3価のCrをもつ三角格子物質は、多彩な磁気構造を形成することで知られており、特にCr-Cr間の反強磁性的な直接交換相互作用と、強磁性的な超交換相互作用が拮抗した領域では、特異な基底状態が期待できる。我々は、固相反応法により合成した3種類の新物質LiCrSe₂、LiCrTe₂、NaCrTe₂の構造解析および物性解明を進め、2つの相互作用が拮抗した(キュリーワイス温度が0Kに近い領域に位置する)LiCrSe₂において磁気・構造相転移を示すことを見出した。さらに、これまでに報告された類似の三角格子層をもつクロムカルコゲナイドのCr-Cr間距離、ワイス温度、磁気構造を分類した相図を作成し(図2)、これらの物質間に存在する普遍性を提案した。

本研究成果は、Inorganic Chemistry誌に掲載されている。

"Competition between the Direct Exchange Interaction and Superexchange Interaction in Layered Compounds LiCrSe2, LiCrTe2, and NaCrTe2 with a Triangular Lattice" Shintaro Kobayashi, Hiroaki Ueda, Chishiro Michioka, and Kazuyoshi Yoshimura Inorg. Chem. 55, 7407 (2016).