研究について

研究はクリエイティブな活動であり、何より楽しいものです。研究室に分属し、本格的に卒業研究に取り組む4回生の一年は大学において最も大変であると同時に、最も学ぶべきことの多い時期です。特に理系学部ではその傾向にあります。それまでは既に解明・理解されていることを講義や教科書を通じて勉強することが中心ですが、4回生の一年間は誰もやったことのない未知の現象を自分で解明していかねばなりません。私自身は研究に取り組んで初めて、大学に入学した価値があったと感じました。

私は大学での教育は研究を軸として展開すべきだと考えています。研究の進展が教育の質を高め、それが研究を更に進展させ、また教育の質を高めます。そんなサイクルを一緒に築きあげていけることが理想です。そのためには学生の皆さんも、私自身も向上心を持って常に新しい挑戦を続ける必要があると思います。それにより、その時、そこでしかできない研究活動を一緒に進めていけると信じています。

研究テーマについて

科学研究とは主観的な発想からスタートしますが、決して趣味的であってはいけません。つまり、研究成果が社会の役に立つことが求められます。ただし、「役に立つ」という一言にも色々な意味が含まれます。直接応用に結びつく研究も大切ですし、農学の学術研究を進めていくために重要な基礎的知見の蓄積や技術の開発もまた非常に大切です。皆さんに提示する研究テーマには形は様々ですが「役に立つ」要素を考えてあります。社会との繋がりの中に各々の研究テーマがあることを忘れないで下さい。時に厳しく指導もしますが、頑張ってみよう!と思う学生諸君と大きな目標に向けて進んでいければと思います。

学部生の研究テーマについては基本的にこちらから提案しています。多くの研究が野菜の品種改良に繋がるような内容です。研究室には毎年15~18名程度の分属生がいますが、約半分の学生が野菜の研究をしています。人数分の研究テーマを提案しますので、自分の興味や好みに合わせて選んでもらうスタイルを取っています。大学院生については一年研究を経験していますので、相談しながら研究テーマを決めていきます。学部の研究テーマを継続・発展させる人が多いですが、新規テーマに乗り換える場合もあります。

研究室分属について

研究室を選ぶ時には事前に必ず研究室訪問をして下さい。イメージと実際は大きく違うことが頻繁にあります。研究テーマに興味が持てるかは当然ですが、研究室や各教員の指導方針と相性が良さそうかは非常に重要だと思います。研究テーマについても概要は当ホームページにも掲載していますが、研究は日々動いているため常に状況は変化しています。自分の目で見て、しっかりと考えてから選ぶことが大切です。いくつかの研究室を見学して「自分と相性が良さそうか」、「学生による学会発表はしているか」、「研究成果が学術論文として出ているか」、「科研費などの研究費に採択されているか」などをバランス良く分析し、大学での貴重な学びの期間を過ごすに値する研究室か考えて下さい。


・研究対象の野菜を食べることが好きか、嫌いか?:研究室を選ぶ基準としては関係ないと思います。実際に私自身は食べることが苦手な野菜についても楽しく研究しています(食べることが大好きな野菜も研究していますよ)。むしろ、研究の目指す目標に共感できることが一番大切だと思います。

・講義科目(野菜園芸学)の内容を研究するのか?:講義では野菜園芸学の基本的な知識を身に着けてもらうことを目標としています。研究内容と繋がりがないわけではないですが、基本的には別であると考えて下さい。でも、講義を一所懸命に取り組めた人は、研究もしっかり取り組み、結果を出して成長していく傾向にあると思います。

・野菜に関する研究なら何でもできるのか?:残念ながら、何でもできるわけではありません。教員にも得意分野がありますので、その分野の研究になるかと思います。主に品種改良に繋がるような研究を進めています。どのような研究ができるのかは、研究のページ(Click!!)を見てもらうのと、必ず研究室訪問をして確認して下さい。

・野菜の栽培はできますか?:自分の解析する野菜は自分で育ててもらいます。しかし、食べるためではなく、研究目的で栽培します(もちろん解析後に食べてもらって大丈夫です)。屋外で栽培する人もいますし、屋内で栽培する人もいます。一般的な意味で野菜栽培が上手になるノウハウを教えるわけではありません。農業をしているのではなく、農学をしています。

・遺伝子が関わる研究ができますか?:できます。現代の品種改良には遺伝子解析は必須になっています。野菜園芸学以外では、育種学、分子生物学、植物病理学などが関連してきます。基本的には研究しながら再度学び直してもらえば良いですが、講義で基礎知識があると、最初から研究に対する理解が深まり、楽しいと思います。遺伝子のことは3年生講義の『園芸植物と遺伝子』で色々とお話します。

・いつ研究テーマを決めますか?:例年、3回生の後期(9~11月頃)に卒論研究テーマを決めています。それまでは、野菜・果樹の両方の実験を体験してもらい、基礎的な実験技術を学びながら、どのような研究テーマに取り組みたいかイメージをしておいてもらいます。その上で、教員2名から提案する研究テーマの中から自分のテーマを決めてもらいます。

・執筆や発表の基礎力は必要ですか?:国語や英語の基礎力は非常に大切だと思います。この両者は研究をする際に一番生きてくると思います。国語は書く、話すなど全てに必要です。英語は情報収集のために必要になります(専門英語や専門演習で学びます)。執筆や発表については社会に出てからも生かせるスキルだと思うので、しっかり学びをサポートします。

・研究が始まると忙しいですか?:生物が対象なので研究テーマによりピークとなる時期は異なりますが、本気で研究に取り組んでもらいますので、忙しいと思います。忙しい中で時間を上手く使うことは社会に出ても求められます。良い仕事は、努力の質と量に比例します。一年以上の時間をかけて努力し、そこから見える景色、それまでの経過を振り返り、何かを計画して成し遂げていくことの大切さを学んで欲しいと思っています。

人材育成の目標

研究を通じて学ぶことは社会に出ても役に立つと本気で信じています。研究を計画し、実行し、文章(論文)にまとめたり、人前でプレゼンする(学会)などの能力は社会に出てからも十分に応用できます。また、常に論理的に考え、ポジティブにやるべき努力をできる人は自分で道を開き、人生を充実させていけると考えています。研究を通じて、そのような人材を育成することを目標にしています。

何かに取り組む際に大切なことは目標とアプローチを具体的に設定し、きっちりと努力することです。目標とアプローチの設定にはコツがあります、これについてはしっかりとサポートします。意識して頑張って欲しいことは以下の3点です。

・主体的に努力する(自分で考え、実行すると潜在能力が引き出されます)

・全力で挑戦する(徹底してやってみることが大切です。失敗することは問題ではありません)

・コミュニケーション力を身につける(人と協調して進めていくことで、思わぬチャンスに巡り合います)

大学院について

4回生で研究に取り組み、もう少し深く取り組んでみたいと思う諸君は是非積極的に大学院に進学して下さい。例年、8~10名の学部生の中で1~4名程度が大学院に進学しています。他大学からの編入も歓迎します。大学院生には年に二回開催される園芸学会で毎回発表することを目標にしてもらっています。具体的な目標に向かって頑張ることで、計画力・実行力・自信をつけてもらいたいと考えています。

学部生、大学院修了生の進路

簡単なサポートをすることはありますが、基本的に就職活動は学生自らに取り組んでもらいます。過去に以下のような就職先に着いた学生がいます。

国家公務員(植物防疫所)、都道府県職員(農業専門職)、江崎グリコ、カネコ種苗、タキイ種苗、大和農園、アグロ カネショウ、スプレッド、西本Wismettac、JA全農など