犬りんご街(いぬりんごがい)

「伊藤園子個展

犬りんご街のクリスマス」DM

2007年12月13日〜12月24日

cafe&gallery TERRACE ( 東京都三鷹市)

北のはずれに、ポメリー海(ぽめりーかい)という名の海がありました。

その海底には、びっしりとりんごの木が生えていて、秋には無数の実をつけます。

様々な色と不思議な模様をまとった果実を、人々は「海の実(うみのみ)」と呼びました。

冬を前にして、熟した海の実は、枝を離れ、海面に浮かび上がってきます。

海の実は、海上でひしめき合い、寄せては返す冷たい波にその身をゆだねます。

その光景は、あたかも巨大な生き物が絶えずうごめいているかのようでもあり、

繊細な模様の織り物のようでもあり、冬の陽に反射する度に、美しく色鮮やかに輝くのでした。

この奇妙な海の水に浸かった者は、たちどころに体の一部がりんごに変化してしまうのです。

その昔、浜辺をうろついていた野良犬が波をかぶり、頭がりんごになってしまいました。

これが「犬りんご族」の第一匹目となりました。

『バンプー』と名乗った彼は、近くの小高い丘に住みつき、家を建てました。

その後、犬りんごの数はだんだんと増え、次々とバンプーのもとへ集まるようになりました。

犬だけでなく、履き古された靴や動物園から

逃げてきたウサギやキリンまでもが犬りんご族の仲間入りをし、

いつしか「犬りんご街」が出来上がっていったのです。

個展会場風景 in CAFE & GALLERY / TERRACE