内容紹介
前著の『悪口ってなんだろう』では、悪口は人の社会的なランクを下げる発言だと述べました。悪口を、人が傷ついたかどうかや、悪意のあるなしといった、心の問題としてではなく、人と人との関係を操作するものとして分析しました。悪口は、誰かを相対的に劣った立場に下げるという機能を持つのです。
『悪口ってなんだろう』出版から少しして、この自分と他人の上下操作という枠組みは、もっと幅広い種類のことばを理解するのにも役立つと気づきました。ランクが下に動くなら、上に動いてもおかしくありません。それは誰かを「褒める」ということです。
上下するのが、他人ではなく自分だったらどうでしょうか。自分を下げるのは「自虐」です。
そして、自分を上げるのは「自慢」です。
このように、自分か他人を上下させる、という単純な枠組みで、悪口・自虐・自慢・褒めという4種類のことばを分析できます。私はこの枠組みを、「悪口の正方形」と呼ぶことにしました。悪口の正方形は、これらの発言がどうして簡単に混じり合ってしまうのかも説明できます。自虐しているだけなのに、自慢と思われた。褒めているのに、悪口と思われた。それは、4種類のことばが、それぞれ密接にかかわり合っているからなのです。
また『悪いことばの力』では、悪口の正方形におさらまらない、「愚痴」「呼称」「一般化」「誘導」についても議論しています。
本書は、これらのことばの良い面・悪い面どちらもをとりあげます。ことばが発揮する「悪い力」を明らかにするだけでなく、「悪いことば」と思われがちな表現の役割にも目を向けます。ネガティブな発言を単に取り除けばいいというものではなく、その仕組みを正しく理解し、適切な距離を保つことが必要なのです。
こうしたことばの仕組みに興味のある人は、ぜひ手に取ってみてください。