Learning
量子力学
清水明『量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために』サイエンス社
量子力学の考え方と取り扱いの基礎を学ぶことができる教科書。公理を導入することで、見通し良く量子論を理解できる。ベルの不等式と、その破れをどう理解すればよいか詳しく記述されている。折に触れて読み返したい一冊。
参考情報:我々の研究にはあまり顔を出さないので、7章の場の量子論は飛ばしてもよい。
J. J. サクライ『現代の量子力学(上)』『現代の量子力学(下)』吉岡書店
ブラケット形式での記述に慣れることができる。角運動量の取り扱いについて詳しい(3章)。日常的に角運動量を取り扱う原子物理屋にはありがたい。
参考情報:Clebsch-Gordon係数を理解すること。Wigner-Eckartの定理も一度はさらったほうがいい。
猪木慶治・川合光『量子力学I』『量子力学II』講談社サイエンティフィク
演習書として最適。豊富な問題に挑戦することで、計算力をつけることができる。
参考情報:研究内容との関連という点では、Iについては2~7章、IIについては8,9,11~14章が重要。
原子物理学・冷却原子
C. J. Foot『Atomic Physics』Oxford University Press
冷却原子実験に向けた原子物理の入門書的位置づけ。必ず読んでおきたい一冊。超微細構造までの一通りの準位構造と、原子と光の相互作用、分光法、レーザー冷却とトラップ手法、BECまでとカバーしている範囲は広い。
参考情報:12章 Ion Trapsと13章Quantum computingは飛ばしてもよい。
久我隆弘『量子光学』朝倉書店
原子物理・冷却原子について、和書でコンパクトにまとまっている本。原子の準位構造、原子と光の相互作用、分光法、レーザー冷却とトラップ、BECまで一通りカバーしている。
C. J. Pethick & H. Smith『Bose-Einstein Condensation in Dilute Gases』Cambridge University Press
上記2冊とは違い、より物性的な方面としてBECについて学ぶための標準的な教科書。最初に冷却とトラップについて記述があり、Feshbach共鳴についても説明されている。後半には光格子中のボース粒子(ボースハバード系)や低次元系についての記述もある。日本語訳も存在するが、古い版のものを訳しており、2nd editionの内容(特に後半で追加された部分)は洋書でしか読むことができない。
H. J. Metcalf & P. van der Straten『Laser Cooling and Trapping』Springer
やや古いが、原子の冷却とトラップについて、Foot "Atomi Physics"よりも踏み込んだ内容が記述されている。
個別量子系の制御
占部伸二『個別量子系の物理 イオントラップと量子情報処理』朝倉書店
イオントラップ系のための教科書だが、中性冷却原子系との共通部分が多分にあるため我々にとっても大いに役に立つ。特に、3章の「原子と電磁波の相互作用」は量子ビットなどの2準位系の取り扱いの基礎となるため、必ず理解する必要がある。また、5章「サイドバンド相互作用」の丁寧な記述もありがたい。
量子コンピュータ
藤井啓祐『驚異の量子コンピュータ: 宇宙最強マシンへの挑戦』岩波書店
一般書ではあるが、イメージを掴むためには読んでおいて損は無い。また、一般向けに量子コンピュータというものを説明するにはどうすればよいのか、という点でも参考になる。
M. A. Nielsen & I. L. Chuang『Quantum Computation and Quantum Information』Cambridge University Press
量子コンピュータの教科書の古典にして金字塔。
参考情報:7章 Quantum computers: physicsal realizationは飛ばしてもよい。書かれた当時に比べて量子技術は飛躍的に進展しているので、各種物理系について別途勉強することをおすすめする。
Y. Ding & F. T. Chong著, 小野寺民也 他 訳 『量子コンピュータシステム ノイズあり量子デバイスの研究開発』オーム社
コンピュータシステムとしての量子コンピュータがどのような構造になっているかを理解するために最適な良書。参考文献リストが厚く、この本を手掛かりに更に必要な文献を見つけることができる。
古典光学
注)率直なコメント:古典光学について初学者にすすめられるちょうど良い教科書を知りません。
M. Born & E. Wolf『Principles of Optics』Cambridge University Press
古典光学の骨太な教科書。分厚い。収差に詳しい。和訳もある。
E. Hecht『Optics』Pearson
こちらも古典光学の骨太な教科書。図が多く、視覚的にわかりやすいので初学者には上のBorn&Wolfよりこちらのほうがおすすめ。和訳もある。
B. E. A. Saleh, M. C. Teich 『Fundamentals of Photonics』Wiley
実用的な教科書。ビームモード、キャビティ、偏光、電気光学効果など多様な物理が詳しく解説されている。カラー図もうれしい。
中村壮一,藤江大二郎『基礎からわかる光学部品』オプトロニクス社
実験で使う光学部品の基本的な機能・特性・材質についてまとめられてる和書。
量子光学
松岡正浩『量子光学』裳華房
タイトルは量子光学だが、我々の実験で基礎となる幾何光学・波動光学から始まり、物質と光の相互作用、レーザー、非線形光学など幅広く実用的な話題を取り扱っている、実験屋にとってはありがたい一冊。もちろん後半には量子光学について記述がある。
注意:東京大学出版会から同じ著者で同じタイトルの別の本が出ている。そちらは冒頭からphotonの量子光学をゴリゴリやっていくハイペースな内容。違う本なので気を付けること。
非線形光学
R. W. Boyd 『Nonlinear Optics』Academic Press
非線形光学は、冷却原子実験において照射するレーザー光を波長変換する際の物理である。大森研究室では、この本を輪読することで非線形光学の基礎を皆で学んだ。
周波数標準
F. Riehle 『Frequency Standards Basics and Applications』Wiley
冷却原子実験では、扱うレーザーを目的の周波数に適切に安定化することが不可欠である。この本では、レーザーノイズ、周波数安定化技術、周波数参照などの基礎を理解することができる。特に2章は必読。系統的に基礎を学んでおくと、周波数安定化について場当たり的な対応にならずに済む。
E. D. Black "An introduction to Pound-Drever-Hall laser frequency stabilization" Am. J. Phys. 69, 79 (2001)
周波数安定化の標準的手法の一つであるPound-Drever-Hall法についての解説論文。PDH法をやることになった学生は必読。数式を追いかけるだけではなく、後半に登場するベクトル表示の図法をRiehle"Frequency Standards"も参照しながら理解し、PDH法が物理的に何をしようとしているのか納得すること。
AMO physicsについての動画
コロナ禍に開かれていたオンラインセミナーシリーズ。
再生速度を変える、字幕を付けるなどの機能を活用して、リスニング教材として使うのもよい。目標は、スピーカーが話す内容が聞き取れること。
英語
編集中。とりあえずこちら。
Listening
英語が聞き取れない要因にはいくつかの種類がある。単語を知らない。文法が分からない。単語も文法もわかるが、発音を知らないため何を言っているかわからない(書いてあれば理解できる)。ゆっくり話されると分かるが、スピードが速いと分からない。自分のリスニング力向上に対して、何を鍛えればよいか見定めることが重要である。
教材については、興味のあるコンテンツの動画を見ることをお勧めする。英語話者による科学系youtubeチャンネルや、研究者によるセミナーを見るのが良い。
--> AMO physicsについての動画 を参照。
英単語の発音が分からないのであれば、英単語を発音と合わせて学習することが必要である。大学受験を含めこれまでに発音に重点をおいて勉強してこなかった方は、単語を発音とセットで頭に入れることに注力すること。「英単語」欄で推薦している『TOEFLテスト英単語3800』も含め、音声コンテンツがある単語帳は世の中にたくさんある。
英単語
分野に限らず学術的な英語全般で頻出する単語を頻度別に分類した、570個の英単語リスト。単語を見て意味が分かるだけでなく、聞き取れる、書ける、話せることが望ましい。
“There is a downloadable copy of this list, with study guidance, in the vocabulary resources section."と書いてあるところのリンクからアカウント登録をしてresourcesページに行くと、pdfやword形式のリストをダウンロードできるようになる。また"Academic Word List 日本語"などと検索すると、心優しい日本人による和訳付きのリストも見つけることができる。
まずは集中して暗記し(2週間もあれば十分)、その後教科書や論文等でAWLにある単語が出てくるたびにチェックをつけて反芻すると定着につながる。発音が分からない場合は適宜調べること。
神部孝『TOEFLテスト英単語3800 』旺文社
TOEFLを受ける/受けないにかかわらず、基礎的な単語力を上げるために良い単語帳。必ずしも研究をやるうえで必要不可欠なものではないが、研究室で英語話者と雑談をする際など、自分の英単語力の低さに起因して稚拙な会話しかできないという事態を回避するためにも、幅広く英単語を知っておくに越したことはない。
その他解説記事・資料
中島秀太・高橋義朗「冷却原子と量子シミュレーション 量子多体系の新しいプラットフォーム」『数理科学 2023年10月号 素粒子物理と物性物理』サイエンス社
2023年時点での冷却原子系の幅広い話題が解説されている。
『数理科学 2020年6月号 冷却原子で探る量子物理の最前線』サイエンス社
2020年時点での冷却原子系の幅広い話題が解説されている。特に井上慎先生の「レーザー冷却ことはじめ」は、レーザー冷却を理解する入門記事として優れている。
中島秀太『<講義ノート>冷却原子系を用いた量子シミュレーション実験』
2021年の第66回物性若手夏の学校で行われた集中ゼミのための講義ノート。
富田個人ブログ 冷却原子レビュー論文【2022年8月調べ】
レビュー論文をまとめたブログ記事。
富田 冷却原子量子シミュレーション授業動画+実験室紹介
QLEAP量子教育プログラムの授業動画として撮影されたもの。冷却原子実験についてコンパクトにまとめている。
実験のためのノウハウ
ミラーやレンズ、ファイバーなどの光学機器を取り扱うときに必要な細かなノウハウがまとめられている。
Fiber coupling
Youtube, "Coupling a LASER into a single mode fiber" by Manoj Peiris
ファイバーカップリングを初めてやる人は、まずはこれを見ること。
この動画も参考になる。
実験で使う値を手早く計算をする方法
0. Python環境を整え(例えばAnaconda)、対話型シェルIPythonを使えるようにする。こちらのページからオンラインでIPythonを使ってもよい(がアクセスするまでに10秒程度のロスが発生する)。
IPythonを開く。パスを通しておけば*コマンドプロンプトからipython -> Enterで開くことができる。コマンドプロンプトはWindowsキー -> cmd -> Enter (Windowsの場合)。3秒で
from scipy.constants import * -> Enter で物理定数をインポートする
c -> Enter や k -> Enterで光速やボルツマン定数が出てくるか試してみよう。
定数一覧: scipy.constants
よく使う定数: c (光速), k (ボルツマン定数), h (プランク定数), hbar (h/2π), pi (円周率), u (atomic mass unit, 87*uでRbの質量[kg]), ...
物理量の大きさを見積もるための計算は、実験系の研究では日常的に行われる。物理定数を覚え、ノートやホワイトボードで指数を間違わずに正しく計算を行うスキルはもちろん大切だが、速く議論を進めるために手元のPC に頼って手早く計算できることも大切である。私のいる研究室では、python を用いてこのような計算を行っている。適宜numpy等もインポートすれば、複雑な関数形でも問題なく計算ができる。
*パスについて (Windows) : Anacondaをインストールした場合、ipythonのアプリケーションファイルはC:\Users\***\Anaconda3\Scriptsにある。このパスを新たに加える必要がある。パスの加え方は各自調べること。
発表のためのノウハウ
PowerPointに数式を挿入する:IguanaTex
PowerPointにアドオンでIguanaTexを導入する。TeX形式で数式を入力して挿入できる。挿入後に式の編集・サイズ変更も可能。背景は透明・不透明選択可能。各自IguanaTexで検索して導入方法を調べること。