卒業研究 - 3次元オプティカルフロー計算の安定性

Please refer: Yusuke Kameda, Atsushi Imiya, ``The William Harvey code: mathematical analysis of optical flow computation for cardiac motion'', in Human Motion: Understanding, Modelling, Capture, and Animation, Computational Imaging and Vision, vol. 36, pp. 81--104, Oct. 7, 2007.  [EE].

2005年度卒業論文 千葉大学 工学部 情報画像工学科 井宮研究室 亀田裕介

はじめに

3次元オプティカルフロー計算における CFL:Courant–Friedrichs–Lewy 条件を提示する。 また、計算の安定性が画像に依存しない半陰解法を示す。

オプティカルフローは動画像から求められる速度場である。 オプティカルフローは物体の動きを表す。 3次元オプティカルフローとは 3次元動画像から求められる3次元の速度場である。 3次元画像とは3次元座標上に値を持つデータのことである。 例えば、 X線CTやMRIのデータは空間上に値を持つので3次元画像である。 半陰解法は陽解法と陰解法を組み合わせた数値計算法である。 半陰解法の利点は、陽解法よりもCFL条件がゆるく、 陰解法よりも実装が簡単という点である。

図 2次元オプティカルフロー。ベクトルが画像上の動きを表している。(Kitamoto, digital typhoon, NII) 台風フローの動画

図 3次元画像のスライス。スライス画像は上側が頭部、下側が腹部となっており、胸側から背中側を見た図になっている。それぞれのスライス画像は、左の図が胸側、中間の図が胴体内部のあたり、右の図が背中側となっている。(Barron, 2004)

図 心臓の3次元オプティカルフロー。心臓の3次元フローの動画

3次元オプティカルフローを求める反応拡散方程式

3次元オプティカルフローは次の偏微分方程式を解くことにより求められる (Song and Leahy, 1991)。偏微分方程式の解を反応拡散方程式の収束解とみなし計算を行う手法 (Weickert and Schnoerr, 2001)にならい、本研究では、この偏微分方程式の解を次の 反応拡散方程式の収束解とみなす。これにより、既存の拡散方程式の計算手法を用いて3次元オプティカルフローを計算することができる。

差分解の安定性

画像に依存する項のみを陰的に解き、時間項を前進差分で差分化すれば以下のような差分スキームとなる。

差分式を行列で表現すれば以下のようになる。

計算が安定であるためには、反復行列のスペクトル半径が1以下でなければならない。 これは、拡散数τ/Δx2と重みの比 r2/r1 によって決まる。 計算により、安定であるための限界値を表す臨界曲線を計算した。反復計算は、この曲線以下の領域では収束し、曲線より上の領域では発散する。

安定であるための領域は、ほぼ次式に一致することがわかった。

よって、この差分スキームのCFL条件はこの式となる。