ホルミー通りのクリスマス

ホルミー通りのクリスマス

文・絵 伊藤園子

『冬のホルミー通り』

2011年制作

キャンバスに油彩 F15号

『ホルミー』は、頭も鼻も耳もしっぽもりんごの形になっている不思議な女の子です。手足は水色で、体の毛の色はかわいらしいローズピンクです。

ホルミーは、十年間ほど都会で暮らしていましたが、いろいろなストレスから病気になってしまいました。疲れた体と心を癒すため、生まれ故郷の「ポメリータウン」に帰って来たのです。

ホルミーは、ちっちゃな頃から勝手に「ホルミー通り」と呼んできた商店街通りに、住む家を探し始めました。それくらい大好きな通りなのです。なぜならその通りには、りんごの木がたくさん植えてあって、いつもりんごの香りが漂っているからです。

それに、ホルミー通りには、『パワール族』という小さくてかわいらしい生き物たちが棲息しています。彼らのパワーとスマイルはいろいろな病気を治すと評判なのです。パワールたちの力を借りたら、自分の病気も治せるかもしれないとホルミーは考えたのです。

お家探しはスムーズに進み、ホルミーはかわいいきのこのお家を借りることにしました。引っ越しも終わり、これできっと病気も良くなるはず、と期待したホルミーでしたが、原因不明の体調不良は思ったよりも厄介でした。焦りや不安が募ります…。

ある日、窓から通りを眺めていると、とても不気味なドクロのサンダルが右左並んで歩いて来るではありませんか!しばらく様子を見ていると、ドクロサンダルを追いかけて来た犬りんご族の『ラッタ』が、なにやらドクロサンダルにお願いし始めました。そして、ラッタは何とドクロサンダルに足を入れたのです!ドクロサンダルを履く前は何だか暗い顔をしていたラッタでしたが、不思議なことに段々と明るい表情に変わっていきました。おどろおどろしいドクロのサンダルは、足を入れた生き物の不安や悲しみを吸い取ってくれる、不思議な力を持ったお医者様だったのです。

ホルミーもそのことを知ってから、『ドクロのお医者様』に何度も治療してもらいました。おかげで、不安な気持ちや孤独感にさいなまれることも少なくなり、体の調子も整っていきました。

お隣りのレストランに行くと、野菜やきのこ、果物などをたっぷり使った、おいしくて体にやさしい料理を出してくれますし、隣の隣のお菓子屋さんにデザートを買いに行くと、甘さ控えめのヘルシーなアップルクッキーをおまけしてくれます。通りに住んでいるみんなはとても親切で、友達とのおしゃべりもとても楽しく、毎日笑顔で過ごせるようになりました。きれいな空気とおいしい水、たくさんの仲間たちの支えのおかげで、ホルミーは心身共に健康を取り戻しました。

クリスマスが近づき、ホルミーはしばらくお休みしていた歌をまた練習し始めました。クリスマスイヴにミニコンサートを開いて、通りの仲間たちを招待しようと思ったのです。自分をあたたかく見守ってくれた、たくさんの仲間たちへの感謝の気持ちを歌で表したいと考えたのです。

夜、りんごの形の月を見ながら、これまであったいろいろなことを思い出しながら練習しました。田舎の澄んだ空気の中で歌うと、都会で歌っていた頃の歌い方よりものびのびとしていることにホルミーは気づきました。

いよいよクリスマスイヴがやって来ました。ホルミーのミニコンサートの日です。ホルミーは自分で造った木製のカラフルな『おしゃべりキャビネット』をステージにして、みんなの前で歌いました。ホルミーの優しい歌声にみんなは聞き惚れました。

ミニコンサートは大成功のうちに幕を閉じ、ホルミーはポメリータウンに帰って来てよかったな、と思ったのでした。その夜、ホルミーの歌を聞いたみんなは、とても幸せな気分でベッドに入り、素敵な夢を見たのでした。 おしまい☆