『悪口ってなんだろう』紹介・サポートページ

『悪口ってなんだろう』(2023 ちくまプリマー新書)のためのページです.

基本情報

目次

パート1 悪口はどうして悪いのか

1 人を傷つけるから悪いのか
2 悪意があるから悪いのか
3 人のランクを下げるから悪い
4 記述のランキングと優劣のランキング
5 存在のランキング
6 尊厳としてのランク

パート2 どこからどこまでが悪口なのか

7 口が悪い
8 お互い様
9 あだ名と悪口ライセンス
10 自虐
11 褒めながら悪口
12 まっとうな非難
13 悪口の文法
14 ラベルを貼ること
15 差別語と侮蔑語

パート3 悪口はどうして面白いのか

16 笑いと悪口
17 悪口の脳研究
18 狩猟採集民の悪口
19 イコライザーとしての悪口
20 ヴァーチャルな悪口

おわりに 悪口とのつき合い方


紹介ポイント

この本で私は、哲学や言語学の知識を使って、主に「悪口はどうして悪いの?」「悪口とそうでないものの線引きはどこ?」「悪口はどうして面白いの?」という3つの問いに答えています。悪口は身近なものですが、これらの問いに答えるのは意外に簡単ではありません。たとえば、「悪口は人を傷つけることばだ。だから悪いんだ」というのは常識的な考えですが、間違っています。たとえば、恋人から別れのことばを告げられたら、傷つきますが、それは悪口ではありません。人を傷つけることばが悪口とは限りません。では、何が悪口を悪くするのでしょうか? 他にも、悪口と、単なる軽口や冗談とは何が違うのか、ちゃんとした説教や正当な批判とはどう違うのか、どうして面白がって悪口を言ってしまうのか、といったことも検討しています。

世の中、悪口と全然縁がない、という人の方が少ないのではないでしょうか。学問を通じて、少し引いた立ち位置から、冷静に悪口をとらえ直してみたい人は、ぜひ本書を手に取ってほしいと思います。

ちくまプリマー新書は、筑摩書房が「身近な悩みに答える、さいしょの新書」 (筑摩書房の関連ページ) とうたっているように、若い人に向けたシリーズで、本書を書く際それを強く意識しました。いざ書き始めようとしたとき、少なくとも気分的に参考にしたのは、手元にあったプリマー新書の、橋本治『ちゃんと話すための敬語の本』や小川洋子『物語の役割』でした。これらは、120ページくらいでまとめられた手に取りやすい本です。もちろん、すごい作家と張り合うつもりはなく、遠く及ばないわけですが、本当に中高生から大人まで、幅広く読んでもらえることを目指して書きました。結果、本文はだいたい160ページくらいで、価格も税込で880円におさまり、空間的にも金銭的にもそこまで幅を取らないコンパクトな新書ができました。

悪口「について」の本で、悪口「の」本ではないので、悪口サンプル集や悪口辞典というわけではないです。本当にベタな、子どもの悪口のようなフレーズ、「うざい」「アホか」などはそれなりに出てきますが、強烈な罵詈雑言のようなものは引用されません。帯に載っているような嫌な感じのセリフが、本書の限界くらいです。

差別的な表現についても同様で、ひとつだけ明示的に例として出しているのは、日系人・日本人を指す差別的英単語です。他はまったく引用されません(黒人への差別的英単語が、伏せ字を使って言及されます)。

その分内容が薄い、ということはないので安心してください。悪口の構造的パターンについては、かなり網羅的に議論できたと思います。結局ベタ、つまりタイムレスな例だけでよくて、変なひねりはいらないんだと思いました。

ベタな例で十分なので、前著の『悪い言語哲学入門』でやったような、ランダムなパロディや小ネタは極力避けました。同世代の読者にはちょっとがっかりかもしれませんが、90年代ジャンプとかは出てきません(笑)。事例はできるだけタイムレスでベタなものだけとして、昭和や平成への言及はやっていません。前著を出した後、若い人に、何の例なのか、何のパロディなのか分かってもらえなくて困った、というよりは、「あ、えーっとそうですね…エヴァンゲリオン観てみますね」などと気を遣わせてしまったことに冷や汗をかいたので、その反省もあります。


Amazon 紹介文
「○○さんは悩みがなくていいね」「冗談で言っただけだよ」「アホと言う方がアホだ」「ほんま私頭悪いから」「どうして一生懸命やらないの」「人として下だよね」「いじってあげてるだけじゃん」「事実を述べて何が悪いんですか」

これらは悪口だろうか? どこが悪いか説明できるだろうか?

悪口はなぜ悪いのかを問われたとき、シンプルに「人を傷つけるから」といった理由が思い浮かぶかもしれない。たしかに子どものころに「そんなこと言われたら傷つくでしょ」といって、悪口をたしなめられたことがあるだろう。ただしそれでは悪口の悪さをうまく説明できていない。たとえば、恋人からの別れのことばで傷ついてしまうかもしれないが、それはもちろん悪口ではない。

□悪口とは何か?
□悪口と軽口や冗談は何が違うのだろうか?
□まっとうな批判とは何が違うのだろうか?
□どうして「タコ」とか「ザコ」とか他の生き物を指すことばで悪口を言うのだろうか?
□どうして悪口を言うのは楽しいのだろうか?
□悪口はなくならないのだろうか?

こうした問いに答え、悪口を通じて人間の本質に迫る。


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