1 はじめに
いじめは、児童生徒の心身の成長や人格の形成に重大な影響を与えるとともに、将来にわたって、いじめを受けた児童生徒を苦しめるばかりか、人間の尊厳を侵害
し、生命または身体に重大な危険を生じさせるおそれのある、絶対に許されない行為である。しかし、いじめはどこでも起こり得る問題であり、本校においても例外
ではないとの認識をもって、いじめを許さない学校づくりに取り組んでいかなければならない。本校では、常に、保護者や地域住民、関係機関等との連携を図りつつ、
学校全体で組織的にいじめの防止および早期発見に努め、児童がいじめを受けていると思われるときは迅速かつ適切に誠意をもって対処し、さらにその再発防止に努
める。
2 いじめの定義
【いじめ防止対策推進法第2条】
児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人間関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インター
ネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの
判断は、法に定められた定義に基づき行うものとする。その際、いじめられた児童の立場に立つことを基本とし、表面的、形式的に判断するのではなく、いじめには
様々な様態があることを踏まえ、児童の言動をきめ細かく観察するものとする。
また、いじめの認知については、次の項目に留意する。
◆「一定の人間関係」とは、学校の内外を問わず、同じ学校・学級や部活動の児童生徒や、塾・スポーツクラブ等当該児童生徒が関わっている仲間や集団(グループ)
など、当該児童生徒と何らかの人間関係を指す。
◆「物理的な影響」とは、身体的な影響をはじめ、金品をたかられたり、隠されたり、嫌なことをさせられたりすることや、インターネット上での誹謗中傷なども
意味する。
◆外見的に、けんかのように見えることでも、事実の全容をしっかりと見極め、児童生徒が感じる被害性に着目し、いじめかどうか判断する。
◆インターネット上で悪口を書かれた児童生徒が、そのことを知らず、心身の苦痛を感じていない場合についても、加害行為を行った児童生徒が判明した場合は、
いじめと判断して適切な対応をとる。
3 いじめの理解
いじめはどの子どもにも、どの学校でも起こり得る問題である。いじめに気づくためには、「いじめは、見ようとしないと見えない」との認識に立ち、いじめに
見られる集団構造やいじめの態様についてしっかりと理解する。
(1)いじめに見られる集団構造
いじめは、加害・被害という二者関係だけの問題ではない。周りではやし立てたり面白がったりする「観衆」や、見て見ぬ振りをし、暗黙の了解を与えている
「傍観者」も、いじめを助長する存在である。
また、一見、仲が良い集団においても、集団内に上下関係があり、上位の者が下位の者に他者へのいじめを強要しているケースもあるなど、周囲の者からは見えに
くい構造もある。
さらに、直接の接点がないと思われる集団においても、いじめが発生する可能性があり、インターネット上のソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、
SNSという。)でのやりとりの中でつくられている関係についても留意する。
(2)いじめの態様
いじめは、冷やかしやからかい、悪口等、見た目にはいじめと認知しにくいものがあるほか、暴力を伴わない脅しや強要等がある。たとえ、冷やかしやからかい等、
一見、仲間同士の悪ふざけに見えるような行為であっても、何度も繰り返されたり、多くの者から集中的に行われたりすることで、深刻な苦痛を伴うものになり得る。
特に、遊びのふりをして軽く叩く、蹴るなどは、周囲の者がいじめと認知しにくい場合もあることから、いじめを受けた児童の心情を踏まえて適切に認知する。本校で
は、いじめを認知する際の具体的な態様として、次のような例を参考にしながら判断するものとする。
(暴力を伴うもの) (暴力を伴わないもの)
○軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする ○冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる
○ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする 等 ○仲間はずれ、集団による無視をされる
○金品をたかられる
○金品・持ち物を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする
○嫌なことやはずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする
○パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷や嫌なことをされる 等
4 いじめの防止等の学校の取組
(1)いじめの防止等の対策のための組織
ア いじめの防止等に組織的に対応するために、学校長が任命した構成員からなる、いじめ防止対策委員会を設置する。
イ いじめ防止対策委員会の構成員は、校長、教頭、生徒指導主任、養護教諭とする。
ウ 学校対策組織は次のような役割を担う。
(ア)学校基本方針が、学校の実情に即してきちんと機能しているかを点検し、必要に応じて見直すというPDCAサイクルの検証の中核となる役割
(イ)いじめの相談・通報の窓口としての役割
(ウ)いじめの疑いに関する情報や児童の問題行動等に係る情報の収集と記録、共有を行う役割
(エ)いじめの疑いに係る情報があったとき、緊急に会議を開いて、いじめの情報の迅速な共有、関係のある児童への事実関係の聴取、指導や支援の体制・対応方針
の決定と保護者との連携といった対応を組織的に実施するための中核としての役割
(2)未然防止
いじめ問題を克服するために、本校の教育活動全体を通じて、全ての児童を対象にいじめの未然防止の取組を行う。特に、全ての児童に「いじめは人権を侵害する
絶対に許されない行為である」との理解を促し、人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動を行う。また、児童の豊かな情操や道徳心、自分の存在と他人の存在を
等しく認め、お互いの人格を尊重し合える態度等、よりよい人間関係を構築する能力を養う。
ア 道徳教育及び体験活動等の充実
教育活動全体を通じて、児童に、かけがえのない自他の生命や人権を尊重する心と態度を醸成するため、道徳教育の充実を図る。また、ボランティア活動、異年齢
集団での活動等、他者と深く関わる体験を重ね、児童生徒の豊かな情操と道徳心を培い、よりよい人間関係を構築する能力の素地を養う。
イ 児童会活動等の活性化
学級活動等で、自分の意見や考えを交流したり、集団として合意形成したことを実行に移し問題の解決や改善を図ったりする機会を設けることによって、児童の
コミュニケーション能力や自己有用感等を高め、社会に参画する態度や自主的・実践的な態度を醸成する。
児童が自らの力で問題を解決し、自治的な能力を身に付けられるよう、児童による自主活動や主体的な活動をあらゆる機会を通じて行う。
ウ 児童の人権意識の向上
いじめは人権を侵害する絶対に許されない行為である。このことをしっかりと受け止め、児童に人権や人権擁護に関する基本的な知識を確実に身に付けさせ、
自分とともに他の人の大切さを認めようとする意欲や態度、行動力を育成する。また、児童一人ひとりが大切にされ、安心・安全が確保される環境づくりに努める。
エ 授業づくりの改善と工夫
授業においては、授業規律を徹底させるとともに、児童にわかる、できる喜びを実感させられるよう、日頃から教材研究や授業研究を行うなど指導方法の工夫・
改善に努める。
オ 開かれた学校づくり
本校が取り組むいじめ防止について、保護者への理解を促すとともに、PTA等と定期的に情報交換したり、学校地域連携推進会議や学校評議員の制度を活用した
りするなど、いじめ防止のために家庭・地域が積極的に相互協力できる関係づくりを進める。
カ インターネット上のいじめの防止
児童には、発達段階に応じて、SNS等を含むインターネット上の不適切な書き込み等が重大な人権侵害行為であることをしっかりと指導するとともに、外部の
専門家等を招き、インターネットの利用のマナーやモラルについて学習させる。
また、保護者に対して、フィルタリングの設定やインターネットの利用に関する家庭でのルールづくり等を周知徹底する。
(3)早期発見・早期対応
ア 早期発見
いじめの発見の遅れは、早期解決を困難にさせ、問題の複雑化、深刻化につながることがあるため、日頃から児童の見守りや信頼関係の構築等に努め、児童が
示す変化や危険信号を見逃さないよう意識を高く保つとともに、教育相談体制を整え、いじめを積極的に認知することに努める。
(ア)いじめアンケート等の実施
いじめアンケートを各学期に一回(年3回)実施する。実施にあたっては、時間を十分に確保し、児童生徒が素直に自分の心情を吐露しやすい環境をつくる。
回収の際には、アンケート用紙を学級担任等に直接提出させる。
学級担任等は、いじめアンケートの結果について気になることがあれば、生徒指導主任等に相談するとともに、直ちに管理職に報告する。また、日常取り組ん
でいる個人ノートや生活ノート、日記、咲楽っ子箱等も活用する。
(イ)教育相談体制の充実
定期的に保護者面談を実施したり、必要に応じて個人面談を行ったりして、児童や保護者の声に耳を傾け、いじめ等の訴えがあった場合、児童等の思いや
不安・悩みを十分受け止める。また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等を活用しながら、いじめを訴えやすい環境を整える。
イ 早期対応
いじめを認知した場合、次の(ア)~(エ)に留意して、組織的に迅速かつ適切に対応する。
(ア)安全確保
いじめを認知した場合、直ちにいじめを受けた児童やいじめを知らせてきた児童の安全を確保する。
(イ)事実確認
いじめを認知した場合や、児童がいじめを受けていると疑われる場合は、直ちにいじめの事実の有無を確認する。
(ウ)指導・支援・助言
いじめがあったことが確認された場合は、直ちにいじめをやめさせる。また、その再発を防止するため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー
の協力を得ながら、複数の教職員等によって、いじめを受けた児童やその保護者への支援や、いじめを行った児童への指導またはその保護者への助言を継続的に
行う。その際、対応したことを記録として残しておく。
(エ)情報提供
いじめの早期解決を図るため、いじめを受けた児童の保護者やいじめを行った児童の保護者には、事実関係が明確になった情報を、必要に応じて提供する。
ウ 関係機関との連携
いじめが、犯罪行為として取り扱われるべきものであると認められる場合は、教育的な配慮や被害児童等の意向への配慮のうえで、早期に警察に相談し、適切に援
助を求める。なかでも、児童の生命、身体または財産に重大な被害が生じるような場合は、直ちに警察に通報し、連携した対応をとる。なお、児童の安全確保及び犯
罪被害の未然防止のため、警察署との連携が必要と認められる事案については、県の「きのくに学校警察相互連絡制度」に基づいて適時・適切に連絡する。また、児
童相談所や青少年センター等関係機関との情報交換を適宜行う。
エ インターネット上のいじめへの対応
インターネット上に不適切な書き込み等を行っているとの連絡を受けた場合、そのサイト等を確認し、デジタルカメラ等で記録したうえで、当該児童及びその保護 者に了解をとり、不適切な書き込み等のあるプロバイダに連絡し、削除を要請する。なお、不適切な書き込み等が犯罪行為と認められる場合は、削除要請を依頼する 前に警察に通報・相談する。
(4)いじめに対する措置
ア いじめの発見、相談を受けた場合
学校の教職員がいじめを発見した場合には、速やかに、学校対策組織に対し当該いじめに係る情報を報告し、学校の組織的な対応につなげる。
イ いじめ情報の記録
教職員は、いじめに係る情報を適切に記録する。
ウ 被害児童、加害児童への対応について
学校いじめ対策組織において情報共有を行った後は、事実関係の確認の上、組織的に対応方針を決定し、被害児童を徹底して守り通す。加害児童に対しては当該児
童の人格の成長を旨として教育的配慮の下、毅然とした態度で指導する。これらの対応について教職員全員の共通理解、保護者の協力関係機関・専門機関との連携の
下取り組む。
エ いじめの解消について
いじめは、単に謝罪をもって安易と解消とすることはできない。いじめが「解消している」状態とは、少なくとも次の2つの要件が満たされている必要がある。
ただし、これらの要件が満たされている場合であっても、必要に応じ、他の事情も勘案して判断する。
(ア)いじめに係る行為が止んでいること
いじめが止んでいる状態が相当の期間継続していること。この相当の期間とは、少なくとも3ヶ月を目安とする。ただし、いじめの被害の重大性等からさらに
長期の期間が必要であると判断される場合は、より長期の期間を設定する。
(イ)被害児童が心身の苦痛を感じていないこと
いじめに係る行為が止んでいるかどうかを判断する時点において、被害児童がいじめの行為により心身の苦痛を感じていないと認められること。被害児童本人
及びその保護者に対し、心身の苦痛を感じていないかどうかを面談等により確認する。上記のいじめが「解消している」状態とは、あくまで、一つの段階に過ぎ
ず、「解消している」状態に至った場合でも、いじめが再発する可能性が十分あり得ることを踏まえ、当該いじめの被害児童及び加害児童については、日常的に
注意深く観察する。
(5)教職員の資質能力の向上
「いじめはどの子どもにも、どの学校でも起こり得る問題である。」という基本認識に立ち、全ての教職員が児童としっかり向き合い、いじめの防止等にきっちり
取り組める資質能力を身につけられるよう、マニュアルやハンドブックなどを活用し、年間少なくとも1回は校内研修を行う。
(6)家庭・地域との連携
保護者や地域住民の信頼関係を構築し、児童の家庭や地域での様子を気軽に相談できる体制を整備する。また、いじめの防止等の取組について、保護者に理解を
得て、PTA総会や保護者面談等の機会に情報交換を行う。さらに、地域住民の学校行事への参加を促したり、連携して街頭指導を実施したりして、校外での児童の
様子を把握する。
(7)継続的な指導・支援
学校対策組織やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等を交えたケース会議等を定期的に行い、児童の人間関係を継続的に注視していく。いじめを
受けた児童については、継続的な心のケアに努めるとともに、自己有用感等が回復できるよう支援する。また、いじめを行った児童については、いじめの背景にある
原因やストレス等を取り除くよう支援するとともに、相手を思いやる感情や規範意識を向上させるよう粘り強く指導する。さらに、当該児童の保護者と常に連絡を取り
合い、家庭での様子や児童の言動を継続的に把握する。
(8)取組内容の点検・評価
いじめ防止等について、具体的な取組状況や達成状況を学校評価等を利用して確認するとともに、学校対策組織を中心に学校基本方針を点検し、必要に応じて見直し
を行う。
5 重大事態への対処
(1)重大事態の判断・報告
次のような事態(以下、「重大事態」という。)が発生した際、文部科学省で定めている重大事態対応フロー図をもとに、直ちに適切な対処を行う。
一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
重大事態については、次の事項に留意する。
◆「生命、心身又は財産に重大な被害」については、次のようないじめを受けた児童の状況に着目して判断する。
○ 児童が自殺を企図した場合
○ 身体に重大な傷害を負った場合
○ 金品等に重大な被害を負った場合
○ 精神性の疾患を発症した場合
◆「相当の期間」については、不登校の定義を踏まえ、年間30日を目安とする。ただし、児童がいじめにより一定期間、連続して欠席しているような場合にも、
直ちに適切な対処を行う。
(2)重大事態の調査の実施と結果の提供
ア 重大事態が発生した場合、直ちに教育委員会に報告する。
イ 学校対策組織が中心となって、事実内容を明確にするための調査にあたる。
ウ 調査の際、アンケートを実施する場合は、その旨を調査対象の児童やその保護者に説明するなどの措置を行う。
エ 調査により明らかになった事実関係について、その情報を、適時・適切な方法でいじめを受けた児童及びその保護者に対して提供する。