食料生産のための家畜から盲導犬やコンパニオンアニマルに至るまで、人類にとって有用な形質を持つ動物の遺伝的能力を選抜によってより有益な方向に導くこと――これが私たち動物遺伝育種学の研究に携わる者の使命です。そのためには、それぞれの動物種集団の遺伝的特性を把握するとともに、動物1頭1頭が持つ個々の遺伝的能力を正確に予測し、高い能力を持つ後代を作り出すことが重要です。欧米では畜産が盛んに行われていますが、動物遺伝育種学はその畜産を支え、リードする最も重要な学問として位置づけられています。
わが国における農業総生産額に占める畜産の割合は39%と、米や野菜を上回っています。世界の人口が増加しつつある現在、将来的に食糧不足の危機が叫ばれる中、私たちはコストを軽減し、美味しく安全な畜産物を供給するための一翼を担う研究を続けています。また、地球温暖化などの気候変動を緩和・適応するために、ヒトと動物と環境に配慮しながら生産性を向上させる持続可能な畜産に関する研究が今後より重要となります。当分野では、理論系、分析系、実験系など、それぞれの手法を活かして、これら研究を行っています。
家畜における遺伝的多様性の評価・保全法に関する研究
ゲノム情報を利用した効率的な選抜手法に関する研究
繁殖性、飼料利用性、食味性、抗病性に関する遺伝的パラメーターの推定と選抜指標に関する研究
腸内細菌叢を利用した新たな育種手法に関する研究
黒毛和種および日本短角種の繁殖性、飼料利用性、食味性に関する遺伝的パラメーターの推定と選抜指標に関する研究
ホルスタイン種の乳房炎における抗病性育種技術に関する研究
メタン排出抑制等における育種技術に関する研究
各研究テーマは、理論系、分析系、実験系など、それぞれの手法を活かした研究を行っています。詳細は以下をご参照ください。