御挨拶
令和3年(2021年)6月より公益財団法人翠生農学振興会の理事長を拝命しました牧野周と申します。前理事長である駒井三千夫名誉教授の任期満了伴う人事異動でございます。当財団は駒井前理事長のもと理事・監事の先輩方及び関係各位のご尽力により、平成25年(2013年)4月に公益財団法人の認定を頂くことができました。改めて御礼申し上げるとともに、新たな決意をもって鋭意努力してまいる所存です。
本会は平成元年(1988年)3月に、「農水産学の教育研究に対し必要な援助を行うとともに、宮城県における農水産業の育成発展に貢献し、併せて地域社会の繁栄に寄与する」ことを目的に財団法人として設立されました。本会の事業活動は、東北大学農学部同窓生、東北電力株式会社からの寄付金の運用益、および維持会員の会費等を財源として行われています。これまでに、1.講演会や研修会の開催、2.研究情報の発信、3.地域農学系研究者等への技術支援、4.技術開発や研究開発への援助、5.研究者の海外派遣や外国人研究者等の受け入れ援助、などの諸事業を推進して参りました。また、公益財団法人としての認定を頂いた以降は、さらに公益性を重視し、こうした活動を幅広く続けていくことが求められるようになりました。その活動は東北大学農学部・農学研究科のみならず、広く地域社会の皆様方にもメリットのある財団となる必要があります。すなわち、農学領域の最高峰の研究と教育を介した社会貢献について、これまで以上に気を配っていかなければなりません。
東北大学農学部は平成9年(1997年)に大学院重点化(大学院大学への組織移行)の組織改編を進め、平成16年(2004年)の国立大学法人化を経て、改めて大学院農学研究科における農学教育と研究を「人類の生存基盤である食料・健康・環境問題に取り組む生物産業科学」と位置づけ、基盤的、創造的、挑戦的教育研究の推進に加えて、さらに社会に大きく貢献していくことを最大のミッションとしました。その後、農学を取り巻く社会情勢がさらに複雑に変化し、それらの課題解決につながる新たなイノーベーションが強く要請される中、農学研究科は、農学元来の基本学問体系を基盤としたあらたな大学院の組織再編を進め、令和4年(2022年)4月スタートを目指しております。農学は、分子生物科学から生産現場のフィールド科学まで、また物理学から社会科学まで、大変幅広い教育研究領域を包含する実学に結び付く融合学問であるとも言えます。この幅の広さと総合力は、地球規模での複合的な諸問題の解決にとって重要であり、ますます農学の活躍の場が広がることが期待されております。
地球の環境を守り、迫り来る世界の食料問題を解決していく役割、健康的な生活に資する食品の食べ方を提案するアカデミアとしての役割が求められる現在、そうした役割を果たすことのできる人材の養成への支援が当財団に求められていると認識しております。今後、さらに地域を中心とした農林水産業の発展と地域社会の繁栄に貢献すべく、上述の事業の推進を加速していく所存でありますので、関係者の皆様方の、さらなるご支援・ご協力をお願い申し上げます。