研究テーマ

研究概要

光を用いて通信をする、すなわち情報を送るためには、安定に連続発振している単調な光を情報に応じて変化させなければなりません。この操作を変調と呼びます。もっとも簡単な変調方法は、デジタル信号の0、1を光のOFF、ONに対応させる方法です。この方法は強度変調方式と呼ばれ通常の光通信システムで用いられておりますが、1秒間に送ることのできるビット数(=伝送速度、単位は bit/s)に限界があります。おおむね、10Gbit/sです。

近年、伝送速度を上げるために多値化という手法が導入されています。例えば、0と1からなるデータ列が2系統あったとした場合、情報0と1の組合せとして00、01、10、11の4通りが考えられますから、4つの値を取りうる信号を送れば2系統のデータを同時に送ることになります。この場合、4値の多値化であり、伝送速度は2倍になります。

1つの信号が4つの値を取りうる(4状態を有する)ようにするために、位相変調が有効です。つまり、光の強弱ではなく、光の位相角度を変化させるのです。4値の場合なら、360度を4分割して、45度、135度、225度、315度のように設定し、送りたい情報を位相によって表現するのです。

位相変調は電波を用いた無線通信では一般的に使われていますが、光通信で導入が始まったのは最近です。強度変調だけでも10Gbit/sの伝送速度をもつ送信器・受信機を経済的に作れることなどから、必要とされていなかったためですが、近年のインターネットの爆発的な普及・利用拡大に伴い、伝送速度100Gbit/sを実現するために導入され始めました。今後は、伝送速度をさらに上げるため、多値度をさらに上げる、変調効率を高めるなど、さらなる研究開発が求められています。

本研究室では、光通信の伝送速度を高めるため、新たな変調器の構造や変調器の駆動方法や、光ファイバ中のモード多重光の生成方法などに対して、新しい手法を提案・検証する研究を行っています。

また、光回路を用いた光信号処理による超高速光信号の受信特性の改善など、変調方法だけでなく光通信システム全体、さらには光通信技術を異分野へ適用するなど、研究対象範囲を徐々に広げてゆきます。

2018年度 卒業研究
円偏光を用いた光通信の研究
光周波数コムを光源とする光ファイバ無線技術に関する研究
RoFシステムにおける光回路を用いたビームステアリングの研究

2017年度 卒業研究
光ビームの電界分布解析に特化した大規模フーリエ変換の研究
液晶位相変調器を用いた厳密固有モード生成に関する研究
近接マルチコアにおける結合モード生成に関する研究

2016年度 卒業研究
SSB-PAM変調を用いた高密度光伝送方式の研究
DMT変調における新しいサブチャネルの信号生成と伝送に関する研究
フォトニック結晶を用いたOAMモード生成に関する研究
フォトニック結晶を用いた厳密固有モード生成に関する研究

2015年度 卒業研究
テラヘルツ波集積回路の研究
フォトニック結晶型通信用偏光素子の研究
可視光用AWG波長フィルタの研究

2014年度 卒業研究
過剰損失のない新規ベクトル変調器に関する研究
倍速2段駆動法による256Gbit/s、DP-QPSK信号の生成と復調に関する研究
線形変調器を用いた伝送特性向上に関する研究

2013年度 卒業研究
光OFDM信号の非線形劣化抑制の研究
光位相変調器の最適駆動法の研究
並列位相駆動によるロスレス変調法の研究
多段駆動による高速変調信号生成の研究

研究設備
光ファイバ伝送シミュレータ
多値変調光送信機
コヒーレント光受信機
光学実験機器