Fe4四面体をもつ混合原子価鉄酸化物NaFe2O3の電荷フラストレーション

電荷の自由度をもつ元素がフラストレート格子を形成した酸化物においては、巨大応答、非従来型の電荷秩序がしばしば報告され、基礎・応用の両面から注目されている。我々は、混合原子価のFe2.5+が幾何学的にフラストレートした"四面体からなる二次元層"を形成したユニークな格子をもつNaFe2O3に着目し(図1)、放射光X線回折、メスバウアー分光、23Na NMR、磁化率・電気抵抗率測定により電荷秩序状態に関する研究を行った。

その結果、この化合物が2段階の相転移を示し、基底状態で”アンダーソン条件”を満たさないクーロン反発の大きく静電不安定な二重ジグザグ鎖型の電荷配列を示すことを明らかにした(図2)。その起源はFe2+O6八面体のヤーンテラー変形にアシストされた構造安定化に起因することを詳細な構造解析から見出した。本発見は、マグネタイト等の多くの混合原子価酸化物で観測されている静電不安定な電荷配列の起源を考える上で重要な鍵となることが期待される。

本研究成果は、Physical Review Materials誌に掲載されている。

"Anomalous double-stripe charge ordering in β−NaFe2O3 with double triangular layers consisting of almost perfect regular Fe4 tetrahedra" Shintaro Kobayashi, Hiroaki Ueda, Chishiro Michioka, Kazuyoshi Yoshimura, Shin Nakamura, Takuro Katsufuji, and Hiroshi Sawa Phys. Rev. Materials 2, 054402 (2018).