課題演習(2021年度)

科目の目的・到達目標

この課題演習は、「コンセプト」を軸として、マーケティング戦略の審美眼を養うことを目的としています。顧客価値に基づいてマーケティング戦略を解釈するための「ものの見方」を身につけることを目標とします。

授業の概要

〔テーマ〕コンセプトで考えるマーケティング戦略

コンセプトとは、企業が顧客に提供する本質的な顧客価値の定義のことです。

企業はいったい何を売っているのか?一見、あたりまえな問いのようですが、多くの人が頻繁に間違える問いです。だからこそコンセプトを考え抜くことは企業に根本的な差別化をもたらします。マーケティングの世界は、コンセプトをめぐる成功や失敗の事例に事欠きません。いくつか例を挙げてみましょう。

メガネとは何か?普通に考えれば目が悪い人のための視力矯正のツールのことです。しかしJINSを展開するジェイアイエヌという企業は、「目が悪くない人」もターゲットとして、ディスプレイのブルーライトを遮断するメガネや、花粉をカットするメガネを作りヒットさせています。この成功が「メガネ」のコンセプトを再定義することによるものであることは明らかです。

腕時計で文字通り世界を制覇したセイコーは、時計の価値は「高い精度」にあると考えて技術革新に励んだ結果、80年代半ばまでは世界一の腕時計メーカーとして君臨しましたが、今では見る影もありません。「宝飾品としての時計」という新たなコンセプトの登場を見逃してしまったためです。

サービス業の好例はスターバックスです。彼らがそのコンセプトを「美味しいコーヒーを売ること」としていたならば、他のコーヒーチェーンの倍近い設備投資の店舗を作って回転率の悪いカフェを運営することはなかったでしょう。スターバックスは「第3の場所」というコンセプトに基づいて、カフェでの滞在経験を売っているのです。このことは他のコーヒーチェーンとの明確な差別化の源泉となりました。

このように、企業が自社の製品・サービスのコンセプトをどのように定義するかは、マーケターの思考パターンを決めてしまい、マーケティングの成否に大きく影響します。

・誰に、何を、どうやって売るのか?

・提供物をどのようなものと見なすのか?

・個々の企業をどんな市場もしくは業界に属していると見なすのか?

なんだか抽象的ですが、考える価値のある興味深い問いばかりです。この課題演習では「コンセプト」を軸としてこれらの問題を考え、マーケティング戦略の審美眼を養っていきたいと考えています。 

授業計画

次のプロセスを繰り返します。

第1に、本を深く読みこんで、コンセプトを言語化するトレーニングを行います。第2に、現実の企業のマーケティング問題を扱った「ケース」を用いて、マーケティング戦略の提案と討論を行います。

このプロセスをだいたい3週間で1サイクルとして繰り返すことによって、複数の企業のマーケティング戦略事例を深く知るだけでなく、その読み解き方を理解してもらうつもりです。

テキスト・参考文献等

【テキスト】

 沼上幹 (2008)、『わかりやすいマーケティング戦略(新版)』、有斐閣。

 最初にこの本を用いてマーケティング戦略の基本を学習します。

【これまでに読んだ本】

 2番目に輪読する本は受講生のニーズに基づいて決めます。参考までにこれまでの課題演習で読んだ本を挙げておきます。

スケジュール