2014年10月23日
今日,10月23日は化学の日。アボガドロ定数6.02...×10^{23}のベキに由来しているそうです。そこでアボガドロ定数を実感する例を6つ紹介します。以下ではおおまかにアボガドロ定数を10^{23}~10^{24}とします。
1.原子の大きさはどれ位か?
アボガドロ定数を実感するために原子を使うので,その大きさを実感することから始めます。原子の直径はおよそ10^{-10} m=10^{-8} cm. あまりに小さいので,なかなか実感できません。そこで拡大してみます。原子を一千万(10^7)倍すると1 mmほど。同様に人を10^7 倍すると10^7 m=10^4 km ほど。これは地球の直径と同じくらい。つまり,人間を地球程度に拡大して始めて,原子は1 mm 程度になる。原子はそれほど小さいのです。
原子は小さい!
2.原子をアボガドロ定数ほど1列に並べるとどれ位の長さか?
単純な掛け算。
(原子1個の大きさ)×(個数)
≒10^{-10} m×10^{23}
= 10^{13} m.
小さな原子を並べるのだから,直感での予想は数メートルだと思っていました。それでもこの大きさ。それはアボガドロ定数が大きいから。
アボガドロ定数はでかい!
3.原子10^{23}個を,1秒に1個の割合で数えるとどれだけの時間がかかるか?
10^{23}秒かかる。秒ではわかりにくいので年で表します。
1年=3.1536×10^7秒なので,10^{23}秒 >10^{15}年。
宇宙誕生が1.38×10^{10}年前なので,10^{23}秒は宇宙年齢の10万倍もの時間となる。
10万人が,宇宙開闢から数え始めてやっと今,数え終わるほどの数。
やっぱりアボガドロ定数はでかい!
4.原子10^{23}個をギッシリ詰めにするとどれ位の体積になるか?
原子の直径が10^{-8}cm 程なので,体積はおよそ10^{-24} cm^3. 従って,
(原子1個の体積)×(個数)
≒10^{-24} cm^3×10^{23}
= 0.1 cm^3.
これは,小指の爪程度の大きさに過ぎない。
1列に並べると太陽系ほどの長さを持ち,1秒に1個ずつ数えると宇宙開闢から数えてもとても足りない。しかし,ギッシリすし詰めにすると小指の爪ほどの大きさ。不思議な感じ。次元数の効果なのでしょう。
5.半径1 mmの導線に1 Aの電流を流す。導線内部にある自由電子の集団は平均的にどれ位の速さで移動しているか?
・電子の電荷(電気素量)e≒1.6×10^{-19} C
・導線内での数密度は ρ≒ 10^{23}cm^{-3} =10^{20} mm^(-3)
・導線の断面積は S=π mm^2
今の場合,導線内の断面を1秒当たり1 Cの電荷が通過する。電子の集団としての平均的な速さをv mm/s とすれば,1秒間にこの断面を通過する電子集団の体積は,V=Sv. またその電荷量は eρV = eρSv. 従って
eρSv = 1A
が成り立つ。上で上げた数値を代入すれば,
v ≒ 0.1 mm/s
つまり,電子集団は1秒間当たり高々0.1 mm程しか移動しない。
せいぜいカタツムリ程の速さ。これを初めて計算した時は,スイッチを入れた途端に部屋の灯りがつくのが不思議に感じました。
6.コップ1杯の水の分子に全て目印を付け,その水を海に注ぐ。目印のついた分子が七つの海に満遍無く行き渡るよう海をかき混ぜる。その後,海の中の好きな場所から海水をコップ一杯汲むと,その中には目印を付けた分子はおよそ何個見つかるか? 海水の総量は約1.35×10^9 km^3である。
直感で予想した時は,1個以上とは思えませんでした。アボガドロ定数の大きさ,恐ろしく感じます。
以上,アボガドロ定数の大きさを実感する6つの例題でした。このノートがアボガドロ定数の大きさを実感する助けとなれば嬉しいです。
参考文献
・高橋 康. 統計力学入門-愚問からのアプローチ. 講談社サイエンティフィック. 1984.
・シュレーディンガー. 生命とは何か―物理的にみた生細胞. 岩波文庫.
岡 小天 翻訳. 2008.