference of the East and Southeast Asia Federation of Soil Science Societies
(ESAFS 2019)参加報告
所属:東北大学大学院農学研究科
資源生物科学専攻 植物生産科学講座 土壌立地学分野
学年:博士前期課程2年生
氏名:大沼 佐保子
私は11月2日から8日にかけて開催された、14th International Conference of the East and Southeast Asia Federation of Soil ScienceSocieties (ESAFS 2019)に参加し、口頭発表を行いました。
ESAFSは東・東南アジア地域における土壌科学、肥料管理、植物栄養学の研究者たちのプラットフォームの役割を果たしている学会であり、今回は国立台湾大学のGIS Convention Centerにおいて、「持続可能な農業のためのスマート土壌管理」をメインテーマに講演や口頭発表、ポスター発表が行 われました。
本学会で私は、学部・修士と取り組んできた、宮城県中央部に分布する黒ボク土類縁土壌の生成と分類に関して口頭発表を行いました。具体的には、これまで土壌学には応用されてこなかったクリプトテフラ(肉眼視できない火山噴出物)識別を用いることで、黒ボク土類縁土壌の生成に関する検討に、テフラ編年学的視点を加えることができるという研究結果を発表しました。本学会が私にとって初めての国際学会への参加であり、口頭発表をする上では、土壌科学の他分野の研究者の方々に対し、自身の研究を適切に説明できるのかが懸念要素となっていました。結果としては、何とか問題なく発表を終えることができ、口頭発表の質疑応答時間や発表後には新たな視点からの質問や、今後検討すべき観点のアドバイスを頂くことができました。また、個人的に非常に感銘を受けたのが、様々な方から頂いた、「発表を聞いて興味を抱いた」、「面白い研究だ」というコメントでした。これまで、研究室内で議論を重ねる機会は多かったものの、外部の、さらには海外の研究者の方々に自分が取り組んでいる研究がどう映るのかは未知数のところで、その中で非常にポジティブな反応とアドバイスを頂くことができたことは、今後の修士論文のとりまとめや投稿論文を執筆するにあたっての大きなモチベーションにつながりました。
また、学会中には他の研究者の方々の口頭発表・ポスター発表の他、著名な研究者の方々による講演も実施されました。講演は、気候変動による影響が特に深刻であると予想される台湾において進められている、「Smart Agriculture 4.0」と呼ばれる、持続可能な農業を実現するための土壌情報を含むブロックチェーン技術を用いた農業のIT化プロジェクトの紹介の他、「気候変動」・「持続可能な農業」をキーワードに行われました。それらを通し、日頃自分の研究テーマに没頭する中で薄れていた、農学を研究するうえでの現在や未来の環境問題や食糧問題解決への貢献という大きなテーマを改めて強く認識させられました。
最後になりましたが、今回助成金を頂戴しました公益財団法人翠生農学振興会に厚く御礼申し上げます。初めての国際学会参加の機会を頂き、今後の研究の糧となる大きな学びや気づきを得ることができました。この経験を活かし、より一層研究活動に邁進していく所存です。
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平成30年度 外国派遣研究者報告
18th Asian Australasian Animal Production Congress(AAAP 2018) 参加報告書
東北大学大学院農学研究科
資源生物科学専攻 動物生産科学講座 動物生理科学分野
博士課程前期1年
氏名:太箸 誠
私は、8月の1日から4日にかけてマレーシアのクチンで開催された18th Asian Australasian Animal Production Congress (AAAP2018)に参加し、自分が行 った研究に関するポスター発表を行いました。
クチンは、マレーシアのボルネオ島の西部に位置するサラワク川のほとりにある港町で、中国やインドなど様々な文化が入り混じった不思議な街でした。食 べ物に関しても周辺国の文化の影響を大きく受けており、中華料理やインド料理の要素を多く取り込みつつもどこかマレーシアを感じさせるエスニックな料理でとても美味しかったです。滞在期間中クチンの気温は30℃前後であったものの、乾期にあたる季節であったため湿度は低く、日本に比べて過ごしやすく感じました。
AAAPは、2年ごとにアジア・オセアニアの各都市で開催される畜産分野の学会です。アジア・オセアニア諸国から多くの研究グループが参加をしており、発表数は口頭とポスターを合わせて約550と非常に大規模な学会でした。初日に行われたオープニングセレモニーでは、現地の伝統的な踊りや音楽などが披露されたり、他国の研究者の方々と談笑したりと、とても賑やかな夕食会になりました。
私のポスター発表は初日に行われました。私のポスターのテーマは「Effects of butyrate in bovine rumen epithelium using Ussing Chamber」であり、以下に示す内容を発表しました。反芻動物は離乳に際して第一胃(ルーメン)の上皮組織が発達し、エネルギー源である揮発性脂肪酸(VFA)を吸収します。VFAの中でも酪酸は、in vivoにおいて上皮組織の発達を促進する効果を有しています。しかしin vitroにおいてはルーメン上皮細胞の増殖を抑制するという真逆の効果を有しています。この酪酸がルーメン上皮組織に対する作用機序についてUssing Chamberという器具を用いて分析しました。Ussing Chamberとは、ルーメン上皮組織を挟んだ後、管腔側と基底側にそれぞれ培養液を入れることで、ルーメン上皮組織を、生体内を模した状態で培養することのできる器具である。その結果、離乳前の子牛のルーメン上皮組織に対しては大きな影響はみられませんでした。しかし離乳後の成畜のルーメン上皮組織に対しては、酪酸を添加することによって1時間後のルーメン上皮組織のバリア機能はControlに比べ低下するのですが、6時間後のバリア機能は回復傾向にあることが明らかになりました。また遺伝子発現に関して分析したところ、ルーメン上皮細胞間の結合を担うタイトジャンクションの遺伝子発現が有意に低下していることが明らかになりました。
私自身学会に出席するのは初めてであり、その発表が英語ということもあってとても緊張していましが、私の研究内容に興味を持ち、質問してきてくださった海外の研究者の方々のおかげで後半にはリラックスして発表することができました。しかしながら自分の英語力の無さを痛感するとともに、自分の研究内容を十分に伝えることができなかったことに悔しさを感じ、英語の会話力を向上させなければと強く思いました。2日目以降は他国の研究者の方々の発表を聞き、積極的にコミュニケーションをとることで、自分の研究に対する新たな視点および解釈を多く得ることができ、また自分の研究分野以外の研究に関しても広く勉強することができたため非常に有意義な学会でした。
今回の学会への出席は、自分の研究に関して多くの知識を得られたという点だけでなく、研究や英語勉強に対するモチベーションの向上という点においても大変貴重な経験になりました。このような機会を得られたのも、渡航費を助成してくださいました公益財団法人翠生農学振興会の皆様のおかげだと深く感謝しております。今回得られた知識、経験を活かし、より一層研究活動に精進していきたいと思います。
平成29年度 外国派遣研究者報告
FEMS 2017( 7th congress of European microbiologists ) 参加報告
東北大学大学院農学研究科
生物産業創成科学専攻 食品機能健康科学講座 動物資源化学分野
博士前期課程1年
氏名:井形 愛美
私は2017年7月9日から13日までスペイン、バレンシアで開催されたFEMS 2017( 7th congress of European microbiologists )に参加し、それに加えバレンシアの研究都市にあるNational Council for Scientific Research (CSIC)、Institute of Agrochemistry and Food Technology (IATA)の研究室を訪問し、研究交流を行いました。
バレンシアは地中海に面した港町です。日中は30℃程度まで気温が上がりますが、日本と比べ湿度が低いため非常に過ごしやすい気候でした。街を散策すると、ヨーロッパ調の建物やバロック様式やローマ時代など様々な時代背景を残した歴史的建造物が並び、街路樹のオレンジと相成って、壮健な街並みを演出していました。また町の中心部に大きな闘牛場があったり、各所でラテン音楽がかかっていたりと、街の随所にスペインらしさを感じ、滞在期間中は普段と違った日々を楽しむことができました。
FEMSは、2年ごとにヨーロッパの各都市で開催されており、ヨーロッパを代表する微生物学会です。今回私が参加したFEMS 2017はスペインのThe Spanish Society for Microbiology (SEM)と合同開催され、非常に大規模で参加人数の多い学会となりました。本大会では、様々な視点から微生物に関わる研究者が一堂に会し、感染や抗菌物質、微生物分類学など多岐に渡るセッションが行われました。
バレンシアはパエリア発祥の街としても有名であることから、学会初日のWelcome Receptionでは直径1 mもある平たい専用の鍋でパエリアが振る舞われ、参加者を大いに沸かせました。私は、学会3日目のポスターセッションでプレゼンテーションを行いました。私のポスターのテーマは、ブタ脂肪細胞における自然免疫系刺激による炎症・脂肪蓄積応答でした。初めての学会で、英語で発表を行うことに対し大きな不安を感じていましたが、今回一緒に参加した指導教官とポスドク研究員の方からの応援や、また現地で出会った研究者の方からのアドバイスのおかげで、どうにか落ち着いて発表に臨むことが出来ました。午前のポスター発表では研究内容を伝えることに精一杯でしたが、だんだんと緊張が解け、午後のポスターセッションでは拙い英語ながらも研究の展望やアイデアなどについて多くのコミュニケーションをとることができました。終わってみると、ポスターセッションの時間はあっという間で「もっと言いたかった。」と思う部分もありましたが、自分の研究の理解を深め、更に発信するという点で、非常に有意義な経験となりました。質問や意見に対して自分の考えを十分に伝えきれなかったことから、英語のスピーキング能力をもっと向上させなければと強く決心する機会となりました。また、発表日以外には、分野が異なるシンポジウムや若手研究者のプレゼンテーションを聴講し、微生物学の知識の幅を広げることが出来ました。
FEMS開催後には、腸管免疫と代謝に重点を置いて研究を行っているIATAに訪問しました。私の研究テーマとも重なる部分があり、これからの研究の刺激になるような話を聞くことができました。また、訪問中には意見交換や施設見学だけでなく、所属学生の研究発表を拝見することができました。発表では、腸内細菌による脂質代謝への影響について新たな視点から学び、同世代の研究者が活躍を目の当たりにすることで今後の研究へのモチベーションを大きく向上させるきっかけとなりました。
最後になりましたが、今回助成金を頂戴しました公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。初めての学会で、FEMSのような大規模な国際学会に参加する機会を頂き、多くのことを学ぶ大変貴重な経験となりました。この経験を活かし、一層精進して研究活動に取り組みたいと考えています。
International Hybrid Rice Symposium 2018 (IHRS 2018) 参加報告
東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 環境生命科学講座 環境適応生物工学分野
博士前期課程2年
氏名:村上 哲也
私は、2月27日から3月1日にかけてインドネシア・ジョグジャカルタで開催されたInternational Hybrid Rice Symposium 2018 (IHRS 2018) に参加し、ポスター発表を行いました。
日本ではあまり馴染みがありませんが、ハイブリッドライスは、その超多収性という性質から、アジアを始めとした多くの国で作付面積が拡大しています。IHRSは、ハイブリッドライスに関わる最新のゲノミクスや分子育種から、経済学、各国の政策まで、非常に広い分野を扱う学会であり、各国から専門の異なる様々な研究者が集っていました。第7回となる本大会の開催地となったジョグジャカルタは、インドネシアのジャワ島に位置し、多くの大学が集中する教育学研都市、インドネシアの古都として独自の分化を残す観光都市という2つの顔を持つ魅力的な街でした。
ポスター発表では、ハイブリッドライスの育種に利用が期待される、雄性不稔性イネに関する分子遺伝学的な研究について報告しました。私は、英語でのコミュニケーションに大きな不安を抱いていたため、拙いながらにも英語で自分の考えを伝えることが出来たことは、私にとって非常に貴重な経験となりました。しかしながら、「本当はこう言いたいのに」と思う場面も多々あり、実用的にも、交流を楽しむためにも、英会話の能力を向上させたいと強く思いました。大会初日には、各国の研究機関による、自国におけるハイブリッドライス普及の現状について報告がありました。論文では既に確立された技術とされているハイブリッドライスですが、実際には、気象条件、国土の大きさ、他の農産物との関係など、多岐にわたる問題を複合的に考える必要があることを改めて実感し、実用化という段階の困難さを目の当たりにしました。私が行っている研究は、基礎的な側面が強いため、自身の研究に没頭していると視野が狭くなってしまいます。IHRSのような、分野が多岐にわたる学会に参加することで、改めて自分の研究の位置づけや、研究を通じてどのように社会に貢献できるのかを見つめ直すことができました。
研究以外にも強く印象に残っていることとして、ジンバブエの研究者の方と懇親会で同席したことが挙げ得られます。アジアとは大きく環境の異なる、アフリカ大陸のジンバブエでは稲作は一般的ではなく、食糧問題や貧困問題の解決策の1つとしてハイブリッドライスの勉強をしにきたという話を聞き、ハイブリッドライス研究の持つ影響力の大きさを実感するとともに、研究者の1人として責任感を持たなければという身の引き締まる思いがしました。また、私が以前チューターを務めた留学生の、指導教官にあたる方と懇親会で偶然同席するという出来事もあり、縁とは不思議なものだと感じると同時に、こういった場でのつながりを大切にしたいと思いました。
3日目の午後には、実際にハイブリッドライスが育てられている農場の見学をすることができました。仙台の気候ではハイブリッドライスを上手く育てることが難しいため、実際にハイブリッドライスを見るのは初めての経験でした。実際に通常のイネよりも多量に稔ったハイブリッドライスを目にして、以前までは数字だけの感覚であった多収性という性質を、実感を持って理解することができました。本大会を通じて、自分の中でぼんやりとしていた研究の全体像の、はっきりとした輪郭を認識できたような感覚を得ることができました。研究に関わる知識の幅を広げ、自身の研究についてより深く考えられるようになったと感じています。
最後になりましたが、本学会発表にあたり、助成金を交付してくださいました公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。当初開催が予定されていた、バリ島のアグン山噴火に伴う、開催地、開催期間の変更にも快く対応していただき, ありがとうございました。今回得られた知識、経験を活かし、研究活動に邁進していきたいと思います。
18th International Plant Nutrition Colloquium 参加報告書
岡山大学
資源植物科学研究所
特別契約職員助教
氏名:小西範幸
私は貴財団の支援を受けて、8月21日から8月24日にかけてデンマーク・コペンハーゲンで開催された第18回国際植物栄養会議に参加しました。本学会は、1954年にフランス・パリで開催されてから4年ごとに世界各地で開催され、植物栄養学を牽引してきた大規模な国際学会です。18回目の開催となった今回の学会には、50以上の国々から約550人以上が参加し、口頭とポスターを合わせておよそ500題の発表が行われました。会議が行われたデンマークの首都コペンハーゲンは、中世の街並みが残る非常に美しい港町でした。
さて、本会議で私は、以下に示す内容の博士論文の一部をポスター発表で報告しました。植物が利用できる主要な窒素源であるアンモニウムの大部分は、土壌から吸収された後にすぐさま根で同化されます。植物においてアンモニウム同化の最初の反応はグルタミン合成酵素によって触媒されます。アブラナ科のモデル植物であるシロイヌナズナの根には主に4種類のグルタミン合成酵素 (GLN1;1, GLN1;2, GLN1;3, GLN1;4) が発現していることが分かっていました。大腸菌でこれらのグルタミン合成酵素をそれぞれ発現させた場合、GLN1;2とGLN1;3はアンモニウムに対して低い親和性を示し、GLN1;1とGLN1;4は高い親和性を示しました。この結果は、グルタミン合成酵素には分子種ごとの機能分担があることを示唆していますが、植物体内におけるグルタミン合成酵素分子種の生理的役割の違いは分かっていませんでした。本発表では、低濃度と高濃度のアンモニウムを与えた条件でGLN1;2とGLN1;3の遺伝子破壊変異体を生育させ、根におけるこれら2遺伝子の生理的機能の違いを解析しました。GLN1;2単変異体を高濃度のアンモニウムを与えて生育させると、導管液のアンモニウム濃度の著しい上昇とグルタミン濃度の低下、50%以上の新鮮重量の減少を示しました。一方、GLN1;3単変異体はいずれのアンモニウム条件でも野生型と比べて有意な表現型を示しませんでした。ただし、GLN1;2:GLN1;3二重変異体は、導管液のグルタミン濃度と新鮮重量がGLN1;2単変異体と比べて有意に減少しました。GLN1;2またはGLN1;3のプロモーターGFPを用いてこれらの組織分布を解析すると、GLN1;2は根の表皮・皮層・内皮といった表層細胞群に分布するのに対し、GLN1;3は導管への物質の積み込みに関わる内鞘細胞 (内側の細胞群) に分布していました。これらの結果からGLN1;2は根の表層細胞群で高濃度のアンモニウムを中心的に同化し、GLN1;3はGLN1;2の機能をサポートして導管液に積み込まれるグルタミンの合成に貢献することが明らかになりました。
ポスターセッションでは、多くの参加者と私の研究について議論を交わすことができました。この会議には、窒素以外にもリン酸、鉄、マグネシウム、ケイ素などの様々な栄養素の専門家が集まっているおり、幅広い観点から私の研究についての指摘をいただけたと感じております。口頭発表では、植物栄養の各分野を牽引する先生方の話を聞くことができました。これらの中には未発表な刺激的なデータもありましたし、論文を読むだけでは知ることのできない植物栄養分野のトレンド、研究に対する各人の取り組み方などの情報を収集できました。さらに、懇親会や休憩時間には、多くの先生方とお話しすることができ、これまで論文で名前を知っているだけだった方々と直接的な関係を築く端緒になったと感じております。
私は、この春に学位を取り、4月から岡山大学資源植物科学研究所でポスドクとして働いております。研究者として生き残るために非常に重要なこの時期に世界の研究者と交わる機会を得られたのはひとえに貴財団のご支援のおかげだと深く感謝しております。この経験を活かしてさらに面白い研究をできるように精進してまいります。ご支援いただき、ありがとうございました。
Society for Coastal Ecosystems Studies – Asia Pacific 3rd International Symposium 参加報告書
東北大学大学院農学研究科
資源生物科学専攻 水圏生物生産学講座 水圏植物生態学分野
博士課程前期2年
氏名:伊藤 浩吉
私は、2017年12月4日から9日にフィリピンセブ島で開催された Society for Coastal Ecosystems Studies – Asia Pacific (通称 SCESAP) に参加し、自身の研究について英語による口頭発表を行いました。本大会は、アジア太平洋の沿岸域生態系に関する科学や、それらの保全・管理の在り方について議論し、当該分野の研究・教育を発展させることを目的に設立された比較的新しい学会です。2013年の九州天草、2015年のタイでの開催に引き続き、3回目となる本大会には、日本・中国・韓国だけでなく東南アジア諸国 (フィリピン・マレーシア・インドネシア) からも多くの学生・研究者が集いました。このため、欧米や日本といった先進国が中心となる他の国際学会と比べて、すべての国が対等に、分け隔てなく意見を交わすことのできる、とても雰囲気の良い学会でした。発表の場以外でも、ランチやディナー、学会で企画されたさまざまなエクスカーションを通じて参加者同士が交流できる場が数多く設けられており、誰とでもすぐに仲良く会話をすることができました。
開催地がセブということもあり、サンゴ礁やマングローブといった熱帯・亜熱帯生態系の研究報告がほとんどでした。私の研究は、東北太平洋沿岸の海藻藻場という全く環境の異なるテーマであったため、いかに聴衆の興味をひきつけるかが課題でした。図や写真を多用し、文字を少なくしてストーリーを明確にすることで、見やすく、分かりやすく、面白い発表を心掛けました。口頭発表の本番ではかなり緊張してしまいましたが、3分という少ない時間の中で3人の研究者からご質問やご意見を頂き、また発表後も見ず知らずの海外研究者から「面白い発表だった」と声をかけて頂きました。たとえ英語を流暢に話すことができなくとも、自分に自信をもってアピールすることのできる雰囲気、そしてそれを真摯に受け止めてくれる聴衆の方々がいてくださったからこそ成し得たのだと思います。
もちろん、美しい経験ばかりではありません。一歩学会の外に出ると、そこはやはり発展途上国なのだと思いました。開催地のセブ島はその美しい海のイメージで、観光ガイドにもよく載っています。しかし、実際に目にするセブの街中は信号がないにも関わらず交通量が多く、いたるところで路上生活者を目にしました。大型のショッピングモールや大通りではフィリピン人の他に、韓国人や中国人旅行者が多く、さまざまな言語が飛び交っていました。水道水も日本と同じように口にすることはできません。道は完全に舗装されている訳ではなく、建物にもいたるところにひびが入っていました。目にするもののほとんどすべてが、日本ではまず考えられないようなことばかりだったのです。私は改めて、日本がいかに安全で、特殊な環境であるかということを思い知らされました。
とはいえ、今回の渡航経験が私にとっての大きな自信につながったことは事実です。見ず知らずの土地で、母国語以外の言語で自分の意思を伝えるという作業は、学会発表の場だけでなく、滞在期間中の生活についても共通することでした。空港の警備員、ホテルのスタッフ、ショッピングモールの店員、タクシーの運転手……こうした現地の居住者ときちんと会話しコミュニケーションをとれたことも、得難い体験であったと感じています。
学会の最後には、サンカルロス大学の海洋ステーションを訪問し、自分と同じ海藻の研究者と出会うことができました。このつながりを活かして、将来的に南方系のホンダワラ類やその葉上動物も研究したいと考えています。海洋ステーションの後はオランゴに移動し、バードウォッチングやスノーケリング、マングローブ生態系の観察を楽しみました。
最後になりましたが、本学会発表並びに初めての海外旅行にあたり、渡航費を助成してくださいました公益財団法人翠生農学振興会の皆様に深く感謝申し上げます。やはり海外渡航には多くの費用が掛かり、今回も往復の飛行機代が最も大きな割合を占めておりました。この助成金によって、現地での人との交流や体験活動の幅が大きく広がったことは言うまでもありません。この機会に得たさまざまな教訓を今後の研究活動に活かしていきたいと考えております。ありがとうございました。
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平成28年度 外国派遣研究者報告
29th Fungal Genetics Conference および 14th International Aspergillus Meetingの参加報告書
東北大学大学院農学研究科
生物産業創成科学専攻 微生物機能開発科学講座 応用微生物学分野
博士前期課程二年
氏名:宮澤 拳
私は2017年3月13日から14日に開催された14th International Aspergillus Meeting (Asperfest14)および同14日から19日にかけて開催された29th Fungal Genetics Conference (FGC)に参加しました。いずれの学会もアメリカ合衆国カリフォルニア州のパシフィックグローブで開催されました。29th FGCは参加者約900名、計6日間にわたる世界最大規模の真菌遺伝学学会です。私は両学会においてポスター発表を、29th FGCにおいては口頭発表も行いました。
開催地のパシフィックグローブは、ロサンゼルスから北に約500 kmのモンテレー半島に位置する太平洋に面した町です。3月中旬ながら日中は暖かく、時々曇り空が広がるものの学会期間中は好天に恵まれました。学会会場となったAsilomar Conference Groundは歴史的建造物が多数現存しており、また眼前には砂浜が広がる海風がとても心地よいところでした。近隣には米国で有名なモンテレー湾水族館があり、学会期間中に足を運びました。
29th FGCは真菌の様々な生命現象を研究課題とする研究者が一堂に会し、朝から夜遅くまで議論を重ねる場所でした。学会中の一日のスケジュールは、大変魅力あるものでした。午前中には全分野の研究者を集めた口頭発表が行われます。ランチを挟んで午後からは複数のセッションに分かれてより専門的な分野に特化した口頭発表が行われました。さらにディナーの後、ワインやビールを飲みながらポスター発表が行われ、夜10時半まで研究者同士がとてもフランクに議論していました。また、Asperfest14は真菌の研究者のうちAspergillus属の糸状菌を扱う研究者を集めた、29th FGCのサテライトミーティングとして開催されました。
私は、糸状菌のモデル生物であるAspergillus nidulansを用いて、糸状菌の細胞壁成分の一つであるα-1,3-グルカンの生物学的機能に関する研究を進めています。この度の学会でも「Comparative analysis of the function of α-1,3-glucan synthases, AgsA and AgsB, in Aspergillusnidulans」というテーマで発表を行いました。私にとって初めての国際学会発表となったAsperfest14のポスター発表では、多数の研究者から質問・意見をいただくことができました。拙い英語話者である私の発表を英語力関係なく聞いてくださった方がたくさんいらしたことが印象的でした。本会である29th FGCのポスター発表でも、世界の研究者とたくさんの議論を交わすことができました。特に、α-1,3-グルカンに詳しいドイツ人の研究者と、お互いの研究内容や将来の研究方針について長時間にわたり意見交換ができたことは貴重な経験となりました。
29th FGCの最終日には、本学会の大一番である口頭発表を行いました。私にとって英語の口頭発表は非常に難易度の高いものであり、渡米前から入念に準備をして発表に臨みました。本番の15分間の発表の中では、躓く箇所はあったものの、何とか最後まで話しきることができました。しかしながら、発表時間の超過や質疑応答の不備など、至らない点がたくさんありました。このような課題は残ったものの、会場の独特な雰囲気や英語での口頭発表の緊張感など、実際に体験しなければ感じ得ないことを修士二年の段階で経験できたことは、これからの研究生活において大変意味のあるものとなったと感じています。
最後になりましたが、本学会発表にあたり、助成金を交付してくださいました公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。この度の学会参加を通して得た知見・課題を今後の更なる研究活動の発展に生かせるよう、より一層精進して参る所存です。
29th Fungal Genetics Conference および 14th International Aspergillus Meeting参加報告
東北大学大学院農学研究科
生物産業創成科学専攻 遺伝子情報システム学分野
博士課程前期2年
氏名:井上 大志
私は、2016年3月13日から19日にかけて、アメリカ、カリフォルニア州のパシフィック・グローブで開催された、29th Fungal Genetics Conference(FGC 29)および14th International Aspergillus Meeting(Asperfest 14)に参加し、両会議でポスターセッションによる発表を行いました。FGC 29は、一般的に酵母やカビ、キノコと呼ばれるような、真菌類の生物学に関する国際会議であり、Asperfest 14は、真菌類の中でも特にAspergillus属に分類されるカビを研究対象とした研究者が集まる会議でした。会場となったパシフィック・グローブは、太平洋に面した半島に位置し、豊かな自然に囲まれたリゾート地でした。涼しく、湿気の少ない気候で、会場のすぐ近くには白い砂浜が広がるビーチもあり、学会中は開放的な気分で気持ち良く過ごすことができました。
ポスター発表では、Aspergillus属カビの遺伝子発現制御機構に関する研究を報告しました。初めての国際学会での発表ということもあり、英語で自分の伝えたいことを説明することには正直苦労してしまいました。特に、せっかく興味を持って質問してくれた方に対しても、質問の意図を把握できず、適切に回答できなかったことは反省すべき点でした。自身の公表する研究成果は、世界中の様々な研究者に正しく知ってもらい、役立ててもらうことで初めて有意義なものになると思います。そのため、今回の国際学会で発表させてもらったことは、英語でのコミュニケーション能力の重要性を実感するいい機会となりました。一方本学会は、他の真菌類の様々な生命現象に関する研究について勉強する有意義な時間となりました。自分の専門分野と近い分野に関しては、日頃研究を進める上で参考にしている論文著者のグループの最先端の報告を聞き、実際に質問してディスカッションする中で、世界の様々な場所で研究が進められていることを感じ取ることができました。また、自分が研究対象としていない種類の真菌類や、分野が大 きく異なる研究内容もおおまかに把握することもでき、真菌類の生命現象に対する視野も広げられたと思います。特に、Neurospora属のカビを研究対象としたエピジェネティクスと転写制御に関する研究はとても興味深く、今後の研究方針を考える上でも非常に参考となりました。
本学会では、研究に関することだけでなく、初めて本格的に国際交流を経験した機会にもなりました。学会期間中は、本学会に一緒に参加した同研究科に所属する宮澤君と、ドイツと韓国から参加したドクターコースの学生の方、計4人で一週間宿泊しました。二人とも、私のつたない英語を根気よく聞き取ってくれて、コミュニケーションを取ってくれました。研究の話はもちろん、お互いの文化や食べ物についても話したり、食事を共にしたり、一緒にビーチを散歩したりと楽しく過ごすことができました。文化や言語の違いがある一方、生物の科学という共通の興味を持った人と交流できたことは、今後研究に取り組む上でのモチベーションにも繋がったと思います。また、たまたま昼食の席で隣になった、海外の大学でポスドクとして研究されている日本人の方とも知り合うことができました。海外での研究活動の経験についてお話して頂いたり、研究活動についてもアドバイスを頂いたりと、自分の将来を考える上でも貴重なお話しを聞かせていただきました。
今回の海外出張で、専門分野に対する理解が一層深まり、今後の研究の発展も期待できるような着想や人間関係を得ることができました。また、日 本では得られないような貴重な経験もすることができました。この経験を、さらによりよい研究につなげられるよう、これから日々精進して参ります。最後になりますが、今回の国際学会に参加するに当たり、渡航費を助成して頂いた公益財団法人翠生農学振興会の皆様に厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。
2016 XXV International Congress of Entomology参加の報告書
東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 生物制御機能学分野
博士課程前期2年
氏名:小野寺 駿
私は、9月25日から30日にかけてアメリカ合衆国フロリダ州にて開催された第25回国際昆虫学会2016 XXV International Congress ofEntomology(ICE2016)に参加いたしました。ICEは、昆虫に関する研究者が世界中から集まるため、今回もすべての講演数が1,000を超える非常に大きな学会となりました。
私はポスター発表でプレゼンテーションを行いました。国際会議への参加は今回が初めてであったので、非常に緊張しました。外国人研究者の方から何度か質問を受けましたが、英語での質問内容を理解してスムーズに返答することに苦戦しました。初めて国際学会に参加したことで、外国人研究者の方々と英語でコミュニケーションをとることの難しさを実感しました。それでも、何度も質問して下さる方や、次はどのようなデータを取るのがよいかをアドバイスして下さる方がおり、自身の研究に興味を持ってもらえたと感じるとともに、世界中の方々と意見交換を行うことができることをうれしく感じました。今回のICEでのポスター発表は良い刺激となり、非常に有意義な経験となったと思います。
他の方々の講演発表では、私の研究テーマである青色光の殺虫効果と近いテーマの発表はありませんでした。世界で初めて確認された現象に関する研究であるため、仕方なかったのですが、それでも世界中の最先端の研究に関する発表をいくつも聴くことができ、今後の研究にも活かすことができそうだと思いました。また、昆虫に関する研究者が世界中から集まったためか、中には昆虫と文化を絡めた研究発表もあり、国内ではまず聴けないような講演もあって、非常に新鮮で興味深く感じました。このように、今回の学会は多様な分野の研究発表を聴く機会が多かったので、英語の聞き取りや理解ができなかったことも多かったのですが、自身の英語能力を高める必要性を強く感じました。また、研究を進めるうえで、あらゆる分野からのアプローチが重要であると改めて感じ、今回の学会で聴いた数々の講演は良い刺激となったと思います。
最後に、今回助成金を交付して下さいました財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。大規模な国際会議に参加できたことは、たいへん貴重で有意義な経験になりました。学会では外国人研究者の方々とコミュニケーションをとることができ、最先端の研究に触れることもできたので、自身の研究を進めるうえでのヒントを得られただけでなく、研究に対するモチベーションを上げることにもつながりました。今後はこの学会で得られた知識を活かしてより一層研究に打ち込みたいと思います。このような貴重な経験をさせていただいたことに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
2016 XXV International Congress of Entomology参加の報告書
東北大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻 生物制御機能学分野
博士課程前期2年
小野寺 駿
私は、9月25日から30日にかけてアメリカ合衆国フロリダ州にて開催された第25回国際昆虫学会2016 XXV International Congress ofEntomology(ICE2016)に参加いたしました。ICEは、昆虫に関する研究者が世界中から集まるため、今回もすべての講演数が1,000を超える非常に大きな学会となりました。
私はポスター発表でプレゼンテーションを行いました。国際会議への参加は今回が初めてであったので、非常に緊張しました。外国人研究者の方から何度か質問を受けましたが、英語での質問内容を理解してスムーズに返答することに苦戦しました。初めて国際学会に参加したことで、外国人研究者の方々と英語でコミュニケーションをとることの難しさを実感しました。それでも、何度も質問して下さる方や、次はどのようなデータを取るのがよいかをアドバイスして下さる方がおり、自身の研究に興味を持ってもらえたと感じるとともに、世界中の方々と意見交換を行うことができることをうれしく感じました。今回のICEでのポスター発表は良い刺激となり、非常に有意義な経験となったと思います。
他の方々の講演発表では、私の研究テーマである青色光の殺虫効果と近いテーマの発表はありませんでした。世界で初めて確認された現象に関する研究であるため、仕方なかったのですが、それでも世界中の最先端の研究に関する発表をいくつも聴くことができ、今後の研究にも活かすことができそうだと思いました。また、昆虫に関する研究者が世界中から集まったためか、中には昆虫と文化を絡めた研究発表もあり、国内ではまず聴けないような講演もあって、非常に新鮮で興味深く感じました。このように、今回の学会は多様な分野の研究発表を聴く機会が多かったので、英語の聞き取りや理解ができなかったことも多かったのですが、自身の英語能力を高める必要性を強く感じました。また、研究を進めるうえで、あらゆる分野からのアプローチが重要であると改めて感じ、今回の学会で聴いた数々の講演は良い刺激となったと思います。
最後に、今回助成金を交付して下さいました財団法人翠生農学振興会の皆様に厚く御礼申し上げます。大規模な国際会議に参加できたことは、たいへん貴重で有意義な経験になりました。学会では外国人研究者の方々とコミュニケーションをとることができ、最先端の研究に触れることもできたので、自身の研究を進めるうえでのヒントを得られただけでなく、研究に対するモチベーションを上げることにもつながりました。今後はこの学会で得られた知識を活かしてより一層研究に打ち込みたいと思います。このような貴重な経験をさせていただいたことに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。