過去の大会内容
第16回 心理療法統合を考える会 2016・3・21
東西の交流と対話(Ⅲ)「心理療法で過去を扱うことについて」
●内容●
今回は関西の心理療法家のグループである関西折衷的心理療法研究会(略称KIEP)をお招きして「心理療法で過去を扱うこと」について検討しました。
午前の部
●基調講演
杉山崇「心理療法で過去を扱うことについて、その1」
指定討論:東 斉彰、野末武義
午後の部
●研究・事例発表①
岩壁茂・野田亜由美
指定討論:前田泰宏、福島哲夫
●研究・事例発表②
福島哲夫・野村朋子
指定討論:野末武義、加藤 敬
●シンポジウム「心理療法で過去を扱うことについて、その2」
東 斉彰、加藤 敬、沢宮容子
心理療法統合を考える会 ミニ・ワークショップ 2015・3・27
恥から静穏への道のり―トラウマ、変容、超克の現象学
●内容●
今回は、感情に焦点を当てた統合的心理療法であるAEDP (Accelerated Experiential Dynamic Psychotherapy)のFacultyとしてご活躍のDanny Yeung先生をお迎えして特別ワークショップを開催いたしました。
Danny Yeung先生は、トロント大学医学部精神医学科で助教授を務め、さらに、個人開業も長年続けられています。2005年より香港、そして昨年から上海でもAEDPの研修をされています。
AEDPは、Diana Foshaによって開発された統合的心理療法で、短期力動療法、体験療法、感情理論、アタッチメント理論、情動神経科学などの知見に基づいています。(詳しくお知りになりたい方はこちら→www.aedpinstitute.org/)
第15回 心理療法統合を考える会 2014・7・27
武藤崇先生によるACTの解説とディスカッション
●内容●
武藤先生は、現在同志社大学心理学教授を務められ、アクセプタンス&コミットメント・ セラピー(ACT)の日本における第一人者です。今回は、武藤先生に、抑うつと過食を抱 えるクライエントに対する実際の臨床場面をビデオをみせていただき、治療的仕組み(何に効果があるのか)について話し合いました。また、ACTと他のアプローチとの共通性やACT独自の治療原則についてのディスカッションを行いました。
指定討論:沢宮容子先生(筑波大学)、杉山崇先生(神奈川大学)、福島哲夫先生(大妻女子大学)、岩壁茂先生(お茶の水女子大学)
第14回 心理療法統合を考える会 2013・3・3
統合・折衷的心理療法―東西の交流と対話―
●内容●
今回は、関西の折衷・統合グループとの記念すべき共同開催となりました。関西の折衷・統合のグループは、広島国際大学教授・東斉彰先生をはじめ、奈良大学・前田泰宏先生が中心になり、活動されてきました。今回はその中心メンバーをお招きして、日本における心理療法統合と折衷について検討いたしました。
午前の部
●基調講演
福島哲夫(大妻女子大学・教授)「永遠に到達できない心理療法統合を目指して-折衷と統合、あるいは技法の転換と積み重ね-」
前田泰宏(奈良大学・教授) 「可能性を広げる心理療法の実践を目指して」
●指定討論
東 斉彰(広島国際大学大学院・教授)
野末武義(明治学院大学・准教授)
岩壁 茂(お茶の水女子大学大学院・准教授)
午後の部
●発表
巣黒慎太郎(住友病院・臨床心理士) 「糖尿病チーム医療における心理療法の多面性、その拡がりとまとまり」
吉岡千波(北野病院・臨床心理士) 「臨床の中で必然的に行う折衷的心理療法〜ある事例から」
山内志保(まつしまメンタルクリニック・臨床心理士) 「治療的つながりを促進するセラピストの自己開示について」
●ラウンドテーブル
講演者、指定討論者、発表者、加藤 敬(こども心身医療研究所・主任臨床心理士)
第13回 心理療法統合を考える会 2012・12・16
二つの事例発表
●内容●
今回は、日本心理臨床学会の大会で統合アプローチについての事例発表をされたお二人に本会でも事例を発表いただきました。関根光絵さん(青山心理臨床教育センター・相模原市青少年相談センター)「長期不登校事例への統合的介入」と後藤かおるさん(法政大学)「学生相談におけるリフレーミングを用いた統合的アプローチ ー 留学先から強制帰国となった大学生の支援」です。
第12回 心理療法統合を考える会 2011・12・4
研究と実践の統合
●内容●
今回は、実践活動を臨床につなげ、そして、研究の知見を実践へと活かそうという相互の関係について示唆の深い、二つの発表を行いました。
発表者のお一人は、神奈川大学の杉山崇先生です。これまで基礎心理学と臨床心理学の統合に関して非常に貴重な著作や発表をされてきました。うつと非受容感の研究を継続され、そこから得られた知見を臨床活動に積極的に取り入れ、研究と実践の統合について扱われてきました。今回は「抑うつの対人関係と治療関係ー慢性抑うつへの来談者中心的認知行動療法」というテーマで、抑うつの対人関係に関するこれまでの杉山先生の基礎研究,その成果をもとにした独自の来談者中心療法と認知行動療法の理論的統合と技法折衷・共通要因アプローチ観・心理学と心理療法の連続性の試論についてお話いただきました。
もう一人の発表者は、お茶の水女子大学・大学院博士後期課程に在籍する横田悠季さんです。心理療法のプロセス研究を主要な領域として研究に取り組んでいらっしゃいます。今回のテーマは、「クライエントはいかにカウンセリングの継続・中断を決定するのか-クライエントの初期面接の体験に関する質的研究-」です。クライエントが心理療法を継続・中断するという決断のプロセスにおいて、カウンセラーとの関係性が非常に大きく影響を及ぼますが、今回は過去にカウンセリングを体験したクライエントへのインタビューを通して、そのプロセスを明らかにすることを目的としています。クライエントの主観的体験を理解することが、どのようにして臨床実践と訓練に役に立つのか、この研究をもとにお話いただきました。
第11回 心理療法統合を考える会 2011・6・19
Helping Skillsから承認へ ― 感情調節困難の理論と実践の基礎
●内容●
第11回心理療法統合を考える会では、遊佐安一郎先生(長谷川メンタルヘルス研究所所長、北海道医療大学客員教授、国際基督教大非常勤講師、高知県立大学看護学部非常勤講師、元長谷川病院クリニカルコーディネーター兼リハビリテーション部長、東京大学大学院教育研究科臨床心理学コース客員教授)をお迎えして、「Helping Skillsから承認へ ― 感情調節困難の理論と実践の基礎」というワークショップを開催いたしました。遊佐先生は、家族療法、認知行動療法、最近では弁証法行動療法やスキーマ療法を紹介・活用され、統合的実践の先頭を常に走っていらっしゃいます。今回は、すべての心理療法の基礎となるHelping Skillsから、はじまり弁証法的行動療法の柱の一つであり、感情調整困難なクライエントさんへの支援の基礎である「承認」までお話をいただきました。ワークショップでは、Interpersonal Process Recall (対人プロセス想起法)を用いたロールプレイも加えて、Helping skillsの訓練の仕方の紹介を行いました。
第10回 心理療法統合を考える会 2011・2・27
一人のクライエントと3人のセラピスト―ビデオを使った鍵となる面接場面の比較
●内容●
心理療法の統合に関して、具体的で厳密なディスカッションが可能となるのは、そのディスカッションに参加する人が面接の場面を実際にみて共有するときです。書面にまとめられた記録では到達できない多くの情報が明らかになります。今回は、3人のセラピストが一人のクライエント(役者)に対して行った面接のデモンストレーションをもとに、それぞれのセラピストが注目する介入のポイント、重要な場面について話し合いました。3人の視点を比較することで、「心理療法統合」について細かな視点から検討したいと思いました。
第9回 心理療法統合を考える会 2010・7・11
二つの事例発表と大会報告
●内容●
今回は、メンバーの方の事例を通して心理療法統合について学びました。
≪発表とテーマ≫
●安達知郎(東北大学大学院教育学研究科博士課程後期):「家族療法におけるセラピストの感情の動きに注目したケース」
●濱田馨史(相模が丘病院):「境界性人格障害に対する認知行動的アプローチ — アクセプタンスとコミットメントのバランス」
また、5月の終わりにイタリア・フィレンツエで開催されたThe Society for the Exploration of Psychotherapy Integrationの国際大会の様子も参加されたメンバーから報告しました。
●内容●
感情に焦点を当てた統合アプローチとして世界で注目を受けているエモーション・フォーカスト・セラピー(EFT:感情焦点化療法)の開発者であるカナダ、トロント・ヨーク大学教授のレスリー・グリーンバーグ先生をお招きして東京でワークショップを開催しました。詳しくはこちら
第8回 心理療法統合を考える会 2009・12・13
アサーションと心理療法統合
●内容●
今回は、適切な関係を築くための自己表現法として、近年広く知られているアサーショントレーニングの理論や実践の「統合的」な性質に迫りました。そして、アサーショントレーニングに取り組まれてきた3人の先生方による発表を中心に進めました。
≪発表者とテーマ≫
●平木典子(東京福祉大学大学院):「アサーション・トレーニングの統合的視点」
●野末武義(明治学院大学):「カップル(夫婦)セラピーにおけるアサーション:コミュニケーションの問題とセラピストの役割」
●中釜洋子(東京大学大学院)
「個人心理療法における変化機動力としてのアサーション:行動介入からナラティブの生成まで」
第7回 心理療法統合を考える会 2009.7.12
効果研究、メタ分析、そして心理療法の実証基盤
●内容●
今回は、米国ブリンガムヤング大学教授 マイケルランバート (Michael E. Lambert)氏と共同研究を続け、数多くの論文を共同執筆されているジョン・オキイシ氏をお招きして、心理療法の効果研究に関して、そしてランバート先生の近年の研究について、講演していただきました(英語の講演に通訳付き)。詳しくはこちら。
マイケルランバート先生は、心理療法の効果研究および効果研究のメタ分析の第一人者で、発表論文数は300件を超えます。2005年には、心理療法の実証研究の集大成である “Handbook if Psychothrapy and Behavioral Change(第5版)”の編著者も務められました。 近年では、Outcome Questionnaire-45 (OQ-45)(日本語版も入手可)を用いて、ドロップアウトや治療的失敗を未然に防ぐ方法を開発し、高い効果を挙げています。 ランバート氏が行ってきた、メタ分析による心理療法統合、特に共通因子アプローチへの発展への貢献は多大です。心理療法統合だけでなく、心理療法全体の実証的基盤を整えた貢献者と言えるでしょう。
第6回 心理療法統合を考える会 2009.2.8
心理療法統合とは何か
●内容●
今回は、「心理療法統合とは何か」というテーマのプレゼンテーション、および統合アプローチのビデオの視聴をいたしました。これまで参加者の皆さんから、「心理療法統合にはどのようなやり方があり、それぞれどんな利点や問題点をもっているのか、ということについて知りたい」「心理療法統合の基本的な考え方について振り返る時間をとりたい」という声が多く聞かれました。本会のメンバーによる心理療法統合に関して概説する論文も発表されておりますが、個々がそれらの論文を読むだけでなく、一緒に話し合うことによって理解が一層深まることが期待されます。そこで、今回は、平木先生に心理療法統合の基本的な考え方、諸形態とそれらの特徴についてお話しいただきました。
次に、「John C Norcrossによる Prescriptive Eclectic Therapy」のデモンストレーションの視聴とディスカッションをいたしました。John C Norcross氏は、J. O. Prochaska氏とともに、6つの段階から行動変容のプロセスをとらえた、健康行動のTranstheoretical Modelの発展に貢献してきました。このアプローチにおける「統合」のあり方、そしてそれによって促進されるクライエントの変容プロセスについて話し合いました。
第5回 心理療法統合を考える会 2008.10.12
統合的試み -事例と研究発表-
●内容●
今回は、3名のメンバーの発表を通して心理療法統合について考えました。伊藤さんは、統合アプローチエモーションフォーカストセラピーにおけるSelfsoothing(自己なだめ)のプロセスについて発表していただきました。感情調整の重要性に注目が集まる中、感情プロセスに関する新たな視点について学ぶ機会になりそうです。後藤さんには、学生の復学支援において、統合的かつシステミックなアプローチを試みられたケース、細越さんには、ゲシュタルトの椅子の技法を使われたケースを発表していただきました。統合的な試みについて実際のケースを通して考えるとても良い機会になりました。
≪発表者とテーマ≫
・伊藤正哉(国立精神・神経センター)「共感的自己なだめ ー 共通的な治療プロセス?」
・細越寛樹(日本学術振興会(筑波大学))「うつを主症状とした成人男性との心理療法」
・後藤かおる「2年間ひきこもった大学生の復学支援」
第4回 心理療法統合を考える会 2008.6.15
統合的セラピストの発展 -求めてきたこと、目指していること-
●内容●
今回は、臨床家の職業的発展という視点から、心理療法統合および「統合的」アプローチについて検討します。3人の臨床家がどのような道のりを経て「統合的」アプローチをとるようになっていったのか、ということについて、それぞれの訓練や臨床経験などをもとに語ってもらい、心理療法統合を臨床家個人の発展と成長に引きつけて考えていきました。また、現在心理療法統合に関してどんな目標に向けてどのような取り組みをされているのか、ということについても参加者の皆さんと共有します。
また 5月にボストンで開かれた TheSocietyforTheExplorationofPsychotherapyIntegration(SEPI)の国際大会の報告をいたします。SEPIにおいてどのような研究や臨床のテーマが扱われているのか、ということを知るための良い機会となりました。
≪発表者とテーマ≫
・福島哲夫「統合への道-ユング心理学から折衷、そして統合へ-」
・野末武義「個人療法と家族療法の統合ーシステミックな統合を目指して」
・岩壁茂「プロセス研究からの統合」「SEPI2008年度国際大会の報告」
第3回 心理療法統合を考える会 2008.3.9
初回面接から初期における統合的試み-統合的フォーミュレーションと臨床的判断-
●内容●
今回は、初回面接と心理療法初期のプロセスに焦点を当て、どのように統合的な視点からフォーミュレーションが立てられ、介入が組み立てられるのか、ということについて、3人の臨床家の統合的試みを通して検討しました。初回面接から心理療法初期では、クライエントの問題を理解し、作業同盟を確立するなど理論アプローチを超えて共通する作業課題があります。3人の臨床家がどのようにして「統合的」視点を初回面接および初期の面接に組み込んでいるのか、それぞれの心理療法統合に関する考え方、セラピストの姿勢、クライエントの変容プロセスについて、話し合いました。
≪発表者とテーマ≫
・野末武義(明治学院大学) 「初回面接におけるセラピストの迷いと葛藤 — 何をどう扱うかをめぐって-」
・中釜洋子(東京大学院)「システミックな統合にむけて-初期対応の課題として面接形態を選択する-」
・福島哲夫(大妻女子大学)「臨床心理学の基礎としての折衷・統合的心理療法 -基本的態度の微調整と技法選択に関する試論-」
第2回 心理療法統合を考える会 2007.12.16
二つの認知行動アプローチの比較-デモンストレーション・ビデオ視聴とディスカッション-
●内容●
今回は、認知感情行動療法(M・ゴールドフリード)と認知行動療法(J・パーソンズ)の二つの認知行動アプローチの面接を視聴し、その違いや類似点についてディスカッションを行いました。統合的介入、セラピストの姿勢、クライエントの瞬時の変容プロセスについて議論しあいました。
M・ゴールドフリード氏は、心理療法統合を考える会(TheSociety for Exploration of Psychotherapy Integration)の創始者の一人です。1980年にAmerican Psychologistに発表したToward the delineation of therapeutic changeprinciples(治療的変容の諸原則の輪郭を描くために)は、認知行動アプローチからの統合および共通因子アプローチおよびプロセス研究に非常に大きな影響を与えました。最近の著作には、「心理療法統合ハンドブック(Handbook of Psychotherapy Integration, John C. Norcrossとの共編, 2005年)、「臨床行動療法(Clinical BehaviorTherapy, Gerald C Davidsonとの共著, 1994年)」、「認知行動療法から心理療法統合へ(FromCognitive-Behavioral Therapy to Psychotherapy Integration,1995年)」などがあります。認知感情行動療法は、認知行動療法の考え方に基づいているが、体験療法の技法や考え方を取り入れています。
ジャクリーン・B・パーソンズ氏は、カルフォルニア州オークランドにて心理学者として個人開業を営みながら,カリフォルニア大学サンフランシスコ校精神医学科の臨床準教授として臨床心理士と精神科インターンの指導に当たり,抑うつや不安の内面にある認知作用,および認知行動療法における事例定式化の研究を進めています。主な著書に,『実践的認知療法:事例定式化アプローチ』(金剛出版),があります。日本では全5巻セットDVD「うつ病治療のための認知行動療法」が日本心理療法研究所から発売されています。
第1回 心理療法統合を考える会 2007.11.18
EFT(エモーション・フォーカスト・セラピー)の面接プロセス -デモンストレーション・ビデオ視聴とディスカッション-
●内容●
今回は、カナダ・ヨーク大学教授・EFT研究所所長レスリー・グ リーンバーグ先生のEFT(エモーション・フォーカスト・セラ ピー)に焦点を当、デモンストレーションビデオ(2回の 面接:日本語字幕)を視聴し、面接プロセスについてディスカッションをしました。統合的介入、セラピストの姿勢、クライエントの瞬時の変容 プロセスについて議論しあいました。
EFTについて:EFTは、クライエント中心療法、ゲシュタルト療法 を基礎として発達心理学、感情心理学の理論を統合し、プロセス研究に よってその介入の手続きが検証されてきた代表的な統合アプローチです。「うつ」に対するアプローチ、「カップルセラピー」が世界的に知られています。日本では、JIP日本心理療法研究所より、アメリカ心理学会心理療法ビデオシリーズの日本語版「過程指向体験心理療法」「うつに対する感情焦点化療法:エモーション・フォーカスト・セラ ピー(EFT)の理論と実際」という2本のDVDが発売されています。また、EFTの理論は、「グリーンバーグ(他)感情に働きかける面接技法―心理療法の統合アプローチ.誠信書房.」として2006年に発表され、日本家族心理学会の学会誌「家族心理学研究」に、EFTのカップルセラピーの理論と実践が2本の英語論文に紹介されています。
準備大会 心理療法統合を考える会 2005.6.19
●内容●
≪大会挨拶≫
本会合は、理論アプローチの枠組みを超えて心理療法の理論・実践・研究・訓練について考え、意見を交換する場です。クライエントのニーズにより適した心理療法を提供するため、また心理臨床家としてさらに発展するために、自身が訓練を受けた理論アプローチ、モデル、学派を超えて答えを求める方も多いはずです。異なる理論的視点から事例に対する自分の考えを見直したり、異なる学派の心理療法理論の技法を取り入れたりすることによって、それまでにもっていた自らの臨床的枠組みが広がったり、それまでに見えなかった介入の仕方が見つかることもあるでしょう。
もう一方で、そのように一つの理論的枠組みから一歩足を踏み出すことに対するためたいも非常に強いのではないでしょうか。まず、心理療法統合に関心をもっていてもそれが本当により効果的な心理療法へとつながるのか、それどころかどのようにして心理療法の統合を行うことができるのか指針となるものが少ないのが現状です。また、心理療法理論は多くの場合に、ただ単に心理面接における介入のための理論ではありません。セラピストにとって、それは心理療法の枠を超えて人とは何かを考える人間観や世界のあり方とそれに対する価値観を意味する世界観になっています。また、心理療法理論学派はセラピストにとっての職業的アイデンティティーの一部でもあります。つまり、ある学派に属すことによってセラピストは、臨床家としての自己の意味づけを行っています。したがって、理論を超えることはただ単に効果的介入という枠を超えて心理療法家の職業的自己に関係する問題でもあります。
本会合は、このような関心を共有する心理療法家と心理療法の研究者が意見を交換し、新たな心理療法のあり方について考えることを目的としています。それは、心理療法における理論概念・介入法・研究法だけでなく、心理療法家としての発展についても自由に考え、意見を共有する場でもあります。一つの正しい理論的見解を理解することでなく、多様な意見や考えを発展させていきたいと考えております。本会への参加は、理論を超えてカウンセリング・心理療法を実践される方であればどなたでもできます。大学・大学院において臨床心理学・心理学を勉強される学生の方も歓迎いたします。
第1部では、2005年5月に開催された心理療法統合を考える会(The Society of Exploration of Psychotherapy Integration: SEPI)の国際大会についての報告(岩壁・野末)と一人のセラピストとしての立場から見た心理療法統合(平木・中釜)について報告いたしました。
第2部では、少人数のグループに分かれ、参加者がもたれる「心理療法統合に対する疑問や期待」についてディスカッションを行いました。
[プログラム]
第1部 心理療法統合の視点
・平木典子 「私が考えてきたこと」
・岩壁茂 「SEPI2005国際大会の報告」
・野末武義「SEPI2005国際大会から」
・中釜洋子「心理療法統合への期待」
第2部 グループディスカッション・「心理療法統合に対する疑問や期待」